Dragon ball ODYSSEY   作:キセツ

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 さてと、確かフリーザの宇宙船が地球に向けて降下するところで話が終わったかと思います。TCGはフリーザ軍から地球を守る事が出来るでしょうか?では本編へどうぞ。


支配の中で 前編

 ティガの力が覚醒してから数日が経過した。各都市ではフリーザ軍の侵略行為が激化し、避難所が飽和状態になる程の状態だった。大吾は西の都の防衛部隊と合流し、フリーザ兵と戦闘を開始していた。ティガの力をある程度理解し、戦闘能力も向上しているが大吾には一つ、大きな弱点が存在していた。それはブロリー達の様に空を飛ぶ事が出来ない事だった。その為、本部から出撃する時は、ヘリコプターによって現場へ急行していた。その為、空を飛ぶ事が出来るフリーザ兵との戦闘では苦戦を強いられていた。空中からのヒット・アンド・アウェイによって、大吾一人では勝てない戦闘がいくつもあった。防衛部隊との連携やピッコロによる増援によって窮地を脱していた。

フリーザ兵A「なんだって言うんだよ!コイツ!」

 フリーザ兵の一人が頭に血が上り、大吾に殴り込みに行く。大吾は右腕に装備されているガントレッドから光の刃『ゼペリオンスピア』を出現させる。ゼペリオンスピアは伶花によって命名されたティガが持つ専用武器である。それをフリーザ兵の攻撃に合わせ、胴体に横一文字に切り込む。フリーザ兵は力が抜けたかの様に倒れ、動かなくなる。大吾はゼペリオンスピアを構え直し、残りのフリーザ兵と睨み合う。フリーザ兵は徐々に後退していく。大吾はそれを見て、額のクリスタルに手を当て、ティガの鎧を解除する。大吾は半壊した大きな建物へと向かっていく。中は外装より被害が少なく、資料などが散乱しているだけだった。

老人「おぉ、来てくれたか」

 散乱した資料の山から眼鏡をかけた老人が頭を出した。大吾の姿を確認すると資料の山から抜け出し、大吾に近寄る。

円佳大吾「あの、あなたが『ブリーフ博士』ですか?」

ブリーフ博士「いかにも。私がこの『カプセルコーポレーション』の社長。ブリーフ博士じゃ」

 ブリーフ博士は大吾をカプセルコーポレーションの社内に建設された地下室へと案内する。地下室の照明を点けると部屋の真ん中に長方形の机と壁沿いに棚がびっしりと並べられており、大吾から向かって右側の壁には大型のモニターと専用のキーボードが置かれていた。ブリーフ博士は大吾からインカムを貰うと、インカムを大型のモニターに繋がっているコードに接続し、キーボードで操作する。モニターにTCG本部の司令室が映し出される。

パラガス「こちらの様子が見えておりますかな?ブリーフ博士」

ブリーフ博士「バッチリじゃ。えーと確か今回はそちらの開発部と研究部の者が提供してくれたこの・・・」

パラガス「フリーザ兵が使用していた兵器のデータで、兵器を開発していただきたいのです。現状の我々では案を出す事は出来ますがそれを開発する為の技能が足りていないのです。そこでカプセルコーポレーションの社長である貴方に依頼したいのです」

ブリーフ博士「ワシはあくまで平和の為に自身の科学力を使用したいんじゃが・・・兵器なんて、戦争の火種を産みかねんのだぞ」

パラガス「それは十分承知の上です。我々はフリーザ軍から地球の未来を守る為、今は力を必要としているのです。お願いです。我々に協力してください」

ブリーフ博士「んぅ、少々時間をくれぬか?考えさせてほしい」

 ブリーフ博士はパラガスとの通信を切ると、近くに置いてあった椅子に座り込んだ。腕を組み、深々と考え込む。大吾はブリーフ博士の邪魔にならぬ様、遠くの棚に近づき、差し込まれている資料の一部分を読み始める。難しい数式や理論が並べられており、大吾は資料を深々と読み込む。

