『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝(改訂版)   作:ドラゴンネスト

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帰還の最中の夜。夜通し走っても良かったが休憩として野宿の体制を取っていた際、ウィルが寝てる間に彼の監視を女性陣に任せ、ガチャチケットを引いたのだが、

 

「っという訳で、早速引いてみるか?」

 

「ああ、引いて見せてくれ」

 

また特撮ヒーローのリアル変身グッズが手に入るかもという事で笑みが止まらないハジメを他所に早速ガチャチケットに触れる。

 

スマホから飛び出してくるのは十個のカプセル。その中の一つを手に取ると、

 

 

 

ガンブレード「龍弾破刃」(SDガンダムワールド 三国創傑伝)

 

 

 

「うおおおお! ガンブレードって奴か!?」

 

赤い刀身が着いたガンブレードをハジメに渡す。一応剣だが、銃でも有るのでハジメの方が活用できるだろうと判断した結果だ。

 

「これ、貰っていいのか!?」

 

「ああ、良いぜ」

 

腐らせておくより良いだろうとハジメに渡すと、他のカプセルを開ける。

 

 

 

 

『仮面ライダーセイバー DVD全巻(劇場版込み)』

 

 

 

 

(新作の仮面ライダー……)

 

(今度見るか……)

 

笑みを浮かべながら四次元ポケットに仕舞われるそれを手に、無言でハイタッチを決める二人。

 

 

 

 

 

『邪剣カリバードライバー+闇黒剣月闇』

『ジャアクドラゴンライドブック』

 

 

 

 

ベルトと剣と本の様なデバイスを手に取ると、

 

「へー、新しいライダーの変身アイテムか? しかも、剣ってのはオレに使えって言われてる気分だぜ」

 

「そりゃ、文句は無いが……今回はお前の方が当たりだな」

 

「まだ六つも有るんだから、そう言うなって」

 

そう言いつつ新しいカプセルを開く。

 

 

 

 

『ポーション』(ファイナルファンタジー)

『薬草』(ドラゴンクエスト)

『時限バカ弾』(ドラえもん)

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

三つ連続でハズレに分類される安物のアイテムなので気落ちする二人。

 

「あと三つ、だな」

 

「だな」

 

先程まで良い物が出ていたのでちょっと気落ちしている二人の姿が有った。

残りの三つのカプセルを開けると、

 

 

 

 

 

 

『ガーベラストレート』(機動戦士ガンダムSEED ASTRAY)

 

 

 

 

 

入っていたのは一振りの日本刀。手に入れた刀に京矢は笑みを浮かべる。斬鉄剣も悪くは無いが、見るからに刀と言うこの刀の方が好みなのだ。

 

「お互いに武器は手に入ったな」

 

「だな。……それで、残りの二つはなんだ?」

 

「後の二つは……」

 

意図していなかったが、最後まで目を向けていなかった二つのカプセル。

 

 

 

 

『FIM-92スティンガー』

 

 

 

 

地対空ミサイルは要らないと思いながらも、何かの役に立つだろうとカプセルのままポケットにしまう。

うっかり元の世界で出したら拙いなと思いつつも最後のカプセルに触れる。

 

入っていたのは剣だった…………。カプセルの中からでも分かる力が一目で理解出来た。特に剣士として、錬成師としてその剣には本能的に一種の敬意さえ抱いてしまっている。

 

「見事な剣だな」

 

「ああ、天之河の聖剣がゴミに見えるな、こいつに比べると」

 

鞘に納められているが、鞘に鍔の部分が固定されていて抜けない様になっている。刀身から鍔、握りと一つの金属から作り出したと思われる剣は、錬成師のハジメに、今の自分では作れないであろう品物だと言う事を一目で告げていた。

 

その素材となった金属はトータスの金属は何一つ対抗出来ないであろう。

 

 

 

 

 

『ダイの剣』(ドラゴンクエスト ダイの大冒険)

