ハメで文書いてると稀に誤爆するし
ダラダラバラ上げるのもアレだから
始めからまとめといた。
たぶん一話完結で~1万字までの
内容は基本暇な人向けである。
カナ速、エレ速にたまにあったような
ちょっともっさりした短編集な感じ。
とりあえず、さなコン2で投下。
「第2回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト」
2022年4月28日(木)〜2022年6月5日(日) 23:59
[公式リンク先]
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17477636
なお指定ワードは文頭 or 文末に
「そうして人類は永遠の眠りについた。」
といれる事である。
【挿絵表示】
さなコン2用テスト投稿1
今回は簡単なSF童話である。
そうして人類は永遠の眠りについた。
――いつか訪れる夜明けを信じて。
「ねぇ。神様っているのかな?」
白魚の手のように白い手の女性。彼女は透明度の高い手に背面の冷蔵庫を透過させながらその戸を開いた。彼女は衣類を身に着けていない。しかし、ソレは人のソレと違い平坦に紙で作られた人型を思わす程度の造形をしている。
それは。
それは彼女が、彼女を忘れてしまったことに起因していた。赤苔る大地は氷に包まれ、光のない世界に棒人間たちが大地をさまよう。彼、彼女らが自らの本当の形を覚えている者はいない。
太陽は思いのほか早く膨張した。
外的要因。
あるいは神の癇癪か。
だが幸か不幸か人類に猶予があった。地球の公転軌道は従来の物より大きく膨らみ、緩やかに太陽系から“家出”を始めたのだ。太陽が急膨張を始めた際に放出されたEMPは地球全土ならず周辺宙域の人口施設をも一瞬で飲み込んだ。
太陽系間を移動する程度には科学力を誇示できるほど人類は進歩していた。だが、ささやかな電磁津波は一波に留まらなかった。膨大な数のプラズマ光球は人魂のようにうろつき大地を次々焦がしていった。誰かが言った。まるで天罰だと。
信心深い人間が善行を積めばいつか天国が何処かから下りて来るらしい。だが、科学の傲慢さが神を忘れさせ、私欲のためだけに他星系にまでその手を伸ばしたため神罰が下ったのだと。だからこの世に地獄が顕現したのだと。
「また、バベルの塔の話かい?」
人間が人間の形を保っていた頃に盛んにこの世界で交わされた話だった。人類は選択を迫られた。持てる全ての技術を導入して惑星間移民船団を作るか、このまま地球の家出に付き合うか、を。神は猶予をくれたらしい。太陽の膨張よりも地球が離れていく速度のがはるかに速い。
だが、近々大惑星の重力バリア群を抜け奇しくもカイパーベルトに突っ込むらしい。大規模な交通事故が起きる事だろう。新たに船団用構造物を地表に作る事は困難を極めた。さらに数年以内に地表が凍結を始め、永久凍土が地球上を覆い尽くすと結論が出た。
これは彗星に動力装置を付け、意図的に複数回スイングバイさせて水源を宇宙基地のために空間漂流で確保していたことによる。神のいかづちにより氷塊は一斉に爆散。地球に水が降り注ぎ、いくつかの宇宙戦艦がノアの箱舟のように人々を救った。
大地は海に沈み、残る地表もプラズマに焼き尽くされた。そこまでが、棒人間たちがわずかに覚えている数億年前から続く記憶だ。この暗く凍結した世界にうごめく棒人間たちの。
「だって、気にならない?」
棒人間たちの探検隊一個分隊は暗闇の中わずかに見える人の名残を発見した。光こそ無いものの、彼、彼女らの生活は快適そのものだった。何より、容姿種族によるいさかいが途絶えたことにある。全ては透き通る棒人間なのだ。
あるいは、性別も超越しているのだろう。棒人間たちはその日の気分、状況により、彼にも、彼女にも変わるのだ。だが棒人間たちの制約は多い。人間体を忘れてしまったことにより、使えるものがほとんどなくなってしまった。
しかし、彼らは腹が空くこともなく死という概念すらなくなった。永遠に個体数が増えることもなく、減る事もない。そもそも会話すら必要としない。動く意識体たちが直接空間交信をしている。
冷蔵庫の内側にはさび付いた缶がいくつか残っていた。一人が缶を手に取り、手の上で左右に転がす。コロコロ、コロコロ。それは何か懐かしい感じがした。それは、飲み物だろうか。食べ物だろうか。記憶の隅に頭痛が走る。だが不思議と欲求が生まれなかった。
「何もないな。行こう」
