ルドルフから詳しく話を聞く。
「リーニュ・ドロワット」とは、
毎年年度末に行われるダンスパーティー。
卒業を迎える生徒達にとっては、
門出を祝い、有終の美を飾る舞台。
また新入生達にとっては、
一年を無事に終えられた。
祝いの舞台でもある。
本格化やデビュー前ならともかく、
デビューした以上は戦績を残す必要がある。
場合によっては退学となってしまう。
今回は新たな試みとして、
ステージを盛り上げるDJタイムが検討され、
現状何名かに出演オファーをしている状態だ。
「結構な大役じゃねーか、
そんなのを新人トレーナーの俺に?」
「確かに君はトレーナーとしては新人だが、
色々と我々に貢献してくれたじゃないか。」
「半分は趣味でやってるようなモンだけどな。
それが結果役に立っただけの話だ。」
「なら今回も趣味と実益を兼ねればいい、
是非ともお願いしたい。」
「会長にそこまで言われちゃあな。
ただイベントの模様が分からないと困る。
「ありがとう、後で例年の動画を送るよ。」
「んじゃあPCのメールアドレス教えとく。」
「了解した、ところでトレーナー君。」
「ん?」
「!monadはキミか?」
「・・・答えを知ってて、
人を試すのはどうかと思うぜ?」
「ふふっ、念のためだよ。」
「正体がシャカールなのは、
アイツのPCとアイコンの数式から、
気が付いてるヤツも居るようだな。」
「キミとしてはどう思うんだ?」
「裏アカなのは引っかかるが、
無理に引っ張り出すのも違うだろ。」
「どういう事だ?」
「俺は音楽ってのは読んで字の如く、
音を楽しむモンだと思ってんだ。
上手くそそのかせりゃ良いけどな。」
「なるほど、ありがとう。
当日を楽しみにしているよ。」
「あ、ちょっと待って。」
「?」
寮の部屋から何かを持って来た流貴。
広げてみると、
文字の書かれたTシャツだった。
「音ズレの訪れ・・・。ぷっ、あはは!」
「そういうの好きって聞いたからさ。」
「ふふふっ、ありがとうトレーナー君。」
____
夜。
それぞれの部屋でPCを操作する、
流貴とエアシャカール。
(ふむ、ペアダンスが基本になるのか。
とはいえ今回DJを導入したって事は、
新しい流れを作りたいって事なのか?)
それならば自分の得意とする、
デジロックやテクノで攻めてみようと考え、
今までPCに取り込んだ曲のリストを起動する。
(持ち時間が決まってる訳じゃないようだが、
だいたい15分~20分、3~4曲って所か。)
マイクにエフェクターを噛まして歌うか、
全曲インストゥルメンタルにするかも考える。
(あ、そうだ。)
ドロワ本番まであと半月ほど、
演奏の練習場所も確保しなければ。
学園の音楽室等も使えなくはないが、
大人が出しゃばるのも違うだろうと考え、
生徒達に明け渡すつもりでいた。
『もしもし。今大丈夫か?』
『珍しいっすね、どうしたんですか?ルキさん。』
バブリーランドでバイトしていた伝手を使い、
営業時間が終わった後にブースを借りる事にした。
一方その頃、シャカールとドトウの部屋。
(音楽はリセットするためのモンだった、
作曲は頭ン中のノイズを消してくれる。)
しかしいつの間にかファンが付き、
シャカールの音楽をきっかけとして、
プロデビューをした者も居るらしい。
(DJなんてガラじゃねェ、そういや、
アイツの所にも来てンのか?)
自分の担当トレーナーの男も、
バイトとはいえ音楽に関わりの深い人間だ。
彼にオファーが来ているのか、
念のために確かめる。
カタカタ・・・カタカタ・・・タンッ!
(そういやアイツのPCに、
学園のサーバーに侵入し、
全生徒の身長や体重、体格等の、
データを持っている彼女。
個人のPCに侵入するなど容易い事だ。
(やっぱり来てンな・・・)
メールのやりとりの履歴からドロワの映像、
そして今彼が開いているのが音楽のリスト。
それだけ分かれば十分だった。
「あの~シャカールさん、
そろそろ消灯時間ですぅ~。」
「あァ、消しとく、おやすみ。」
(なんかちょっとだけ動作が重くなった?
いや、気のせいか?)
少し考えて、仮定する。
恐らくシャカールだろう。
(俺がDJをやる事でどうなるかは分からんが、
ああいうのは言葉より行動で示した方が良い。)
(俺達は和音が共通言語なんだから、な。)