近付いて話しかけてきたのは、
鋭い顔立ちが特徴的なウマ娘。
学園内の不良ウマ娘達の纏め役、
シリウスシンボリだった。
「あのDJの男、アンタのトレーナーだろ?」
「だったらなンだよ?」
「アンタはこのままで良いのか?」
「・・・話が見えねェな、
さっさと要件を言いやがれ。」
「アンタもDJ頼まれてんだろ?
トレーナーにデケぇ面させたまま、
終わるようなタマなのか?」
「アンタに関係ねェだろ。」
「!monadは、その程度かよ?」
「!!どうして知ってンだよ?」
「意外と素直じゃねぇか。
アンタのPCと!monadのSNSアイコン、
同じ匂いがするってだけの勘だがな?」
「・・・。」
「返事をしてねぇのか?
それともビビって断ったか?」
「それを知ってどうなるンだよ?」
「半端者はムシが好かねぇんだ。
うだうだ迷ってんのが一番だせぇ。
アンタだって分かってんだろ?
迷ってる時間が一番ムダだってな。」
「アンタも面倒くせェヤツだな。
それともアンタもオレのファンなのか?」
「さぁな。大事なのは、
アンタは選ばれ、呼ばれた。
が、それに応えてねぇって事だ。
選ばれし者なら応えてやれよ。」
「・・・分かンねェな。
どうしてそこまでして、
オレを引っ張り出そうとすンだ?
アンタに何の得もねェだろうが?」
「さっきも言ったが、私は半端が嫌いだ。
!monadが半端者じゃねぇってんなら、
今ここで決断し、証明して見せな。」
「衣装がねェよ。
このまま晒しモンになれってのか?」
「全部こっちで準備してやるよ。
アンタは曲の用意だけしてろ。」
「・・・しょうがねェな。
アンタのセンスにゃ期待してねェが、
このまま出るよりゃマシだ。」
____
その頃、駅前にたむろしていた、
シリウスの取り巻き達。
「ん?シリウス先輩からLANE?
って?っえ!?マジ!?」
「何何!?ヤバいヤツ?」
「言われた物買って、
シリウス先輩の部屋行くよ!
ドロワに乗り込まなきゃ!」
from:シリウス
『ドロワに!monadが出るぞ。
身長165~170対応サイズのジャケット、
アクセサリー、それと何かツラ隠せる物。
後で金渡すから見繕って買って来い。急げ!』
____
「さぁさぁ盛り上がって参りました。
DJヘリオスさん。テンアゲをありがと~う。」
「DJタイムも終盤ですが、
皆さん盛り上がってますかー?
ここからは謎のDJが飛び入り参加です。
ん?えーと?これ!マークは読まない?」
「コホン、失礼しました。
!monadさん!カッ、マッ、セッ~!!!」
姿を現したシャカールは、
ブルーバイオレットのニットキャップ、
ライトブラウンのサングラスで顔を隠していた。
パープルのジャケットに、
カッパー色のアクセサリーが映える。
mag!c number
By:!monad/Air shakur
始まりはゆったりとした、
爽やかなシンセサウンドの演奏。
しかしすぐにエフェクターの効いたツーバス、
ディスクやパッドを叩くサウンド、ノイズ、
様々な音が加わりキレを増し、BPMが加速する。
(・・・どうしてオレはここに居ンだ?
アイツらに当てられちまったか?
誰かの答えにノるなんてロジカルじゃねェ。
結局はオレも、誰かをノせてェのか?)
(元々音楽は好きだった。
作曲を始めたのは好みの音を作って、
頭ン中のノイズを消したかった。
別に聴いて欲しかったワケじゃねェ、
ただ記録として残しておいた方が、
次聴きてェ時に楽に探せるってだけだ。)
スクラッチで転調しサビに入る。
エフェクトだったノイズが前面に押し出される、
ダイナミックなパーカッションはまるで別の曲が、
カットインしてきたかのような錯覚を覚える。
そのサウンドはさながら、
隠していた本音が爆発するかのようだった。
(ワアアァァァァァー!)
「この曲最っ高!もっとカマして~!」
(!・・・もう考えンのは辞めだ!
思い出なンて生温ィンだよ!)
(テメェら全員まとめて、
前後不覚になるまで酔わせてやンよ!)
(
その様子を隅から見る流貴。
(イヤイヤな雰囲気だった割には、
楽しそうなツラしてんじゃねーか。)
シャカールの言っていた事を思い出す。
「本当に美しいプログラムは、
目立たずに機能するモンだ。」
ロジカル・デジタル思考な、
彼女らしい言葉だと思った。
(だけど俺達はプログラムじゃねぇ。
割り切れない事だってあるんだ。)
(だから時々はそうやって、
本音をぶつけて爆発してみろ。)
元々音楽家、ミュージシャンとは、
音楽に言葉を乗せて伝える詩人でもあるのだ。
インストゥルメンタルの音楽であっても、
和音が言語の代わりになる。
(言葉には国境があるけど和音に国境はない。
音で繋がる世界。考えようによっては、
凄い素敵な事じゃないか。)
(さて、俺の役目はここまでかな。)
会場を見に来たルドルフに会釈と、
アイコンタクトを送り会場を後にした。
(来年は、踊る相手が居ると良いな。)
サブタイトルはシャカールの由来になった、
アメリカのラッパー2PAC「Better Days」から。