ハーメルンの存在を忘れていた
今日は月曜日、休み明けでいっそう憂鬱な体を起こしながら朝の支度をする。6月のこの季節は、梅雨のせいで雨が少しうざったいけど、涼しくて過ごしやすいから嫌いじゃない。今日は運良く晴れたみたいだし。
「らくろー!まだー?」
「今行くからちょっと待ってな」
「はーい」
家を出て、幼なじみと一緒に登校するために彼の家に呼びに行く。私たちの家はお隣同士で、親の趣味が合う……訳ではないみたいだけど、性格が合ったみたいで仲がいい。かくいう私たちも楽羽と楽郎で名前が似ているから、っていう理由で何となく一緒に居た関係が未だに続いているけれど。
「悪い、昨日やった課題を入れ忘れててな。待ったか?」
「ううん、別に。それよりネフホロでイベント開催だってね、きのうルストちゃんが騒いでた」
「あー、らしいな。俺も夜中なのに通知で起こされたわ」
「あはは、まあルストちゃんが嬉しそうで良かったけど」
彼と話している時間はとても楽しい。ゲームの趣味が会うのもあると思うけど、なんだか生まれる前からずっと一緒だったかのような感覚がして。楽郎も同じように感じてると思う。
「今日は久しぶりにネフホロしない?最近やってなくて鈍ってるだろうから手合わせしてよ」
「お、いいぜ。ちょうど温めてた新構築があるからな、ボコボコにしてやるよ」
「きゃー楽郎くんこわーい」
「いや怖ーいってお前……やっぱ最近鉛筆に似てきたよな」
「ほんとに嫌なんだけど!?……って」
話しているうちに視線を感じたのでふと後ろを見返すと、なぜか電柱の後ろにいる斎賀玲さんと目が合った。
「あ、玲さんだ。おはよ〜。玲さんも一緒に学校行こ?」
「ひゃ、お、おはよう、ございます!……あの、いいんですか、私、なんかが、おふたりの間に、入って……!?」
「ん、玲さんおはよう」
斎賀玲さんと私たちは同じクラスで、同じゲームをしているから仲がいい。いいお家のお嬢様だけど、話しやすくていい子だ。たまに会話がラグいときがあるのはご愛嬌かな。
「ね、玲さん日本史の勉強した?」
「ひゃ、近っ、えと、一応しま、した。あの先生の授業は、予習無しだと、その、難しいので」
「さすが玲さん、このやる気が少しでもこの楽羽にあればな」
「は?楽郎には言われたくないんだけど?今日のネフホロは覚えておきなよ、頭つけて謝らせるから」
「いーや今日こそ俺が勝ち越すからな」
「あはは、その、ほどほどで、お願いしますね」
「そうだ、玲さん今日予定あったりする?ルストに誘われたから俺たちでやろうって話してたんだけど、玲さんもよければ一緒にどうかなって」
「えっ、いいん、ですか?」
「うん、もちろんいいよー。ゲームは人が多いほど楽しいし。あ、そろそろ教室着くね、じゃあまた」
「ああ、また後でな」
◇
「はーっ、楽郎さんは今日も我がクラスのツートップとご登校ですか」
「結局楽郎はどっちが本命なんだ?やっぱり幼なじみの楽羽ちゃん?」
「は?いやお前、あいつと俺はそんなんじゃねえよ」
「これがツンデレか……いや痛い痛い関節極まってる、極まってるから!」
彼は彼の男友達に絡まれていた。なんだか私たちの関係が噂されているようだ。私は別に楽郎に対して恋愛の感情がある訳じゃないけど。でも、そういう関係も悪くないかなって少し思っちゃったから、憂さ晴らしに彼に目を合わせてウィンクしておいた。なんで玲さんが顔を手で覆ったのは分からなかったけど、彼の面白い反応が見られたし満足だ。
さて、今日はなんのゲームをしようかな?