音程式/no!se hacker   作:RPM

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intro

 

 

3月半ば。

 

年度の変わり目が近付き、

そろそろ赴任して一年が経つ。

 

(シャカールが音楽とはねぇ・・・)

 

トレーナーの男、芥瀬流貴(あくたせるき)は考える。

 

自分が担当しているウマ娘達の中では、

頭脳明晰かつ何事も数字を中心に考える彼女。

 

そんなシャカールが音楽にハマり、

作曲までしているというのは意外だった。

 

何故なら音楽というのは同じ譜面・楽譜でも、

演奏者のクセやアドリブ、アレンジで変わる。

 

さらに聴き手によっても、

それぞれ心地よく感じる部分が違う。

 

つまり、明確な答えが存在しないのだ。

 

音楽に限らず、芸術という物には答えがなく、

決まった解に至る式を導き出す数学とは、

ある意味対極に位置する物である。

 

(何かアイツも抱えてるモンがあるんだろうな)

 

シャカールがチームに入って来た時を思い出す。

レースは数字のカタマリ。そう彼女は言っていた。

 

確かにそうである。

 

流貴も走りの世界で名を馳せた人間であり、

色々あってこの世界に来たのだ。

 

ラップタイム、区間タイム、

パワー、トルク、スピード、

路面温度など。

 

さらにデータロガーでは、

各コーナー毎のアクセル開度など、

細かいデータが出る。

 

確かに数値がモノを言う。

 

しかしそれに乗るのは人間であり、

数字だけでは割り切れない部分もある。

 

自分の脚で走るウマ娘のレースもそうであり、

気合いや根性に左右される事もある。

 

自分の中に生じた矛盾や葛藤の、

捌け口として音楽を始めたのだろうか?

 

(だからこそ刺さるんだろうな)

 

名門校たる中央トレセン学園にも、

一部グレた不良ウマ娘達が居る。

 

そういった者達にシャカールの音楽は人気だった。

 

(流行は巡る。いつの時代も変わらない物がある)

 

かつて自分が産まれるよりも前の時代には、

「盗んだバイクで走り出す」というワードや、

髪を激しく盛ったヴィジュアル系バンドが、

一世を風靡している時代があった。

 

流貴の学生時代には彼らに影響された

「ネオヴィジュアル系」

と呼ばれるバンド達が人気だった。

 

(思春期にありがちな事だよなぁ)

 

気になっているのは、

何故裏名義で活動しているのかという所だ。

 

(色々吐き出したい物はあるが、

自己顕示欲からでは無いって事か?)

 

シャカールの裏名義!monad(モナド)

 

アイコンと、

シャカールのPCに貼られている、

数式のステッカーが似ている事から、

ごく一部の者は気が付いているようだ。

 

しかし一方、

流貴が正体ではないかと思う者も居る。

 

彼は元バブリーランドスタッフ。

 

レーサーになる前の走り屋時代、

時給が良かった事や音楽が好きな事もあり、

演奏スタッフやウェイターのバイトをしていた。

 

その情報が常連客のマルゼンスキー等、

一部のウマ娘から学園内に広まっていた。

 

しかし微妙に音楽性の違いがある。

 

シャカールが得意とするのは、

テクノポップやヒップホップであり、

作曲や既存曲のリミックスも行っている。

 

流貴はデジロックやロック、

メタル、ユーロビート等。

演奏経験は豊富だが作曲はしていない。

 

(別に俺が影武者やってたって良いが)

 

それが本当に彼女のためになるのだろうか?

 

思春期の感情は、若さと相まって爆発する時がある。

 

流貴の場合はバイクやタバコ、

バイトとはいえ演奏もいい発散になっていた。

 

しかしシャカールはどうだろうか?

 

近寄りがたい見た目に反し面倒見が良く、

同室のメイショウドトウのフォローや、

ファインのラーメンの食べ歩き等にも、

度々付き合ったりしている。

 

好意でやっている事ではあるが、

人間関係においてそういった関係は、

必ずストレスを生む。

 

何かしらのガス抜きが必要なのだ。

 

(子育てとは違うけど、

面倒を見る側ってのはね)

 

流貴もどちらかといえば世話焼きで、

トレーナーになる以前も走り屋仲間を、

部屋に泊める等していた。

 

(何かきっかけがありゃ良いんだが・・・)

 

 

____

 

 

トレーニングが終わり娘達を寮に送り、

ボンネットに座っていつもの一服。

 

トレーナー寮も喫煙可能ではあるが、

壁が汚れると掃除が面倒なのでここで吸っている。

 

するとそこへ、

 

「やぁ、トレーナー君。こんな所で一服かい?」

 

生徒会長である7冠ウマ娘。

"皇帝"シンボリルドルフがやって来た。

 

「いきなり会長殿のお出ましとは、

俺何かやらかしたかな?」

 

流貴はまだ一年目のトレーナーであり、

立場上はシンボリルドルフの方が上である。

 

しかし彼女も一生徒であり、

かしこまられ過ぎるのを悩んでいる事や、

ダジャレを好むという噂を聞いていた。

 

そのため彼女の前では軽口を叩く。

 

「いや、君の力を借りたくてね。」

 

「ん?」

 

話を聞いてみると、

毎年年度末に行われるダンスパーティー。

 

「リーニュ・ドロワット」にて、

演奏を頼みたいとの事だった。

 

 

 

 

 

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