『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝(改訂版)   作:ドラゴンネスト

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まず言っておこう。指定された場所にはミュウは居らず、武装したチンピラが大勢いただけだった。

なので、人質がいない事を確認し、バルカンに変身したハジメが正面から乗り込み、背後の壁をぶち破りバールクスに変身した京矢が突入し、トータス初の仮面ライダーに無双されるチンピラとなった訳である。しかも、平成最後のダークライダーと令和最初の二号ライダーに。

 

そんな悪の組織の戦闘員以下のチンピラの皆さんなど仮面ライダー二人の相手にもならず尋問用の数人を残して皆殺しにされたのだった。

その結果、シアだけじゃなくて、ユエとティオやベルファストにも誘拐計画があったみたいだった。

……女性陣の中で自分一人だけ誘拐計画が無かったエンタープライズが拷問の際、殺意を全開にぶん殴っていたが……どうも、エンタープライズに誘拐計画が無かったのは纏っている空気から戦闘職として警戒した為らしい。

そして、いっそのこと見せしめに今回関わった組織とその関連組織の全てを潰してしまおうということになった……。

 

その最中に買い物中だったユエ達と合流し、本格的な殲滅作業に移行した訳である。

唯のデートに行って何故大都市の裏組織と事を構えることになるのかと、そのトラブル体質に呆れた表情を向けたが、躊躇うことなく了承する。

ハジメは、現在判明している裏組織のアジトの場所を伝え、ハジメとユエ、シアとティオ、京矢とエンタープライズ、ベルファストの三手に分かれてミュウ捜索兼組織潰しに動き出した。

ちなみに、ハジメとシアと京矢で別れたのは、ミュウを発見した場合に顔見知りがいた方がいいと考えたからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

商業区の中でも外壁に近く、観光区からも職人区からも離れた場所。公的機関の目が届かない完全な裏世界。大都市の闇。

昼間だというのに何故か薄暗く、道行く人々もどこか陰気な雰囲気を放っている。

 

そんな場所の一角にある七階建ての大きな建物、表向きは人材派遣を商いとしているが、裏では人身売買の総元締をしている裏組織〝フリートホーフ〟の本拠地である。

いつもは、静かで不気味な雰囲気を放っているフリートホーフの本拠地だが、今は、騒然とした雰囲気で激しく人が出入りしていた。おそらく伝令などに使われている下っ端であろうチンピラ風の男達の表情は、訳のわからない事態に困惑と焦燥、そして恐怖に歪んでいた。

 

そんな普段の数十倍の激しい出入りの中、どさくさに紛れるように頭までスッポリとローブを纏った者が二人、フリートホーフの本拠地に難なく侵入した。

バタバタと慌ただしく走り回る人ごみをスイスイと避けながら進み、遂には最上階のとある部屋の前に立つ。その扉からは男の野太い怒鳴り声が廊下まで漏れ出していた。それを聞いて、ローブを纏った者のフードが僅かに盛り上がりピコピコと動いている。

 

「ふざんけてんじゃねぇぞ! アァ!? てめぇ、もう一度言ってみやがれ!」

 

「ひぃ! で、ですから、潰されたアジトは既に五十軒を超えました。襲ってきてるのは二人組が二組と三人組が一組です!」

 

「じゃあ、何か? たった七人のクソ共にフリートホーフがいいように殺られてるってのか? あぁ?」

 

「そ、そうなりまッへぶ!?」

 

室内で、怒鳴り声が止んだかと思うと、ドガッ! と何かがぶつかる音がして一瞬静かになる。どうやら報告していた男が、怒鳴っていた男に殴り倒されでもしたようだ。

 

「てめぇら、何としてでも、そのクソ共を生きて俺の前に連れて来い。生きてさえいれば状態は問わねぇ。このままじゃあ、フリートホーフのメンツは丸潰れだ。そいつらに生きたまま地獄を見せて、見せしめにする必要がある。連れてきたヤツには、報酬に五百万ルタを即金で出してやる! 一人につき、だ! 全ての構成員に伝えろ!」

 

男の号令と共に、室内が慌ただしくなる。男の指示通り、組織の構成員全員に伝令するため部屋から出ていこうというのだろう。

耳をそばだてていた二人のフードを着た者達は顔を見合わせ一つ頷くと、一人が背中から戦鎚を取り出し大きく振りかぶった。

 

