『転生特典はガチャ~最高で最強のチームを作る~』外伝(改訂版)   作:ドラゴンネスト

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意識を取り戻した京矢は柔らかな感覚を覚えた。迷宮に落ちて以来久しく感じたことの無いベッドの感覚だ。

 

(あー、そういや、手持ちの道具にそう言うのは無かったよな)

 

安全な別空間を作り出してそこを休憩所に出来る道具は実は京矢のガチャ特典には無かったりする。

いや、正確に言えば無いことはないが一度使うと設置した場所から移動できない為に何度も使えないから、そう簡単には使えない為にお蔵入りにしている。

 

(それにしても、なんでオレはベッドで寝てたんだ?)

 

誰かが運んでくれたと言うのが一番あり得そうな可能性だが、そのあり得そうな可能性を考えると実は一番恐ろしい。

 

(まあ、南雲達が見つけて運んでくれたんだろう、多分)

 

伸びをしながら周囲を確認するとそこは純白のシーツに天板付きのベッド。どう見ても物凄い高級品である。

暖かな光に満たされた神殿の様な場所に寝かされていたことを疑問に思いながらも現状を確認する為に行動を開始する。

 

 

 

 

然程時間もかからず同じベッドで寝ていたハジメとユエを見つけて、二人が起きるまで待つかと場所の探索を続ける京矢だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いい加減に起きやがれ! この天然エロ吸血姫!』

『!? アババババババアバババ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数十分後、

 

「お、二人とも起きたみたいだな」

 

ハジメの叫びとユエの珍妙な悲鳴を聴きながら、探索の途中で見つけた風呂に入って汗を流して四次元ポケットの中から取り出した地球で買い置きしていたコーヒー牛乳を飲みながらそう呟く京矢だった。

 

二人のいる寝室に顔を出すと、二人に手を振りながら、

 

「南雲、起きたか?」

 

「お前もなんで寛いでんだよ!?」

 

バスローブ姿で顔を出した京矢に即座にツッコミを入れるハジメだった。

 

「ん? 風呂があったんで入ってきたからに決まってるだろ? お前ら着替えて汗流してこいよ、ここは安全そうだしな」

 

取り敢えず、すっかり寛いでいる京矢の姿に頭を抱えつつも投げ渡された二人分のバスローブを受け取り、勧められた通り風呂に向かうハジメだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、風呂から出たハジメとユエに新しく取り出したコーヒー牛乳を勧めつつあれから何があったかを確認した。

ハジメもギャレンキングフォームに変身してヒュドラを倒した後そのまま倒れてしまって意識が無かった為、あまり重要な情報はなかった。

 

なので、ユエ曰くぶっ倒れたハジメの横で魔力枯渇でフラフラのユエがハジメに寄り添っていると、突然扉がひとりでに開いたそうだ。

新手かと警戒したもののいつまで待っても何もなく、京矢もRXとの戦闘のダメージで倒れていて戻ってくる様子もない為に、時間経過で回復したユエが確認しに扉の奥に入った。

 

神水の効果で少しずつ回復はしているがハジメが重傷であることに変わり無く、以前危険な状態であり、強靭な肉体が一命を取り留めているが、極光の毒素がいつ回復力を上回るか分からない。そんな状態で新手が現れたら一巻の終わりだ。その為、確かめずにはいられなかった。

そして、そんな彼女が踏み込んだ先は、

 

「…………反逆者の住処」

 

其処に既に治療が終えられて寝ていた京矢の姿があった事に驚いたが、それで危険がない事を確信したユエは別のベッドルームにハジメを運んで看病していたそうだ。

神水が残り少なくなっていた為、神結晶から最近量が少なくなった神水を摘出して飲ませたりして。

 

京矢については既に治療が終わっていたので手当てを施す必要もなく、また出来る事も無かったそうだ。

 

…………そこで一つ疑問が増えてしまった。京矢をここに運んで治療したのは誰か、と言う。

 

なお、極光の毒素に神水が勝って通常の回復を見せ始めた所で、要約ユエも安堵から気が緩み、力尽きてしまったそうだ。

 

その後は先に治療を終えられていた京矢が目を覚まし、改めてこの場所の安全性を確かめる為に探索、その結果治療を終えて力尽きていた二人を発見し、安全を確認できたのでのんびりと風呂で汗を流していたそうだ。

 

「……なるほど、そいつは世話になったな。ありがとな、ユエ」

 