ブリーフ博士「大吾君だったかな?もしや君も科学者としての研究を?」

円佳大吾「いえ、僕は考古学の方を少し」

ブリーフ博士「考古学とな。ほほぅ、古の文化を研究し、現代(いま)にその技術を活かす事が出来る。何故考古学を?」

円佳大吾「それは・・・惹かれたからです。不意に興味を持ってしまって」

ブリーフ博士「なんであれ、同じ研究者同士じゃ。少し話そう」

 ブリーフ博士は大吾の目を見つめる。大吾はブリーフ博士の視線に少し恐怖感を抱くがそれと同時に力強さを感じていた。

ブリーフ博士「こんなに若くして、今は我々の為に戦ってくれているのか・・・ありがたいのぉ。もしかしたらその時から運命づけられていたのかも知れんな」

円佳大吾「その時?いつですか?」

ブリーフ博士「君が考古学に惹かれた時じゃよ。そのティガが君を呼んでいたのかもしれんと思ってなぁ」

円佳大吾「ティガが僕を?信じられないな。なんで僕なんだろう」

ブリーフ博士「それが分かったら君はどうする?もしその理由が残酷な理由だったり、しょうもない理由だったりしたら?」

円佳大吾「多分逃げ出すと思います。そんなの僕には荷が重いって思って」

ブリーフ博士「そうじゃな。だからそうするしか出来ない様仕向けたのかもしれんなぁ。それに関しては憶測に憶測を重ねるしか方法がないからのぉ。さてとワシの方もそろそろ答えを出さないとなぁ」

円佳大吾「そろそろってまだ時間はあると思いますが」

ブリーフ博士「実は協力しようとは前々から考えておった。だが心のどこかにまだ協力したくない、私の開発した物で誰かが傷つくんじゃないかと考えてしまうのさ。だが君の目を見て思ったよ。君のような優しい人になら喜んで力を貸そうとね」

円佳大吾「本当ですか?」

ブリーフ博士「こんな状況に嘘はつかんよ。さて、行くとするか大吾君」

 ブリーフ博士は大吾の肩を軽く叩くと、大吾にインカムを返すと地上へと向かった。地上へと向かい、外へと向かう。外に出るとピッコロが空から降りてきた。

ブリーフ博士「おぉう、ピッコロさんか。貴方もいるとはな」

ピッコロ「仕方なくコイツらの手を貸してやってるだけだ」

ブリーフ博士「ハハハ、いつも通りで何よりだ。そんな事より、今からお主らの職場に行かねばな。そ〜れ」

 ブリーフ博士が笑いながら手のひらサイズのカプセルのスイッチを押し、地面に投げると人間サイズの鮮やかな色の煙が発生する。煙が晴れるとそこには四人乗りの小さな車が置いてあった。カプセルコーポレーション社が開発した『ホイポイカプセル』であった。

ブリーフ博士「さてと、ちょっとしたドライブをしようかのう」

 ブリーフ博士は大吾とピッコロに車に乗るよう勧め、後部座席に座る。エンジンをかけ、緩やかに速度を出す。車でTCG本部へ向かっている途中、大吾はピッコロに話しかけた。

円佳大吾「あの、前々から聞きたかったのですが・・フリーザと何か因縁が?」

ピッコロ「オレがナメック星人なのはパラガスから聞いていたな?」

円佳大吾「え?あっあぁ、確かあの時でしたっけ?」

ピッコロ「覚えていたか。オレは地球育ちのナメック星人だ。だが誰にだって故郷がある。オレは地球で生まれたが大概のナメック星人はナメック星で暮らしているのは想像できるか?」