 

 

 

 

 

それは勇者(笑)と比べる事自体が最大の侮辱ともいえる勇者の少年の為に作り上げられた最強の剣。

ガチャで手に入れた京矢にさえ使う資格は無いと抜くことの出来ない剣で有る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フューレンへと向かう途中、一家団欒な空気になって来た車内からさっさと降りて自分達だけサイドカー型の魔導二輪に乗り込んだ京矢、エンタープライズ、ベルファストの三人を恨めしそうにみるウィルと、誰も呼んでいないのに、いつの間にか荷台に乗り込んで、荷台と車内をつなぐ窓から頭だけ車内に入れて、先程から会話に参加しているティオ。

 

そんな車の中を他所に京矢は魔導二輪を運転しながらスマホのガチャを確認していた。

フューレンへの帰路に着いた日の夜に休憩がてら引いた十連ガチャチケットの結果と表示されている。

ガチャチケが手に入ったのは、マルスとマグネスファイブを倒したからなのか? アナザーシンを倒したからなのだろうか? 魔物の群れから街を守ったからなのかは定かでは無い。

 

「京矢様、脇見運転は行けませんよ」

 

「っと、悪い」

 

自分の後ろに座るベルファストから注意され、スマホを仕舞うと横目で魔導四輪の方を見る。

妙に嬉しそうなシアと、シアの頭を撫でているユエの姿が見える。

頭から入ろうとして失敗して今度は足から入ろうとして失敗しているティオの姿にはもうコメントに困る。

 

「……シリアスの同類、でしょうか?」

 

ベルファストの呆れた様な声が響くが、苦笑いするしか無かった。

車内のハジメは、無言でシュラークを連射して、ティオのケツを車外に吹き飛ばそうとするが、かなりしっかりはまり込んでいる上に、お尻のムッチリ肉が衝撃を緩和するようで吹き飛ばせなかった。

それどころか、弾丸がお尻に撃ち込まれる度に「あぁあん!」とか「激しいのじゃあ!」とか「ご主人様ぁ~」とかR18指定されそうな嬌声を上げているのだろう、頬を引き攣らせたハジメは仕方なく銃撃を断念する。

やはり、変態は相手にすべきではないのだ。

 

竜人族にあこがれがあったユエは、既に自身の持っていたイメージが幻想となって消えていたにもかかわらず、更にショックを受けて片手で目元を覆ってしまっている。

 

ティオは、銃撃が止んだ事を察して、何とかお尻と胸をねじ込み「ふぅ~」と息を吐きながら遂に車内への侵入を果たした。

 

そんな様を横目で眺めつつ、持っていた憧れが塵となって消えて行ったユエに対して心中で合掌する京矢だった。

 

外を走る京矢達には知らない事だが、車内ではティオの同行に対して一悶着あったが、最終的には新たな旅の仲間として加わった様子だった。

 

(……それにして、オレ以外にも仮面ライダーが、それも魔人族側に、か……)

 

仮面ライダーの力を持った二人の少女。彼女達のことを考え、光輝たちが遭遇してしまった時のことを考えると……

 

(普通に死ぬんじゃねえか? アイツら)

 

アナザーライダーの存在まで考えると普通に光輝達が語る絵が浮かばない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……その日も、中立商業都市フューレンの活気は相変わらずだった。

 

高く巨大な壁の向こうから、まだ相当距離があるというのに町中の喧騒が外野まで伝わってくる。

これまた門前に出来た相変わらずの長蛇の列、並ぶのは唯の観光客から商人など仕事関係で訪れた者達まであらゆる人々。

人々が気怠そうに、あるいは苛ついたように順番が来るのを待っていた。

 

そんな入場検査待ちの人々の最後尾に、実にチャライ感じの男が、これまたケバい女二人を両脇に侍らせて気怠そうに順番待ちに不満をタラタラと流していた。取り敢えず何か難しい言葉とか使っとけば賢く見えるだろ? というノリで、順番待ちの改善方法について頭の悪さを浮き彫りにしつつ語っていると、チャラ男の耳に聞き慣れない音が二つ聞こえ始めた。

 

 

キィイイイイイイイ!!!

