『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝(改訂版)   作:ドラゴンネスト

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京矢side

 

反吐がでる。

それがこの世界の人間に感じたオレの感想だ。

例が教皇やら貴族どもみたいな、クソジジイ供だけだから仕方ないだろうし、オレ達を指導してくれたメルドさんは良い人だったけどな。

……まっ、場合によっては正面から処刑されそうだろうが、そうなったらそうなったで、兵士達を薙ぎ払ってキシリュウジンに乗って逃げる予定だったけどな。

 

それに、メルドさんとは訓練とは言え久し振りにマジでやり合える人ってのも良い印象だな。

 

そんな、極一部の人たちには悪いが。この世界への評価はそんなモンだ。態々命懸けで救ってやる理由は無いし、命と時間を賭けるなら帰還方法の模索を優先したい。

自分達のやってる戦争に他所の国の人間を拉致して後ろで偉そうにしてる連中の評価なんざ、クズで十分だろう。

 

取り敢えず、帰還の邪魔になりそうな勇者(バカ)とその取り巻きを残してやるから勝手に戦争でもしててくれ。

まあ、それも小悪党とゴリラになりそうだけどな。女子二人はそれなりに話は通じそうだし。

 

そんな訳で、そっちが喧嘩を売って来ない限りは好きにしろ。でもな、喧嘩売って来るなら、その時は全力で消してやるよ、腐れ神!?

 

 

 

 

 

 

召喚後の京矢の内心。

これが後に魔王と呼ばれる男の相棒たる『大首領』の降臨が異世界に確定した瞬間であった。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目前に立つだけで冷や汗が流れる。目の前の相手はこれまでの迷宮の敵とは次元が違うことが一瞥しただけで分かる。

 

黒いボディに真っ赤な瞳。平成0号ライダーにして昭和のラストナンバーの仮面ライダーが目の前に在った。

 

 

『仮面ライダーBLACK RX』

 

 

昭和最強にして、唯一フォームチェンジの能力を持った仮面ライダーだ。対する京矢はバールクスの姿で対峙しているが片腕にあるRXライドウォッチは存在していない。

当然だろう、目の前の相手はそのライドウォッチから再生された模造品なのだから。

 

何故こんな事になってしまったのか?

それは数分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブスアルラウネをバーニングディバインドで倒し、ハジメがユエの機嫌を損ねてから日が経過し、ハジメにもギャレンの使い方を教えてから数日。

三人は遂に真の大迷宮の百層目へと到達した。

 

これで表の迷宮の百層も含めると計200層の迷宮からなる此処を漸く走破した可能性が高い。

表の大迷宮が真の大迷宮の上澄み。変な言い方をすれば練習用のステージとすれば、真の迷宮も同じ深度である可能性が高い。

 

その最後の百層目その一歩手前、そこで京矢とハジメは装備の手入れを行なっていた。

 

京矢は魔剣目録を開いて改めて手持ちの剣を確認し、手持ちの中でどのライダーシステムを使うかの選択をする。

 

初めは魔剣目録の事にはハジメとユエにも驚かれたが、その中に収められた光輝に与えられたアーティファクトの聖剣がゴミに思える程の魔剣、聖剣、妖剣、邪剣の数々に既に驚くのに疲れてしまった。魔剣目録の中の剣に比べたら光輝の聖剣等単なる棍棒レベルの武器だろう。

しかも、魔剣目録自体も収納できるのは剣限定だがその広さは宇宙と同レベルの大きさを内包していると言うのだから驚くと言うのを通り越して、既に達観の領域である。

 

そして、ハジメは手持ちの装備だけでなく、京矢から貰ったギャレンバックルの動作も確認していた。

それが強力過ぎるため、扱うハジメが片腕だけ等使いこなす上での不安点は多いが自分が作ったものよりも強力な武器なのだから、上手く使えれば現状一番頼りになる。

序でに個人的にも特撮ヒーローになって戦えるそれは是非とも使って見たいと思っている。

 

そして、ユエは飽きもせず手元とハジメを交互に見ながらまったりとしている。

 

「見るからに嫌な予感がするな、南雲」

 

「ああ。感知系の技能に反応が無くても分かる。この先はヤバイってな」

 

「エースのカードはセットしとけよ。片手で戦闘中にそれをセットするのは難しいだろ?」

 