円佳大吾「地球人が地球で暮らしているのと同じ・・・と考えていいんですか?」

ピッコロ「まぁ大体正解か。そのナメック星で・・・奴と戦った」

円佳大吾「感動的な里帰りとはいかなかったんですね」

ピッコロ「ジョーダンのつもりか?まぁ良い。そこでオレは・・いやオレたちは奴や奴が率いた軍団と戦った」

円佳大吾「オレたちって事はブロリーさんやパラガスさんとも一緒に戦ったんですか?」

ピッコロ「いや、アイツらとはフリーザとの戦いが終わった後にあった。サイヤ人の生き残りと聞いて最初は警戒していたが、『孫』のような穏やかな奴らで少々驚いたがな」

 大吾は淡々と語るピッコロの方に目をやったまま、空いた口が開いたままの状態だった。

ピッコロ「どうした?まだ伝えるべきことを伝えてないぞ?」

円佳大吾「伝えておきたいこと?」

ピッコロ「そうだな。オレやベジータ、それにお前とは面識はないが他の戦士は一度死んでいるのさ」

円佳大吾「え!?しっ死んだ!?それって・・?」

ブリーフ博士「本当じゃよ。ピッコロさんたちは一度死んでおるんじゃよ」

円佳大吾「あの、えっと?つまり・・ゾンビか幽霊?」

ピッコロ「何故そうなる・・そうか、オマエは『ドラゴンボール』を知らないのか」

円佳大吾「ドラゴンボール?なんですそれ?」

ピッコロ「ドラゴンボールというのはな。世界中に散らばった7つ存在する球を集めることで『神龍(シェンロン)』を呼び出す物だ」

円佳大吾「その神龍を呼び出すとどうなるんですか?」

ピッコロ「願いを一つ叶えられる。一度だけだが死者も蘇らせる事も可能だ」

円佳大吾「だから死んだはずのピッコロさんがいるんですね・・」

 大吾博士不思議そうにピッコロの全身を確認する。ピッコロは険しい顔をし、咳払いをする。大吾はその咳払いを聞くと姿勢を正した。恐る恐るピッコロの顔を見て、疑問に思った事がある。

円佳大吾「あの、そのドラゴンボールを使えば、フリーザ軍をなんとか出来るのでは?」

ピッコロ「それは無理だな」

円佳大吾「え?だってドラゴンボールはなんでも願いが叶うんじゃ・・」

ピッコロ「ドラゴンボールはもう存在しない」

円佳大吾「え?」

ピッコロ「ドラゴンボールはな、作った『神様』が死ぬとな、ただの石になるんだよ」

円佳大吾「つまり、神様が死んだって事なんですか?」

ピッコロ「死んではいない・・・ここにいる」

 ピッコロの真剣な眼差しに嘘はついていない事がわかった。大吾は固唾を飲むとピッコロは大吾の方に向き、続きを話し始める。

ピッコロ「戦闘型のナメック星人は他のナメック星人と『同化』する事が出来る」

円佳大吾「同化?同化ってあの二つが一つになるあの?」

ピッコロ「そうだな、よって片方の人格と身体が消える。オレは今まで2回同化をしてきた。初めはナメック星で瀕死のナメック星人と。そして次に」

円佳大吾「神様と?」

ピッコロ「そうだ。元々オレと神は同一の存在だったらしい。正確にはオレが生まれ変わる前がだが。今はそんな事は今は関係ないな。同化した事により、神は消えた。よってドラゴンボールも消える」

円佳大吾「だから使えないと?」

ピッコロ「そうだ。どの道、神はもう持たなかったらしい。それに他のナメック星人も今は別の惑星で豊かに暮らしているはずだ。そんな奴らにオレたちのわがままを押し付けるわけにはいかんからな」

円佳大吾「ピッコロさんって意外に優しいんですね?」

ピッコロ「喧しい!・・・着いたようだぞ」

 ブリーフ博士が運転していた車がTCG本部の地下駐車場に止まり、三人は車から降りた。ブリーフ博士は車をホイポイカプセルに戻し、ピッコロを先頭に司令室へと向かった。司令室にたどり着くとパラガスは少々驚いた顔をし、ブリーフ博士に向き直す。