 

 

最初は無視して傍らの女二人に気分よく語っていたチャラ男だが、前方の商人達や女二人が目を丸くして自分の背後を見ていることと、次第に大きくなる音に苛ついて「何だよ!」と背後の街道を振り返った。

 

そして、見たこともない黒い箱型の物体とそれを追う様に人を乗せた変な黒い馬と馬車の様な物体が猛烈な勢いで砂埃を巻き上げながら街道を爆走してくる光景を目撃してギョッと目を剥いた。

にわかに騒がしくなる人々。すわっ魔物か! と逃げ出そうとするが、二つの黒い物体の速度は想像以上のものであり、気がついたときには直ぐそこまで迫っていた。

 

チャラ男が硬直する。列の人々がもうダメだ! とその瞳に絶望を映す。

 

と、あわや衝突かと思われたその時、箱型の物体はギャリギャリギャリと尻を振りながら半回転し砂埃を盛大に巻き上げながら、馬車の様な物体は余裕を持って急停止した。

 

停止した物体、魔力駆動四輪とサイドカータイプの魔導二輪を凝視する人々。

一体何なんだと混乱が広がる中、四輪のドアが開いた。ビクッとする人々の事など知ったことじゃないと気にした風もなく降りてきたのは当然、ハジメ達だ。

ユエとシア、ティオも人々の視線など気にした様子はない。ウィルだけは、お騒がせしてすみません! と頻りに頭を下げている。

其処で初めて魔導二輪に乗っていた京矢達にも視線が向く。白銀の髪を風に靡かせるエンタープライズとベルファストもまた周囲の人々の注目も集めている。

 

人々は一切ウィルの謝罪を見ていない。

それどころか見たこともない物体から人が出てきたという事実すらもどうでも良いと言わんばかりに、眼前で「う~ん」と背伸びしている美女・美少女達に目が釘付けになっている。

彼女達が動くたびに、「ほぅ」と感心やらうっとりとした溜息がそこかしこから漏れ聞こえた。

 

ハジメは、四輪のボンネットに腰掛けながら、門までの距離を見て後一時間くらいかかりそうだなぁ~と目を細めた。ずっと車中にいて体が凝りそうだったので門に着くまで外で伸び伸びするつもりだ。

 

「暇ならこれでも見るか?」

 

「っ!? おっ、サンキュー!」

 

京矢から渡されたタブレットとイヤホンを受け取ると思わず表情が変わる。予めタブレットに移していた仮面ライダーシリーズの映像に釘付けになる。

ライダーウェポンのアーティファクトでの再現の為の研究と言い訳しながらも、顔は心底楽しそうかつ嬉しそうである。

ファイズ、ドライブ、ビルドとなぜその取り合わせにしたのか気になる三作品の劇場版を前にどれにしようかと悩んでいた。

京矢のガチャからのDVD入手でしか見れない異世界の地球の特撮番組に、今やスッカリどハマりしたハジメだった。特に自分がそれに変身できるとあれば尚更だろう。

 

京矢は京矢でそんなハジメを他所にCDプレイヤーとイヤホンをつけて音楽を聴き始めた。異世界で地球の道具取り出していいのかとも思うが、気にしていない二人であった。

 

いつの間にかハジメがユエとイチャコラしたり、寂しくなったのかシアがハジメの傍らに寄り添うように座り込んだり、巨大な胸を殊更強調しながらハジメの腕に縋り付くように座ろうとして……ハジメにビンタをされ崩れ落ちたり、エンタープライズが片方のイヤホンを付けて京矢と一緒に音楽を聴いたり、周囲の男達から殺意と嫉妬のこもった視線を向けられたりといつもの光景が広がっていた。