一人が首を振りほじくり返した凍土の穴から顔を出した。氷の上にはペンギンのようにワラワラと棒人間が歩いている。棒人間たちに関心はない。あるいは人の持つわずかな心も消え失せてしまっているのか。
会話のないものは100年くらい平気で接触してこようとせず、ただブラブラと夜空の下を歩いている。彼らが気が付いた時にはすでに棒人間だった。それでも正史を知る者は多く、彼らの出現当時は盛んに過去の調査が行われた。
人類は地下に身を潜め今なお眠っている。
そして我々はエーテル体、すなわちゴーストのようなものになっている、と。
それが定説だった。
「しんどいなぁ」
探検隊は地球全土で動き回り“実家”を探す旅は延々と続けられた。だが凍土の下の大地には容易に到達することがかなわず、凍土から突き出る、ビルの名残のような構造物の表面の氷を掘る事がせいぜいだった。文明は確かに存在していた。
足の下の廃墟を思う事で彼らは安心し、次第に関心が薄れていった。そして遊星がボイドを抜ける間に彼らの心は次第に摩耗したのだろうか。依然情熱を持ち続ける探検隊は、干物になったただの棒たちにああはなるまいと憐れみを向ける。
「しんどい、しんどい」
探検隊たちは手をガツガツと氷にぶつけて別の穴を掘り始めた。数日、数カ月、あるいは数年。今を知るすべはないため永遠とも思える時間をただひたすら穴掘りに費やす。肉体的苦痛はない。口々に文句を言っているのは自分を忘れないためだ。
星一つ見えない夜空でモクモクと棒人間が氷の中に身を沈めていく。別の棒人間がバケツリレーのように犬かきで氷の残骸を必死に掻きだしていく。大きなモグラ穴が出来ると別の施設に辿りついた。
「ねぇ、神様っていると思う?」
「さっきも聞いたよ」
施設側面の氷塊に完全に同化しているガラスを蹴破ると内部も氷の塊だった。残念なことに内部が完全に水没してから凍結したのだろう。また宿泊施設のような場所だったようだ。だが不思議と、人間のいた名残は感じられない。
この星に動植物の“ご遺体”は見つからない。
氷の遥か上層部しか掘削していないからということもあるだろうと、棒人間は安心するかのように自問自答する。棒人間たちが自らの姿を忘れた原因でもあるのだろうと。だが、思い出してどうなるのか。きっと何も変わらない。
「おい、アレは何だ?」
別の一人は数百年ぶりに口をきいた。彼の手が刺す方向には光が小さく明滅していた。それはあまりにも衝撃的で全身がグラグラと揺れる。忘れていた光の波動にカラダが軋む。あるものは顔を覆い、あるものはひざを折り祈った。
だがそれだけだった。
僅か数秒後にソレは消えた。
「なんだろう、神様かな?」
「あれ、何だっけ」
記憶の彼方の光に触れ、全身がチリチリとざわめく。だが数日そうしていると、足に氷が張り始め急いで施設を後にした。
棒人間たちは氷の上を歩き、探検隊もしばらくその群れに加わった。周囲は誰かが掘った穴で凸凹している。結局誰も下層にはたどり着けないのだ。あるいは人知れず氷に同化されているかもしれない。そうなれば動くこともままらなずただの棒になるだけだ。
道を行けばモコモコ氷が盛り上がっていく。モコモコ、モコモコ。棒人間のすることと言えば、チャットか穴を掘ることぐらいだ。氷の中にたまに棒人間を見つけるが、すでに返答が無い者も多く、そのまま放置されることもしばしばある。
「お、たすかったよ」
数百年ぶりに数体の棒人間が氷の中から氷ごとポイポイされて出てきた。穴掘り隊に礼を言うと、彼らは当てもない旅路についた。うかうか歩みを止めると近所から排泄されたかき氷に足を固められる。棒人間は今日も明日もブラブラ歩き続ける。
「あらら、なにしてんのあいつら」
雪原のような水平線の彼方に棒人間がワラワラ密集してピラミッドになっている。下を目指していた探検隊が上を目指し始めたようだ。自転がゆるやかになり高重力となったが彼らにはその概念は乏しい。
「神様に会いに行くのかな?」
「そればっかりだな」
数人の探検隊で構成された棒人間チームはピラミッド状に塔の如く縦に連なる棒人間を見上げる。何やら昔はやった陰謀論を調べているらしい。何度も試みたが結局人数が足りずに諦めた行為だ。実はここはドームの中なのではないかとの。
地球はくまなく周回したため実にバカバカしい話だ。だが、同じ場所に戻る事さえ困難を極めるため、実のところ小さな世界を生きているかもしれないと言われれば、それは大きな疑念になる。氷から顔を出した棒人間たちが足場を固める。