パラガス「これはブリーフ博士、貴方から来てくれるとは。通信で済まそうとしていたので。御足労感謝します」

ブリーフ博士「いやいや、彼のような者を見ていたらじっとしていられなくてなぁ」

 ブリーフ博士は大吾の肩を軽く叩きながら、笑っていた。大吾は少々困った顔をし、ピッコロの方に視線をやるがピッコロはそれを黙って見ているだけだった。

ブリーフ博士「さてと、パラガスさん。貴方からの頼み事ですが受けようと思いましてね」

パラガス「おぉ!それは心強い事です。人員のことでもそうですが貴方には頭が上がりません」

ブリーフ博士「構わんよ。この地球を故郷と呼んでくれる君たちが尽力しているのだ。地球人であるワシが何もせずにいる訳にはいかん。さてと部屋は何処かな?早速案内してもらおうかのう」

 ブリーフ博士とパラガスは軽く握手をすると近くにいたTCG隊員がブリーフ博士を案内して行った。パラガスはそれを見送ると大吾とピッコロの方に視線を向ける。

パラガス「君が西の都でフリーザ軍と戦闘中、思わぬ事態になってしまった」

円佳大吾「思わぬ事態?もしかして何処かの都が?」

パラガス「そうだ。ポイント75とポイント13、この二つがフリーザ軍の手に落ちた」

 パラガスはオペレーターの一人に指示をし、指示を受けたオペレーターはキーボードを使用し、モニターを操作する。大吾は二つの映像を目の当たりにした。一つは筋肉質な赤い皮膚の異星人が防衛軍を壊滅状態に追いやっていた。戦い方として侵略者とは思えないほど周りに被害を出さないようにしていた。もう一つは細身の青白い肌をした異星人が目にも止まらぬ速さで動き、瞬きもする暇のないまま、壊滅になっていた。こちらの方は建物が原型を留めておらず、最初に見た映像と対照的だった。

パラガス「彼らは恐らく、フリーザ軍の幹部またはフリーザの側近だと私は考えている」

円佳大吾「だとしても相手が本気を出してきたという事には変わりはないですね」

パラガス「そうだ。それにフリーザ軍の宇宙船はここから離れた荒野に停泊しているという情報も得た。それともう一つ」

 パラガスは再びオペレーターに指示を出すとモニターには、複数枚の画像が映し出される。その画像に映る異形の生き物にはツノのようなモノを頭に生やした怪物や翼を生やした怪物、両手が鎌のような怪物が映っていた。大吾はツノの生えた怪物に見覚えがあった。夢の中に出てきた怪物とそっくりだったのだ。

円佳大吾「これは!?なんでこいつが」

パラガス「どうやら見覚えがあるようだが、コイツらは突然として街中に現れ、人々を襲い、破壊の限りを尽くしていた。現在は翠くんたちが調査に向かっているのだが」

円佳大吾「宇佐美さんたちが?」

パラガス「彼らからの提案だよ。もしかしたら遺跡で情報が得られるかもしれないからな。もちろん護衛としてベジータが付いてもらっている。君たちにも後を追って欲しいと思ってな」