 

だが、ベルファストだけは少し気にしている様子だった。

 

「京矢様。車で乗り付けて宜しかったのでしょうか? 出来る限り隠す予定だったのでは?」

 

「ん? ああ、もう手遅れだろうからな……。巨大ロボまで持ち出す羽目になって、派手に暴れたし、一週間もすれば、王族やら貴族の耳にも届いてるだろう。予想より早まっただけだ」

 

主に魔人族やら敵側の仮面ライダー達やら、清水利幸やらのお陰で。

 

「自重無しという訳か、指揮官」

 

ベルファストの疑問に、京矢は肩を竦めて答えた。

今までは、僅かな労力で避けられる面倒なら避けるべきという方針だったが、ウルの町での戦いは、特に鋼鉄の巨人同士の戦いは、瞬く間に伝播するはずなので、そのような考えはもう無駄だろう。

なので、エンタープライズの言う通り、アーティファクト類をできる限り見せないというやり方は止めて、自重なしで行くことにしたのだ。

……流石にキシリュウジンの様な巨大ロボの使用は、必要にならない限りは自重すると言うのは2人共同意見だったが。……いくら何でもそれは目立ち過ぎる。

 

「確かに、この国の上層部からは何らかのアクションは有りそうだが……指揮官」

 

「どうした?」

 

「自重無しで行くと言う決断に至った原因の五割は指揮官に有るのを棚に上げて無いか?」

 

「うぐぅ……」

 

エンタープライズのジト目に頭を抱えてしまう。京矢がウィルの町で再会した知り合いのヒャッハーな冒険者三人にガチャ産のアーティファクト扱い間違い無しの武器を間違って渡してしまったのが、自重無しと言う決断に至る最大の理由なのだ。

 

「少しは反省してくれ、指揮官」

 

「それについては深く反省してる……」

 

「愛子様達が上手く味方して下されば宜しいのですが……」

 

イルワや愛子に対する教会や国関係の面倒事への布石は、あくまで効果があればいい程度の考えだったので、大して気にしていない様子の京矢。

ふと、ハジメ達の方を見るとシアの首輪がいつの間にか黒の生地に白と青の装飾が幾何学的に入っており、かつ、正面には神結晶の欠片を加工した僅かに淡青色に発光する小さなクロスが取り付けられた神秘的な首輪……というより地球でも売っていそうなファッション的なチョーカーに変わっていた。存分に返り討ちにしてやれ、と言うことなのだろう。

 

「その、指揮官。街に着いたら暫くは滞在するのだろう? なら、一緒に見て回らないか?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ん、別に構わないぜ」

 

京矢の返答に喜色を浮かべるエンタープライズ。

 

いきなり出来上がった桃色空間に、未知の物体と超美少女&美女の登場という衝撃から復帰した人々が、京矢達に今度は様々な感情を織り交ぜて注目し始めた。

女性達は、彼女達の美貌に嫉妬すら浮かばないのか熱い溜息を吐き見蕩れる者が大半だ。一方、男達は、彼女達に見蕩れる者、ハジメと京矢に嫉妬と殺意を向ける者、そしてハジメと京矢のアーティファクトや彼女達に商品的価値を見出して舌舐りする者に分かれている。

 

だが、直接彼等に向かってくる者は未だいないようだ。商人達は、話したそうにしているが他の者と牽制し合っていてタイミングを見計らっているらしい。

そんな中、例のチャラ男が自分の侍らしている女二人を彼女達……特にエンタープライズとベルファストと見比べて悔しそうな表情をすると明からさまな舌打ちをした。

そして、無謀にも京矢達の方へ歩み寄って行った。

 

「よぉ、レディ達。よかったら、俺と『お断りします』えっ……?」

 

チャラ男は、実に気安い感じで京矢を無視してエンタープライズ達に声をかけた。

ベルファストの頬に触れようとした手を払われ、僅か数分で美しい笑顔で精神を滅多斬りにされる姿に他の男達から同情の目を向けられていた。

 