「んっ!」

 

ハジメが感謝の言葉を伝えると、ユエは心底嬉しそうに瞳を輝かせる。無表情ではあるが、その分瞳は雄弁だった。

 

「ところで……オレは何故裸だったんだ?」

 

「いや、オレはナニかしたのかと思ってスルーしてやってたんだけど、違うのか?」

 

命懸けの戦いの後に色々としてたのかと誤解して、そっとしておいたのがのんびり風呂に入ってた理由だそうだ。

 

なお、何があったのかは定かではない。妖艶な瞳のユエが何も答えなかったので。

 

「まあ、安全な場所だし、ちょうどいいんでお前達にも教えとくか。ライダーシステムとかの入手先を」

 

楽しげに笑う京矢の顔に何故今なのかと言う疑問が湧くが、京矢が四次元ポケットの中から取り出したスマホを操作した事で驚きに変わる。

 

突然スマホの中から十個のカプセルが飛び出してきたのだから。

 

その中の二つを手に取ると中には

 

 

 

『エイムズショットライザー+Z-CONバンド』

『シューティングウルフプログライズキー』

 

 

 

 

拳銃型の武器とそれを装着するバックルと何らかのデバイス。

 

「おっ、新しい仮面ライダーの変身アイテムだな。しかも、手持ちじゃ一番新しい奴。南雲、使うか?」

 

「え!? マジで!? 良いのか!?」

 

「銃ならお前の方が上手いだろ?」

 

そう言って渡された一式をカプセルから取り出すとどうやって入れていたのか分からない大きさの銃とベルトとプログライズキーがハジメの手の中に現れ目を輝かせていた。

 

「理由はわからないけど、オレはこうして色んなものを呼び出せる召喚アプリ見たいな物を持ってるんだよな。武器だけじゃ無くて生き物や、あとは……剪定事象になった平行世界の人間、とかもな」

 

「剪定事象?」

 

転生特典とは言えないのでそう言っておく。

だが、ハジメが気になったのはその言葉だった。

 

「オレもよくわからないけど、オレ達で例えるなら、此処にたどり着けないで死んだオレ達のいた世界みたいなもんで良いだろ?」

 

「説明されてもよく分からないけど、取り敢えず、お前が呼び出せるのは平行世界で死んじまった人間って事で良いのか?」

 

「ああ、そう言うことになる……な?」

 

ふとカプセルの二つを拾うと思わず絶句してしまう京矢。

 

 

 

 

『クレオン』

『ワイズルー』

 

 

 

 

ガチのヴィランズを引き当ててしまった。

 

「なんだ、そのモンスターみたいなの?」

 

「……ん、見たことない」

 

絶句している京矢を不審に思ったのか、ハジメとユエが彼の手元のカプセルを覗き込んで問いかける。

 

「オレの持ってたガイソーケン、あれが有った世界のヒーローが戦ってたヴィランの幹部」

 

京矢の言葉を聞き危険性を理解したのか、ハジメもその二つのカプセルは無言のままに隔離しておく。唯一よく分かっていないユエも二人の反応から、ヒュドラよりも恐ろしい魔物なのだろうと考えた様子だ。

だが、京矢は知らない……これが彼が大首領と呼ばれることとなる一歩だと言うことに。

 

気を取り直して新たなカプセルを手に取ると、

 

「これは便利そうだな」

 

 

 

 

『魔法のテーブルクロス』

 

 

 

 

魔法陣とナイフとフォーク、箸のような絵が描かれたテーブルクロス。食べたい物を念じれば1日に一回何処からか召喚されるマジックアイテムだ。

異世界、地球のことを知っている京矢達にしてみれば1日に一回は地球の食事に有り付ける。

 

「南雲?」

 

「ああ」

 

一瞬のアイコンタクト、鍋とコンロを四次元ポケットの中から取り出す京矢。贅沢を言えば土鍋がベストだが鍋の方が便利なので其方しかない。一瞬のアインタクト、ハジメは後で土から土鍋を錬成すると合図する。

そして、二人でテーブルクロスを囲んで心を一つに願う。

 

 

 

 

『米!』

 

 

 

 

と。異世界生活で米に飢えていた二人の意思は一致したのだった。

 

テーブルクロスが光り、召喚されるのは俵に入った米。中身を確認して無言のままにハイタッチをする二人。恐らくは転生しても付いていきそうな日本人の業、それ故のテンションについていけないユエは唖然としていたが。