棒の塔が氷にコーティングされながら上へ上へと成長していく。数年、数十年。棒人間たちはただ上を目指した。高く高く。探求心を呼び起こして。結果は分り切っている。何もない、だ。探検隊たちは何十年か眺めたあと、再び氷に潜り込む。
だが、歓声が上がった。声の濁流が世界に広がる。
「ひかり、あれ」
探検隊の一人が虚空に手を伸ばす。
光にすがる亡者のように。
空の彼方の世界に小さな光点が見つかったのだ。探検隊は氷の柱を上り空を目指した。彼方に小さな銀河の明かり。長い長い時間をかけ地球はボイドを抜けつつあった。だが、氷柱は光に恐怖し崩れ落ちた。ドカドカと地面に氷が落ちる。
棒人間たちは恐怖し穴を掘り始めた。
周囲にモコモコ。次々かき氷の山が出来上がる。光が次第に強くなっていく。穴たちは大きく深く広がっていった。だが、氷には光を遮る力が少なく、銀河の光は次第に鋭く細く氷に染みわたっていく。ゆっくりとだが、確実に地球が回り始めた。
世界が回る。クルクル、クルクル。
それは彼らにとって恐ろしい早さであった。銀河が見え隠れし時間という概念が取り戻されたのだ。穴は掘れているのだろうか。いや、とうに埋まってしまった。棒人間たちは氷の中に閉じ込められた。長い長い牢獄。さながら地獄のように。
やがて銀河はライトのように世界を明滅させた。棒たちは全身に光を浴びカラダを震わせる。多くの棒が意識を取り戻した。見えたものが見えなくなり、見えないものが見えるように変わっていく。次第に光の数が増え、さながら夜明けを思わせる。
漆黒の空に光が取り戻された。
緩やかな時間の進みは突然にして終わりを告げる。地球は再び交通事故を起こした。大きな火の玉が降り注ぎ、いくつかの氷面を大陥没させる。表層を解け出た海が支配する。棒人間たちは流された。チリジリになり流された。
地球は回る。クルクル。クルクル。
何かと衝突した衝撃は地球の動きを大きく変えた。大地が割れ、大地震と共にマグマが噴出する。凍土の深部に巨大なプールが出来上がる。やがて永久凍土は内部から崩壊した。水たちは空に手を伸ばし、竜巻のような姿で凍り付いていく。
時間と共に再び大地は氷一色の世界へと戻った。
「ねぇ、みんないる?」
「ああ、しばらくぶりだね」
世界に大きな棘が生え、地球はさながら子供の描いた太陽のような姿になっていた。棒人間たちは凍結した地表を歩く。ワラワラと。時折地の底から地震が来るが、世界は前よりも明るかった。氷層で作られた大地はいびつに形を変えた。
大地に近い氷の窪みに棒人間たちは集まっていた。次々集まり穴を掘る。光が照らすため氷に閉じ込められた別の棒人間を拾いだすことが容易になった。複数の銀河団の光が世界の全てに夜を忘れさせた。棒人間たちは掘り続ける。
そして大地に付く前に、内部に取り残された海に滑り落ちた。
「あれれ、また流されるよ」
流され、流され、気づけば氷の上に戻っていた。
「あれ、前もやってたっけ」
棒人間たちは穴を掘り続ける。暗闇だけが広がる世界で。氷の世界は真っ平になっていた。探検隊は再びモコモコとかき氷の山を作り続ける。穴の奥から氷が吐き出される。たまに、氷に埋まった棒人間もポイポイされて出てきた。
「そうかもしれないなぁ」
地球は再びボイドの中心へ入り込んだ。世界は漆黒で塗りつぶされた。定期的に棒人間たちはタワーを作り、時折探検隊たちもそれに参加した。しかし結果は空に何もなく、気づけばタワーが崩れていた。
「あれ「¥、・@:、」
「。、;:4:@」
しかし、世界に異変が生まれた。言葉がわからなくなってしまった棒人間たちが空に向かい氷を投げ始めたのだ。雪合戦のように。ポイポイ、ポイポイ。おむすび大に固められた雪は空に向け投げ捨てられる。しかし、すぐに落ちてきてしまう。
「ねぇ?」
「ああ、そうだね」
バベルの塔は高く高くそびえ立つ。棒人間たちは一丸となって一つのタワーに集結した。やがて、小さな。あまりにも小さい氷の粒が、地球に尾を引かせるようになった。棒人間たちはタワーの頂上で氷玉を投げ続ける。
氷玉が落ちてこなくなるほど高い頂上へとバケツリレーのように手渡しで送られていく。新しい何かは新鮮だった。忘れていた感情が棒人間たちの内部になにかの熱さを思い出させた。
ポイポイ、ポイポイ。
地球には少し氷が多すぎたのだ。彼らの企みは僅かずつ実を結び、やがて地上の氷は減少した。
「氷は減りましたか?」
「いいえ、まだですね」
ポイポイ、ポイポイ。
ポイポイ、ポイポイ。
地球は少しずつ小さくなっていた。
小さく、小さく。
どれだけ投げられるかな?
