『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝(改訂版)   作:ドラゴンネスト

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「ヒャッハー! ですぅ!」

 

左側のライセン大峡谷と右側の雄大な草原に挟まれながら、魔力駆動二輪二台と四輪が太陽を背に西へと疾走する。

街道の砂埃を巻き上げながら、それでも道に沿って進む四輪とサイドカータイプの二輪と異なり、通常タイプの二輪の方は、峡谷側の荒地や草原を行ったり来たりしながらご機嫌な様子で爆走していた。

 

「……シアのやつご機嫌だな。世紀末な野郎みたいな雄叫び上げやがって」

 

「……むぅ。ちょっとやってみたいかも」

 

四輪の運転席で、窓枠に肘をかけながら片手でハンドルを握るハジメが、呆れたような表情で呟いた。

ハジメの言葉通り、今、シアは四輪の方には乗っていない。一人で二輪を運転しているのである。

 

もともとシアは、二輪の風を切って走る感じがとても気に入っていたのだが、最近、人数が多くなり、すっかり四輪での移動が主流になっていたため、サイドカータイプの二輪を使っている京矢達を羨ましく思っていたのだ。

窓から顔を出して風を感じることは出来るが、やはり何とも物足りないし、四輪の車内ではハジメの隣りはユエの指定席なので、二輪の時のようにハジメにくっつくことも出来ない。それならば、運転の仕方を教わり自分で二輪を走らせてみたいとハジメに懇願したのである。

 

魔力駆動二輪は、魔力の直接操作さえ出来れば割と簡単に動かすことができる。場合によっては、ハンドル操作を自らの手で行わずとも、それすら魔力操作で行えるのだ。なので、シアにとっては大して難しいものでもなく、あっという間に乗りこなしてしまった。そして、その魅力に取り憑かれたのである。

 

今も、奇声を発しながら右に左にと走り回り、ドリフトしてみたりウイリーをしてみたり、その他にもジャックナイフやバックライドなどプロのエクストリームバイクスタント顔負けの技を披露している。

アクセルやブレーキの類も魔力操作で行えるので、地球のそれより難易度は遥かに簡単ではあるのだが……

 

それでも、既に京矢と同レベルなほど乗りこなしていた。京矢が「やるねぇ」と言う感じで通常タイプの二輪で技を披露してシアがそれを真似てと言う感じで新しいテクニックを会得していたりする。

シアのウサミミが「へいへい、どうだい、私のテクは?」とでも言うように、ちょっと生意気な感じで時折ハジメの方を向くのが地味にイラっとくる。横目で仮面ライダーに変身できる京矢に、もっと派手なテクニックを見せてやれと京矢を見るが、京矢はサイドカーに乗っているのでそれは無理だろう。

 

「ってか、危ないだろ、あれは」

 

四輪の中でミュウやユエと戯れているハジメを横目に京矢は二輪のハンドルの上に立ち、右手の五指を広げた状態で顔を隠しながら左手を下げ僅かに肩を上げるという奇妙なポーズでアメリカンな笑い声を上げるシアに呆れた目を向けていたりする。

戦闘時にもバイクを使う事が多い京矢としては、ああ言う明らかな危険運転は止めろと言いたいが、魔導二輪の特性ゆえのテクニックと自分の中で結論付ける。…………事故るのも自己責任なのだし。

 

ミュウと旅し始めて少し経つが、既に「パパ」という呼び名については諦めているハジメ。

当初は、何が何でも呼び名を変えようとあの手この手を使ったのだが、そうする度に、ミュウの目端にジワッと涙が浮かび、ウルウルした瞳で「め、なの? ミュウが嫌いなの?」と無言で訴えてくるのだ。しかも、京矢も京矢で「おいおい、こんな子を嫌うのかよ?」と言う目で諦めろと肩を叩いて来る。

奈落の魔物だって蹴散らせるハジメだが、何故かミュウには、ユエと京矢には同じくらい勝てる気がしなかった。特に京矢には物理的な意味で。

一応、ライダーシステム持ち出せば良い勝負できるが、ブレイドとギャレンなら対等に戦えても、バルカンじゃ無きゃバールクスに圧倒される。

結局、なし崩し的に「パパ」の呼び名が定着してしまった。

 

「パパ」の呼び名を許容(という名の諦め)してからというもの、何だかんだでミュウを気にかけるハジメ。

今では、むしろ過保護と言っていいくらいだった。シアは残念ウサギだし、ティオは変態だし、京矢は甘やかし過ぎるし、エンタープライズは問題無さそうだが食生活がレーションな所は問題だし、全面的に安心できる相手がベルファストだけな以上は、母親の元に返すまでミュウは俺が守らねば! とか思っているようだ。