 

取り敢えず、本日の食事は決まった瞬間だった。

 

残りのカプセルの内三つは

何もない空間に挿せば異空間の部屋が出来る『ディメンションルーム』は良いとして、

 

 

 

『薬草』

『ポーション』

 

 

 

単なる回復アイテムだった。まあ、これだけ当たりが続けばこんな物かと思いながら最後の二つのカプセルを手に取ると、

 

 

 

『エンタープライズ(アズールレーン)』

『ベルファスト(アズールレーン)』

 

 

 

 

カプセルの中には女性の絵が描かれた宝石のような物。そこから呼び出せるのはKAN-SENと呼ばれる擬人化された戦艦。少なくともガチのヴィランよりは先に呼び出すべきだろう。

 

もう一回十連は引けるが優先するのはそこではないと、先にすべき事をしてしまおうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たな仲間を呼び出すのは後回しにしてベッドルームから出るとハジメはその光景に圧倒されていた。

まず目に入ったのは太陽だった。当然此処は地下迷宮でありそれは本物ではない。真上には円錐状の物体が天井高く浮かんでおり、その大変に煌々と輝く球体が浮かんでいた。わずかに温かみを感じさせ、蛍光灯のような無機質さを感じない為、思わず太陽と称したのだった。

 

「……夜になると月みたいになる」

 

「マジか……」

 

「そいつは驚きだな……」

 

ユエの言葉にこの隠れ家を作った者の技術の高さに圧倒されてしまう二人だ。

 

「それにしても、お前はどんな相手と戦ったんだ?」

 

「ああ、最強と戦う羽目になった」

 

京矢の言葉の中の最強の名前に疑問を覚えてしまうハジメだったが追求はしなかった。肉体的な欠損はないとは言え京矢が意識を失うほどの相手で、彼が最強などと言うのは想像を絶する化け物なのだろうと思っておくことにした。

 

そんな感じで合流すると一同が次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

 

川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

最後に京矢達は川や畑とは逆方向、ベッドルームに隣接した建築物の方へ歩を勧めた。建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

 

「……少し調べたけど、開かない部屋も多かった……」

 

「そうか……油断せずに行くぞ」

 

「おう」

 

ハジメの言葉に答えて京矢は魔剣目録を開いて一振りの刀を取り出す。

『斬鉄剣』

使い手の技と重なれば切れぬ物のない名刀。その切れ味は魔剣と言っていいだろう。

 

少々乱暴だが、全体を探索しても開かないのなら切ってでも探索すると言う意思で選んだ武器だ。

 

無理矢理出入り口を切り捨てて押し入るのは最後の手段としていてもそれを辞さない覚悟の京矢と、それを止める気のない、寧ろ後押しする意思しかないハジメとユエが石造りの住居に入って最初に感じたのは全体的に白い石灰のような手触りだった。

清潔感のあるエントランスには暖かみのある高級が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗い所に長く居た京矢達には少し眩しいくらいだ。

そこは3階建てらしく上まで吹き抜けになっている。

 

取り敢えず一階から見て回る一同。

暖炉や柔らかな絨毯、ソファーのあるリビングらしき場所に台所、トイレを発見した。

どれも長年放置されて居たような気配はない。人の気配はないが、旅行から住人が帰った家と例えるのが妥当だろう。

 

実は此処までは京矢にバスローブを渡された際に風呂のある場所と教えられたのだから知って居たりする。

 

「改めて見ると、どう言う方法かは知らないけど、管理維持だけはされてる様子だな」

 

「ああ。今からでも問題なく住めそうだな」

 

「……ん」

 

「ところで、前にガチャで手に入れたプロジェクターと仮面ライダーのDVDが有るけど、後で見るか?」

 

ジュエルシードか闇の書かセフィーロの時の戦い、その何れなのかは説明されて居ないが、戦いの末に手にしたガチャ券で手に入れた一品である。

 

「おっ、お前がくれたのが出て来るやつか?」

 

内心仮面ライダーと言う別の世界の特撮には興味もあるし、どんなことが出来るのか参考までに見ておこうと考えたハジメだったが、

 

「あれも含めて全部で20作品、映画もあるぜ」

 

「マジか!?」

 

この世界に仮面ライダーという作品は存在して居ない。その為にこれが仮面ライダーシリーズに触れる初めての経験だが、見事にハマったハジメだった。

具体的に言うと自分の技術で再現可能な武器を作るレベルには。

南雲ハジメの武器にライダーウェポンの一部が追加された瞬間であった。

 

