モンハン愛をカタチに2021
に飛び入りで寄稿させて頂いた作品です。
今まで出会った全てのハンターと
未だ出会っていない全てのハンターへ捧げます
俺は不器用だ。
よくある言葉だが不器用とはいろんなパターンがある。
女性に耐性がなく距離を取る為の言い訳にしてるやつ。
口下手でうまい事周囲に馴染めない、空気を読めず場面を白けさせるやつ。
そんなメンタルというか内面的な話ではなく、単純に細かな作業に適性が無い。
俗にいうと「ぶきっちょさん」
粘土で作ったアイルーを親に見せた時に言われた言葉は「りっぱなかまど」
仲間と木材を削って誰が一番うまくランポスを作れるか大会に参加した時、
俺の渾身の力作は「特級呪霊」「樹木レイプ犯のお手本」「シュレイド城跡地の遺体」
「怨念の力が封じられた素材。その内には怨念の力が封じられている」
との評価だった。それが俺だ。
生まれた所は自然豊かな雪山にある小さな村で、
作物や工芸品とか作ったりして細々と生活している村だ。
俺は綺麗なものが好きだった。雄大な大地、満天の星空、
村の人たちが木や鉱石を削り作り出す人形や装飾品。
そして村の奥にひっそりと、それでいて雄々しく、
堂々と突き刺さっているクソデカい剣を眺めるのが特に好きだった。
そんな剣とまだ見た事のない雄大な景色に憧れ、
ハンターを目指して村を飛び出すのに、
それほど時間はかからなかった。
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「はぁー…」
俺はテーブルに突っ伏して、大きな溜息をついた。
吐いた息は白く色付き澄んだ空気に溶けて行った
生まれ育った雪山を思わせるような雪、氷、山々。
ただ大きく違うのはわけのわからん機械や、
いろんな人(竜人含む)、
そしてあちこちから湧き出ている蒸気と温泉。
そう俺は調査団が目下探索中である話題の場所、
【セリエナ】に来ている。
俺なりに多くの時間と狩猟とクエスト、そして仲間や友との出会い、別れを重ねてきた。
ハンターってのはいろんなヤツがいる。人の為になる事第一主義、
世話になったヤツへ恩返しや憧れの人に追いつきたい、
最新のオシャレ防具作りの為の変人やとにかく早くモンスターを狩猟したい戦闘狂、
あとゲリョスとかいうのを彼女と呼んで肌で感じたいとかいうガンナーもいた
ハンターを続けてきて分かったんだが、長年ハンターをやってるやつらは、
みんなキチガイだ。どこでいつ、くたばるかもわからん場所へ、
飛び込んでいくんだ。頭がイカれてるとしか思えない。
「冴えない顔っすね」
テーブルで突っ伏している俺に頭の中身だけじゃなく、
外側までイカれた男が話しかけてきた。なんだあのトサカ。
「アンタの髪型に比べりゃ誰だって冴えないだろうよ」
「あんまり見ない顔っすけど、最近来たハンターさんすか?」
どうやら会話の回避性能が高いらしい。もしくは高級耳栓持ちかだ
「まぁそんなとこ。ちょっとやりたい事があってな」
「へぇなになに!自分ここも長いし顔も広いんで何でも聞いて欲しいっス」
普通の酒場で現れるこういった奴は大抵詐欺師か娼館の客引きだ。
本来なら銅貨数枚かそれよりも固いモンをお渡ししてご退場頂くところなんだが、
ここは【セリエナ】。調査団以外にはハンターかそれの関係者ぐらいしかいない。
見る限りハンターみたいだし。こいつも頭がイカれてるクチだろう
どうせ行き詰っているのは事実だし、旅の恥は掻き捨てってやつだ。
「笑わないでもらえるとありがたいんだが、あの凍て地に山があるだろう?」
「そうっすね」
「あの頂上からの景色が見たいんだ」」
そう、長年ハンターをやってる俺もキチガイでどっかイカれてるクチだ。
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俺は不器用だ。でも綺麗なモンが好きだ。
ハンターには名声や装備やもらった勲章だか称号だかを後生大事にするタイプがいる。
凶悪な飛竜や伝説級の古龍と戦う方がドンドルマにお屋敷もらうより幸せってヤツもいる。
俺も強い魔物と物語よろしく仲間と力を合わせて闘う事だって嫌いじゃない。
ただそんな事より何より、火山の火口付近で赤く輝く溶岩、森と丘に広がる大河と山脈、
時の流れを感じる古塔、いろんな景色を眺める事が好きなんだ。
「ロマンチックな話っすね」
「ただ問題があってな。これだよ」
そう言って俺は左腕を出した。
「なんすか?」
「ついてるだろ?」
「ついてますね。左腕を無くしたとかかと思ったらあるじゃないすか」
「それじゃない。こいつだ」
そういってコンコンと上腕部についたそいつを叩く
「えーと、スリンガーすか」
「そう。こいつをうまく使えるヤツがいたら紹介してくれないか」
思い出してほしい。俺は不器用なんだ。
このスリンガーだかクラッチクローだかは俺の不器用さを、
深く自覚させてくれるのにはこれ以上ないくらいの逸品だった。
まっすぐ飛ばない、石がハマらない、ハジケクルミは顔面でお祭りをする。
大団長とかソードマスターとかいう人が調査団にいるらしいが、
その人達は「投げたほうが早い」とか言ってるらしい。全面的に賛成だ。
しかしこの新大陸や凍て地ではとにもかくにもスリンガー、スリンガーで、
キラキラしてる蟲にめがけてバヒューンとやらないとままならない。