彼女達に声をかけようとしていて牽制していた男達も「どうぞ、どうぞ」と譲り合っている。

 

すっかり蚊帳の外だったウィルが荷台に乗って体育座りで遠い目をしながら我関せずを貫いていると、にわかに列の前方が騒がしくなった。

騒ぎを聞き付けた門番が駆けてきているようだ。

 

簡易の鎧を着て馬に乗った男が三人、近くの商人達に事情聴取しながら京矢達の方へやって来た。商人の一人が京矢達を指差す。

男三人がくつろぐ(イチャイチャする)京矢達の眼前まで寄って来た。男三人の目つきが若干険しくなる。職務的なものではなく……嫉妬的な意味で。

 

「おい、お前! この騒ぎは何だ! それにその黒い箱? も何なのか説明しろ!」

 

ハジメと京矢に高圧的に話しかけてはいるが、視線がベルファストとエンタープライズにチラチラと向かっているので迫力は皆無だった。

二人は、予想していた展開なので門番の男に視線を向けると丁度良かったとばかりに淀みなく答える。

 

冒険者ギルドの支部長からの依頼でウィルを連れて帰ってきたことを告げると、門番にも連絡が入っていたのだろう、順番待ちを飛ばして入場させてくれるようだ。

四輪と二輪を走らせベルファストの感謝の言葉と微笑みに顔を赤くしてデレっと表情を崩す門番の後を着いて行く。列に並ぶ人々の何事かという好奇の視線を尻目に悠々と進み、一行は再びフューレンの町へと足を踏み入れた。

 

***

 

優先的にウィルを連れた京矢達はフューレンの町に入ると、冒険者ギルドにある応接室に通されていた。

 

出された如何にも高級そうなお茶と茶菓子をバリボリ、ゴクゴクと遠慮なく貪りながら待つこと五分。

部屋の扉を蹴破らん勢いで開け放ち飛び込んできたのは、京矢達にウィル救出の依頼をしたイルワ・チャングだ。

 

「ウィル! 無事かい!? 怪我はないかい!?」

 

以前の落ち着いた雰囲気などかなぐり捨てて、視界にウィルを収めると挨拶もなく安否を確認するイルワ。それだけ心配だったのだろう。

 

「イルワさん……すみません。私が無理を言ったせいで、色々迷惑を……」

 

「……何を言うんだ……私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった……本当によく無事で……ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなるところだよ……二人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」

 

「父上とママが……わかりました。直ぐに会いに行きます」

 

イルワは、ウィルに両親が滞在している場所を伝えると会いに行くよう促す。ウィルは、イルワに改めて捜索に骨を折ってもらったことを感謝し、ついで、京矢達に改めて挨拶に行くと約束して、名残惜しそうにベルファストを見て、部屋を出て行った。

京矢とハジメとしては、これっきりで良かったのだが、きちんと礼をしないと気が済まないらしい。

 

(父親は父上って呼ぶのに、母親はママなんだな……)

 

改めてウィルがマザコンなんだと思う京矢で有った。

 

ウィルが出て行った後、改めてイルワとハジメが向き合う。イルワは、穏やかな表情で微笑むと、深々とハジメに頭を下げた。

 

「ハジメ君、京矢君、今回は本当にありがとう。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。感謝してもしきれないよ」

 

「まぁ、生き残っていたのはウィルの運が良かったからだろ」

 

「ああ、現に傷はともかく、命どころか五体満足だったんだからな」

 

実際の幸運は京矢がこの依頼を引き受けた事自体が幸運だ。最悪死んでいても素性は可能だし。

 

「ふふ、そうかな? 確かに、それもあるだろうが……何万もの魔物の群れと三体の鋼鉄の巨人達から守りきってくれたのは事実だろう? 神の鎧を纏った女神の剣様方?」

 