後の休息、テーブルクロスから召喚した米を使った夕飯と仮面ライダーシリーズの視聴を決めた一行は、先に進む。

次に有ったのは京矢に場所を教えられた風呂。一回の安全確保を終えてからガイソーケンを片手にのんびりと入浴して居た京矢のお陰で安全だと分かったのは助かった。

 

「用心はしてたけど、ラスボス倒した後は合格って事で罠も無いとは思ったんだよな」

 

と言うのが京矢の弁だ。念の為にと其処の安全確認も兼ねて先に一風呂入っていた。

 

そんな訳である程度簡単にだが探索を終えていた一階部分を再調査を終えて次に向かうのは二階である。

 

二階で発見したのは書斎と工房らしき部屋。だが、封印が施されているらしく入る事はできなかった。扉や壁を切って入るのは最後の手段なので今は他を探索するのを優先する。

 

そして、既にある程度把握していた一階部分、殆ど探索できなかった二階部分の探索を終えて四人が足を踏み入れたのは三階部分。

入ってすぐに分かった事だが三階は一部屋しかないようだ。京矢が奥の扉を微かに開けて安全を確認する様に中の様子を伺い、後ろに居たハジメとユエに安全だと言うサインを送る。

三人揃った所で扉を完全に開放し、中に入るとそこには直径8メートル程の今まで見た事もないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央に刻まれて居た。

その繊細さは正に芸術品と言っていい程に見事な幾何学模様だ。

 

だが、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側にある豪華な椅子に座った人影だ。

その人影は骸だった。椅子に座ったまま命を落としてからどれだけの月日が流れるまで彼の前に現れた者がいなかったと物語る様に白骨と化していた。

黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織った姿に薄汚れた様子はなく、お化け屋敷のオプジェを想像させる。

京矢はアンデッド系のモンスターの可能性も警戒して居たが、それもなさそうで剣を下ろした。

 

その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちていったのだろう。魔法陣しかない部屋で骸となった者は何を思って居たのか。苦しんだ様子もなく安らかに逝った様子を思わせる姿から意図があってこの場を最後の眠りの場所に選んだのだろう。

 

「……怪しい……どうする?」

 

ユエもこの骸に疑問を持ったようだ。

おそらく反逆者と呼ばれた者達の一人なのだろうが、苦しむ事なく座ったまま果てたその姿は、誰かを待っているように見える。

 

「まぁ、地上への道を調べるには、この部屋が鍵なんだろうしな。オレの錬成も受け付けない書庫と工房の封印……調べるしかないだろう」

 

「だな。オレの剣は試してないが、お前の錬成が聞かない時点で多分ダメそうだからな。オレはどうする?」

 

「ユエとそこで待っててくれ。何かあったら頼む」

 

「いや、それなら剣士のオレよりお前が待ってた方が良いんじゃないか?」

 

魔法と錬成が使える二人の方が剣士の自分よりも良いだろうと判断する。

 

「鳳凰寺、大丈夫なのか?」

 

「何かあったら、お前達二人の方が対応しやすいだろ? 念の為にブレイドに変身していく」

 

そう言ってブレイドに変身して魔法陣の前に立つ。

 

「そうか……気を付けろよ」

 

「おう」

 

ハジメの言葉にそう返すとブレイドに変身した京矢は魔法陣に向けて踏み出した。

そして、京矢が魔法陣の中央に踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げた。

 

眩しさに目を閉じる京矢。直後、ブレイドのシステムの守りを意に介さず何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯の様に奈落に落ちてからのことが駆け巡った。

 

(記憶を探ってるのか?)

 

目的が分からないままされるがままにされて居た京矢だったが、光が収まり、目を開けた京矢の目の前には黒衣の青年が立って居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔法陣が淡く輝き、部屋を神秘的な光が満たす。

中央に立つ京矢の眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

 

「試練を乗り越えよく辿り着いた。私の名は『オスカー・オルクス』。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えば分かるかな?」

 

話し始めた彼はオスカー・オルクスと名乗った。此処【オルクス大迷宮】の創造者の様だ。

その事に驚きながら彼の話に耳を傾ける。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

そうして始まったオスカーの話は京矢達地球組が聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚くべき物だった。

 

それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

神代の少し前の時代、世界は争いで満たされていた。

人と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。

争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その理由は『神敵』だから。

今よりもずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祀っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

