『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝(改訂版)   作:ドラゴンネスト

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七大迷宮の一つ【氷雪洞窟】、そこはまるで、ミラーハウスのようだった。

 

大迷宮らしく中の通路はかなりの広さがあり、横に十人並んでもまだ余裕がありそうなほどだ。

 

しかし、全ての壁がクリスタルのように透明度の高い氷で出来ており、そこに反射する人影によって実際の人数より多くの人がいるように錯覚してしまう。結果、その広さに反して、どうにも手狭に感じてしまうという不思議な内部構造だった。

 

「まあ、俺1人なんで関係ないか」

 

バールクスの姿で1人そう呟きながら歩く京矢の視線の先には、眠るよう目を閉じたまま氷の壁の中に埋まっている男の姿があった。

まるで、疲れて壁に背を預けながら座り込み、そのまま凍てついてしまったかのようだ。外傷一つ見受けられないので、寒さのせいで意識が飛び、そのまま……ということだろう。

 

「食料と飲料を失って、って所か」

 

休憩に使える異空間系のアイテムもあり、四次元ポケット内に仕舞い込んだ飲食品は外部の影響は受けない。天然の冷凍施設と言うべきこの環境の中でもバールクスのスーツの性能と合わせて余裕で進める理由だ。

 

「まっ、命懸けで挑んで命を散らした。先例が有ったのかもしれないが、相応の覚悟はあったんだろ」

 

雷神剣に炎の球を嵌め込み放った炎で死体を燃やす。弔いのつもりだが、此方では死体蹴りになるかとも思うが、「敵の立場だが」と前置きして、この世界の神が神で意味はなさそうだが冥福を祈る。その後も見つけた魔人族らしき遺体を炎で弔いながら進む京矢。

 

幾つも枝分かれした迷路のような氷雪洞窟には苦戦しつつも、目印に剣を刺しつつ、片方の壁に手を当てつつ進む。時間はかかるが迷路の攻略には最適な手段だ。道中、結構な数の氷壁に閉じ込められた死体やトラップなどもあったが魔物の襲撃はなく、迷路の規模に苦戦していた。だが、その辺はバールクスのスーツの性能を活かして真正面から罠を突破する道を選択した。

 

「攻略法を知っていても、ってところか」

 

途中の死体を火葬しつつ、そんな意見を溢す。魔人族が魔物を戦略に組み込んだのは、この大迷宮の神代魔法と言うのはほぼ間違いなく、すでに攻略者がいるなら、その情報から国をあげて第二、第三の神代魔法の所持者を生み出す計画ができていたのだろう。軍服の死体はその第二陣でない事を祈りたい。

 

「急いだ方が良いな」

 

神代魔法を会得する魔法陣の再起動方法はミレディから聞いてハジメと共有してる以上、独占のためにも早めにルーンセイヴで封印するに越した事はない。

 

暫く進むと京矢は大きな四辻に出た。どの通路も同じ大きさで高さも横幅も十メートルくらいある。

 

そんな時、京矢は何かの気配を感じる。全ての通路から、

 

「へっ、迷路ばかりで退屈してたところだ!」

 

京矢が戦闘態勢をとりつつも、自分が通って来た道からも魔物が来る気配に緊張に顔を強ばらせる。どこに隠れていたのかと言う疑問を覚えながら、大きな四辻のど真ん中で、その中の一つを直感で選んで進む。1人では四方を囲まれては不利と判断、他が迫る前に一箇所を強行突破を選んだ。

数秒後、通路の暗がりの向こう側から呻き声のようなものが聞こえ始めた。

 

ヴァア゛ア゛ア゛ア〟

 

何とも怖気を誘うような声だ。獣の唸り声に聞こえなくもないが、それよりもずっと不気味さと不快さを感じさせる。通路の暗がりも、更に深く影を落としたかのようだ。そして、それは現れた。

 

暗闇からぬるりと染み出るように姿を見せたのは人。黒を基調とした軍服を纏い、特徴的な耳が見える。だが、その肌だけは本来の色を失い青白くなっており、更に全身にびっしりと霜を貼り付けたような状態だった。

 

「氷壁の死体か?」

 

京矢のの呟きに応えるように、全身を凍てつかせた魔人族が次々と通路の奥から溢れ出す。

 