いいやまだまだ。
「ようこそ地上へ」
棒人間の一人が片手を上げた。
大地の一つに辿りついたのだ。
しかし、それは記憶にある物とは程遠かった。度重なる交通事故が彼方に残る記憶と異なる大陸を作り出していた。さて、お家はどこにあるのだろう。棒人間たちは新たな穴掘りを始めた。地面は草木一本ない石ころだらけだった。
穴を掘れば土砂崩れ。
大地に着けば構造物が無くなってしまっていた。右も左も岩だらけ。岩がゴロゴロ。小石がコロコロ。氷も水もどこへ消えたの?棒人間はあるきます。ただひたすらに。
「神様いないね」
「ああ、また君か」
水も氷も地球が飲んでしまったようだ。変わりに湯気立つ赤い川が流れている。地面がオレンジに発光している。右も左もオレンジ、オレンジ。
棒人間は赤い川に流されました。
何処まで行くのかな?
ドンドン、ドンドン流されて。
ドンドン、消えていく。
「ねぇ、聞こえる?」
「いいや、聞こえないよ」
地球は迷子になりました。
赤い尾を引きながら
泣いているのかな?
「神様がいるとしたら」
棒人間たちは岩石の中を進みます。
トンネルになった赤く火照る石のトンネルを。
トクトク、トクトク当てもなく歩き。
トンカン、トンカン穴を広げます。
「もうあいさつ変わりだね」
暗く深い虚空の海で。
けれども、そこは暖かいのです。
「あたたかい?」
「そうなのかもね」
それはまるで暖炉の前で寝ているかのように。
ジリジリ、チリチリ。
パキッ
「ねぇ、それで棒人間たちはどうなったの?」
大人の腹ほどにしか背丈のない少女は、暖炉の前で居眠りを始めた老婆を急き立てた。暖炉の内部で薪が煌々と光り、大きく音を出し割れた。老婆はカクと首を起こすと目を覚ました。だが老婆は黙して語らない。
ゆったりと時間が流れ、少女は言葉を待った。乾燥し、ひび割れた唇で何か言おうと口を開く。老婆は背もたれるロッキングチェアをゆっくり揺らし、キィキィと木造の床からしなる音が伝う。
心地よい静寂に色を添える。
「神様がいたとしたら」老婆はゆっくりと椅子を揺らす。傍らにある木製の大きなマグカップを手に持って。「坊やが神様ならどうするの?」老婆は大木のようにシワの入る顔で。しかし、慈しみ深く少女に尋ねた。
「きっと助けるよ」
暖炉に強い火が生まれ、少女のダークブルーの瞳を強く輝かせる。それはとても強くたくましい。老婆はきっとそうさね、と言葉を返しマグカップにスティックを差し込む。
少女は日の昇る白銀の世界へ躍り出た。両手を広げくるくると回る。チェック柄のスカートがヒラヒラと広がった。老婆はガラス越しに少女を眺めた。老婆がいくつか思い描いた結末は、どれも少女の願うソレとはかけ離れていた。
時に知恵とは、フールを生み出す呪いなのかもしれない。
少女は屈託のない笑顔で枝を遠くに放ると、パピーと雪の光る箱庭でじゃれている。少女は枝を投げ、パピーは勢いよく追いかける。
老婆はマグカップに浮くいくつかの球形のフルーツを、どこか寂し気な瞳で眺めた。大きなマグカップの中でフルーツ達は公転運動を始めた。老婆はレースのカーテンを引くと、ささやかな暗がりの中、魔女のような重々しい表情でそれらを咀嚼しながら飲み下す。
神様はセイジには見えないのかもしれない。
マグカップの中にはスティックと、いくつかの吐き出された種だけが残っていた。
- The End -