だが、そんな何百年と続く争いの歴史に終止符を討たんとする者達が現れた。

当時、『解放者』と呼ばれた集団である。

 

彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。

そのためか『解放者』のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。『解放者』のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

彼等は、『神域』と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。

『解放者』のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った7人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。

何と、神は人々を巧みに操り、『解放者』達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。

その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした『反逆者』のレッテルを貼られ『解放者』達は討たれていった。

 

最後まで残ったのは中心の7人だけだった。

世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。

試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。

同時に、京矢の脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいたためと理解できたので大人しく耐えた。

 

やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まると京矢はゆっくり息を吐いた。

そして、バックルを外し変身を解除した京矢は魔法陣から出て、ハジメたちのいる場所に戻った。

 

「鳳凰寺……大丈夫か?」

 

「ああ、頭は痛いけど、魔法を伝える為って分かれば仕方ないだろうな。それ以外は、問題ないな」

 

今は頭痛よりも考えるべき事がある。

 

「オレの予想通り、エヒトとかいうのはロクでもない野郎だったって事は分かったけど、南雲、今の話どう思う?」

 

「何かどえらい話聞いちまったって感じだな」

 

内心、過去二回有った地球危機と同レベルに、と思うがそこは口に出さないハジメだった。

 

「まっ、歴史なんて勝者や後の歴史家に好き勝手に出来るモンだからか、違ったとしても驚きはしないだろ?」

 

「それはそうだけどな」

 

最初からエヒトは胡散臭いと思っていた京矢に一切の動揺はない。

 

「……ん……どうするの?」

 

ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと尋ねる。

 

「うん? 別にどうもしないぞ? 元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思ってないからな。この世界がどうなろうと知ったことじゃないし。地上に出て帰る方法探して、故郷に帰る。それだけだ」

 

「いや、実際あの悪霊擬きの行動パターン考えると、この世界に飽きたらオレ達の地球に手を出してきそうだぞ」

 

京矢の言葉にハジメが絶句している。

 

「序でに、バカ勇者が勇者に選ばれたのもエヒトにとって都合のいい駒だからってのもあるか」

 

さらに告げられた言葉に妙に納得してしまうハジメだった。

 

「三度目の地球の危機を未然に防ぐために、元の世界に戻ったらエヒトが地球に手を出せない様にする為の方法を考えた方がいいな」

 

「最悪、帰ったら第三次世界大戦ってオチか?」

 

「もしくはミッドチルダ辺りに手を出して、其方を支配してから、オレ達の事をネタに管理世界にしようとさせて、第一次次元大戦とかな」

 

二人の間で話し合われる人類滅亡のシナリオ(原因はエヒト)。

エヒトの存在は既に地球の危機になると言う状況を考えると頭を抱えたくなる。

 

「……ユエは気になるのか?」

 

ふとユエの事が気になった。

ユエはこの世界の住人だ。故に、彼女が放っておけないというのなら、ハジメも色々考えなければならない。

オスカーの願いと同じく簡単に切って捨てられるほど、既にハジメにとって、ユエとの繋がりは軽くないのだ。そう思って尋ねたのだが、ユエは僅かな躊躇いもなくふるふると首を振った。

 

「私の居場所はここ……他は知らない」

 

そう言って、ハジメに寄り添いその手を取る。ギュッと握られた手が本心であることを如実に語る。ユエは、過去、自分の国のために己の全てを捧げてきた。それを信頼していた者たちに裏切られ、誰も助けてはくれなかった。ユエにとって、長い幽閉の中で既にこの世界は牢獄だったのだ。

 

その牢獄から救い出してくれたのはハジメだ。だからこそハジメの隣こそがユエの全てなのである。

 

「……そうかい」

 

「おー、おー、お熱いねー。それに、最悪直接叩き斬る事が出来れば、エヒトの問題は先送り出来るからな」

 

京矢はそこで結論づける。

少なくともその方法ならば暫くは何とかなるだろう。

 

「オレの目的は一つ増えたな。エヒトに一太刀叩き斬って異次元にでも封印して、バカ勇者達を置いて帰る、それだけだ」

 

エヒトをトータスにも地球にも干渉できない、退屈と言う不死殺しの毒まみれの場所に封印する。と、京矢の魔剣目録にはそう言う力のある剣があるのだ。それらを用いて確実にエヒトを封印する。そう心に誓うのだった。

 