凍てついた魔人族や冒険者らしき者達を見て、ハジメの推測を裏付ける。一瞬、冷凍保存でもされていたのかと考えたが、瞳を赤黒い色で爛々と輝かせ、だらりと下げた両腕を揺らしながら呻き声を上げ続ける彼等を見て、直ぐにその考えを改めた。その様相は凍てついたゾンビのようだ。

 

正面から溢れ出すフロストゾンビに、アバンストラッシュBで切り込みながら突っ込む。

 

「何にせよ、やることは変わらねぇ! ……せめてもの情けだ! 弔ってやるよ!」

 

その言葉が合図となったのか、直後、緩慢な動きだったフロストゾンビ達は、いきなり猛然と駆け出した。

 

ヴァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!

 

洞窟内に不快極まりない呻き声が幾重に木霊する。こちらを喰らおうとでも言うのか、大口を開けて歯を剥き出しにして突進してくる様子は、まんまバイオハザードである。氷化粧のおかげで腐肉は見ずに済んでいるが、醜悪なことに変わりはない。素早く炎の玉を嵌めた雷神剣で斬撃と同時に焼きながら進む京矢。灰になったフロストゾンビ達はそのまま地に伏していく。

 

駆け抜けた先に、遂に大きな空間に出た。ドーム状になっており、東京ドームと同じくらいと言えば、その大きさが分かるだろう。

 

「新手か!」

 

頭上から翼を広げた大鷲が強襲を仕掛けてきた。もっとも、ただの大鷲ではない。全てが透き通った氷で出来た大鷲――フロストイーグルだ。それが、天井の氷壁から次々と生み出されるように出現し、豪雨となって落下してきたのである。

 

「こう言う時は、怪しい所を叩く!」

 

狙うは赤黒い拳大の石。

 

「アバンストラッシュ! フレア、ブレイク!」

 

バールクスの力で強化された必殺の一撃が大鷲たちよりも、早く! ……避けようとした石が動くよりも早く! 雷神剣の炎の玉の炎と闘気の擬似魔法剣をアバンストラッシュで叩き込む。

 

此処にどんな仕掛けや罠があろうと、直接的な戦闘では、圧倒的な力のバールクスの前には関係ないと発動前に切り捨てたのだった。

 

同時に、この広い空間を満たそうとしていた魔物達が一斉にその姿を崩していった。部屋全体に、ガラガラと唯の氷塊となった魔物達の崩壊する音が響き渡る。

 

「あれが、一次試験の最終問題、って訳か」

 

何かしらの仕掛けがあったのは理解したが、こちらは1人、態々それを待ってやるほどお人好しではないのだ。

 

なお、京矢のやらかしたことにより、後にハジメ達が挑む際にフロストゾンビ達が「逃さねぇぞ、ワレェ!」とばかりに走り出したり、「今度は最初から全力だぁ!」と出番が無かったフロストタートルと氷の魔物達が臨戦体制だったり、難易度が修正されてしまうらしい。

 

「しかし、この程度の難易度なら、怪獣無法地帯を抜けてこれる奴が居たら、普通に余裕だろ?」

 

誰がそうしたのかは大体想像できるが、勝手に周りの環境の難易度を爆上げさせた連中を思いつつ、そんな身も蓋もない感想を呟きながら、再び、大きな氷壁で囲まれた通路を行く。

 

三十分ほど歩いて、ようやく通路の先に光が見えた。長い通路から出た京矢を待ち受けていたのは……

 

「……うっわぁー……帰りたくなってきた」

 

眼下に広がる、冗談のように広大な迷路だった。それが、現在、ハジメ達が通路の出口から見渡している光景だった。

取り敢えず、広大な迷宮に辟易しながら、此処で一度エンタープライズとライザに此処までの道の情報と無事の連絡を入れる。

 

その上で改めて、大迷宮を確認する。

壁で区切られ上が吹き抜けとなっている、アスレチックパークなどでよく見る迷路そのままだが、その規模は冗談のようだ。見える先だけでも確実に一キロはあり、そこから先は雪煙で見えなくなっているのだが、横幅が確実に十キロメートルはあるので、おそらく奥行もそれくらいあるのだろう。

 

京矢のいる通路の出口から階下に繋がる階段があり、その先にアーチ状の入口が設けられていた。そこから入り、迷路を踏破するのが第二の試練のようだ。

 