世話を焼きすぎる時は、むしろユエやベルファストがストッパーになってミュウに常識を教えるという構図が現在のハジメ達だった。

 

そんな訳で一行はホルアドへの道を爆走していたのだ。……流石にヨクリュウオーを使えば更に早く着くだろうが、流石にそれは目立ち過ぎるので自重した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳で京矢達は、現在、宿場町ホルアドにいた。

 

本来なら素通りしてもよかったのだが、フューレンのギルド支部長イルワから頼まれごとをされたので、それを果たすために寄り道したのだ。

といっても、もともと【グリューエン大砂漠】へ行く途中で通ることになるので大した手間ではない。

 

ハジメと京矢は、懐かしげに目を細めて町のメインストリートをホルアドのギルドを目指して歩いた。

ハジメに肩車してもらっているミュウが、そんなハジメの様子に気がついたようで、不思議そうな表情をしながらハジメのおでこを紅葉のような小さな掌でペシペシと叩く。

 

「パパ? どうしたの?」

 

「ん? あ~、いや、前に来たことがあってな……まだ四ヶ月程度しか経ってないのに、もう何年も前のような気がして……」

 

「……ハジメ、大丈夫?」

 

「ああ……何か、朝起きたら変質者の檜山が外で樽に顔を突っ込んで寝てたり、木の枝にぶら下りながら昼寝してたりしてたな……」

 

嫌な事を思い出したと言う表情を浮かべるハジメ。今や死んだ(方がマシな改造人間にされた)檜山は変質者と言う事になっていたりする。

……なお、それらは全部京矢にぶちのめされた結果である。寝ていたのでは無い、気絶したのだ。

序でに勇者一行には露出狂の変態達がいると言う不名誉な噂は、必死に教会が揉み消そうとしているが、迷宮内での大量の目撃情報から揉み消せてはいない。脱いだ方が強いのだから、最早当たらなければと言うのを身を持って証明する羽目になった小悪党達には哀れとしか言いようが無い。

 

そんな、ティオの派生が居るのかと言う驚愕を浮かべるユエの他所に、

 

「ああ、問題ない。ちょっとな、えらく濃密な時間を過ごしたもんだと思って感慨に耽っちまった。思えば、ここから始まったんだよなって……緊張と恐怖と若干の自棄を抱いて鳳凰寺に励まされて一晩過ごして、次の日に迷宮に潜って……そしてオレ達は落ちた」

 

「……」

 

ある意味運命の日とも言うべきあの日のことを思い出し独白をするハジメの言葉を、神妙な雰囲気で聞くユエ達と懐かしいなと言う顔を浮かべる京矢。

ユエは、ジッとハジメを見つめている。ティオが、興味深げにハジメに尋ねた。

 

「ふむ。ご主人様は、やり直したいとは思わんのか? 元々の仲間がおったのじゃろ? ご主人様の境遇はある程度聞いてはいるが……皆が皆、ご主人様を傷つけたわけではあるまい? 仲の良かったものもいるのではないか?」

 

「確かに、そういう奴等もいたな……でも、もし仮にあの日に戻ったとしても、俺は何度でも同じ道を辿るさ」

 

「ほぅ、なぜじゃ?」

 

「もちろん……ユエに会いたいからだ」

 

「……ハジメ」

 

そして、声には出してないが、巨大ロボットに乗って自由に操って、リアル特撮ヒーローをやれて、劇場版のヒーローの気分まで味わえたし、と言うのもユエの次くらいにはある。

 

ホルアドの町は、直ぐ傍にレベル上げにも魔石回収による金稼ぎにも安全マージンを取りながら行える【オルクス大迷宮】があるため、冒険者や傭兵、国の兵士がこぞって集まり、そして彼等を相手に商売するため多くの商人も集まっていることから、常時、大変な賑わいを見せている。当然、町のメインストリートといったら、その賑わいもひとしおだ。

 

そんな多くの人々で賑わうメインストリートのど真ん中で、突如立ち止まり見つめ合い出すハジメとユエ。

周囲のことなど知ったことかと二人の世界を作って、互いの頬に手を伸ばし、今にもキスしそうな雰囲気だ。好奇心や嫉妬の眼差しが二人にこれでもかと注がれ、若干、人垣まで出来そうになっているが、やはり、ハジメとユエは気がつかない。お互いのことしか見えていないようである。

 

