男の娘って生き辛そう   作:ウジ虫以下

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第五話『男の娘と男の子みたいな女の子』

 

Q.4自分と同じ境遇の女の子がいました。優しくすべきか述べよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

女の子にはどんな時でも優しくすべきだ、と僕は思います。

 

 

 

 

 

 保健室登校を始めてから、二週間程が経ちました。

 

 

 と言っても、保健室内に居座っているというわけでもなく、ここは保健室の空き教室。僕のような人のために設けられている教室です。

 

 

 最近は使われて無かったのか、隅に段ボール箱が積んであります。そんな中でポツンと一つ机とイスを置かれている。そう、これが今の僕の学習環境です。

 

 

 最初のうちは、教科書を頼りに学習を進めていくという行為に苦戦しましたが、今ではそれなりのペースで進めれていると思います。

 

 

 ここの主であるヒジリカワ先生は、忙しい合間を縫って僕に構ってくれたりもする。普段から隣の保健室での業務や、保健室を訪れた生徒への対応だったりと何かと忙しいはずだ。だけど、今は僕のことを気にかけるため時間も割いて貰っているようで、大変申し訳なく思う。

 

 

 

 そんな新たな生活の一日はヒジリカワ先生との会話で終わる。毎回、数個の質問や変わりがないかということを聞かれる。先生はカウンセリングの真似事だと言っていたけれど、僕にはよくわからない。だけど、ヒジリカワ先生との会話は楽しいモノだとは自信を持って言える。

 

 

「じゃあ、今日も始めようかヒカゲくん」

 

 

「……はい。」

 

 

「今日の学習範囲、何かわからない所あったかな?」

 

 

「いえ、大丈夫でした。教科書を読み込んだら理解できたので」

 

 

 それから幾つか質問が続く。今日のことだったり、家でのことだったりを話していく。毎回会話の長さは区々で、保健室に怪我人がやって来てきた時なんかはすぐに終わることもある。

 

 

 それも仕方ないことだと思う。本来であれば僕なんかに構っているような時間もないはずだ。それでも、ヒジリカワ先生はこの会話を日課として続けてくれていた。

 

 

「それじゃあヒカゲくん、今日は終わりにしようか。さようなら、また明日」

 

 

 会話が終わると、ヒジリカワ先生は小さく手を振って僕を見送った。学校に、また明日と言ってくれる人が居るのだと思うとなんだか嬉しく思う。

 

 

 家に帰った僕は、家事に勤しむ。最近は心にも余裕が出来てきたからか順調に進める。学校に行きたくないと思うようなこともないし、朝早く起きて残り物で構成されていないお弁当を作れている。それもこれも、ヒジリカワ先生が保健室登校を勧めてくれたおかげだ。

 

 

 ふふっと小さく笑みが溢れた。父にも最近は機嫌が良さそうだなと言われることもあるし、この生活なら頑張っていけそうだと思う。

 

 

 

 

 今日も今日とて空き教室で学習を進めていた時だった。教室の扉をノックする音が聞こえた。この教室にやって来るのはヒジリカワ先生くらいなので、どうぞと返事をする。

 

 

 そういえば先生の話してくれた告発してくれた女生徒とは、まだ会えていない。いつか会いに来てくれると言われているのだし、気長に待つことにする。

 

 

「———ヒカゲくん、ちょっと失礼するよ。喜べ、キミに級友が増える。それじゃあヒロミさん入って来てくれ」

 

 

 …………………。え、級友が増えるって。それってつまり僕と同じ保健室登校の人が増えるってことだよね!?どうしよう、緊張してきた。

 

 

「……………………………………どうも。」

 

 

でかい。中に入って来たのは背の高い女子生徒。下手しなくとも僕より背が高い。170cmは有に超えているだろう。もしかすれば180cmにも届き得るかもしれない。それに何だかボーイッシュと言うのだろうか、カナデさんとは別のカッコ良さを持っている女の子だ。

 

 

