『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝(改訂版)   作:ドラゴンネスト

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ショットライザーから放たれた弾丸が狙い違わず二体のゴーレム騎士の頭部、正確には目の部分を撃ち抜く。

衝撃で頭部が吹き飛び後方へ倒れる騎士達。これがゴーレムで無かったらグロテスクなことになっていただろう。それを軽やかに飛び越えて後続の騎士達がハジメ達へと迫る。

ハジメは、再度連続して発砲し、致命的な包囲をされまいと隊列を乱していく。

 

そんなハジメの嵐のような銃撃を盾と大剣と多くの犠牲となった仲間達の体で凌ぎながら、遂にハジメ達の目前へと迫った数体の騎士。

 

「おいおい、近づくならオレを忘れんなよ」

 

そんな騎士達に対してライダーの文字の複眼を輝かせながら京矢の変身したバールクスが無慈悲に剣を振るう。

仲間を盾に銃撃を凌ぎながら進んだ場所はバールクスのキルゾーンの内だった。バールクスの振るう剣によりその体をバターの様に切り裂かれていくゴーレム騎士達。

そのスペックはグランドジオウが召喚した平成ライダー達を余裕で一蹴するだけの力を持つバールクスに高々ゴーレム達が及ぶ筈がない。

ヴィランのボスに挑む騎士達の構図は何方が悪役なのか分からない構図だ。

 

数で押し切ろうとでも言うのか、槍を構えたゴーレム騎士達数体が突撃をしてくる。

 

「剣掌っ!」

 

だが、バールクスの剣より放たれた気刃は槍が届くよりも先にゴーレム騎士達を纏めて両断する。

彼のキルゾーンは正に斬撃の結界。首を晒した死刑囚の首を刈る刑場だ。

 

そして、そこに居るのはバールクスだけではない。青みがかった白髪をなびかせ、超重量の大槌を大上段に構えたまま飛び上がっていたシア・ハウリアのキルゾーンだ。限界まで強化したその身体能力を以て遠慮容赦の一切を排した問答無用の一撃を繰り出す。

 

「でぇやぁああ!!」

 

気合一発。打ち下ろされた大槌ドリュッケンは、『ドォガアアア!!』と言う凄まじい衝撃音を響かせながら一体のゴーレム騎士をペシャンコに押しつぶした。

一応、騎士も頭上に盾を構えていたのだが、その防御ごと押しつぶされたのだ。

 

地面にまで亀裂を生じさせめり込んでいるドリュッケン。渾身の一撃を放ち、死に体となっていると判断したのか、盾を構えて衝撃に耐えていた傍らの騎士が大きく大剣を振りかぶりシアを両断せんと踏み込む。

 

シアはそれをしっかり横目で確認していた。柄を捻り、ドリュッケンの頭の角度を調整すると、柄に付いているトリガーを引く。

 

『ドガンッ!!』とそんな破裂音を響かせながら地面にめり込んでいたドリュッケンが跳ね上がった。シアの脇を排莢されたショットシェルが舞う。

跳ね上がったドリュッケンの勢いを殺さず、シアはその場で一回転すると遠心力をたっぷり乗せた一撃を、今まさに大剣を振り下ろそうとしている騎士の脇腹部分に叩きつけた。

 

「りゃぁあ!!」

 

そのまま気迫を込めて一気に振り抜く。直撃を受けた騎士は、体をくの字に折り曲げて、まるで高速で突っ込んできたトラックに轢かれたかのようにぶっ飛んでいき、後ろから迫って来ていた騎士達を盛大に巻き込んで地面に叩きつけられた。

騎士の胴体は、原型を止めないほどひしゃげており身動きが取れなくなっているようだ。

 

風切り音がシアのウサミミに入る。チラリと上空を見ると、先程のゴーレム騎士が振り上げていた大剣が、シアに吹き飛ばされた際に手放なされたようで上空から回転しながら落下してくるところだった。

シアは、落ちてきた大剣を跳躍しながら掴み取ると、そのまま全力で、迫り来るゴーレム騎士に投げつけた。

 