「ん? そう言えば、なんかオレ、新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたいだぜ」

 

みたいだと言うのは京矢自体、覚えはしたもののこの魔法は自分では役に立たないからだ。そう、京矢は。

 

「マジか?」

 

「……ホント?」

 

「ああ、マジだ」

 

信じられないといった表情のハジメとユエ。

それも仕方ないだろう。何故なら神代魔法と言うのは文字通り神代で使われていた現代では失伝した魔法である。

序でに京矢達をこの世界に呼んだ転移魔法も同じ神代魔法である。

 

「なんか、床の魔法陣が神代魔法を伝授する巻物とか魔道書みたいなモンらしいな」

 

「……大丈夫?」

 

「大丈夫なのか?」

 

「ああ、全然平気だ。しかも、この魔法は生成魔法って言って、南雲の為にあるような魔法だ」

 

「オレのためだと?」

 

「……どんな魔法?」

 

「魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法だ。この世界で言うところのアーティファクトを作る根本的な技術ってトコだろうな」

 

この魔法が失われたからこそ京矢にとっては棍棒程度の聖剣ですら国宝級の品なのだろうと推測出来る。

そして、現代の地球の技術を知るハジメならば神代のアーティファクトを超える品物も作れるだろう。

 

「つまり、アーティファクトが作れるのか?」

 

「そうなるな。まっ、二人も覚えて見たらどうだ? 折角の失伝技術(ロスト・テクノロジー)を会得する機会だ。南雲は当然として覚えといて損はないだろう」

 

そう言って二人にも会得を勧める。最悪使い捨ての爆弾程度のアーティファクトでも作れれば錬成が使えなくても御の字なのだし。

 

京矢の勧めに従ってハジメとユエも魔法陣の中央に立つ。そして、京矢の時と同様に魔法陣が輝きハジメに攻略の資格があるのか確かめる為記憶を探る。そして、試練を乗り越えた者として認められたのか、

 

 

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー……」

 

 

 

 

またオスカーが現れた。内心、やっぱりなーとは思ったが長々と一度聞いた内容を話し始めた。

京矢は念の為にと注意深く聞くことにする。

 

「鳳凰寺、お前一度見た映画をもう一度見るタイプか?」

 

「ああ。一度は感動を味わって、二度目は次回作への伏線とか探す方なんだよ」

 

聞いてしまった事実の衝撃で重要な情報を聞き逃していないかと思ったが取り立てて変わった内容もなかった。

そして、二度目のオスカーの話に暇そうだったハジメとユエには話が終わるまで見ていてくれとプロジェクターと仮面ライダークウガのDVDBOXを渡す。

 

魔法陣のある部屋の壁に映し出されるクウガのOPテーマをBGMに語られるこの世界の真実は中々にシュールだった。

なお、ハジメがペガサスボウガンを再現しようと頑張り始めたのはこの瞬間からだった。

 

「どうだ? 修得したか?」

 

「ああ……したな。これなら色んなアーティファクトが作れそうだ」

 

第一弾のアイディアとしてクウガのドラゴンロッドとタイタンソードを見ていたのはハジメの中での秘密だ。

 

「おう、相性とか適性の問題で、会得は出来ても使いこなせないって感じでオレには無理そうだけどな」

 

「やっぱ、神代魔法にも相性とか適正とか有るのか?」

 

「……ん、かもしれない」

 

少なくとも、生成魔法にこの中で最も強い適性が有るのは錬成師であるハジメだろう。

 

「それにしても、今頃上で頑張ってる連中が此処に辿り着いた時、どんな顔をするんだろうな」

 

こんな鬼畜な難易度の迷宮を必死に攻略した先にあるのは錬成師専用の魔法。その時の顔は想像しただけで笑いたくなってくる。

 

「さて、オスカーさんの墓でも作ってやるか」

 

「ああ、ここはもうオレ等のモンだし、あの死体片付けるか」

 

「ん……畑の肥料……」

 

慈悲の無いハジメとユエ。情が有るのは京矢だけだった。

風も無いのにカタリと骸が項垂れたのは気のせいじゃ無いだろう。

 

取り敢えず、三人で協力してハジメの作った棺桶に入れた骸を埋めて墓石まで建てた。

流石に肥料扱いは可哀想だったので。

…………だが、地球の日本風のデザインはどうかと思うし、他の国の物も同様、そして解放者の墓にエヒト教風など論外だろうと思う中、ハジメが仮面ライダークウガのライダークレストを刻んだ上に地球の英語で『オスカー・オルクス、此処に眠る』と刻んだのは如何なのだろうか?