「ああ」

 

そんな会話を交わしてジクウドライバーを身に付ける京矢とエースのカードをギャレンバックルにセットするハジメ。

 

「ハジメ……」

 

「最高じゃねえか、漸くゴールに着いたって事だろ」

 

不安げに呟くユエにハジメは覚悟と決意を込めてそう返す。

 

「良いねえ、どっちにしても、何が出てきてもやるしか無いんだからな。鬼が出ようが、蛇が出ようが、叩き斬って進むだけってな」

 

ハジメの言葉に楽しげに笑いながら京矢も答える。元より今から引き返すなどと言う選択肢など与えられていない。

 

準備は整ったとばかりに立ち上がるハジメ。それを見て京矢も立ち上がり、バールクスライドウォッチを起動させジクウドライバーへと装填する。

 

「変身!」

 

 

『ライダータイム! 仮面ライダー、バールクス!』

 

 

その姿をバールクスの物へと変えて準備は完了だと言う姿を見せる。

 

「しっかし、天之河がそれを見たら正しく使うべきだ! とか言ってきそうだな」

 

「ハハハ! 違いねえな。でもな、コイツはヴィランの力だぜ。正しく使ったら、悪事を働けって事だろ? あれか? あのバカ勇者はオレに世界征服でも企んで欲しいのかよ?」

 

光輝ネタで爆笑しているハジメと京矢の二人。最後の敵を前にして冗談を言い合って緊張をほぐしている二人だがそのネタが分からないので蚊帳の外のユエは不服そうである。

 

三人が階段を降りて最後の100層へと足を踏み入れると、そこは無数の巨大な螺旋模様と木の蔓が巻き付いたような彫刻が彫られた柱に支えられた広大な空間。

柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは凡そ30メートルは有り、地面も荒れたところはなく平らで綺麗なもので、何処か荘厳さを感じさせる。悪趣味な絵の飾られた神殿などより、余程神聖さを感じさせてくれる場所だ。

 

罠もモンスターも複雑な迷宮も無い広い空間が続く中、警戒しながら先に進んでいくと、そこが100層目の終点なのだろう、行き止まりに行き着く。

 

その先にあるのは巨大な両開きの扉。ここが終着、最後のフロアで間違いは無いだろう。

 

何も罠も迷宮も無いのはこれから現れるであろう敵が存分に力を震えるように、此方が優位に戦えるような空間を与えない為に罠も壁も無い広い空間を用意しているのだろう。

 

「ラストバトルの為に用意した場所って感じだな」

 

「ああ。空気が違うぜ、ここはヤバイってな」

 

「まっ、オレの力もラスボスの力って奴だ、油断は禁物だけど、そう警戒し過ぎるなって」

 

「ハッ! 確かに、こっちにもラスボスが付いてるなら充分に勝ち目はあるか。最高じゃねえか」

 

「……んっ!」

 

不敵な笑みを浮かべて隣に立つ京矢の変身しているバールクスのライダーの文字の複眼を見据えた後……目を逸らしてユエの方を見据えた。

妙に見ているとシリアスになれない顔面のライダーの文字である。

 

三人揃って扉の前に行こうとして最後のフロアに足を踏み入れた瞬間、赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる巨大な魔法陣が扉の前の空間に現れた。

 

「「っ!?」」

 

あの日、自分達を窮地へと追い込んだ忘れたくても忘れられないあの魔法陣だ。だが、そんな物とは規模も複雑さも違う。

 

ラスボスはこのフロアに攻略者が入って初めて姿を表すのだろう。先程まで用意されてさえいなかったのだ。

 

「ユエ、鳳凰寺、気を付けろ……相当ヤベェ奴が来るぞ!」

 

「っ!? 悪い、どうやら、オレは別の相手を用意してくれてる様子だ」

 

警戒を浮かべていたハジメだったが京矢のその言葉に驚愕を浮かべて彼の方を振り向く。

 

京矢の足元に現れているのは、目の前の魔法陣と同じく忘れられない物、彼らが奈落へと落ちた日に窮地へと彼らを運んだ魔法陣だ。

 

「鳳凰寺!」

 

「先に行って待ってろ、南雲! オレもすぐ追いつくぜ!」

 