大剣は豪速で飛翔し、ゴーレム騎士が構えた盾に衝突して大きく弾く。シアは、その隙を逃さず踏み込み、下段からカチ上げるようにドリュッケンを振るった。腹部に衝撃を受けた騎士の巨体が宙に浮く。苦し紛れに大剣を振るうが、シアはカチ上げたドリュッケンの勢いを利用してくるりと回転し、大剣をかわしながら再度、今度は浅い角度で未だ宙に浮く騎士にドリュッケンを叩きつけた。

 

先のゴーレム騎士と同様、砲弾と化してぶっ飛んだゴーレム騎士は後続の騎士達を巻き込みひしゃげた巨体を地面に横たわらせた。

 

シアの口元に笑みが浮かぶ。戦いに快楽を覚えたからではない。自分がきちんと戦えていることに喜びを覚えているのだ。自分はちゃんとハジメ達の旅に付いて行けるのだと実感しているのだ。その瞬間、ほんの少しだけ気が抜ける。

 

戦場で、その緩みは致命的だった。気がつけば視界いっぱいに騎士の盾が迫っていた。何と、ゴーレム騎士の一体が自分の盾をシアに向かって投げつけたのである。流石ゴーレムというべきか。途轍もない勢いで飛ばされたそれは、身体強化中のシアにとって致命傷になるようなものではないが、脳震盪くらいは確実に起こす威力だ。そうなれば、一気に畳み込まれるだろうことは容易に想像できる。

 

『しまった!』と思う余裕もない。せめて襲い来るであろう衝撃に耐えるべく覚悟を決める。

だが、盾がシアに衝突する寸前で衝撃音が響き、砲撃が盾に衝突。盾を盾であったものに変え、更に背後のゴーレム騎士に激突して吹き飛ばす。

 

「シア様、油断大敵ですよ」

 

両腕にガントレット状の艤装を展開したベルファストが告げる。

 

「ふぇ!? 今のベルファストさんが? す、すみません、ありがとうございます!」

 

「……気を抜いちゃダメ。お仕置き三倍」

 

「うっ、はい! 頑張りますぅ! ってお仕置き三倍!?」

 

ユエに「メッ!」という感じで叱られてしまい、自分が少し浮かれて油断してしまったことを自覚するシア。反省しながら気を引き締めなおす。

そんな二人を微笑ましく一瞥しながらベルファストは冷淡な瞳をゴーレム騎士達へと向けて多段砲撃で吹き飛ばしていく。

シアもまた改めて、迫って来たゴーレム騎士を倒そうとして、後方から飛んできた細いレーザーのような水流が、密かにシアの背後を取ろうとしていたゴーレム騎士をスッパリと両断したのを確認した。

 

ユエとベルファストが、自分の背中を守ってくれていると理解し心の内が温かくなるシア。師匠達の前で無様は見せられないと、より一層気合を入れた瞬間、周囲にいたゴーレム騎士達が纏めて吹き飛ばされていく。

 

一切の魔力に頼らず、京矢達の中で最大の殲滅力を持つのは矢張りエンタープライズである。

 

「エンタープライズ、エンゲージ(戦闘開始)!」

 

その言葉を合図に、爆炎に照らされていたエンタープライズが動く。

 

青い炎の鷹に変化した艦載機達がゴーレム騎士達を沈める中、その中の一体が振り上げた剣で彼女を斬り殺そうとするが素早く狙いを変えた矢が一本から五本に増えゴーレム騎士を撃ち抜く。

 

別の数体が固まり上空の艦載機の攻撃を防ぐように真上に盾を構え、前方に槍を構えたファランクスの陣形で襲い掛かる。

 

迎え撃たんとしたエンタープライズの前でファランクスの陣形を組んでいたゴーレム騎士達は横から吹き飛ばされる。

 

突然の事に思わず唖然とするエンタープライズだが、彼女へと手を振っているバールクスを見て理由を理解した。

 

ハジメを援護しながらもエンタープライズの方へも注意を向けていた事に微かに微笑みを浮かべると、彼女は再びゴーレム騎士達を一瞥する。

 

暴れるシアの死角に回ろうとする騎士がいれば水流が飛び、その辺の刃物よりよほど鋭利に切断していく。

ユエが行使しているのは水系の中級魔法〝破断〟である。空気中の水分を超圧縮して撃ち放つウォーターカッターだ。

 