「ティオさん、聞きました? そこは、〝お前達に〟っていうところだと思いません? ユエさんオンリーですよ。また、二人の世界作ってますよ。もう、場所も状況もお構いなしですよ。それを傍から見てる私達にどうしろと? いい加減、あの空気を私との間にも作ってくれていいと思うんです。私は、いつでも受け入れ態勢が整っているというのに、いつまで経っても、残念キャラみたいな扱いで……いや、わかっていますよ? ユエさんが特別だということは。私も、元々はお二人の関係に憧れていたからこそ、一緒にいたいと思ったわけですし。だから、ユエさんが特別であることは当然で、それはそうあっていいと思うんですけどね。

〜中略〜

そこんとこ変態代表のティオさんはどう思います!?」

 

「シ、シアよ。お主が鬱憤を溜め込んでおるのはわかったから、少し落ち着くのじゃ。むしろ、公道でとんでもないこと叫んでおるお主の方が注目されとる。というか、最後さりげなく妾を罵りおったな……こんな公の場所で変態扱いされてしもうた、ハァハァ、心なし周囲の妾を見る目が冷たい気がする……ハァハァ、んっんっ」

 

「よっ! お熱いな、御両人」

 

ハジメとユエを揶揄っている京矢と、笑顔で拍手するベルファストと無言でやれやれと言う表情で拍手をするエンタープライズを他所に、メインストリートのど真ん中で、エロいことして欲しいと叫ぶウサミミ少女と変態と罵られて怪しげな雰囲気を醸し出しながらハァハァと息を荒げる妙齢の美女。

好奇心に集まっていた周囲の人々がドン引きして後退っていく。

 

「パパ~、お兄ちゃ〜ん、シアお姉ちゃんとティオお姉ちゃんが……」

 

「ミュウ。見ちゃダメだ。他人の振りをするんだ」

 

「そうだぜ、あっちの樽の方が面白いぞ……樽に頭から入るのが趣味の勇者がな……」

 

「……シア……今度、ハジメを縛ってシアと一緒に……」

 

「ユエ様……?」

 

「……っ!?」

 

シアの雄叫びに、流石に気がついて我を取り戻したハジメとユエと京矢は、事態が呑み込めずキョトンとしていたミュウに、取り敢えずシアとティオを見せないようにして他人のフリをする。

 

ユエが小声で何やら恐ろしいことを呟いていた気がしたが、それはベルファストに鎮圧されていたりする。最強の吸血姫も万能メイドには勝てなかった様子だ。

 

遠くの方に、何の騒ぎだ! と町の警備兵がチラホラと見え出したので、ハジメは仕方なくシアとティオの首根っこを掴んで引きずりながら、京矢達と共にその場を離脱した。

町に行く度に、美女、美少女に囲まれているハジメには羨望と嫉妬の目が突き刺さるのだが……この時ばかりは何故かハジメに対して同情的な視線が多かったと感じたのは、きっと気のせいではないだろう。

……普通に羨望と嫉妬を向けられてる京矢が羨ましいなどとは思っても居ない。

 

***

 

一行は、周囲の人々の視線を無視しながら、ようやく冒険者ギルドのホルアド支部に到着した。

相変わらずミュウを肩車したまま、ハジメはギルドの扉を開ける。他の町のギルドと違って、ホルアド支部の扉は金属製だった。重苦しい音が響き、それが人が入ってきた合図になっているようだ。

 

前回、ハジメと京矢がホルアドに来たときは、冒険者ギルドに行く必要も暇もなかったので中に入るのは今回が初めてだ。ホルアド支部の内装や雰囲気は、最初、ハジメが抱いていた冒険者ギルドそのままだった。

 

壁や床は、ところどころ壊れていたり大雑把に修復した跡があり、泥や何かのシミがあちこちに付いていて不衛生な印象を持つ。

内部の作り自体は他の支部と同じで入って正面がカウンター、左手側に食事処がある。しかし、他の支部と異なり、普通に酒も出しているようで、昼間から飲んだくれたおっさん達がたむろしていた。二階部分にも座席があるようで、手すり越しに階下を見下ろしている冒険者らしき者達もいる。

二階にいる者は総じて強者の雰囲気を出しており、そういう制度なのか暗黙の了解かはわからないが、高ランク冒険者は基本的に二階に行くのかもしれない。

 

冒険者自体の雰囲気も他の町とは違うようだ。誰も彼も目がギラついていて、ブルックのようなほのぼのした雰囲気は皆無である。これが本来の冒険者ギルドなのかも知れないが。

