男の娘って生き辛そう   作:ウジ虫以下

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第七話『男の娘とデート?』

 

Q.5 慕っている女性と出掛ける事になりました。服装はどうしましょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

…………………………カジュアル系、でしょうか?……ごめんなさい、女性と出掛けたことないので。

 

 

 

 

 

 

「先輩、今日は何だか上機嫌ですね」

 

 

「……ごめん、鬱陶しかったかな?」

 

 

「いえ、そんなことはないですよ。むしろ………眼福?」

 

 

 どうにも浮ついていた心をヒロミさんに言い当てられてしまった。

 

 

 ヒロミさんと、僕。二人での学習にも大分慣れて来た。だからだろうか、隙間時間になるとこうして雑談を交えるような仲にもなれた。ヒロミさんは分からない問題があると、僕に質問してくれるし、頼られているのだと実感する。自分を先輩と慕ってくれる彼女を大事にしようと思う。

 

 

「実は、最近仲良くしてもらってる女性と遊びに行くことになりまして………。」

 

 

「———恋人ですか!?…………完全に乗り遅れた…?」

 

 

 最後の方はモゴモゴとして聞こえなかったけれど、これは否定しなければいけない。

 

 

 僕が遊びに行くことになった相手とは、カナデさんのことだった。カナデさんとは、あれからも連絡を取り合っていた。そして昨日、一緒に出掛けないかと誘われたのだ。

 

 

 カナデさんとは別に恋人関係という訳ではない。強いて言うならば、友人?師弟関係?

……出会いが複雑すぎてよく明言はできないが、断固として恋人関係などではない。僕と、こんな勘違いをされるのはカナデさんに迷惑だと思う。だから、ヒロミさんにも勘違いされてはいけない。

 

 

「………ただの、友人です。……多分。」

 

 

「本当にですか?………それなら良かったです?アレレどうして私、躍起になっていたんでしょう?」

 

 

 ヒロミさんは、先程質問して来た数学の問題よりも悩んだ様子で頭上にクエスチョンマークすら浮かばせている様な感じだ。兎に角、彼女の誤解が解けて良かった。カナデさんは僕にとって大事な人だけど、恋人だなんて…………。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 そして、やって来てしまった。カナデさんとの約束の日。

 

 

 土曜日。休日の昼下がり。人でごった返す駅前にて時計塔を目印にして集合という約束。今時はスマホで適宜遣り取りも可能であろうに、待ち合わせを決めて落ち合うことになっていた。

 

 

 理由を聞いてみたのだが、

 

『女性との"デート"で、そんな事をするなんて野暮だぞヒカゲ』と言われてしまった。

 

 

…………デート、なんでしょうか。二人っきりで出掛ける訳だからデートになるのかも知れないけれど、カナデさんは尊敬する人物なわけで…。

 

 

「———ヒカゲ、待たせたかな?」

 

 

「ひゃっ!?」

 

 

 カナデさんに想いを馳せていた時に、声を掛けられた。そのせいで、妙な声を上げてしまう。

 

 

「うわぁ!?悪い。………急に声掛けちゃったから驚かせちゃったか?」

 

 

 どうやらカナデさんだったらしい。冷や水をかけられたような気分だけれど、ぼやぼやとしていた僕が悪いのだ。

 

 それにしても、もう約束の時間になっていたらしい。今日は人混みが出来ていたし、探す手間を掛けてしまったかも知れない。本来は男である僕が探すのだろうか………。

 

 

「じゃあ、行こうぜヒカゲ」

 

 

 あの日のように、カナデさんが僕の手を引いてリードしてくれる。僕に姉がいたら、こんな感じなんだろうか、と考える。弱気な僕をリードしてくれるお姉さん。カナデさんなら……。

 

 

 ヒロミさんとの会話や、カナデさんがデートという言葉を使っていたせいで何だか意識してしまう。

 今だって、普通に手を握って歩いているが女性と手を繋いでいるわけで。カナデさんの手は女性らしく長い指と柔らかな掌。そしてギターを弾くからだろうか、指先は少しだけ硬くなっている。

 

 

 意識すればするほど、ダメな感じがして来た。顔が熱い。今、僕はどんな顔をしているんだろうか。………バレてないといいな。

 

 

 

