友人に頼まれて作ったFate二次創作(タイトル未定)   作:骨紳士

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この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ

 

 

 

 

 

 聖杯戦争とは。

 要は殺し合いであるらしい。

 

 

「流石に端折り過ぎだぜ、マスター」

 

「そうか?」

 

「おう、見ろよ目の前の新人(ブロンズ)を。イアソンと会った時のヘラクレスみてぇな顔してる」

 

 

 どういう顔だ、それは。

 というかなぜ、この男はそんな顔を知っているのだろうか。

 

 

「そりゃあお前、決まってるだろ?俺がその場にいたからさ。何せ俺はアルゴノーツ号に乗っていた、ギリシャでも屈指の英雄だからな!」

 

「ああ、新人(ブロンズ)。普通こういう真名に関するヒントは敵に教えることじゃあねぇからな?俺らの場合、有名すぎて調べればすぐわかるから隠してないだけだ」

 

「まあ、“殴る方のアーチャー”なんて不名誉な名で呼ばれちゃいるがな」

 

「お前が出し渋ってまともに弓を使わないからだよ。それで俺をゴールドに導いたんだから文句はないが、たまには本気出してくれていいんだぜ?」

 

「出せる奴がいりゃ出すとも」

 

 

 ゴールド?

 

 

「おっと、説明の途中だったな。まあ、論より証拠だ。『実物』を見た方が早いだろ」

 

 

 俺を新人(ブロンズ)と呼ぶ男。俺の身の丈よりも巨大な大弓を背負った男から()()()()と飛ばれているそいつは、実に楽しそうに、鉄に似た素材で作られた自動扉を開ける。

 自動扉の向こうから光と音が漏れだす。闇を切り裂くような極光と、耳をつんざく爆発音。

 

 

聖杯戦争(殺し合い)にようこそ新たな犠牲者(ブロンズ)。盛大に楽しもう」

 

 

 それはきっと、地獄の入り口だったのだろう。

 けれど俺に選択肢など存在しない。

 

 

「──やってやるよ」

 

 

 威勢だけはつけてやり、一歩その扉の向こうに踏み出した。

 さようならマシだった俺、初めましてクソみてぇな俺。

 多分ここから、俺はクズに落ちていく。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 まずは、状況を把握しようと思う。

 俺が知ってる空というのは、青いキャンバスに無数の雲が揺らいでいる美しいもののはずだ。時折雲が黒くなったり、雨が降ったりするもののはずだ。

 

 だというのに、この街の空には青はない。

 あるのは鉄の色をした天井と、天に繋がるエレベーターみたいなものだけ。

 碌に記憶は残っちゃいないが、少なくとも俺の住んでる街はこんな場所じゃないのは確実だ。だとすればここはどこなのだろうか?と思った矢先に、己を先輩と名乗るこいつと出会ったのだ。

 

 

「ビビッと来たんだよ、あんたには。ああ、こいつなら俺らのいる場所に這いあがってくるだろうなって。他の銅色(ブロンズ)共とは違う、オーラってのか?」

 

「そもそも、ここがどんな場所かも分かっちゃいないんだが」

 

「ああ、そこからか?いや、そこからだったな。悪い悪い、逸っちまった」

 

 

 最初に目が覚めた時、俺はゴミ山のような場所にいた。

 ここに来る前のことを思い出そうとしても、思い出せるのは断片的な風景と、己自身の名前だけだ。それだけなら記憶喪失で済むのだが、生憎とホログラムなんてものがそこら中で当たり前のように存在してる、SFチックな風景にはこれっぽっちも覚えがない。

 

 ゴミ山を下り、当てもなく街を歩き回っている内にこの男と出会い。

 なぜか初対面で気に入られ、強引に腕を引かれてこの場所についての説明を受けている、というわけなのだが。

 

 

「実を言うと、俺達もここがどんな場所か、ってのは具体的にゃ分からねぇんだよ」

 

「なんだそりゃ。あんた、さっきの話だと何年もここにいるんだろ?」

 

「おう、実に長い年月をこの街で……より正確には、この街から二つ上の階層で幾星霜を過ごしたんだがな。それでも尚、なんで俺がここにいるのか~とかは把握できちゃいないんだ」

 

「それじゃ、俺に何を教えてくれるんだよあんた」

 

「おいおい口が悪いぜ新人(ブロンズ)金色(ゴールド)の先輩は敬っておくべきだ」

 

「まずその銅色やら金色やらが分からねぇんだよ俺は!」

 

 

 本当に分からないことだらけだ。

 俺がこいつから聞き出せたのは、この街では『聖杯戦争』と呼ばれる行事が存在すること。

 そしてその聖杯戦争とは、つまるところ殺し合いであるということくらいだ。

 

 

「落ち着けって新人。ほら、聖杯戦争ってのはあれのことだ。さっきからお前も釘付けだろ?」

 

「……」

 

 

 東京ドームほどの会場の中には、四方に巨大なモニターが取り付けられたテレビのようなものがあった。そのモニターには、人知を超えた戦いを繰り広げる人間(彼が言うにはサーヴァント)と、それを従える魔術師(彼が言うにはマスター)の姿がある。

 

 剣、弓、槍。棍棒に素手、果ては近代兵器やファンタジーな魔術、あと怪獣みたいな乗り物。普通ならば戦いで有利なのは剣より銃で、銃より怪獣とかの方が強いはずであろう。

 

 しかし、聖杯戦争においては、朧気に覚えていたその常識は通用しないらしい。

 

 

「剣で銃の弾丸をはじくって芸当を、実際見ることになるとはな」

 

「あんなもんサーヴァントならほぼ誰でもできる。マスターでも、そこそこ腕のあるやつならできるぜ。例えば俺とかな!」

 