冒険者や傭兵など、魔物との戦闘を専門とする戦闘者達が自ら望んで迷宮に潜りに来ているのだから気概に満ちているのは当然といえば当然なのだろう。

 

しかし、それを差し引いてもギルドの雰囲気はピリピリしており、尋常ではない様子だった。

明らかに、歴戦の冒険者をして深刻な表情をさせる何かが起きているようだ。

 

一行がギルドに足を踏み入れた瞬間、冒険者達の視線が一斉に彼等を捉えた。その眼光のあまりの鋭さに、ハジメに肩車されるミュウが「ひぅ!」と悲鳴を上げ、ヒシ! とハジメの頭にしがみついた。

冒険者達は、美女・美少女に囲まれた挙句、一人は幼女を肩車して現れた京矢とハジメに、色んな意味を込めて殺気を叩きつけ始める。

ますます、震えるミュウを肩から降ろし、ハジメは、片腕抱っこに切り替えた。ミュウは、ハジメの胸元に顔をうずめ外界のあれこれを完全シャットアウトした。

 

血気盛んな、あるいは酔った勢いで席を立ち始める一部の冒険者達。

彼等の視線は、「ふざけたガキ共をぶちのめす」と何より雄弁に物語っており、このギルドを包む異様な雰囲気からくる鬱憤を晴らす八つ当たりと、単純なやっかみ混じりの嫌がらせであることは明らかだ。

 

京矢達は単なる依頼者であるという可能性もあるのだが……既に彼等の中にそのような考えはないらしい。仮にそうだったとしても、取り敢えず話はぶちのめしてからだという、荒くれ者そのものの考え方で彼等の方へ踏み出そうとした。

 

内心、仕方ないと思いながら青筋を浮かべているハジメを後ろに下げて苦笑を浮かべながら前に出ると、冒険者達へと本気の殺気を放つ。

スキルも一つも使っていないと言うのに、先程、冒険者達から送られた殺気が、まるで子供の癇癪に思えるほど絶大な圧力。既に物理的な力すらもっていそうなそれは、未熟な冒険者達の意識を瞬時に刈り取り、立ち上がっていた冒険者達の全てを触れることなく再び座席につかせる。四度も世界を救うレベルの戦いを潜り抜けた戦士の殺気なのだから当然だろう。

 

京矢の殺気を受けながら意識を辛うじて失っていない者も、大半がガクガクと震えながら必死に意識と体を支え、滝のような汗を流して顔を青ざめさせている。

 

と、永遠に続くかと思われた威圧がふとその圧力を弱めた。その隙に止まり掛けていた呼吸を必死に行う冒険者達。中には失禁したり吐いたりしている者もいるが……そんな彼等にハジメがニッコリ笑いながら話しかけた

 

「おい、今、こっちを睨んだやつ」

 

「「「「「「「!」」」」」」」

 

ハジメの声にビクッと体を震わせる冒険者達。

おそるおそるといった感じでハジメの方を見るその眼には、化け物を見たような恐怖が張り付いていた。だが、そんな事はお構いなしに、ハジメは彼等に向かって要求……もとい命令をする。

 

「笑え」

 

「「「「「「「え?」」」」」」」

 

「へ?」

 

いきなり、状況を無視した命令に戸惑うのは冒険者達だけじゃない、京矢もだ。

ハジメが、更に言葉を続ける。

 

「聞こえなかったか? 笑えと言ったんだ。にっこりとな。怖くないアピールだ。ついでに手も振れ。お前らのせいで家の子が怯えちまったんだ。トラウマになったらどうする気だ? ア゛ァ゛? 責任とれや」

 

「いや、無茶振りするなよ」

 

だったら、そもそもこんな場所に幼子を連れてくるなよ! と全力でツッコミたい冒険者達だったが、化け物じみた相手の仲間にそんな事言えるはずもなく、戸惑っている内にハジメの眼光が鋭くなってきたので、頬を盛大に引き攣らせながらも必死に笑顔を作ろうとする。ついでに、ちゃんと手も振り始めた。

内心、普通にツッコミを入れてくれた京矢には恐怖ではなく感謝しか浮かばない。

 

「うわ〜」

 

コメントに困る顔を浮かべる京矢。

こわもてのガタイのいい男達が揃って引き攣った笑みを浮かべて小さく手を振る姿は、途轍もなくシュールだったが、やはり、そんな事はお構いなく、ハジメは満足そうに頷くと胸元に顔を埋めるミュウの耳元にそっと話しかけた。

 