そう言い残したのを最後に京矢の、仮面ライダーバールクスの姿は消えた。次の瞬間、召喚の魔法陣が強く輝き、そこならは巨大な体躯と六つの頭と長い首、それぞれの頭には鋭い牙と赤黒い眼を持った怪物が現れた。

 

ハジメの知識の中にあるそれとよく似た特徴のある神話の怪物『ヒュドラ』と一致する。

 

どう形容していいのか分からない不可思議な咆哮を上げて六つの眼がハジメとユエを見据える。

愚かな侵入者に死と言う名の裁きを与えるべく、最後の番人がその牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ!」

 

何処かへと転移させられる感覚の中、体制を立て直して目の前の召喚の魔法陣を見据える。

弾き出されるような感覚で体制を立て直して床に立った瞬間、片腕を近くの柱にぶつけてしまい、腕に装着してあったライドウォッチが外れてしまう。

 

「しまった!」

 

そのライドウォッチを拾おうとするが、それは意志を持っているように、京矢の手を離れ、床に弾かれ床を滑りながら魔法陣の中へと入っていく。

 

「おいおい、マジかよ」

 

ライドウォッチが入った瞬間、魔法陣が形を変える。魔法陣からシンプルなライダークレストへと。

 

 

『RX!』

 

 

そして、響き渡るのはそのライドウォッチの起動音。

ライダークレストの召喚陣の中から現れたそれは射抜くような視線を京矢へと向ける。

 

 

……最強が現れた。

 

 

真っ赤な目に、黒いボディを持つ仮面ライダー。

 

 

その名は

 

 

 

『仮面ライダーBLACK RX』

 

 

 

 

戦闘体制を取り構えを取るRXに対して、ベルトから剣を出現させるバールクス。

今まで無造作に切り捨ててこれたこの迷宮の魔物達とは格の違う相手に構えを取る。その構えは自然と剣士である京矢が得意とする八相の構えだ。

 

睨み合うだけで神経が削られる強敵を目の前に自然と手に汗がにじむ。何分、何秒睨み合っていたのか分からない。或いは数秒も経っていないのかもしれない。

 

そんな中、先に動いたのはRXの方だった。

 

「っ!?」

 

音も無く床を蹴り京矢へと接近して拳を振るう。ギリギリだったがなんとかそれに反応して剣を盾に防ぐ事には成功した。

 

(っ!? 知ってたけど、強すぎだろ!?)

 

その一撃を防いだ瞬間京矢の体が後方へと吹き飛ばされる。直接は受けていないはずなのに両手には痺れが残る。

 

「これ、本物ならどれだけ強いんだよ」

 

バールクスのライダーシステム越しでのこのダメージだ、生身ではなす術なく今の一撃で終わっていただろう。

しかも、これで目の前の相手は、本物では無く複製品なのだ。最強と言われた仮面ライダーは伊達ではない。

 

(まっ、所詮力を使ってるだけのオレと複製とは言え最強クラスの本物、差があるのは当然か)

 

そう思いなおして仮面の奥で笑みを浮かべ、京矢は剣を構え直す。ゆっくりと此方へと歩んで来るRXを見据えながら、

 

「行くぜっ!」

 

 

-地摺り青眼!-

 

 

青眼の構えから地に叩きつけるように振り下ろした剣から放たれた真空波が無防備なRXへと向かって行く。

 

その真空波を受けて一瞬止まった瞬間を逃さず、

 

「おおおおおぉ!」

 

 

『八相斬り』

 

 

一気にRXとの距離を詰め、八相の構えからの袈裟と逆袈裟からなる連撃を放つ。

目の前の相手を前に一瞬でも攻撃を緩めたら不味いと判断した京矢の選択は休みなく連撃を続ける。

 

 

-八相斬り・乱舞-

 

 

並みの魔物ならば一撃で仕留められるであろうその攻撃を何度も受けながら……

 

「がはっ!?」

 

京矢は腹部に熱と痛みを感じて吹き飛ばされる。

目の前にいる最強は京矢の技を受けながらもダメージを負った様子もなく逆に反撃をして来た。

 

「ゲホッ……! だったら、こいつで!」

 

 

『ロボライダー!』

 

 

吹き飛ばされて距離が開いたのを幸と腕からライドウォッチを外し、それを起動させる。

剣の先端に光が集まり京矢はそれを突きの形でRXへと放つ。

 