円佳大吾「はい!行きましょうピッコロさん」

ピッコロ「オレを自然な流れで巻き込むな。ベジータならオレたちが行かなくても問題はない。行くならオマエ一人で行け」

円佳大吾「それじゃ、行ってきます」

 大吾は早々と司令室を出ようとするが、突如司令室に緊急を告げるアラートが鳴り響く。オペレーターが慌てて、状況を調べるとパラガスたちに大きな声をあげる。

オペレーター「ポイント80に先ほどの怪物が二体出現しました!」

パラガス「大吾くん、悪いがこちらに向かって欲しい」

円佳大吾「はい。あの一つだけ聞いて良いですか?」

パラガス「なんだい?」

円佳大吾「ブロリーさんは何処に?」

パラガス「あぁ、ブロリーなら『神殿』行ってもらったよ。ある人を呼びにね」

円佳大吾「あの、神殿ってなんですか!?」

 大吾が質問をしようとするとピッコロが後ろから大吾の腕を掴み、引きずっていく。最初は足掻いていたが徐々に大人しくなり、連行されて行った。

円佳大吾「ピッコロさん、神殿ってなんですか?」

ピッコロ「神とその神の使いが住んでいる場所だ。今は使いしか居ないがな」

円佳大吾「じゃあその使いの人を呼びに行ったんですね」

ピッコロ「いや、恐らく・・・この話はここまでだ。急ぐぞ」

円佳大吾「なんでですか?誰を呼びに行ったんですか?」

 大吾がピッコロに質問を繰り返すが何も答えてくれなかった。大吾はピッコロの表情から何かしらの事情がある事を察し、後をついて行った。

 翠と真矢・諭吉は複数人のTCG隊員とベジータが遺跡へと出向いていた。翠たちは遺跡の中へと入り、何人かの隊員とベジータは外に待機していた。隊員はチラチラとベジータの顔を見るがベジータが睨み返すとすぐさま真正面を向き直した。ベジータもそれを見ると身体の向きに視線を戻す。少し時間が経ち、ベジータの目線が鋭くなる。遠くからこちらへ向かってくる影が見えた。隊員もそれに気づき、戦闘態勢に移る。ベジータは数歩前へ進み、身構える。姿がはっきり見えるようになると隊員は恐怖で体が震えていた。赤い皮膚に筋肉質な身体をした異星人だった。

筋肉質な異星人「オマエがベジータか」

ベジータ「ほぉオレのことを知っているとはな。そこら辺のヤツとは違うようだな・・・何者だ?」

筋肉質な異星人「ワタシの名は『パワダム』。目的は偵察だ」

ベジータ「大将自ら偵察か。丁度良い。来い、相手になってやる」

 ベジータは構を取り、それを見たパワダムも身構える。お互いに一瞬にして距離を詰め、目にも止まらぬほどの速度でパンチや蹴りを繰り出す。ややパワダムが劣勢でベジータは余裕そうな笑みを浮かべ、攻撃を一時止める。

ベジータ「この程度か・・・ガッカリだぜ」

パワダム「まだ、ワタシは戦えるぞ」

ベジータ「だからなんだ?オレはまだ本気も出していないのだぞ?」

パワダム「なんだと?今のが本気でないだと」

ベジータ「ふん、良いだろう。貴様には見せてやろう。オレの本気をな」

 ベジータは力を込める。周囲に白いオーラが徐々に大きくなり、大気や地面を揺らす。やがて白いオーラは金色のオーラへと変化し、髪や眉毛は金髪に、目は碧眼へと変化した。パワダムはその姿に息を呑む。

パワダム「その姿が・・・」

ベジータ「これがオレの本気。『(スーパー)サイヤ人』だ」

パワダム「超サイヤ人。フリーザ様からは『ソンゴクウ』しかなれないとお聞きしていたが」

ベジータ「あの時はアイツしかなれなかった。だが今は違う!このオレが宇宙一だ!」

パワダム「大きく出たな。プライドの高さは宇宙一だな」

ベジータ「お喋りはここまでだ。最後は一瞬にして消し飛ばしてやる」

 ベジータはパワダムの懐に一瞬にして飛び込むと溝を勢いよく殴る。パワダムの顔は大きく歪み、後方へと吹き飛ばされる。パワダムは殴られた溝を抑え、立ち上がろうとする。パワダムが顔を上げると掌に青いエネルギー弾を生成し、見下すベジータ。ベジータの顔は余裕の笑みを浮かべたままだった。溝を抑えていた手ではない逆の手にエネルギーを集約させ、大きな爆発を引き起こす。爆発によって大きな砂煙が巻き起こり、ベジータは視界を遮られ、一瞬にして振り払うも、パワダムはすでに逃げていた。ベジータは変身を解除し、隊員がそこに駆け寄ってくる。