 彼女は、見ず知らずの僕にぺこりとお辞儀をする。慌てて僕も返す。それからはお互い黙ってしまう。彼女は、入って来てから頭を上げていないので、目も合っていない。僕たちは、あまり初対面の人とのコミュニケーションが得意なタイプじゃないようだ。そんな状況を見兼ねたヒジリカワ先生が口を開く。

 

 

「……彼女は広見 明(ヒロミ アキラ)さん。お互い見ず知らずの相手と過ごすことになるだろう。安心出来るかは分からないけれど、教えておくよ。」

 

「———ヒロミさんとヒカゲくん。キミ達は"全く同じ状況"に陥らされて、此処へとやって来ている。同類とは言いたくないが、キミ達はお互い傷の舐め合いくらいは出来るかもしれない。」

 

 

「…………そ、それってどこまで!?」

 

 

 咄嗟の情報に驚いて、声を上げる。同じ状況となると、彼女も僕と同じように虐められて…。

 

 

「"全く同じ状況"だよ、ヒカゲくん」

 

 

「———先生!!それ私のことを他人に話さ……………え?」

 

今まで顔を俯かせていたヒロミさんが、ヒジリカワ先生を制すために顔を上げた。初めて見た彼女の瞳は、キリッとしていてクールな印象を与えた。それよりもヒロミさんは、なぜ言葉の尾で間の抜けた声などを出したのだろうか。

 

 

「……………………………………………綺麗。」

 

 

「そうだろう?ヒカゲくんは良い子だし、きっとキミの心の傷も埋まると思う。投げやりになるのも良くないと思うんだけど、お互い話して見るといい。」

 

「それじゃあ、私は戻るよ。ヒカゲくん、女の子には優しくしてあげるんだね」

 

 

………全然会話に加われなかった。ヒジリカワ先生はニシシと悪戯っ子のような笑みを浮かべて、この場を去った。あんな感じだったけれど、先生のことだからすぐに様子を見に来てくれるだろう。

 

 

 それよりも、ヒロミさんに自己紹介くらいは済ませておくべきだ。これからは一緒の教室で一日を過ごすわけだし、仲が悪いよりは良いほうがいいのだから。それに先生が言っていた口振りからすると、彼女も…………。

 

 

「……僕の名前は緋影 千尋(ヒカゲ チヒロ)です。同じ教室で過ごしていくわけだし、仲良くしてくれると嬉しいかな」

 

 

「———うっ!!………笑顔が可愛い。私よりも美少女だ。やっぱり私なんか……。」

 

 

 何か言っていたようだけれど、聞き取れなかった。所々聞こえて来た言葉からすると、また女の子と勘違いされてるかも……。い、いいもん!もう僕慣れたから!!

 

 

「あの、実は僕男なんだ。髪だって長いし勘違いされるのも仕方ないと思うんだけど」

 

 

 制服だって学ランなのに、イマイチ男らしさがアピール出来てないのだろう。仕方ない、仕方ない…………。

 

 

「す、すみません!…………私、自分がされたら嫌なことしちゃった。そうだ!私から自己紹介してませんでしたよね!私は広見 明(ヒロミ アキラ)です!」

 

 

「これから、よろしくお願いします。僕は2年なんだけど、ヒロミさんは何年生なんですか?」

 

 

 ヒロミさんは背も高いし、大人っぽいし3年生かも知れない。でも、人を見掛けで判断してはいけないだろう。

 

 

「……………え、先輩なんですか!?てっきり同じ歳かと思ってました!すみません!!」

 

 

彼女は平謝りをしてくる。ぺこりぺこりと下げられる頭。そんな姿勢すらヒロミさんは様になっている。……………それよりも。一年、一年かぁ………。

 

 

「ごめんなさい先輩!自分、失礼な態度でしたよね!?初対面なのに全然目も合わせなくて。———あぁ、そうか噂になってた男子制服を着てる綺麗な2年の先輩ってヒカゲ先輩のことだったんだ………。」

 

 

「…………う、噂になってるんだ。しかもそんな風に」

 