爆音を響かせて、扉が木っ端微塵に粉砕される。

ドアノブに手を掛けていた男は、その衝撃で右半身をひしゃげさせ、更に、その後ろの者達も散弾とかした木片に全身を貫かれるか殴打されて一瞬で満身創痍の有様となり反対側の壁に叩きつけられた。

 

「構成員に伝える必要はありませんよ。本人がここに居ますからね」

 

「ふむ、外の連中は引き受けよう。手っ取り早く、済ますのじゃぞ? シア」

 

「ありがとうございます、ティオさん」

 

今しがた起こした惨劇などどこ吹く風という様子で室内に侵入して来たのはシアとティオだ。

いきなり、扉が爆砕したかと思うと、部下が目の前で冗談みたいに吹き飛び反対側の壁でひしゃげている姿に、フリートホーフの頭、ハンセンは目を見開いたまま硬直していた。しかし、シアとティオの声に我に返ると、素早く武器を取り出し構えながらドスの利いた声で話しだした。

 

「……てめぇら、例の襲撃者の一味か……その容姿……チッ、リストに上がっていた奴らじゃねぇか。シアにティオだったか? あと、ベルファストとか言うメイドと、ユエとかいうちびっこいのもいたな……なるほど見た目は極上だ。おい、今すぐ投降するなら、命だけは助けてやるぞ? まさか、フリートホーフの本拠地に手を出して生きて帰れるとは思ってッ!? 『ズドンッ!』グギャアアア!!!」

 

好色そうな眼でシアとティオを見ながらペチャクチャと話し始めたハンセンに、シアは冷め切った眼差しを向けて問答無用にショットガンを撃ち放った。

飛び出した無数の鉄球によりハンセンは右腕を吹き飛ばされた状態で錐揉みしながら背後の壁に激突し、絶叫を上げながら蹲った。

 

激痛に堪えながら空を見上げるハンセンはふと思った。『なんで屋敷の中で空を見上げてるんだ?』と。

そんな事を考えていると鎧の巨人が二人自分を見下ろしているのが見えて痛みも忘れて絶句してしまった。

 

二人の巨人は当然ながら京矢の操るキシリュウジンとエンタープライズの操るヨクリュウオーである。

そして、キシリュウジンのコックピットから飛び出したエンタープライズが落下の勢いさえも加えて全力の拳をハンセンの顔面に叩きつけるのだった。

 

「ブヘラァ!!!」

 

悲鳴をあげてのたうち回るハンセン。悲鳴を上げてのたうつハンセンの襟首を捻り上げ無理やり立ち上がらせると怒りの困った目でハンセンを睨みつける。

「ぐえぇ」と苦悶の声を上げて何とか振り解こうとするが、エンタープライズを片腕でどうこうできる訳もなく、ハンセンに出来たことは、無様に命乞いをすることだけだった。

 

突然のキシリュウジンとヨクリュウオーの乱入にえーと思っているシアと、初めて見る二体に驚いているティオを他所にエンタープライズは、

 

「た、たのむ。助けてくれぇ! 金なら好きに持っていっていい! もう、お前らに関わったりもしない! だからグゲっ!?」

 

「勝手に話すな。お前は私の質問に答えればいい。分かったか? 分からなければ、このまま締め殺す……死なないうちに答える事をオススメするぞ」

 

「……エンタープライズ。取り敢えず、話せる程度には緩めてやれよ」

 

自分もキシリュウジンから降りて来た京矢がエンタープライズを落ち着かせながら、京矢はハンセンにミュウの事を聞く。

ミュウと言われて一瞬、訝しそうな表情を見せたハンセンだが、海人族の子と言われ思い至ったのか首筋に添えられた刀に顔を青くしながら必死に答えた。どうやら、今日の夕方頃に行われる裏オークションの会場の地下に移送されたようだ。

 

なお、ハンセンは一行とミュウの関係を知らなかったようで、なぜ、海人族の子にこだわるのか疑問に思ったようだ。

おそらく、シア達とミュウのやり取りを見ていたハンセンの部下が咄嗟に思いつきでシア達の誘拐計画を練って実行したのだろう。

元々、フリートホーフの誘拐リストの上位に載っていたわけであるから、自分で誘拐して組織内での株を上げようとでもしたに違いない。……それがどれだけ危険な事とも知らないで。

 

「シアちゃん、南雲に連絡を頼む」

 

京也に促されシアは、首のチョーカに手を触れて念話石を起動すると、ハジメに連絡をとった。

 