ユエは両手に金属で出来た大型の水筒を持っていた。肩紐で更に二つ同じ水筒を下げている。

これらは、ハジメの〝宝物庫〟から取り出してもらった物だ。ユエが、その水筒をかざして魔法名を呟く度にウォーターカッターが水筒より飛び出し敵を切り裂いていく。

 

ユエは、魔法で空気中の水分を集めるよりも、最初からある水分を圧縮してやる方が魔力消費が少なくて済むと考えたのだ、また、照準は水筒の出口を向けることで付けており、飛び出たウォーターカッター自体は魔力を含まないものなので分解作用により消されることもない。

 

シアの爆発的な近接攻撃力と、その死角を補うように放たれるユエの水刃。二人のフォローに回るベルファストの砲撃。

騎士達は、彼女達のコンビネーションを破ることができず、いいように翻弄されながら次々と駆逐されていった。

 

「おいおい、やけるじゃねぇの。いいとこ見せとかないと愛想尽かされちまうかな?」

 

「そうだな。もう少し派手に暴れようぜ」

 

そんな冗談を言い合いながらショットライザーとバルカンのスーツの力で近接戦闘を繰り広げるハジメ。

 

騎士の剣をバルカンの装甲で受け、右手のショットライザーを兜に突き付けてゼロ距離射撃する。

頭が弾け飛ぶ騎士には目もくれず、そのまま回し蹴りで背後の騎士を蹴り飛ばす。

横凪に振るわれた大剣を一回転しながらしゃがみつつ躱し、裏拳で打ち砕き、別の騎士をショットライザーで撃ち抜く。

 

そうやって、不用意に部屋そのものに傷を与えないようにしながら次々とゴーレム騎士達を屠っていった。

 

だが……

 

「……? 指揮官、妙じゃないか?」

 

真っ先に気付いたのはエンタープライズだ。

 

「さっきから敵の数が減っていない」

 

「増援ってわけでも無さそうだな」

 

そう、先程から相当な数のゴーレム騎士を破壊しているはずなのだが、迫り来る彼等の密度が全く変わらないのだ。

 

その疑問は、他の者達も感じたらしい。

そして、よくよく戦場を観察してみれば、最初に倒したゴーレム騎士の姿が何処にもない事に気がついた。

 

「……再生した?」

 

「みたいだな」

 

「そんな!? キリがないですよぉ!」

 

そう、ゴーレム騎士達は破壊された後も眼光と同じ光を一瞬全身に宿すと瞬く間に再生して再び戦列に加わっていたのである。

 

「南雲、何処かに核みたいのは無いのか?」

 

バールクスの言う通り、ゴーレムは体内に核を持っているのが通常であり、その核が動力源となる。

核は魔物の魔石を加工して作られている。オスカーのお掃除ゴーレムの設計書にもそう記されてあった。その核を破壊すれば再生は止まる。そう考えたのだが、

 

「それがな、こいつら核を持っていやがらねぇんだよ」

 

「……確か?」

 

「ああ、魔眼石でも確認しているが、そんな反応はない。ゴーレム自体から微量の魔力は感知できるんだがな……」

 

「け、結局どうするんですかぁ! このままじゃジリ貧ですよぉ!」

 

シアがいよいよ焦った声を上げる。

 

「おい、鎧の魔剣や魔槍みたいに特殊な金属でできてるんじゃねえのか?」

 

「そうか!?」

 

ハジメはバールクスの言葉に、〝鉱物系鑑定〟を使う。

核という動力なくして作動するゴーレムは、もしかしたら特殊な鉱石で作られているのでは? と考えたからだ。

 

その考えは正解だった。ゴーレム達は感応石と言う魔力を定着させる性質を持つ鉱石で作られていて、同質の魔力が定着した二つ以上の感応石は、一方の鉱石に触れていることで、もう一方の鉱石及び定着魔力を遠隔操作することができるらしい。

 