何を言われたのか、ミュウはおずおずと顔を上げると、ハジメを潤んだ瞳で見上げる。そして、ハジメの視線に誘われてゆっくり振り向いた。そこには当然、必死に愛想を振りまくこわもて軍団。

 

「ひっ!」

 

案の定、ミュウは怯えてハジメの胸元に逆戻りした。眉が釣り上がるハジメ。

眼光の鋭さが増し、「どういうことだ、ゴラァ!」と冒険者達を睨みつける。「無茶言うな!」と泣きそうな表情になって内心ツッコミを入れる冒険者達、「いや、オレでも不気味だと思うぞ!」とハジメを止める京矢。

冒険者達は、遂に、ハジメの傍らにいるユエ達に助けを求める懇願の視線を向けた。

 

その視線を受けて、ユエが「はぁ~」と深い溜息を吐くと、トコトコとミュウに近寄り、先程のハジメと同じく耳元に何かを囁く。すると、ミュウは、やはり先程と同じくおずおずと顔を上げると、再び冒険者達の方を見た。冒険者達は慌てて愛想を振りまく。

 

しばらく、そんな冒険者達をジッと見つめていたミュウだったが、何かに納得したのかニヘラ~と笑うと小さく手を振り返した。

その笑顔と仕草が余りに可愛かったので、状況も忘れてこわもて軍団も思わず和む。ハジメも、満足したようで再びミュウを肩車すると、もう冒険者達に興味はないとカウンターへと歩いて行った。

 

普段は魅力的であろう受付嬢の表情は緊張でめちゃくちゃ強張っていたが。

 

「支部長はいるか? フューレンのギルド支部長から手紙を預かっているんだが……本人に直接渡せと言われているんだ」

 

ハジメは、そう言いながら自分のステータスプレートを受付嬢に差し出す。受付嬢は、緊張しながらもプロらしく居住まいを正してステータスプレートを受け取った。

他の方も出してくださいと言う表情を向けられたので、京矢も自分のステータスプレートを差し出す。

 

「お、お二人共、き〝金〟ランク!?」

 

冒険者において〝金〟のランクを持つ者は全体の一割に満たない。

そして、〝金〟のランク認定を受けた者についてはギルド職員に対して伝えられるので、当然、この受付嬢も全ての〝金〟ランク冒険者を把握しており、ハジメのこと等知らなかったので思わず驚愕の声を漏らしてしまった。

 

その声に、ギルド内の冒険者も職員も含めた全ての人が、受付嬢と同じように驚愕に目を見開いて二人を凝視する。建物内がにわかに騒がしくなった。

 

「まっ、なったのは最近だからな、まだ連絡が入ってねえだけだろ?」

 

朗らかに語る京矢の言葉に、受付嬢は、自分が個人情報を大声で晒してしまったことに気がついてサッと表情を青ざめさせる。

そして、ものすごい勢いで頭を下げ始めた。

 

「も、申し訳ありません! 本当に、申し訳ありません!」

 

「驚くのも分かるから、オレは気にしてねえから、そんなに謝らないでくれ。……なあ、南雲」

 

「あ~、ああ。別にいいから。取り敢えず、支部長に取り次ぎしてくれるか?」

 

「は、はい! 少々お待ちください!」

 

放っておけばいつまでも謝り続けそうな受付嬢に、京矢とハジメは苦笑いする。

ウルで軽く特撮ヒーローの劇場版をリアルに再現し、巨大ロボまで持ちだした巨大ロボ同士の大合戦を演じて、フューレンで裏組織を巨大ロボまで持ち出して壊滅させるなど大暴れしてきた以上、身分の秘匿など今更だと思ったのだ。

 

子連れで美女・美少女ハーレムを持つ二人の見た目少年の〝金〟ランク冒険者に、ギルド内の注目がこれでもかと集まるが、注目されるのは何時ものことなので割り切って受付嬢を待つ一行。

注目されることに慣れていないミュウが、居心地悪そうなので全員であやす。情操教育的に悪そうなあやし方をしそうなティオをベルファストが引き離す。

 

やがて、と言っても五分も経たないうち、ギルドの奥からズダダダッ! と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。

何事だと、ハジメ達が音の方を注目していると、カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

見覚えはあるが誰だっけと言う微妙に思い出せない顔に頭を悩ませる京矢を他所に、ハジメは、その人物に見覚えがあり、こんなところで再会するとは思わなかったので思わず目を丸くして呟いた。

 

「……遠藤?」

 

「……誰だ?」

 

ちゃんと彼を知ってたハジメに対して、何気に酷過ぎる反応をしめす京矢だった。

44話でaiで作った挿絵は如何でしょうか?

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