「ボルティックシューター!」

 

突き出した剣から放たれた、RXの姿の一つであるロボライダーの武器である銃『ボルティックシューター』の力をバールクスの剣から放つ技として使うこの力ならば、そう判断しての行動だ。

 

京矢の予想通り、この技を受けて始めてRXは京矢の攻撃に防御の構えをとった。

 

「良し!」

 

防御の体制をとったRXの姿に微かに笑みを浮かべ、追撃を放つべく距離を詰める。

RX自身の力の一部ならばダメージを与えることもできる。そう判断しロボライダーのウォッチの力の残る剣を下段に構えながら突撃する。

 

だが、等のRXも黙って受けるわけはなく京矢を迎え撃つべく拳を振るう。

 

「へっ!」

 

直前で上に跳びそれを回避し、RXの拳を踏み台にさらに高く跳び、空中で前転でもする様に回転しながら無防備なRXへと剣を振り下ろす。

 

ロボライダーウォッチのエネルギーと回転による遠心力を込めた斬撃。それならば効くだろうと思っていた京矢だったが、

 

「なん……だと?」

 

ピクリとも動かない剣。振り下ろされる直前に京矢の剣はRXに片手で受け止められていた。

 

「ヤベっ!」

 

剣毎地面に叩きつけられそうになるった瞬間、剣を手放してRXから距離を取る。だが、RXはその行動を予想していた様に京矢へと回し蹴りを放つ。

 

「っ!?」

 

咄嗟に片手で防ぐ事に成功するが腕を襲う激痛に思わず悲鳴が溢れそうになる。

腕は動くし痺れは残るが問題はない。生身で受けていたら腕が折れる程度で済めば幸運、下手したらそのまま体が真っ二つにされていても不思議ではない。

 

地面に倒れ落ちながら剣を拾い上げ、RXの頭を狙って振り上げるが相手には紙一重で避けられ拳を握りしめられる。

 

 

『バイオライダー!』

 

 

続けてバイオライダーのウォッチを起動させその能力を発動させると同時に、引き絞った弓から放たれた矢の様なパンチが放たれる。

 

だが、液化の能力を得た京矢の体にダメージは無く液化したまま距離を開けた所で元の姿に戻り、

 

「はぁ!」

 

 

-剣掌・鬼勁-

 

 

死角より襲い掛かる気刃を放つ。死角より襲い掛かる不可視の気刃。これならば多少のダメージは期待できるだろうと考えたのだが、

 

「嘘だろ!?」

 

衝撃音が響く。死角から迫る不可視の気刃を撃ち落とすRXの姿に思わず驚愕してしまう京矢。

 

『その程度か?』

 

「っ!?」

 

そんな声が聞こえた気がした。気のせいかもしれないが、目の前のRXの空気が変わるのを感じてしまう。

 

京矢へと向かってくるRXに対し、

 

「旋!」

 

剣掌・旋。竜巻状の衝撃波を放つがRXはその竜巻を貫き京矢へとパンチを撃つ。

 

「がっ!」

 

それを防ぐも腕に装着していたロボライダーのウォッチが当然のように外れ、

 

 

『ロボライダー!』

 

 

起動音と共にRXの、複製とは言え本来の力の主人の元へと消えていく。

複眼の輝きが増す。纏う闘志の質が変わる。複製とは言え三分の一から三分の二の力を取り戻した仮面ライダーの姿が目の前には有った。

 

先程まででも充分過ぎるほど強かった敵が更に強くなってしまった。このままでは拙いと言う焦りが京矢にその選択をさせてしまう。

 

「くらえ!」

 

 

『バールクス! ターイムブレーク!』

 

 

本来は回し蹴りを放つ技を飛び蹴りの体制でRXへと向かって放つ京矢。それに応じる様にRXもまた、片手で地面を叩きジャンプし、後方回転しながら赤熱化した両足を揃えたキックを放つ。

 

バールクスタイムブレークとRXキック。二つの必殺技が空中でぶつかり合う。

 

共に赤い光を足に纏って放つ必殺キックだが、徐々に京矢の方が押され始めてきた。二つの必殺技の衝撃によるものか? それとも、それがそのウォッチに宿る意思による物か?