 

眠っているのはアークルと勘違いしてしまいそうな墓が出来た事には全面的に目を逸らしておく。

 

埋葬が終わると三人は封印されていた場所に向かった。

その際にオスカーの骸が嵌めていた指輪を頂いている。

……墓荒らしと言ってはいけない、最後までオスカーが嵌めていた以上この場所のマスターキーである可能性が高いのだ。

その証拠にその指輪には十字に縁が重なった文様が刻まれていて、それが書斎や工房にあった封印の文様と同じだったのだ。

 

まずは書斎だ。

 

先ずは一番の目的である地上への道を探らなければならない。

三人は書斎にかけられた封印を解き、目ぼしい物を調べていく。すると、この住居の施設設計図らしき物を発見した。通常の青写真ほどしっかりした物ではないが、何処に何を作るのか、どのような構造にするのかという事がメモのように綴られていた。

 

「ビンゴ! 有ったぞ、ユエ! 鳳凰寺!」

 

「よっしゃ!」

 

「んっ」

 

目的の物を見つけたハジメから歓喜の声が上がる。京矢とユエも嬉しそうだ。

設計図によれば、どうやら先程の三階にある魔法陣がそのまま地上に施した魔法陣と繋がっているらしい。

オルクスの指輪を持っていないと起動しないようだ。盗ん……貰っておいて良かった。

 

「へっ、良いもん託されたな」

 

「ああ、そうだな」

 

「……んっ」

 

既に三人の中では盗んだのでは無く、快くオスカーから託された事になっているらしい。

 

更に設計図を調べていると、どうやら一定期間ごとに清掃をする自律型ゴーレムが工房の小部屋の一つにあったり、天上の球体が太陽光と同じ性質を持ち作物の育成が可能などということもわかった。人の気配がないのに清潔感があったのは清掃ゴーレムのおかげだったようだ。

 

工房には、生前オスカーが作成したアーティファクトや素材類が保管されているらしい。これは盗ん……譲ってもらうべきだろう。道具は使ってなんぼである。

 

「ハジメ……これ」

 

「うん?」

 

ハジメが設計図をチェックしていると他の資料を探っていたユエが一冊の本を持ってきた。京矢も気になって覗き込む。

どうやらオスカーの手記のようだ。かつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常について書いたもののようである。

 

だが、その中に京矢達にとって重要な一節が有った。他の六人の迷宮に関することが書かれていたのだ。

 

「……つまり、あれか? 他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか?」

 

「間違いなくそうなるな」

 

「……かも」

 

手記によれば、オスカーと同様に六人の『開放者』達も迷宮の最深部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。

生憎とどんな魔法かまでは書かれていなかったが……。

 

「……帰る方法見つかるかも」

 

ユエの言う通り、その可能性は十分にあるだろう。実際、召喚魔法という世界を越える転移魔法は神代魔法なのだから。

 

「エヒトの野郎を始末する手掛かりもな」

 

封印か抹殺か、其のどちらにせよ、既に京矢の中では地球の安全の為にエヒト抹殺は確定事項だった。

封印の手段は有るが抹殺の方が一番安心だ。改心しようが許しを乞おうが関係ない。エンカウントしたら確実に葬り去る事を心に誓う。

 

「だな。これで今後の指針ができた。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう」

 

「ああ!」

 

「んっ」

 

明確な指針ができて頬が緩むハジメ。思わずユエの頭を撫でるとユエも嬉しそうに目を細めた。

 

(七大迷宮の攻略か、先は長そうだな。スグ、マリア姉さん、セレナ。そっちの事は風達と一緒に任せたぜ)

 

心の中でそう告げるのだった。

 

「そうだ」

 

そこまで考えると四次元ポケットの中から一つのペンダントを取り出す。

娘さんの蘇生の対価としてプレシア・テスタロッサに制作して貰った獣神鏡のファウストローブをベースにデバイスに改造して貰った物だ。

送り返す時に技術は吸収しただろうが、プレシアの管理局への取引材料になればと放置していたが。

 

「南雲、何かの役に立つだろうから、お前にやる」

 

「……マトモなモンなんだろうな、これ」

 