 

新入生の間でそんな風な噂になっていたなんて知らなかった。かなりショックだ。それでも、噂のおかげでヒロミさんもだいぶ砕けた態度になってくれている。それでもまだ、ヒロミさんの顔色は来た時と同じく、曇ったままだ。

 

 

 ここで、自分の状況を彼女に話しておくべきかもしれない。ヒジリカワ先生は、僕に任せてくれた。それに全く同じ状況だと言うのなら、何か助けになれるかもしれないと思う。

 

 

「実は僕……………。」

 

 

 それから自分が保健室登校となった経緯を話す。女の子みたいな見た目から教室で虐められることになったことや、此処に流れたまでを。

 

 

「………そう、だったんですね。……私と同じだ。それなのに先輩のこと女の子みたいだとか言って、すみませんでした!!」

 

「……私ってアイツらと同じだ」

 

 

「良ければ、ヒロミさんのことも教えてくれないかな?」

 

 

ヒロミさんが話してくれたのは、確かに自分と同じ状況だった。男の子みたいに背が高いことから男みたいだと虐められたこと、それに名前も男の子みたいだったから拍車をかけたこと。それでも、直接的な被害までは受けていないと言っていたので良かったと思う。

 

 

 本当に"全く同じ状況"だったんだ、僕たち。

 

 

「ごめん!!僕もヒロミさんのこと背が高くてかっこいい人だなって思ってたんだ。そんな状況だったとも知らずに」

 

 

「……かっこいいなんて初めて言われました。………だってみんな、女なのに背が高すぎて気持ち悪いとかって口を揃えて言うもんだから」

 

 

 ヒロミさんは思い詰めたような顔をする。嫌なことを思い出させちゃったみたいだ。なんとか彼女の気が晴れないものかと、思いを言葉にする。

 

 

「———僕は、僕は背が高くて大人っぽいヒロミさんのことクールな女性だと思うよ。それに、背が高い女性なんて沢山いるはずだよ。も、もしかしたらヒロミさんならモデルやスポーツ選手でもやっていけるかもしれない」

 

「…………えっと、それで。僕は背が高いの羨ましいな、って思います………………。」

 

 

それが本心。きっと慰めにもならないような言葉を言ってしまった。もしかしたら、彼女の気を悪くしてしまったかもしれない。

 

 

「…………くすっ。わかりましたよ。先輩、慰めてくれようとしてたんですよね?本来は自分で解決すべきことなのに先輩に気を遣わせて、私って馬鹿みたいですね」

 

 

「———そ、そんなことは!」

 

 

「いいんですよ、先輩。これから宜しくお願いしますね。お互い傷の舐め合いでもしましょう」

 

 

そう言うと彼女は、にへらと笑った。ヒロミさんが、初めて見せてくれた笑顔はクールな印象の彼女とは真逆の年相応の可愛らしい笑顔で少しドキリとさせられる。

 

 

 

「さぁ、お勉強ですよ先輩!私、歳下なわけですから分からない所は教えてもらってもいいですか、ヒカゲ先輩!」

 

 

 

 

部活にも所属していないから、僕のことを先輩と言ってくれる後輩が現れるなんて思わなかった。慕ってくれる人がいるのってすごく嬉しいものなんだな。

 

 

「先輩〜!!ここわかんないです!」

 

 

「———ヒカゲくんヒロミさん、仲良くやっとるかね〜?……ん?なんだ!二人とも仲良くなれたみたいだね。良かったじゃないか、ヒカゲくん。こんなにも可愛い後輩が出来て」

 

 

 

 

 またしてもニシシと笑うヒジリカワ先生と、打ち解けてくれたヒロミさん。

 

 

 

 

どうやらこれからは、ヒロミさんを交えて楽しく日々を過ごせるかもしれないと思うヒカゲであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




先日はキャラ設定でお茶を濁すような真似して申し訳ないです。イラストもあんまり好評では無かったみたいで…。次回はヒメミヤさんの回です
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