シアは、ハジメに詳しい場所を伝えると念話を切った。既に出血多量で意識が朦朧とし始めているハンセンは、それでも必死に手を伸ばし助けを求めた。

 

「た、助け……医者を……」

 

「安心しな死なせはしねえよ……。だけどな、子供の人生をいくつ食い物にして来たんだ、お前は? その償いだ、一度位死んどけ。そうすりゃ、あの世で閻魔様も少しは大目に見てくれるだろ?」

 

「な、何を……」

 

普通は一度死んだらそれで終わりだ。死ねと言っているのに死なせないと言う矛盾を疑問に思うままなく、エンタープライズがハンセンを手放し京矢が刀を振り上げる。

 

「や、やめ!」

 

京矢は、ハンセンを貫いた刀の血払いをすると適当な紙を掴んで刀を拭う。

 

余談だが、その後、ハンセンはギルドで拘束されて目を覚ました。確かに死んだ感覚が有るのに生きていたと言う訳の分からない状況に頭が可笑しそうになる状況に一つの結論に至ってしまった。

死んでいたと言うのに無理矢理蘇生させられたのだと。

何度でも自分を殺すことができる相手を敵に回してしまったと言う事実に顔を青くして恐怖する。

ハンセンを尋問していた者は殺さないと懇願するのではなく殺してくれと懇願するハンセンに疑問に思うのだった。

 

無数の屍と瓦礫の山と恐怖で精神の壊れたハンセンだけを残し、〝フリートホーフ〟フューレンにおいて、裏世界では三本の指に入る巨大な組織は、この日、実にあっさりと壊滅したのだった。

 

夕暮れのフューレン全体に轟くほどの轟音と共に周囲の建物をも巻き込んで凄絶な衝撃が走った。

 

「たーまやー……ってか? あいつ、美術館を吹き飛ばしやがったか……」

 

裏オークションの会場となっていた美術館も、歴史的建造物? 芸術品? 何それ美味しいの? と言わんばかりに木っ端微塵に粉砕されていく様を想像して、中々の観光スポットだった筈なので、吹き飛ばされる前に一度見ておけば良かったと思う京矢だった。

 

***

 

「倒壊した建物二十二棟、半壊した建物四十四棟、消滅した建物五棟、死亡が確認されたフリートホーフの構成員九十八名、再起不能四十四名、重傷二十八名、精神的再起不能者一名、行方不明者百十九名……で? 何か言い訳はあるかい?」

 

「カッとなったので計画的にやった。反省も後悔もない」

 

「喧嘩売られたから高く買ってやった。それだけだ」

 

「はぁ~~~~~~~~~」

 

冒険者ギルドの応接室で、報告書片手にジト目でハジメと京矢を睨むイルワだったが、出された茶菓子を膝に載せた海人族の幼女と分け合いながらモリモリ食べている姿と、呑気に茶菓子を口に放り込んでる姿に、反省の欠片もない言葉に激しく脱力する。

 

「まさかと思うけど……メアシュタットの水槽やら壁やらを破壊してリーマンが空を飛んで逃げたという話……関係ないよね?」

 

「ああ、オレとエンタープライズもそれは外で見てたけど関係ないぞ」

 

「……ミュウ、これも美味いぞ? 食ってみろ」

 

「あ~ん」

 

本気で知らない様子の京矢とその通りと頷いているエンタープライズに対して、ハジメは平然とミュウにお菓子を食べさせているが、隣に座るシアの目が一瞬泳いだのをイルワは見逃さなかった。

 

「それと、ヘルシャー帝国……と言うかガハルド皇帝が子供の様に目を輝かせて探しているらしい巨人が街中に現れたけど、彼等は君達の関係者かな?」

 

「い、いや、関係者、じゃないな。うん」

 

目を逸らしながら答える京矢の姿に、再び、深い、それはもうとても深い溜息を吐く。

ガハルド皇帝の耳に巨人が二人も現れたと届いたら、皇帝自ら突撃してくるかもしれない。そう思うと片手が自然と胃の辺りを撫でさすり、傍らの秘書長ドットが、さり気なく胃薬を渡した。

 

「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」

 

「余計な欲は身を滅ぼすって言う、良い例だな」

 

「元々、其の辺はフューレンの行政が何とかするところだろ。今回は、たまたま身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだし……」

 

「売られた喧嘩を高く買ってやっただけだしな」

 

「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい? ホント、洒落にならないね」

 

苦笑いするイルワは、何だか十年くらい一気に年をとったようだ。

流石に、ちょっと可哀想なので、ハジメはイルワに提案してみる。

 