この感応石で作られたゴーレム騎士達は、何者かによって遠隔操作をされているということだろう。

京矢達が再生だと思っていたのも、鉱石を直接操って形を整えたり、足りない部分を継ぎ足したりしているだけのようだ。再生というより再構築といった感じだろう。

よく見れば、床にも感応石が所々に使われており、まるで削り出したようにかけている部分が見られる。ゴーレムのかけた部分の補充に使われたに違いない。操っている者を直接叩かないと本当にキリがないようだ。

 

「ある意味部屋全体がゴーレムの本体ってわけか?」

 

「キリが無いわけだな。指揮官、私が突破口を開く」

 

「オレと南雲でお前が開けた穴を広げる。強行突破だ!」

 

「了解した」

 

祭壇と思われる場所へと向けて道を塞ぐゴーレム騎士達をエンタープライズの艦載機が吹き飛ばす。そこを通さないとばかりにゴーレム騎士達の破片が再構築されそうになるが、

 

「旋!」

 

バールクスの放った三つの竜巻が破片を吹き飛ばし、再生を止める。

 

「今だ、走れ!」

 

バールクスの叫びに従って一同は一斉に祭壇へ向かって突進する。

近づく敵をハジメとユエとベルファストが近づかれる前に迎撃する。

 

後方から迫ってきているゴーレム騎士達に向かってエンタープライズが艦載機を向かわせると、背後で大爆発が起こり、衝撃波と爆風でゴーレム騎士達が吹き飛ばされていく。

 

シアがエンタープライズとバールクスの空けた前方の隙間に飛び込み、ドリュッケンを体ごと大回転させて進路を塞ごうとした周囲のゴーレム騎士達を薙ぎ払った。

技後硬直するシアに盾や大剣を投げつけようとするゴーレム騎士達にユエの〝破断〟が飛来し切り裂いていく。

 

ハジメとバールクスは殿を務めながら後方から迫るゴーレム騎士達にショットライザーと気刃を連射した。

その隙に一気に包囲網を突破したシアが祭壇の前に陣取る。続いてユエとベルファストが、3人に遅れてエンタープライズが祭壇を飛び越えて扉の前に到着した。

 

***

 

「ユエさん! 扉は!?」

 

「ん……やっぱり封印されてる」

 

「あぅ、やっぱりですかっ!」

 

「予想はしていましたが」

 

見るからに怪しい祭壇と扉なのだ。封印されているのは想定内。だからこそ、扉の封印を落ち着いて解くために、最初は面倒な殲滅戦を選択したのだ。

シアとベルファストは、案の定の結果に文句を垂れつつも、階段を上ってきた騎士を弾き飛ばす。

 

後方の騎士達はエンタープライズが艦載機で吹き飛ばしているので登ってきた数は然程多く無いが、再構築される為敵の数は一向に減らない。

 

「南雲、錬成で扉に穴は開けられないか?」

 

「いや、封印の解除はユエに任せる。錬成で突破するのは時間がかかりそうだ」

 

殿を務めていたバールクスとハジメがシアの隣に並び立った。

バールクスの言葉に返したハジメの言う通り、錬成で強引に扉を突破することは、もしかすると可能かもしれないが、この領域では途轍もない魔力を消費して、多大な時間がかかることだろう。

それなら、せっかく如何にもな祭壇と黄色の水晶なんて物が置かれているのだから、正規の手順で封印を破る方がきっと早い。ハジメはそう判断して、戦闘では燃費の悪いユエに封印の解除役を任せる。

 

「ん……任せて」

 

ユエは、ハジメの言葉に二つ返事で了承し祭壇に置かれている黄色の水晶を手に取った。

その水晶は、正双四角錐をしており、よくみれば幾つもの小さな立体ブロックが組み合わさって出来ているようだ。

 

ユエは背後の扉を振り返る。

其処には三つの窪みがあった。ユエは、少し考える素振りを見せると、正双四角錐を分解し始めた。分解し、各ブロックを組み立て直すことで、扉の窪みにハマる新たな立方体を作ろうと考えたのだ。

 

「指揮官、此処まで奴の煽りが見えないのが気になるんだが……」

 

「多分、そろそろ出てくるんじゃ無いのか?」

 

バールクスとエンタープライズの会話を聞きながら結晶を分解しながら、ユエは、扉の窪みを観察する。

そして、よく観察しなければ見つからないくらい薄く文字が彫ってあることに気がついた。

 