そんなこんなで頭の中と外がイカれた男から紹介されたのは、
この辺で一番のハンターだった。希望とか星とか相棒とかゴキ団とか。
悪口なのかとも思ったがいろんな呼ばれ方をしているらしい。
目元しか出ていない防具で男か女か見分けが付かなかったが、
とにかく無口なヤツだった。今までも会話らしい会話をせず、
頷いたり、ジェスチャーで生きてきたらしい。こいつもどっかイカれたお仲間だ。
そいつは何かをしてくれるわけじゃなかった。
逆に何も説明してくれなかった。喋らないんだから当然だ。
凍て地の雪が冗談みたいに積もっている所を抜け、温泉に浮かんでる猿を横目に、
凍った大地やツタの絡んだ壁を乗り越え問題の箇所にたどり着いた。
山の頂上に行くためにはキラキラした蟲にスリンガーでつかまり、
そっからジャンプしてまた空中でキラキラした蟲に以下略
って具合に不器用な俺にしてみれば雪山で獄炎石取ってこいってくらい無茶な話だ。
頼みの綱はこの敏腕ハンター様なんだがこいつは、
自分で飛んで戻ってきて、頷くだけ。そんだけ。
いや、わかるかボケ
ただそいつは何度でも付き合った、何十回でも付き合った。
最初よりうまくなれば嬉しそうに頷き、惜しいところまで行ったら一緒に悔しがり、
レイギエナの鳴き声がしたら、なんか葉っぱで出来たような服を着せられて、
その間だけ、ふらっといなくなった。しばらくしたらまた戻ってきて繰り返し。
何度も何度も落ちた。何度も何度も諦めかけた。
でもその都度、こいつは肩を叩き、落ちた俺を引き上げ、
ホットドリンクと肉を渡し、仏頂面で礼をいう俺に見えてる目元だけで微笑んだ。
何度目、何十回目、何百回目かわからない
スリンガーで飛び上がって、また飛びついて、
更に飛んだあとに上に向かって飛び上がって、
ようやく、ようやく成功した。声に鳴らない声で叫んだ。指先は感覚が無い。
寒さとは別の震えが止まらなかった。
でもなんかここ…え?頂上じゃない。
感動もつかの間、
俺の目の前に更なる壁が立ちはだかった。
いや比喩でもなんでもなくマジで壁だ。
なんなん?嫌がらせなのか?
俺はただ景色を見たいだけなのに世界冷たすぎん?
凍て地だからって調子のんなよボケ
あいつは近くで拍手を送った後、壁に向かって走り出し、
ヒョイヒョイっと壁を蹴って、蹴って壁をよじ登り、
そしてまた帰ってきた。え?なにこれ。
なんか遠い地の青い岩男×とかいうやつがやってる
ダッシュ三角跳び??世界線違くない??
ただスリンガーを使わないで済むならまだ希望はある。
ここでもまた何度も何度も失敗したがなんとか乗り越えた。
壁を越えた先にまた謎の壁があり絶望して、
壁の前でウゾダドンドコドーン!してたら急に空を飛んで、また登った。
あいつは先を歩いてこっちこっちあそこに行こうと指差しで案内してくれた。
そうして、どれくらい時間が経過したかわからないが俺はとうとう、
とうとう山の頂上へたどり着いた。
空が近い
星が掴めそうだ
鋭く天に向かって伸びた山脈は星空をかじり取ろうとしている顎にも思え
足元を見ればいくつもの鉱石が宝石のように散らばり、天からの光を乱反射していた。
やけに顔が痛いと思ったら頬を伝った涙が凍り付いている。
顔から剥がしたかつての涙は風に乗り星の海と大顎の狭間に飲み込まれていった
俺は不器用だ。でも綺麗なモンが好きだ。
何度も失敗して、何度も何度も失敗して、
傷だらけでボロボロになり不細工なモンしか生み出せなかった俺の手だが、
汚いはずなのに今日は不思議と悪くない気がしていた。
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「んで、その後どうなったんすか?」
「一通り感動した後、まともに喋れねえのかボケって罵倒してから一緒に帰った」
「…怖いモン知らずっすね。あの人魔獣とか伝説級の竜も討伐してきたすごい人っすよ」
「げ…マジかよ」
頭の内外がブチ切れたヤツと一緒に俺はテーブルで杯を傾ける。
見たいものは見れた。今でも瞼にあの感動は焼き付いている。
キラキラ蟲に無限回バシューンとやったのも今となってはいい思い出だ。
あ、そういえば散々罵倒したがあいつに礼を言うのをすっかり忘れていた。
「そういえばあの人なんすけど、指名でクエスト入ったんで遠出してるんすよ。
なんかユクモ村よりも更に先にすごい山やら社跡とががあるトコみたいっす。」
「へぇ・・・」
またあの頂上からの景色を見たい気持ちもあるが人生は短い。
ハンターとして生きられるのはもっと短いだろう。
見たことのない感動を探すためにまた旅をするのも悪くない。
「んじゃ俺もそっちの方に行ってみるかな。今回の礼を伝えそびれてた事だし」
「いい景色もありそうっすからね。あ、でも」
「ん?」
「なんか崖とか登るのに変わった蟲、手懐けて崖走るみたいっすよ?」
「え??蟲??崖…走るの??????」
to be continued ?
お読み頂きありがとうございました。
この作品ではあえて主人公の性別も武器も語っておりません。
主人公であるハンターはかつての貴方で歴戦のハンターは
現在の貴方なのです。的な事を考え執筆致しました。
また機会があれば続編を書かせて頂きたいと思います。
ここまで読んで頂きありがとうございました!