 

バイオライダーのウォッチが京矢の腕から外れRXの元へと消えて行った。

 

 

『バイオライダー!』

 

 

複眼の真紅の輝きが増し、両足の赤熱の輝きが強さを増し、必殺技の圧力が増す。

いや、それは増したのではない、取り戻したと言うべきだろう。今、目の前にいるのは、本物では無いと言う一点のみの差異しかない、仮面ライダーBLACK RXだ。

 

『RXキック!』

 

その拮抗が崩れた瞬間、京矢の必殺技が押し負ける。

 

「ぐっ! ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

悲鳴をあげながら変身が解け、そのまま吹き飛ばされていく。

 

必殺技を放った後の体制から地に降りるとRXはゆっくりと吹き飛ばされた京矢を追いかける様に歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメ!」

 

うつ伏せに倒れこむハジメの下からジワっと血が流れ出している。ハジメの『金剛』を突き抜けダメージを与えたのだろう。

ユエの『蒼天』にもある程度耐えた魔物の外殻で作ったシュラーゲンを咄嗟に盾にしなければ即死していた事だろう。

 

仰向けにしたハジメの容体は酷いものだった。指、肩、脇腹が焼け爛れ、一部の骨も露出し、顔も左半分が焼けて右目から血を流していた。

角度的に足への影響が少なかったのは不幸中の幸いだろう。

 

ユエは急いで神水を飲ませようとするが、そんな時間をヒュドラは与えてくれるはずもない。

直径10センチほどの光弾をガトリングの様に撃ち出してきた。

 

ユエはハジメを抱えると力を振り絞ってその場を離脱し、柱の影に隠れる。

柱を削る様に光弾が次々と打ち込まれる中、ユエは急いで神水をハジメの傷口に振りかけ、もう一本を飲ませようとする。

だが、もう飲み込む力も残っていないのか、ハジメはむせて吐き出してしまう。

 

ユエは自分の口に神水を含んでそのまま口付けし、むせるハジメに無理矢理神水を飲み込ませる。

 

「どうして!?」

 

だが、神水は止血の効果はあったものの、中々傷を修復してくれない。いつもなら直ぐに修復が始まるのに、何かに阻害されているかの様に遅々としている。

 

「……今度は私が助ける……」

 

そう決意の言葉を口にしてユエはドンナーを持ってヒュドラの注意を引くべく飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この程度なのか』

 

ハジメの脳裏に誰かの声が響く。

 

(誰だよ、うるせえな)

 

『オレの知っているギャレンはもっと強かったぞ』

 

また別の誰かの声が聞こえる。薄れそうになり意識を繋ぎ止めるように握り締めたそれの感覚がそれを何かと教えてくれる。

 

『その程度で倒れるようならば、お前にギャレンを名乗る資格は無かった様だな』

 

侮蔑するわけでもない、ただ淡々と事実を告げられる諦めに似た声に怒りを覚える。

 

 

「あぐっ!?」

 

 

そんな声に苛立ちを覚える中で間違い無く聞こえた呻き声はユエの声だ。

 

まだヒュドラは生きている。なら自分が動けない以上ユエが一人で戦っている事はすぐに理解した。

 

無理矢理意識を取り戻して目を見開く。ハジメの手の中には京矢から渡されたギャレンバックルが有った。

片目を焼かれたせいか視界が半分ほど見えない。

 

ヒュドラの極光には生物の体を溶かす毒に近い性質があるのだろう。神水の回復力と魔物の肉を喰らい強靭さを得たハジメの体の耐久力が侵食を押さえているが、それだけだ。

 

全身の痛みを堪えながらハジメは立ち上がり、ギャレンバックルを装着する。

 

自分とユエ以外この場には誰も居ない。先ほどの声は幻聴だったのだろうか? そんなことを思いながら即座に思考から消す。

 

「変……身っ!」

 

 

『turn up』

 

 

 

全身の痛みを堪えながらオリハルコンエレメントを潜り抜けながらその姿をヒーローの物へと変える。

その瞬間、失った筈の腕が誰かに引かれるような感覚を覚えた。

 

『お前は失うな』

 

そんな声が聞こえたと思うと失った片腕を覆う力無く垂れていたスーツの手首に見たことの無い装備……ラウズアブソーバーが存在していた。

 