 

〝とっけるかなぁ~、とっけるかなぁ~〟

〝早くしないと死んじゃうよぉ~〟

〝まぁ、解けなくても仕方ないよぉ! 私と違って君は凡人なんだから!〟

〝大丈夫! 頭が悪くても生きて……いけないねぇ! ざんねぇ~ん! プギャアー!〟

 

 

そこに有るのは、バールクスの予想通り何時ものウザイ文だった。

こんな状況なだけにめちゃくちゃイラっとするユエ。いつも以上に無表情となり、扉を殴りつけたい衝動を堪えながらパズルの解読に集中する。

 

何となく背後から殺気が漏れているのに気が付いたバールクス達は何があったのか大体悟ったので、触らぬ神に祟り無しとばかりに目の前のゴーレム騎士達との対応に集中する事にした。

 

「こいつら、凍らせれば再生しなくなるんじゃねえか?」

 

「それはミレディも考えてるだろうけど……出来るのか?」

 

「一度変身を解く必要があるけどな」

 

「だったら、奥の手にしておいてくれ。切り札になるかも知れねえからな」

 

「分かった」

 

手札的に有るのだが、それはバールクスの姿では使えない。

 

これだけ踏み荒らしているのに罠が何一つ発動しないのはゴーレム騎士達は何らかの方法で無効にしているのだろう。腹立たしい事に。

 

雑談かわしながらゴーレム騎士達を弾き飛ばしていくバールクスとハジメ。

終始余裕の彼ら二人を含む四人と違い、最初は際限の無さに焦りを浮かべていたシアもバールクス達が余裕を失わず冷静である様子を見て、落ち着きを取り戻していた。

 

「なんだか、ちょっと嬉しいです」

 

「あぁ?」

 

一体、ゴーレム騎士を叩き潰し蹴り飛ばしながら、シアがポツリとこぼした。

 

「ほんの少し前まで、逃げる事しか出来なかった私が、こうしてハジメさん達と肩を並べて戦えていることが……とても嬉しいです」

 

「……ホント物好きなやつだな」

 

「えへへ、私、この迷宮を攻略したらハジメさんといちゃいちゃするんだ! ですぅ」

 

「おい、こら。何脈絡なく、あからさまな死亡フラグ立ててんだよ。悲劇のヒロイン役は、お前には荷が重いから止めとけ。それと、ネタを知っている事についてはつっこまないからな?」

 

「それは、『絶対に死なせないぜマイハニー☆』という意味ですね? ハジメさんったら、もうっ!」

 

「意訳し過ぎだろ! 最近、お前のポジティブ思考が若干怖いんだが……下手な発言できねぇな……」

 

「へっ、オレ迷宮攻略したら……うん、告白しようにも相手がな……」

 

「いや、お前もやるなよ!?」

 

「じゃあ、アイルビー……」

 

「そりゃ死ぬときの台詞だろうが!?」

 

そんな雑談をしながら騎士達を退け続けて数分。シアとハジメの2人がイチャつく雰囲気にならない様にでもしている様なバールクスの言動に妙に納得のいかない様子のシア達の間に、ぬぅ~と影が現れた。ユエだ。

 

「……いちゃいちゃの邪魔、ナイス」

 

「おう」

 

「いや、そんなのを狙ってたのかよ!?」

 

「ええ~、そんな事狙ってたんですか~!? 酷いですぅ~、京矢さ~ん!」

 

「お前もう黙ってろよ……」

 

若干、疲れた表情でシアを横目に見るハジメに、ユエはバールクスに無表情ながら良くやったと言う様にサムズアップを向ける。

しかし、そんな状況でもないと思い直し、今度は少し得意気に任務達成を伝えた。

 

「……開いた」

 

「早かったな、流石ユエ」

 

「よっしゃ、後はオレ達に任せろ! 行くぜ、エンタープライズ!」

 

「了解だ、指揮官!」

 

ユエの言った通り封印が解かれて扉が開いているのが確認できた。

奥は特になにもない部屋になっているようだ。ハジメがユエとシアを伴って奥の部屋に向かって後退する。封印の扉を閉めればゴーレム騎士達の襲撃も阻めるだろう。

その姿を確認して、素早くロボライダーアーマーへと変身するとバールクスは必殺技を発動し、エンタープライズも艦載機を青い炎の鷲に変化させる。

 