「一応、そういう犯罪者集団が二度と俺達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやったんだ。支部長も、俺らの名前使ってくれていいんだぞ? 何なら、支部長お抱えの〝金〟だってことにすれば……相当抑止力になるんじゃないか? お前も良いよな、鳳凰寺?」

 

「ああ、別に減るもんじゃねえし、名前を貸すくらいなら構わないぜ」

 

「おや、いいのかい? それは凄く助かるのだけど……そういう利用されるようなのは嫌うタイプだろう?」

 

ハジメの言葉に、意外そうな表情を見せるイルワ。だが、その瞳は「えっ? マジで? 是非!」と雄弁に物語っている。ハジメは苦笑いしながら、肩を竦めた。

 

「まぁ、持ちつ持たれつってな。これから世話になるんだし、それくらいは構わねぇよ。支部長なら、そのへんの匙加減もわかるだろうし。俺らのせいで、フューレンで裏組織の間で戦争が起きました、それに一般人が巻き込まれましたってのは気分悪いしな」

 

「流石に責任とって、他の大中規模の裏組織を残らず潰して回るより楽だからな。ああ言う組織ってのは、裏社会なりの秩序って奴もあるだろうし、適度に残しといた方が同人数の個人よりマシだろうし」

 

裏組織にも裏組織なりの、組織間の秩序がある。今回潰した連中の奴隷売買のルートを顧客ごと潰したのだ、旨味も薄ければ、今回の大暴れの一件もあって自分達の名前を出せば早く治るだろう。

 

「……ふむ。京矢君は兎も角、ハジメ君、少し変わったかい? 初めて会ったときの君は、仲間の事以外どうでもいいと考えているように見えたのだけど……ウルでいい事でもあったのかな?」

 

「……まぁ、俺的には悪いことばかりじゃなかったよ」

 

流石は大都市のギルド支部長、相手のことをよく見ている。ハジメの微妙な変化も気がついたようだ。その変化はイルワからしても好ましいものだったので、ハジメからの提案を有り難く受け取る。

 

その後、フリートホーフの崩壊に乗じて勢力を伸ばそうと画策した他二つの組織だったが、イルワの「なまはげが来るぞ~」と言わんばかりの効果的な京矢達の名の使い方のおかげで大きな混乱が起こることはなかった。

この件で、ハジメと京矢は〝フューレン支部長の懐刀〟とか〝白髪眼帯の爆炎使い〟とか〝幼女キラー〟とか〝狼ゴリラ男〟とか〝黒い悪魔〟とか色々二つ名が付くことになったが……二人の知ったことではない。ないったらないのだ。大部分がハジメの物だが。

なお、その他にも亞人を虐げると巨人が報復に現れると言う噂が立ち、この街における亜人の扱いが改善され始めたとか。

 

大暴れした一同の処遇については、イルワが関係各所を奔走してくれたおかげと、意外にも治安を守るはずの保安局が、正当防衛的な理由で不問としてくれたので特に問題はなかった。

どうやら、保安局としても、一度預かった子供を、保安署を爆破されて奪われたというのが相当頭に来ていたようだ。

 

また、保安局も日頃自分達を馬鹿にするように違法行為を続ける裏組織には腹に据えかねていたようで、挨拶に来た還暦を超えているであろう局長は実に男臭い笑みを浮かべて京矢達にサムズアップして帰っていった。

よほど嬉しかったのだろう、心なし、足取りが「ランラン、ルンルン」といった感じに軽かったのがその心情を表している。

 

「それで、そのミュウ君についてだけど……」

 

イルワがはむはむとクッキーを両手で持ってリスのように食べているミュウに視線を向ける。ミュウは、その視線にビクッとなると、またハジメ達と引き離されるのではないかと不安そうに近くにいるハジメやユエ、シアを見上げた。ティオに視線がいかないのは……露骨なまでにベルファストとエンタープライズが隠しているのは、子供が有害なものを見ないようにする年長者の役目ということだ。

 

「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」

 

「保安局に預けなくて良いのか?」

 

京矢の疑問にイルワが説明するところによると、京矢とハジメの〝金〟と今回の暴れっぷりの原因がミュウの保護だったという点から、任せてもいいということになったらしい。

 

「ハジメさん、京矢さん……私、絶対、この子を守ってみせます。だから、一緒に……お願いします」

 