渡されたペンダントは間違いなくとんでもない品物だろうと思うハジメだった。

実際、かなり殺意の高い攻撃が可能な装備で有る。使えれば。

後に試してみたが、残念ながらユエには適性が低く、ハジメも女物の装備に使用を断念した。

 

それからしばらく探したが、正確な迷宮の場所を示すような資料は発見できなかった。

現在、確認されている【グリューエン大砂漠の大火山】【ハルツィナ樹海】、目星をつけられている【ライセン大峡谷】【シュネー雪原の氷雪洞窟】辺りから調べていくしかないだろう。

 

しばらくして書斎あさりに満足した三人は、工房へと移動した。

 

工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオルクスの指輪で開くことができた。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては楽園かと見紛うほどである。

 

ハジメは、それらを見ながら腕を組み少し思案する。そんなハジメの様子を見て、ユエが首を傾げながら尋ねた。

 

「……どうしたの?」

 

ハジメはしばらく考え込んだ後、ユエたちに提案した。

 

「う~ん、あのな。しばらくここに留まらないか? さっさと地上に出たいのは俺も山々なんだが……せっかく学べるものも多いし、ここは拠点としては最高だ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。どうだ?」

 

京矢はよく分からないが、ユエは300年も地下深くに封印されていたのだから1秒でも早く外に出たいだろうと思ったのだが、ハジメの提案にキョトンとした後、ユエは直ぐに了承した。

不思議に思ったハジメだが……

 

「……ハジメと一緒ならどこでもいい」

 

そういうことらしい。ユエのこの不意打ちはどうにかならんものかと照れくささを誤魔化すハジメ。

 

そして、京矢はというと、

 

「オレも構わないぜ。特に南雲にはバルカンとギャレンのライダーシステムの完熟も必要だろ?」

 

「そうだな」

 

京矢の指摘も最もだ。ギャレンもまだ使いこなしてるとは言えず、バルカンはまだ手に入れたばかりなのだ、

 

「安心しな、存分に付き合ってやるよ」

 

「……ん。私も」

 

「ああ、頼んだぜ、二人とも」

 

「おう!」

 

「んっ!」

 

結局、三人はしばらくの間、ここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになった。

 

なお、ハジメの仮面ライダーの力を使いこなす為の訓練はかなり苦労したと追記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡る。

 

京矢から見捨てられた檜山は薄れ行く意識の中でそれを見た。

 

「見つけたよ〜」

 

白い仮面のパーカーの何かが自分の前に現れる。声の感じからして女だろうと檜山は思う。

 

「バールクスの持ち主では無さそうですね」

 

新たに現れた忍者を思わせる奴の声は男だろう。

その後ろには紫の、マゼンタの、オレンジの三人の仮面を着けた奴らがいると思う。

全員が特撮ヒーローみたいな格好をしている事が檜山にそれを死に際の幻覚と誤解させてしまう。

 

「これを助けた所でバールクスへの人質にもなりそうに無いですし、この迷宮の探索も面倒ですし、彼への接触は次の機会にしますか」

 

「残念だね〜。じゃあ、これはどうする?」

 

「要らないでしょう……。いえ、もしかしたら使えるかもしれませんね」

 

忍者のような男の一閃で檜山の視界が揺れ、意識が途切れていく。

 

「彼らへの協力のためにもそれなりの駒は用意してあげないと行けませんからね。テスト素材程度にはなるでしょう」

 

「ああ〜、あれのだね〜?」

 

消える意識の中でそんな会話を聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、次に意識を取り戻した時、檜山は理解した。

本当の地獄の始まりだったという事に。

 

沢山の視界と様々な情報が彼の中に流し込まれる。体は動かない、それでも情報だけは流れ込んでくる。

分かったのは魔人族の中にそいつらがいる事、

白い仮面の女がダークゴースト

忍者仮面が風魔

その部下らしい仮面の奴らが

紫の仮面が滅

マゼンタの仮面が迅

オレンジの仮面が雷

と言う彼らの呼び名と、自分が奴らの作った人型のロボット兵士達の制御装置にされた事だった。

 

(殺してくれぇ!)

 

機械兵士達の痛みが、苦痛が一斉に流れ込む、逃げようとしても自分の意思では逃げられず痛みと情報だけが檜山には与えられる。

叫ぶ自由だけは与えられていたが、永遠の苦痛から死を懇願しても風魔からは煩いと強制的に苦痛を与えられる。

 

檜山の地獄は此処から始まったのだった。

44話でaiで作った挿絵は如何でしょうか?

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