見たこともない筈なのに使い方は分かる。そんな事を疑問に思う暇もないとばかりに足を動かす。

 

破滅をもたらす極光を避けるため光弾に自ら飛び込んだユエは回避の代償に光弾を腹部に受けてしまう。

 

「うぅ……うぅ……」

 

体は動かない。動かなければ光弾に蹂躙される。それは分かっている。だからこそ必死にもがくが体は言う事を聞いてくれない。

ユエはいつしか涙を流していた。悔しくて仕方がないのだ。自分ではハジメを守れないのか、と。

 

勝利を確信したヒュドラから放たれる光弾が迫る中ユエは目を閉じなかった。

せめて、心だけは負けるものかとヒュドラを心の中でハジメに謝罪しながら睨みつけた。

 

その刹那……一陣の風が吹いた。

 

「えっ?」

 

気がつけば、ユエは、自分が抱き上げられ光弾が脇を通り過ぎていくのを見ていた。そして、自分を支える人物を信じられない思いで見上げる。

 

それは赤と銀の人影。前に京矢に渡された道具でハジメが変身していた姿だっだ筈だ。

 

「泣くんじゃねぇよ、ユエ。お前の勝ちだ」

 

「ハジメ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……」

 

肉体的な欠損はないがダメージは大きい。

ハジメが戦ったヒュドラとは違い毒のような性質の広範囲攻撃は無く純粋に強いRXである事が救いだったのだろうか?

それとも、バールクスのシステムが持つ防御力と変身者保護による物か?

或いはその両方かは不明だが、ダメージの大きさは兎も角ハジメと比べれば余程軽傷と言えるだろう。

 

「どうする?」

 

血の気の引いた頭で考えてみるが、バールクスでは勝ち目は薄い。

バールクスがRXの模造品な時点で戦闘スタイルが近い分変身者の差が大きく出てしまうだろう。

 

 

歴史から生み出されたコピーとデータから生み出された模造品。

 

 

前者の方が限りなく本物に近い。模造品を纏った己とは格が違うと言う事だろう。

 

(こいつは……もう、ダメそうだな)

 

諦めの感情が頭の中に浮かび、それを受け入れてしまいそうになる。

 

(後は南雲に任せるしか無いか?)

 

元々人数こそ違えど元の世界への自力での帰還と言う目的は同じなのだ。

あとはハジメに任せてここで倒れてしまってもいいのでは無いか?

そんな弱気な考えさえ浮かんでくる。

 

全てを諦めて目を閉じれば楽になる。そんな誘惑に負けそうになってしまう。そんな時だった。

 

『それで良いのか?』

 

そんな声が聞こえたのは。

 

「っ!?」

 

その声に反応して飛び起きる。

 

「最後まで諦めるなって事か? ったく、そうだよな。アンタはこんな状況よりも絶望的でも、勝ち取ったんだからな」

 

その声の主が誰なのか理解してしまった。

此処にいるはずのない、だがその声を聞いたとしても不思議ではない人物を。

それを理解してそう言って京矢が取り出すのはブレイバックル。

 

「何より、こんな所で死ぬ訳には行かないんでな」

 

絶対に地球に戻ると言う意思の元、京矢は新たにブレイバックルを装着する。

こうなっては賭けに出るしかない。

 

闇の中から目の前に現れるのは『最強』。だが、敵が最強であろうと諦めるわけにはいかない。

 

「行くぜ、変身!」

 

 

『turn up』

 

 

奇しくも、遠く離れた場所のハジメと同じタイミングでオリハルコンエレメントを潜る京矢。片腕が誰かに引かれる感覚を覚えると、腕にはラウズアブソーバーが装着されていた。

 

『負けるな』

 

「ヘッ。ありがとうございます、剣崎さん」

 

激励の言葉と彼が託してくれたであろう力への礼を述べて京矢はブレイドへと変身するとRXへと対峙する。

 

ラウズアブソーバーの使い方は知っているし、理解した。彼に出来る選択肢など一つしかない、RXに対抗できる手段は最早ただ一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユエは感極まったようにハジメに抱きつく。

怪我はほとんど治ってない。今、ハジメは気力とギャレンのライダーシステムの恩恵だけで立っているような物だ。

 