 

『フィニッシュターイム! ロボ! ターイムブレーク!』

 

 

ロボライダーアーマーの装甲が開きそこから大量のマイクロミサイルが出現し空中に砲台が現れる。更に両手にボルテックシューターが現れ、バールクス ロボライダーアーマーがボルテックシューターのトリガーを弾くとアーマーからマイクロミサイルが、砲台からの砲撃が一斉に撃ち出される。

 

とても人間サイズのロボライダーアーマーからの攻撃とは思えない一斉砲撃が、エンタープライズの艦載機の攻撃を受けた直後のゴーレム騎士達を蹂躙していく。

その姿は正に人型の要塞。無慈悲な殺戮要塞の如き圧倒的な火力が罠の有無も関係なく粉々に破壊していった。

 

置き土産とばかりに全力砲撃をお見舞いするとベルトを外し変身を解除する。

 

京矢、エンタープライズ、ベルファストの順に扉の奥に飛び込むと、その隙にスタンバイしていたユエとシアが扉を閉めた。

 

部屋の中は、遠目に確認した通り何もない四角い部屋だった。

てっきり、ミレディ・ライセンの部屋とまではいかなくとも、何かしらの手掛かりがあるのでは? と考えていたので少し拍子抜けする。

 

安全かと思ってハジメもバルカンへの変身を解除する。

 

「これは、あれか? これみよがしに封印しておいて、実は何もありませんでしたっていうオチか?」

 

「ミレディの性格を考えるとそれも有りそうだよな。敢えてこれみよがしな封印を目の前にしたらゴールと思うだろうし」

 

「……ありえる」

 

「うぅ、ミレディめぇ。何処までもバカにしてぇ!」

 

「どこまでもふざけた奴だ……」

 

「全くです」

 

一同が一番あり得る可能性にガックリしていると、突如もううんざりする程聞いているあの音が響き渡った。

 

 

 

 

ガコン!

 

 

 

 

 

『!?』

 

仕掛けが作動する音と共に部屋全体がガタンッと揺れ動いた。

そして、京矢達の体に横向きのGがかかる。

 

「っ!? 何だ!? この部屋自体が移動してるのか!?」

 

「……そうみたッ!?」

 

「うきゃ!?」

 

「口を開くな、舌を噛むぞ!」

 

ハジメが推測を口にすると同時に、今度は真上からGがかかる。急激な変化に、ユエが舌を噛んだのか涙目で口を抑えてぷるぷるしている。シアは、転倒してカエルのようなポーズで這いつくばっている。

膝立ちの体制で衝撃に耐えながら喋るなと忠告する京矢。

 

部屋は、その後も何度か方向を変えて移動しているようで、約四十秒程してから慣性の法則を完全に無視するようにピタリと止まった。

ハジメは途中からスパイクを地面に立てて体を固定していたので急停止による衝撃にも耐えたが、シアは耐えられずゴロゴロと転がり部屋の壁に後頭部を強打した。方向転換する度に、あっちへゴロゴロ、そっちへゴロゴロと悲鳴を上げながら転がり続けていたので顔色が悪い。相当酔ったようだ。後頭部の激痛と酔いで完全にダウンしている。

ちなみに、ユエは、最初の方でハジメの体に抱きついていたので問題ない。

京矢、エンタープライズ、ベルファストの3人は揺れは応えたが転がった様子もなく耐えていた。

 

「京矢様、何かものすごく嫌な予感がするのですが」

 

「奇遇だな、私もだ」

 

「だろうな、オレもそう思う」

 

ハジメがスパイクを解除して立ち上がったのを確認すると、周囲を観察するが特に変化はない。

先ほどの移動を考えると、入ってきた時の扉を開ければ別の場所ということだろう。

 

物凄く嫌な予感がするが開かなければ先に進まない。

 

「さて、何が出るかな?」

 

「……操ってたヤツ?」

 

「その可能性もあるな。ミレディは死んでいるはずだし……一体誰が、あのゴーレム騎士を動かしていたんだか」

 