◆◆◆

 

 カナデに手を引かれて着いた先は、カフェでした。それも、店内は女性客ばかりで男性が居るには浮いてしまうような内装のカフェ。

 

 

「こ、此処に入るんですか!?」

 

 

 驚いて声を上げてしまう。明らかに僕が入るような場所じゃない。特定層の為の店という感じではないが、この空間に混じれるような気がしない。どう考えても無理だ。

 

 

「悪い、ヒカゲ!付き合ってくれないか?アタシだって一人じゃ、こんな店には入れないんだ!!」

 

 

 確かに、カナデさんもこの店の空気感とは合わない様な気もする。どちらかと言えばシックな店を好みそうではあるのだが、現在訪れた店はフワフワ?とした店だ。

 それでも、彼女だって女性なわけだから可愛いモノに惹かれるのは可笑しな事だとは思わない。寧ろ、彼女の意外な一面とも言えるだろう。

 

 

 カナデさんが一人で入れないと言うのなら、僕に出来ることは———。

 

 

「入りましょうか。カナデさんが来たかった所なら、僕も頑張ってみますよ!」

 

 

◆◆◆

 

 内装は、やっぱりファンシーというかフワフワだ。うん、フワフワという言葉しか出てこない。

 メニュー表を渡されて見てみたのだが、可愛いさを全面に押し出したようなレイアウトだった。パンケーキとかパフェとか、甘いモノばかりのメニュー表。

 

 

 当のカナデさんはページを捲って、戻してを繰り返している。どうやら、悩ましいモノがあるらしい。それでも、二択にまでは絞れているみたいなので提案してみる。

 

 

「もし良かったら、僕がもう一つの方を頼みますよ?それで半分っこしましょうか」

 

 

「———っ!?いいのか、ヒカゲ!?

 やっぱりヒカゲと二人で来て良かったよ」

 

 

 カナデさんは苺のパンケーキを、僕はブルーベリーのパンケーキを頼んだ。写真映えする盛り付けからか、周りの人達も写真を撮っている。

 そのおかげで、男性である僕がこの空間にいても然程問題視されていないようで安心した。彼女達は自分の世界に必死な様子で此方に視線が向くことも少ない。浮いていないなら、それでいい。

 

 

 ようやく届いたパンケーキを見てみる。

 何というかキラキラフワフワとしている。次に、自分で再現出来るだろうかと考えてみた。家では家事担当である性とも言うべきなのだろうか。店の料理を味わうと、つい自分で作れるだろうかと考えてしまう。

 

 

 パンケーキを二等分に切り分けて、自分の分を一口サイズ取り、口に運んで見る。酸っぱいブルーベリーのジャムと、生クリームが良く合う。…………この味は、僕では無理かも。

 

 

 なんて風に敗北宣言をしている内に、カナデさんが分けてくれた苺のも食べてみた。やっぱり自分では無理そうだと肩を落とす。

 どうやってこのフワフワ感を出しているのだろうか。スフレパンケーキなんて初めて食べたのだが、思いの外驚かされる。

 

 

 というか、僕って割と甘党なのかな?父と二人だと、この手の店に来ることもない。友人と言える人も、数える程しかいない。今日カナデさんと来れたのは、案外自分にとっても良い経験だったのかもしれない。

 

 

「———うん!!美味かったな、ヒカゲ」

 

 

 カナデさんも満足しているようで良かった。カナデさんも甘いモノが嫌いというわけではないらしい。

 以前、男みたいだ、と言われる事もあると話していたカナデさんだが、こういう所を見ると彼女にもカッコイイさ以外にも可愛いさなんかも持ち合わせているらしい。

 

 

 今日は、カナデさんの魅力をより知れるいい日だな、なんて。

 

 

◆◆◆

 

 次に訪れたのは服屋。ショップなのか、ブティックとは違うような?強いて言えばアパレルだろうか。本当に、女性と出掛けるような経験がなくてわからないな。

 母が生きていれば詳しかったのだろうか、彼女でもいれば詳しくなるのだろうか。それでも、僕は男なわけですから知らなくても咎められるようなことはないだろう。

 

 

 カナデさんは、服というよりも帽子にご執心な様子で、キャスケット帽を選んでいるらしかった。

 

 