にこやかに笑いながら、ハジメと京矢が大群との戦闘前にした演説の内容から文字った二つ名を呼ぶイルワ。

思わず目が点になる京矢に、頬が引き攣るハジメ。どうやら、ギルド支部長には、二人の移動手段より早い情報伝達方法があるようだ。

 

「流石、ギルドの支部長。耳が早いな」

 

「ギルドの幹部専用だけどね。長距離連絡用のアーティファクトがあるんだ。私の部下が君達に付いていたんだよ。といっても、あのとんでもない移動型アーティファクトのせいで常に後手に回っていたようだけど……彼の泣き言なんて初めて聞いたよ。諜報では随一の腕を持っているのだけどね」

 

「……知らなかったけど、ホントに大変だったな、その人」

 

そう言って苦笑いするイルワ。

最初から監視員がついていたらしい。ギルド支部長としては当然の措置なので、京矢もハジメも特に怒りを抱くこともない。むしろ、支部長の直属でありながら、常に置いていかれたその部下の焦りを思うと、中々同情してしまう。

 

「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは……二重の意味で君達に依頼して本当によかった。数万の大群を殲滅した力、何より君たちが呼び出した鎧の巨人と青い翼の巨人にも興味はあるのだけど……聞かせてくれるかい? 一体、何があったのか」

 

「ああ、構わねぇよ。だが、その前にユエとシアのステータスプレートを頼むよ……ティオは『うむ、二人が貰うなら妾の分も頼めるかの』……ということだ」

 

「エンタープライズとベルファストのもな」

 

「ふむ、確かに、プレートを見たほうが信憑性も高まるか……わかったよ」

 

そう言って、イルワは、職員を呼んで真新しいステータスプレートを五枚持ってこさせる。

 

エンタープライズとベルファストは種族は『KAN-SEN』と書かれており、天職はエンタープライズが『空母』で、ベルファストが『軽巡洋艦』と『メイド』なのには納得そのものだった。其々に共通して種族固有スキルの『艦装展開』がある。

 

ステータスも召喚されたチート集団ですら少人数では相手にならないレベルのステータスだ。勇者が限界突破を使っても及ばないレベルである。

……それでも、今回遭遇した仮面ライダー相手には不安は出るだろう。

 

イルワも口をあんぐりと開けて言葉も出ない様子だ。

無理もない。ユエとティオは既に滅んだとされる種族固有のスキルである〝血力変換〟と〝竜化〟を持っている上に、ステータスが特異に過ぎる。シアは種族の常識を完全に無視しているし、エンタープライズとベルファストに至っては聞いた事もない『KAN-SEN』と言う種族だ。驚くなという方がどうかしている。

トドメとばかりにやたらと多い戦闘以外のベルファストのスキル。本人曰く、メイドの嗜みなのだと言うが、イルワのメイド観をぶっ壊してしまうほどのハイスペック振りである。

 

「いやはや……なにかあるとは思っていましたが、これほどとは……」

 

冷や汗を流しながら、何時もの微笑みが引き攣っているイルワに、ハジメはお構いなしに事の顛末を、アナザーシンの事だけを隠して語って聞かせた。キシリュウジンとヨクリュウオーに着いてはその前段階でお腹いっぱいと言う様子で聞くのをやめていた。

普通に聞いただけなら、そんな馬鹿なと一笑に付しそうな内容でも、先にステータスプレートで裏付けるような数値や技能を見てしまっているので信じざるを得ない。イルワは、すべての話を聞き終えると、一気に十歳くらい年をとったような疲れた表情でソファーに深く座り直した。

 

「……道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。君達が異世界人だということは予想していたが……実際は、遥か斜め上をいったね……」

 

「で? 支部長さん、あんたはどうするんだ? 危険分子だと教会にでも突き出すか?」

 

イルワは、京矢の質問に非難するような眼差しを向けると居住まいを正した。

 