「まあ、吹き抜けになってるなら、ズルさせて貰うか」

 

ガチャアイテムの中からバットショットを取り出して上空から迷宮を撮影させる。

 

「さて、地図ができるまで一休みするかな」

 

そう言ってディメンションルームの中に入りバットショットの撮影が終わるまで一眠りするかと思い、変身を解除する。

 

休息の後、撮影を終えたバットショットを回収、ディメンションルームの中に、迷宮の上空から撮影した写真を繋ぎ合わせ、大迷宮の地図を作るとエンタープライズとライザに、2度目の連絡としてその写真データを送る。

 

流石に生物やアーティファクトに対する対策はしていても、魔力のない無機質な機械は相手も想定外だろうと想像していたが、大当たりだった様子だ。

 

そんな相手の想定外を利用しての行動だが、流石にバイクを走らせてと言うわけにはいかなさそうなのには、改めて溜め息を吐く。

 

横幅と同じだけ奥行があるとすれば、十キロメートル四方の迷路ということになる。いくら地図を用意できて道に迷うことがないと言ってもそれなりに時間がかかるだろう。

普通なら、極寒の中をひたすら手探りで探索していかなければならないのだ。凄まじい精神力が必要である。

これで将来、出口まで道を示してくれるアーティファクトとか手に入れたら、恨み節の一つでも言いたくなる気分の京矢だ。

 

「まあ、壁の破壊には対応されるだろうからな」

 

そこまでの不正は無理と考え、地図を片手に時間をかけて進むしかないかと、改めて息を吐く。

 

「さて、休憩は態と行き止まりに行くとするか」

 

進行方向が分かりやすく、地図に印を付ければ分かりやすい点から今後のことを考えると、氷のミラーハウスに突入する。

 

暫く進んでいくと、周囲の壁から、鋭い爪と一本角を持った筋骨隆々な見た目の氷の彫像が出現し始めた。見た目は強化版ブルタールモドキ、日本で言うなら鬼といったところか。

 

「「「「「グォオオオオオッ!!」」」」」

 

左右から五体ずつ。咆哮を上げて襲いかかるフロストオーガ。

 

炎を纏った斬撃がフロストオーガを両断し、空いた手の拳撃が胸元から粉砕する。

 

魔石だけ別のところにあって無限に再生するということもないようで、両断された場所や粉砕された胸元から赤黒い結晶体が姿を現した。すかさず、切り裂くと氷の破片になって砕け散った。

 

「強さは大した事ないが、休ませてはくれそうに無いな」

 

改めて地図を見る。順路、出口らしき場所までは予め線引きはしておいた。そのルートを暗記する。

 

「迷路と言っても直線と曲がり角、曲がる方向さえ覚えりゃ……」

 

バールクスの走力を存分に活かし、

 

「割と余裕だ!」

 

迷路を疾走する。

 

 

 

 

 

 

 

相手の想定外を利用した反則技を駆使して、その後、突然、氷の槍が突き出すトラップや、氷壁そのものが倒れてくるトラップなど様々な迷宮らしいトラップと、奇襲をかけてくる魔物共を突破し動き続けること十二時間。

荘厳な氷の彫刻の前に辿り着いた。門の様なそれは何かをはめる様な窪みがあり、セオリー通りならそこに何かを嵌めることで門が開く仕掛けなのだろう。……しかも、一つでは無い。

 

「……あー……本当に、この手のダンジョン探索系ゲームの主人公の気持ちがよく分かるぜ……」

 

ハジメならアーティファクトを使って鍵らしきものを回収するんだろうな、と思いつつ手持ちのライダーガジェットの数々を取り出し、それらを一斉に起動させる。

 

「はぁ……」

 

改めて、鍵の回収を探索に時間を取られる事に精神を削られる思いだが、空間をつなげて回収出来る道具は残念ながら手元には無い。

 

「改めて休むか……」

 

精神面の疲れを感じ、ディメンションルームの中に再度入り、心底疲れたと言う気持ちで変身を解除する。半日から1日でガジェット達が戻ってくれば良いな、と思いながら、この後の鍵を探しての奔走を想像してディメンションルームの中に設置したソファーに座り込むのだった。




直接的な戦闘は余裕でも、ダンジョン探索は苦手な京矢なのでした。

44話でaiで作った挿絵は如何でしょうか?

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