「……もしかしてだが。俺はあんな化け物共の戦争に参加しなきゃならんのか?」

 

「残念ながらな。そうしなきゃここでは生きていけない」

 

 

 どうやら来て早々、俺は死ぬことになりそうだ。

 

 

「ああ、そんな絶望したような顔するなよ新人!あれはゴールドランクの聖杯戦争。数いるマスターとサーヴァントの中でも、それなりにレベルの高い奴らの戦いだ。お前が今いるブロンズランクは、戦闘に秀でてないサーヴァントやマスター、もしくは一度も聖杯戦争を経験したことがない新人達だ。お前と条件は同じだよ」

 

「何度もやることになるのかよ」

 

「まあな。だが、負けたからって死ぬわけじゃない。見ろよ」

 

 

 促されモニターを見てみると、参加していたマスターの一人が、負傷しまともに戦えなくなったサーヴァントを抱え、戦場を囲むように配置された赤く光る線を踏み越える。

 次の瞬間にはその二人は最初からいなかったかのように消え、跡には『SURRENDER』と書かれた赤い文字が残るだけだ。

 

 

「あれは?」

 

「戦場を一定距離離れると、そのサーヴァントとマスターは敗北したものと見なされる。勝者の栄誉は得られないが、代わりに命は拾えるってことだ。危なくなりゃ、ああして逃げればいい」

 

「……殺し合い、なんて物騒なこと言った割には案外生き残れるんじゃないか?」

 

「ま、普段ならは。今回はちと違うが」

 

 

 どういうことかと聞こうとして、モニター越しに流れた悲鳴でギョッとする。

 見れば、おそらくは俺より少し年下くらいの女の子が、血が滴る大剣を抱えた大男を従えて、サーヴァントを失ったマスターにゆっくりと歩み寄っていた。

 

 

『助けてくれ!QP(クォンタムピース)なら幾らでも払う!だから命だけは……!』

 

『やって、バーサーカー』

 

 

 その嘆願を聞き入れず、振り下ろされた大剣の錆へと変わるマスター。

 人の命が奪われる光景を見て、胃から何かが込み上がる。

 

 

「やっぱり処刑人の戦いは見ごたえがあるねぇ」

 

「処刑、人?」

 

「ゴールドランク最多の殺害数から名づけられたあいつの異名だ。サーヴァントのクラスはバーサーカー、真名は『ホグニ』。北欧神話の英雄だな」

 

 

 人が殺されたというのに、眉一つ動かさずそいつは異名の由来を説明する。

 他の人間も、嫌悪を現すどころかむしろ歓声を上げ、その少女を讃えている。

 まるで、闘技場のような狂騒がそこには広がっていた。

 

 

「殺した場合、得られるランクポイントが多くなるからなぁ。ああ、QPってのはここでの通貨のことだ。たしか、由来は量子とかだっけか?」

 

「……死んだ奴は、どうなるんだ?」

 

「ん?別にどうもねぇよ。死んだら死ぬだけだろ?」

 

 

 イカれてる。

 

 

「おいおい、そんな顔するなよ。言ったろ、殺し合いだって」

 

「何が目的で、こんなこと」

 

「人それぞれだ。あー、ここではランク制度ってのがあってな。お前は今ブロンズで、碌に寝る場所も確保できないような状況だが。俺のようなゴールドランクは、毎日のように遊び呆けていても有り余るほどのQPがある。聖杯戦争に参加すればそれだけで金が貰えるから、それが目的の奴がだ大多数だな」

 

「……じゃあ、少数派はなんなんだ?」

 

「聞きたいか?」

 

 

 その笑みに思わず後ずさる。

 鉄の空を見て、彼は実に楽しそうに言う。

 

 

「ランクとそれに伴う階層は四つ存在するんだ。ランクを上げるごとに、一つ上の階層に上がる権利と、上のランクの聖杯戦争で戦う出場権を得る。ランクが上がれば上がるほど、生活水準が高くなり、遊べる時間は増える。それだけが目的ならゴールド、妥協するならシルバーで充分。しかし、ゴールドランクの中にはその上。プラチナランクを目指す奴らが存在する。俺もその一人だ」

 

「何のために」

 

「聖杯だよ」

 

 

 それを聞いて、一瞬脳裏に何かが過る。

 けれどそれは泡となり、何も残さず消えていく。

 

 

「聖、杯?」

 

「そう!最上ランクであるプラチナランクの更に上。そこには、この施設を作り上げた天上の杯……聖杯というものが存在するらしい!」

 

「ここを、作り上げた?」

 

 

 馬鹿げている。

 見渡す限りの都市群と、果てが見えぬ地平線。

 それが少なくとも四つ存在するこの施設を作り上げたのが、一つの杯?

 

 

「驚くのも無理はない。事実俺も初めて聞いたときは驚いた。しかし、皆確信している。その聖杯をつかみ取れば、そいつはこの施設の王となり。この施設が作られた意味を知ることができると。いいや、それだけじゃない!あらゆる望むをかなえられると!」

 

 

 その熱気は留まることを知らず、俺はそれに気圧され少しずつ壁に追いつめられる。

 狂人の戯言としか思えないそれは、しかし真実だと確信させるだけの力があった。

 

 

「俺達自身はなぜここにいるのかは分からない。なぜこの場所が作られたかも、誰が作ったかも。しかし、脳裏に刻まれているのさ!『聖杯』を掴み取れと!」

 

 

 それを聞き、確信する。

 この施設を作った奴は。

 

 

「気狂い共め」

 

「お前もそうなるさ」

 

 

 実に実に、狂っている。

 

 

 

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