「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ……大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」

 

「ああ、支部長さん、試して悪かった」

 

京矢は、肩を竦めて、試して悪かったと謝意を示した。

 

「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員〝金〟にしておく。普通は、〝金〟を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど……事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦、それに〝女神の剣〟という名声があるからね」

 

イルワの大盤振る舞いにより、他にもフューレンにいる間はギルド直営の宿のVIPルームを使わせてくれたり、イルワの家紋入り手紙を用意してくれたりした。

何でも、今回のお礼もあるが、それ以上に、彼等とは友好関係を作っておきたいということらしい。ぶっちゃけた話だが、隠しても意味がないだろうと開き直っているようだ。

 

その後、イルワと別れ、ハジメ達はフューレンの中央区にあるギルド直営の宿のVIPルームでくつろいだ。途中、ウィルの両親であるグレイル・グレタ伯爵とサリア・グレタ夫人がウィルを伴って挨拶に来た。かつて、王宮で見た貴族とは異なり随分と筋の通った人のようだ。ウィルの人の良さというものが納得できる両親だった。

 

ハジメの普段からは考えられない丁寧な態度に驚いて、悪い物でも食べたのか、何かの病気かと騒いだシアとティオが宿の窓から突き落とされる様にウィルの両親が慌てたり、自力で這い上がってきた二人に更に驚いたりしたが、それはそれ。

 

グレイル伯爵は、しきりに礼をしたいと家への招待や金品の支払いを提案したが、ハジメも京矢も固辞するので、困ったことがあればどんなことでも力になると言い残し去っていった。

 

その際にウィルがベルファストとの別れに名残惜しそうにしていたが、それはそれ。

 

広いリビングの他に個室が四部屋付いた部屋は、その全てに天蓋付きのベッドが備え付けられており、テラスからは観光区の方を一望できる。

ハジメは、リビングの超大型ソファーにゴロンと寝転びながら、京矢は深く腰を下ろしながら、共にリラックスした様子で深く息を吐いた。

 

ユエが、寝転んだハジメの頭を持ち上げて何時ものように膝枕をする。シアは、足元に腰掛けた。ティオは、キョロキョロと物珍しげに部屋を見渡している。エンタープライズは息を吐いて椅子に座り、ベルファストはお茶を入れてくれている。

 

「取り敢えず今日はもう休もう。明日は消費した食料とかの買い出しとかしなきゃな」

 

「だな。他にも必要な物資の補給はしておこうぜ」

 

大規模な商業都市なのだから、必要な物や必要になりそうな物は今の内に多めに仕入れておこうと言う事だ。

京矢もハジメの言葉に同意して次の出発まで休息と補給に充てる事を決める。

 

「……買い物は私達がしておく。シアを連れて行ってあげて?」

 

「京矢様も、私達がしておくので、エンタープライズ様を連れて行ってあげて下さい」

 

「そうか? なら、行くか、エンタープライズ?」

 

「あ、ああ、指揮官」

 

 

【挿絵表示】

 

 

そう言ってシアとエンタープライズ以外の女性陣が買い物を引き受けてくれたので、ハジメと京矢はデートという事になったのだが、極普通に二人の世界を作り始めたハジメとユエに呆れた視線を向ける京矢だった。

 

そんな彼等を無視しつつ、ダイの剣を取り出し剣聖の技能を使い、その使い手である勇者ダイの技を読み取るが、

 

「……コイツは、オレには無理だな」

 

アバン流刀殺法の空の技と完全版のアバンストラッシュは会得可能だが、魔法剣は擬似再現程度、それ以上の技であるアバンストラッシュXやギガブレイクにギガストラッシュ等とても再現は出来ない。

 

勇者(笑)とは違う本物の勇者の力の鱗片に敬意を払いつつ、改めてダイの剣を魔剣目録の中に納めるのだった。

44話でaiで作った挿絵は如何でしょうか?

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