「コントロール装置の中核みたいな奴じゃ無いのか?」

 

「あり得るな」

 

「……何が出ても大丈夫。ハジメは私が守る……ついでにシアも」

 

「聞こえてますよぉ~うっぷ」

 

ボス戦かと気合を入れ直すが、すっかり四つん這いで這ってくるシアは酔っている様子で今にもリバースしそうだ。シアが根性でハジメ達の傍までやって来て、期待した目と青白い顔でハジメを見上げる。ハジメはそっと、視線を逸らして扉へと向き直った。背後で「そんなっ! うぇっぷ」という声が聞こえるがスルーする。

 

「準備は良いな?」

 

京矢の言葉に頷くシアを除く一同。扉の先は、ミレディの住処か、ゴーレム操者か、あるいは別の罠か……京矢は「何でも来い」と不敵な笑みを浮かべて扉を開いた。

 

そこには……

 

「……何か見覚えないか? この部屋」

 

「……物凄くある。特にあの石板」

 

「ここ、入り口じゃね?」

 

扉を開けた先は、別の部屋に繋がっていた。その部屋は中央に石板が立っており左側に通路がある。

見覚えがあるはずだ。なぜなら、その部屋は、

 

「ええ、最初の部屋……の様ですね?」

 

ベルファストが、思っていても口に出したくなかった事を言ってしまう。

だが、確かに、ベルファストの言う通り最初に入ったウザイ文が彫り込まれた石板のある部屋だった。

よく似た部屋ではない。それは、扉を開いて数秒後に元の部屋の床に浮き出た文字が証明していた。

 

 

〝ねぇ、今、どんな気持ち?〟

〝苦労して進んだのに、行き着いた先がスタート地点と知った時って、どんな気持ち?〟

〝ねぇ、ねぇ、どんな気持ち? どんな気持ちなの? ねぇ、ねぇ〟

 

 

 

 

『…………』

 

京矢達の顔から表情がストンと抜け落ちる。

能面という言葉がピッタリと当てはまる表情だ。全員が微動だにせず無言で文字を見つめている。すると、更に文字が浮き出始めた。

 

 

 

〝あっ、言い忘れてたけど、この迷宮は一定時間ごとに変化します〟

〝いつでも、新鮮な気持ちで迷宮を楽しんでもらおうというミレディちゃんの心遣いです〟

〝嬉しい? 嬉しいよね? お礼なんていいよぉ! 好きでやってるだけだからぁ!〟

〝ちなみに、常に変化するのでマッピングは無駄です〟

〝ひょっとして作ちゃった? 苦労しちゃった? 残念! プギャァー〟

 

 

「は、ははは」

 

「フフフフ」

 

「フヒ、フヒヒヒ」

 

ハジメ、ユエ、シアの三者三様の壊れた笑い声が辺りに響く。

その後、迷宮全体に届けと言わんばかりの絶叫が響き渡ったのは言うまでもない。

 

「……ミレディの不思議のダンジョン?」

 

京矢の的を得まくった呟きにハジメが再度の絶叫をしたのだった。

ゲームなら良いが実際に体験すると禄でも無いダンジョンだ。あのゲームの主人公達もこんな心境だったんだろうと思う。

 

最初の通路を抜けて、ミレディの言葉通り、前に見たのとは大幅に変わった階段や回廊の位置、構造に更にハジメ達が怨嗟の声を上げたのも言うまでもないことだ。

 

「鳳凰寺!? キシリュウジン出せ! ダンジョンごとぶち壊してやれ!」

 

「い、いや、それだと試練成り立たないだろ?」

 

キシリュウジンでダンジョンごとぶち壊して進もうしたり、無言のままに手榴弾を作り始めたりしたハジメを宥めて、何とかハジメ達3人の精神を立て直し、再び迷宮攻略に乗り出した京矢達。

しかし、やはり順風満帆とは行かず、特にシアが地味なトラップ(金たらい、トリモチ、変な匂いのする液体ぶっかけetc)の尽くにはまり、精神的にヤバくない? というほどキレッキレッになったりと、厄介な事に変わりはなかった。

 

そうして、冒頭の光景に繋がるわけである。

44話でaiで作った挿絵は如何でしょうか?

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