TCG隊員「あのご無事ですか?ベジータさん」

ベジータ「問題ない。それより、持ち場を離れて良いのか?」

TCG隊員「しかし」

ベジータ「オレの心配をするくらいなら、あっちを心配しろ」

 ベジータは遺跡の方を指差し、隊員たちは早々と持ち場に戻って行った。遺跡から出てきた翠たちはヘリコプターに乗り込み、翠はベジータの前に立ち、会話を始める。

宇佐美翠「あの、外で何かありましたか?」

ベジータ「気にするな。それより、成果はあったんだろうな」

宇佐美翠「成果なら想像以上に。解読には時間がかかりますけどきっと役に立つと思いますよ」

ベジータ「そうか、さっさと行くんだな。時間が惜しいだろ?」

宇佐美翠「ベジータさんはこれからどうするんですか?」

ベジータ「オレはオレで動く」

宇佐美翠「そうですか。ご武運を!」

 翠はヘリコプターに乗り込み、ヘリコプターは飛び立つ。ベジータはそれを見送ると、何処かへと飛んでいった。

 パワダムは自身が支配しているポイント75へと到着した。パワダムがたどり着いた瞬間、二人のフリーザ兵が近づいてくる。

フリーザ兵A「パワダム様、ご無事で何よりです」

パワダム「心配させてしまった。まだ終わるわけにはいかぬというのに」

フリーザ兵B「パワダム様、実はパワダム様がここを離れていた時、地球人の小僧がパワダム様の部屋に侵入していた為、身柄を拘束しました」

 フリーザ兵Bがパワダムに告げると、フリーザ兵Aが後ろ盾を拘束された制服姿の少年を連れてくる。少年は身体を振るって抵抗するも、フリーザ兵の方が力強く、抵抗は無意味であった。パワダムの前に連れて来られると少年はパワダムの事を睨みつける。その目には憎しみと殺意が込められていた。パワダムがその目を注意深く観察し、フリーザ兵に指示を出す。

パワダム「ご苦労だった。持ち場に戻って構わない」

フリーザ兵A「コイツの処分はどうしますか?」

フリーザ兵B「オレたちがやっちまっても良いんでっせ?」

パワダム「処分についてはワタシが決める。さぁ持ち場に戻るんだ」

 フリーザ兵はパワダムに敬礼をすると、この場を後にして行った。パワダムは少年に向き直し、拘束を解く。少年は少々驚いていたがすぐさまパワダムに殴りかかる。かすり傷もつかず、少年はポケットにしまっていたナイフを取り出し、パワダムに向けて、突撃する。パワダムは一歩も動く事なく、少年が刺したナイフも根元の部分から折れていた。

パワダム「地球人の少年よ。名前は?」

少年「言うものか。僕の家族を奪った奴なんかに」

パワダム「そうだったのか。家族を奪った事にはすまなかった。だがワタシが戦った地球人は誰にも勇敢さがあった。蛮勇だと最初は思ったが彼らが必死になってワタシに挑む姿に・・・昔のワタシの故郷の戦士たちを思い出した。今の君の姿こそ最初の彼らだが、いつかは君の父親のようになるだろう」

少年「信じれるか!?侵略者の言葉なんか」

パワダム「・・ここで立ち話も良いが、君に興味が湧いた。ついてきてくれ。来ないのなら手荒なマネはしたくないが力強くでも君を連れて行く」

少年「・・分かったよ。アンタには敵わないのはさっきので嫌でも分かった。話し終えたらどうせ僕も殺すんだろ」

パワダム「さぁな、ついて来ればわかる事だ」

 パワダムは歩き始める。少年はパワダムの後ろ姿を見て、改めてパワダムの力を理解する。逆らうよりも従った方が自身の身の為だと考え後を追う。いつかこの手で仇を打つために今は従おうと少年は考えたのだ。




 最初はパワダムともう一人の幹部との激戦を書こうと思ったのですがここままだと長々とつまらないものを見せてしまいそうだったので、分けてみよう思います。次回は後編としてパワダムとの戦いを描いていきたいです。それでは次回もお楽しみに。

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