シアが、ハジメと京矢に頭を下げる。

どうしても、ミュウが家に帰るまで一緒にいたいようだ。

ユエとティオは、ハジメの判断に任せるようで沈黙したままハジメを見つめ、エンタープライズとベルファストは一緒にいたいが京矢の判断に任せると言う様子である。

 

「お兄ちゃん達……一緒……め?」

 

「おう、オレは構わないぜ。南雲はどうする?」

 

上目遣いで「め?」と問いかけるミュウの頭を撫でながら京矢は快諾する。

ハジメもミュウを取り返すと決めた時点で、本人が望むなら連れて行ってもいいかと考えていたので、結論は既に出ている。

 

「まぁ、最初からそうするつもりで助けたからな……ここまで情を抱かせておいて、はいさよならなんて真似は流石にしねぇよ」

 

「ハジメさん!」

 

「お兄ちゃん!」

 

満面の笑みで喜びを表にするシアとミュウ。【海上の都市エリセン】に行く前に【大火山】の大迷宮を攻略しなければならないが、ハジメは「まぁ、最悪京矢からヨクリュウオーを借りてでも何とかするさ」と内心覚悟を決めてミュウの同行を許す。

 

「ただな、ミュウ。そのお兄ちゃんってのは止めてくれないか? 普通にハジメでいい。何というかむず痒いんだよ、その呼び方」

 

「何だ、南雲……照れてんのか?」

 

喜びを表に抱きついてくるミュウに、照れ隠し半分にそんな事を要求するハジメ。そんなハジメに対して揶揄う様にニヤニヤと笑う京矢。

ハジメは元オタクなだけに〝お兄ちゃん〟という呼び方は……色々とクルものがあるのだ。

義妹の直葉の他にも、セレナからも何時もそう呼ばれているだけに、耐性のある京矢とは違うのだ。

 

ハジメの要求に、ミュウはしばらく首をかしげると、やがて何かに納得したように頷き……ハジメどころかその場の全員の予想を斜め上に行く答えを出した。

 

「……パパ」

 

「………………な、何だって? 悪い、ミュウ。よく聞こえなかったんだ。もう一度頼む」

 

「パパ」

 

「……そ、それはあれか? 海人族の言葉で〝お兄ちゃん〟とか〝ハジメ〟という意味か?」

 

「いや、いくら何でもそれは無いだろう?」

 

態々リブットをストームと訳して呼ぶ訳が無いのと同じだ。

 

「ううん。パパはパパなの」

 

「うん、ちょっと待とうか」

 

ハジメが、目元を手で押さえ揉みほぐし頭を抱えている内に、シアがおずおずとミュウに何故〝パパ〟なのか聞いてみる。すると……

 

「ミュウね、パパいないの……ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの……キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのにミュウにはいないの……だからお兄ちゃんがパパなの」

 

「何となくわかったが、何が〝だから〟何だとツッコミたい。ミュウ。頼むからパパは勘弁してくれ。俺は、まだ十七なんだぞ?」

 

「やっ、パパなの!」

 

「わかった。もうお兄ちゃんでいい! 贅沢はいわないからパパは止めてくれ!」

 

「やっーー!! パパはミュウのパパなのー!」

 

「鳳凰寺も居るだろう!?」

 

「オレはお兄ちゃんだよな?」

 

「うん、お兄ちゃんなの」

 

「裏切ったな鳳凰寺!?」

 

「パパは高校生で仮面ライダーってか?」

 

「ちくしょー、ちょっとそのフレーズは良いなって思っちまった……」

 

その後、ハジメはあの手この手でミュウの〝パパ〟を撤回させようと試みるが、ミュウ的にお兄ちゃんよりしっくり来た上に、京矢が初手でお兄ちゃんを受け入れた事で意外なほどの強情さを見せて、結局、撤回には至らなかった。

こうなったら、もう、エリセンに送り届けた時に母親に説得してもらうしかないと、奈落を出てから一番ダメージを受けたような表情で引き下がったハジメだった。

義理の妹で耐性がある京矢の完全勝利であった。

 

イルワとの話し合いを終え宿に戻ってからは、誰がミュウに〝ママ〟と呼ばせるかで紛争が勃発し、取り敢えず、ハジメはミュウに悪影響が出そうなティオだけは縛り付けて床に転がしておいた。当然、興奮していたが……

 

結局、〝ママ〟は本物のママしかダメらしく、ユエもシアも一応ティオも〝お姉ちゃん〟で落ち着いた。

44話でaiで作った挿絵は如何でしょうか?

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