「ご友人様も見ていかれませんか?」

 

 

 なんて声を掛けられる。

 彼女が、装いで店員だということが窺える。ここはレディース専門に扱っているショップだろうし、また女性と勘違いされてしまったのだとわかった。

 

 

「…………あ、あの僕、男なんです。

……………ごめんなさい。」

 

 

 店員は心底驚いたという表情を隠さない。一瞬苦笑いを浮かべたのだが、すぐに店員モードに切り替える。

 

 

「———失礼致しました、お客様。それでは彼氏さんが選んであげてはいかがですか?」

 

 

 次は彼氏。正直もう否定するのも億劫になって、愛想笑いを浮かべて済ます。

 

 

 まぁ、それはそうかとも思う。この容姿で、この店に来ているのなら女性だと思われるのも仕方ない。それが男だと言うのなら、彼氏以外では逆に怪しまれる。

 

 

「ヒカゲー!これどっちの方が似合ってると思う?」

 

 

 カナデさんなら、どっちも似合うと思う。きっと彼女なら格好良く着こなして魅せるだろう。でも、どっちも似合ってるなんて言うのは不粋なわけで、どちらかを選んであげるべきだ。

 

 

「………キャスケット帽の方が似合ってると思いますよ」

 

 

 それなら、こっちにするか。と言い残してレジの方に行ってしまう。着いて行くべきだった。一人でポツンと、相応しくない空間に残される。辺りを見れば女性しかいない。どうにも気恥ずかしい。手持ち無沙汰で、棚を眺めたりもしてみる。

 

 

「………見て、あの人。すごい綺麗。あの髪、染めてるのかな?」

 

 

 此方を見てヒソヒソと話しているような気がする。浮いてるもん、仕方ないよな。この空気感に馴染めるように振る舞えればいいのだが、イソイソとしているせいで怪しく見えるだろう。

……女装しているだなんて思われてなければいいのだが。

 

 

「悪い、ヒカゲ。また待たせちゃったな」

 

 

 早々に、カナデさんが帰って来てくれて良かった。そそくさと店を後にすることにした。

 

 

◆◆◆

 

「………もうこんな時間か。ごめんヒカゲ。付き合わせてばっかだったな。退屈だっただろ?」

 

 

 そうこうしていると、日が傾き始めていた。カナデさんといると、楽しくて時間が過ぎるのが早いなと思う。

 

 

「いえ、そんなことないです。僕もカナデさんと色んな場所に行けて、楽しかったです。貴重な体験もできました」

 

 

 これは本心。カナデさんと居るのは心地よいのだ。最近は、生活にも心にも余裕が出来てきて、純粋に楽しめることができた。今日も、カナデさんと遊べて心が軽くなった。本当に彼女には救われている。恩を感じる程には。

 

 

「それなら良かったよ。今度は、ヒカゲが行きたい所に付き合うから、また"デート"行こうぜ」

 

 

 改札口で、そんな事を言われて赤面してしまった。耳が熱い。

 ………そうだ。カナデさんは当初からデートだと言っていたんだ。僕も男なわけで、嫌でも意識してしまう。カナデさんって意地悪なんじゃないかな?

 

 

「じゃあ、またな。照れ顔、可愛かったよ!」

 

 

「———〜〜〜っ!?」

 

 

 カナデさんは、それだけ言い残して改札へと消えて行ってしまった。

 

 

 やっぱりバレてたんだ。夕陽に照らされて分からないモノだと踏んでいたのだが、バレバレだったらしい。さっきよりも顔が熱い。手で覆っても、耳が赤くなって周囲にも悟られてしまうだろう。とんでもない置き土産だ。

 …………思った通り、カナデさんって意地悪なのかも。

 

 

 

 それでも、カナデさんと過ごす休日は楽しかったなと笑ってしまった。

 

 暗くなる前に家に帰ろう、と踵を返した。

 

 

 

 

 この時、緋影千尋(ヒカゲチヒロ)は考えてもいなかった。

再び、ドン底に落とされるような辛酸を嘗めることになるなんて。

 

 

 

 

 




気づいた方もいるかも知れないですが、ヒメミヤさんのイラストを一新しました。エロ漫画みたいな乳袋になってますが、気にしないで下さい。
見なくてもいいです。
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