ギャレンの仮面の奥からヒュドラを睨みつける。余裕そうな態度で光弾を浮かべ、今更死に損ないが何をしに出て着たとでも言うような態度で問答無用で光弾を放つ。

 

「遅ぇな」

 

ギャレンはギリギリまで動かず、光弾が直撃する寸前でふらりと倒れる様に動き、回避する。

 

ヒュドラの銀色の頭の目が細められ、無数の光弾が一気に襲いかかってくる。

 

「ハジメ、逃げて!」

 

ユエは必死の表情で言うが、ギャレンはどこ吹く風。ユエを抱いたままダンスを踊るようにくるりくるりと回り、時にふらふらと倒れるように動いて光弾をやり過ごす。

そんな光弾が彼を避けているような光景にユエは目を丸くする。

 

「ユエ、流石に今は血は吸えないよな」

 

ライダーシステムはアンデッドの攻撃からも致命傷から変身者を守るだけの防御力がある。それが仇となってユエに血を与える事は出来ない。

 

「切り札はある。オレの言う通りにしてくれ」

 

ユエに片腕のラウズアブソーバーの使い方を簡潔に説明する。

 

「……やるぞ、ユエ。オレ達が勝つ!」

 

「……んっ!」

 

 

 

 

 

『アブソーブクイーン』

 

 

 

 

 

京矢もハジメの指示に従ったユエも、共にクィーンのカードをラウズアブソーバーにセットする。

 

 

 

 

 

 

『エボリューションキング』

 

 

 

 

 

そして、京矢とハジメが選択するカードは最強の一手。

13枚のスートの頂点に立つ王の名を持つ最強のアンデッドのカードだ。

 

ブレイドの体にラウズカードが、13体のアンデッド達が融合し、その体をラウズカードのクレストの刻まれた金色の装甲が纏う。

 

ギャレンはブレイドとは違いカテゴリーキング単独での融合だが、ボディにはギラファアンデッドのクレストの刻まれた、より重厚な金色の装甲が全身を包み込む。

 

金色の王の力を纏った(キングフォームとなった)二人の仮面ライダーが、互いの挑むべき敵と対峙した瞬間だった。

 

「おおおおお!」

 

ブレイドキングフォームのクレストの二つが輝き、雷光の力を纏ったパンチと赤熱を纏ったRXのパンチがぶつかり合う。

 

二つの拳のぶつかり合う衝撃に床が砕ける。だが、二人のライダーは一歩も下がる事なく互いを睨みつけていた。

 

「やっと、手が届いたぜ!」

 

次に動いたのはブレイドキングフォームの方だ。ブレイドキングフォームのパンチの連撃をRXもまた同じくラッシュで迎え撃つ。

 

最後の拳をぶつけ合った瞬間、弾かれるように二人のライダーは後ろへと下がる。力負けしたのではなく互いに別の攻撃に移るために距離をとったのだ。

 

RXはRXキックの体制に入り、ブレイドキングフォームは三つのクレストを輝かせ、通常フォームの必殺技を再現する。

 

理論上は可能な『キック』『サンダー』『マッハ』の三つのカードのコンボによる必殺技『ライトニングソニック』だ。

 

ぶつかり合うRXとブレイドキングフォームの必殺キック、RXキックとライトニングソニック。

その二つの必殺技の激闘により周囲の柱が砕け散る。

 

「負けられねえんだよ、オレは!!!」

 

微かにRXに押される中、ブレイドキングフォームの加速が増し拮抗が戻る。

三つのカードの力の上に、更にメタルのカードのクレストを輝かせ、力を上乗せする。

 

その瞬間、衝突地点で起こる爆発。それに吹き飛ばされ地面に着地するRX。姿の見えないブレイドキングフォームを警戒するように爆煙を見据え、ベルトに手を翳しそれを出現させる中、

 

 

『スペード10、J、Q、K、A(テン、ジャック、クィーン、キング、エース)

 

 

「おおおおおおおおおおおおおおお!」

 

光のラウズカードを潜り抜けながら、その力を纏った重醒剣キングラウザーを構えながらブレイドキングフォームは一直線にRXへと向かう。

 

 

『ロイヤルストレートフラッシュ』

 

 

最強の手役を完成させ、極光の輝きを纏ったキングラウザーを上段に構えながら、RXへと振り下ろされたそれを、

 

「なっ!?」

 

RXは無防備に受ける。そして、その行動に戸惑うブレイドキングフォームにRX、ロボライダー、バイオライダーのライドウォッチを手渡し、彼を突き飛ばす。

 

「ったく」

 

戸惑う京矢を他所に、満足げに頷きながら最強は爆散して行ったのだった。

 

「勝った気が……しねえよ……」

 

そんな言葉を言い残して変身が解除された京矢はその場に崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、ギャレンキングフォームに変身したハジメの目には全てがモノクロに見えていた。

モノクロームの世界の中で全てはゆっくりと動く中、ギャレンキングフォームだけが普通に動ける。

 

それがハジメの得た技能『天歩』の最終派生技能『瞬光』。

京矢が知ればアクセルフォームかクロックアップと称するであろうその力をキングフォームの姿で発揮するハジメ。

 

(余裕だ!)

 

生身で有れば見えていても体が持つかわからない極光の嵐の中を今のハジメは鼻歌交じりで抜けることが出来る。

ギャレンキングフォームの防御力と身体強化能力が瞬光の負担から守り、一瞬で蒸発しかねない極光もその手の中にある重醒銃キングラウザーを叩きつけ弾き晒し他の極光とぶつけて相殺、キングラウザーによる銃撃によって撃墜する事も出来る。

 

(この弾幕の中でも余裕で貫けるだと? 何て威力だ)

 

自分が使った力に逆に畏怖さえ覚えてしまうハジメだった。それを使っていた男にさえも。

……まあ、盛大な誤解で、本編中一度も使ってなかったが、ギャレンはキングフォームを。

 

それはさておき、ヒュドラは先程のユエや今のギャレンの銃撃に全くの無傷と行かなかったのが気にくわないのか、頭を振って回避する。

外れた銃弾は明後日の方向に飛んでいき、天井に穴をあける結果に終わる。

 

場所を変えながらキングラウザーを撃つギャレンキングフォーム。だが、その全ては外れて天井を穿つ。

 

リロードの手間も無く無制限に撃てる強力な銃の便利さに気を良くして連射を続けるギャレンキングフォームに対してヒュドラは無駄な事をとでも言う様に嘲りを浮かべる。

 

 

-錬成-

 

 

天井付近に逃げたギャレンキングフォームを追って天井に向かって極光を放つのに合わせてハジメは天井を錬成する。

 

極光を回避すると同時に天井がヒュドラへと崩落する。

ヒュドラの巨体を上回る質量が崩落したのだから、その純粋な大重量の持つ破壊力はヒュドラを押しつぶす。

 

「ユエ!」

 

「んっ! 『蒼天』!」

 

青白い太陽がヒュドラを飲み込み少なくないダメージを与える。

苦しみながら自棄でも起こしたように極光を撃ち出すヒュドラ。

そんなヒュドラの極光を回避しながらユエはハジメの片腕の代わりになりキングラウザーのトレイを展開、ハジメから指示されていたカードを抜き出し読み込ませる。

 

 

『ロック』

 

 

ロックトータスのカードの力を得たキングラウザーの弾丸をヒュドラへと放つと、ヒュドラの耐性など全てを無視して石化させる。当然だ、その力はアンデッドの力を借りた異質な力。この世界の耐性など、無いに等しい。

 

石化して動きを止め事で極光も止まる。そんなヒュドラを見据えながらハジメはどう猛な笑みを仮面の奥で浮かべながら最後の一手を放つ。

 

 

『バレット』『ファイア』『ラピッド』

『バーニングショット』

 

 

三枚のカードを読み込ませ、発動させる最後の一手。ヒュドラへと肉薄したハジメは銃口が埋まるほど深くキングラウザーを石化したヒュドラの体に突き刺し、

 

「この距離なら効くだろ?」

 

冷酷に宣言しながら引き金を引く。

 

体内に打ち込まれた炎の弾丸によって石化が解けると同時にヒュドラは体内から爆散する。

 

「……ハジメ?」

 

それを確認すると自然とギャレンへの変身が解ける。

 

「流石に……もう限界」

 

「ハジメ!」

 

今までのダメージと出血と疲労、瞬光の脳への負担、キングフォームの負担、それらが襲いかかったハジメもその場に倒れるのだった。

44話でaiで作った挿絵は如何でしょうか?

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