現在リアルが忙しく執筆を進めることが難しい状況です。
次回は10月の半ばごろには投稿できると思いますので、よろしくお願いいたします、
「これは…、いったい何が…?」
面影は…ある。
魔晄炉以外には特別シンボルと言えるようなものがあるわけではない村だったが、それでも旅立つまでここで育ったのだ。
無駄に広い広場にそれを囲うようにまばらに配置された家屋…その残骸、見覚えがあった。
(モンスター…ではないな。牙や爪にしては破壊の規模が大きすぎる)
廃墟となった故郷を進むと広場に見覚えのない少し大きな岩が置かれ、それに祈っている老人がいることに気づいた。
彼ならばこの村に何が起こったのか知っているかもしれない。
「すまない、そこの御老人」
呼びかけるとこちらを振り向いてくれたが、どこか驚いた風だ。
「おお…びっくりさせんでくだされ。モンスターかなにかかと思ってしまいましたわ」
「すまない。驚かせてしまったな」
「全くですじゃ。ただでさえ老い先短いというのに寿命が縮みましたわい。」
どうやら少々配慮にかけていたようだ。
申し訳ないことをしてしまったが、今はそれよりも聞きたいことがあるのだ。
「しかしこのような廃村に人がくるのは珍しいの。もしやお前さんこの村の縁者か?」
「ああ。しばらく会っていなかった知り合いの顔を見にきたんだが、この有り様でな。いったいこの村に何が起きたんだ?」
「なんじゃ知らんかったのか。まあこんな田舎の話など外に流れんか…」
「だから何が起きたんだ。聞かせてくれ」
「魔晄炉じゃよ…。一年前のある日、魔晄炉が爆発事故を起こしたんじゃ」
魔晄炉か…。
確かにこの村は魔晄が湧き出る場所の関係上、村からかなり近くに建設されていた。
考えてみれば、あれだけ近けれと魔晄炉が爆発してしまえばただでは済まないだろう。
「…原因は何だったんだ?モンスターか、それとも反神羅組織の仕業か?」
「いえ、なんでも機材の老朽化が引き起こしたメルトダウンによるものだとか。当時友人だった魔晄炉整備員の者が言っておりました」
「そうか…」
「あのとき…、魔晄炉にいた神羅の社員たちはもちろん、多くの村人が犠牲になりました。ワシを含めて僅かに生き残った者たちはこの土地を諦め、各々新しい土地に移り住みましたが、ときどきこうして慰霊碑に祈りを捧げにくるのですじゃ」
「慰霊碑?」
「そうですじゃ。不恰好ではありますが、この岩はワシら生き残りたちが立てた慰霊碑なんですじゃ。ここにはあの事故の犠牲者たちの名が刻まれておるのですじゃ」
慰霊碑を見る。
見知った名前がいくつかある。
神羅がくるまでロクに買い手もいなかったろうに道具屋をしていた物好き。
魔晄炉ができてから大繁盛だと喜んでいた食堂の店主。
旅に出るまでおれに戦闘のいろはを教えてくれた兵士。
そして、…やはりおれの母の名前もそこには刻まれていた。
この村の惨状を見たときから薄々予想はしていたが、どうやら嫌な予想は当たりやすいというのは本当らしい。
よく見れば老人にも見覚えがある。
前世の記憶があったおれは馴染めず、一緒に遊ぶことはあまりなかったがよく近所ではしゃいでいた子供の祖父だ。
その孫の名前だって刻まれている。
「彼らは死んでしまいましたが、寂しくはありません。彼らの魂は星に還ったのです。彼らの魂は星を巡り、そしていずれ新たな生命に産まれ変わる。そのときにはもしかしたらワシもまた孫に会えるかもしれん。まあワシの場合はそれまで寿命が保つかわかったもんじゃないじゃがな!ハハハハ!」
老人は少しの間遠くを見るような目をしていたが、冗談を言って笑うとこちらを見つめた。
「なにも無に帰ってしまったわけじゃないんですじゃ。彼らは今もこの星の中にいる。姿は見えんし、声も聞こえんが、確かに存在している。だからなにも寂しくはないんじゃ。」
老人の目には曇りがない。
信じているのだろう、己の親しかった者たちは今もそこにいるのだと。
「そうか…、そうだな」
「…年寄りの話に長々と付き合わせてしまいましたな。つまらなかったじゃろう?申し訳ない」
「いや、そんなことはない。おかげで知りたかったことも知れた、感謝しているくらいだ」
「それはよかった。ワシはそろそろ帰ろうと思いますが、あなたはどうされますか?近くにチョコボ車を置いておりますが、一緒に乗っていかれますかな?」
「いや、俺はもう少し村を見ていこうと思う。話してくれてありがとう、…いつか孫に会えるといいな」
「…こちらこそありがとうございます。それでは、お元気で」
老人が去って行くのを、姿が見えなくなるまで見送る。
「“星に還った”か。おれの母も星に還って、今もこの星を巡っているのだろうか」
死後星に還り流れに溶け、星を巡った魂たちは新しい生命としてこの星に産まれ落ちる。
星を巡る生命の流れ、ライフストリーム。
老人の言ったことは正しい。
しかし俺は知っている。
神羅が魔晄と呼んでいるエネルギーの正体こそライフストリームであり、もしこのまま神羅たちがライフストリームを資源として消費し続ければ、いずれは星に還った魂たちもまた資源として消費され、本当に無に帰してしまう。
そうでなくとも
おれの母の魂も消えてしまう。
止めなくてはならない。
神羅カンパニーを解体して魔晄炉を停止させ、ライフストリームの利用を止めさせる。
そして星の崩壊を防ぐためにメテオを呼ぶ災厄を、
どちらも難題ではあるが、そのどちらもを達成する道筋は既に見えている。
クラウドたちだ。
前世の記憶によれば、彼とその仲間たちはこれからの旅を通して成長、結束して3度も世界を救うことになる英雄たちだ。
彼らの活躍によって神羅の利用する魔晄の正体が明らかにされライフストリームも利用はなくなり、
ニブルヘイムでの事件が実際に起こった以上、この世界でもほぼ同じように事は進むはずだ。
故に問題はない…はずなのだが、どうにも不安を払拭することができない。
(いっそ神羅ビルに乗り込み、俺自らの手で重役を抹殺して神羅カンパニーを滅ぼすか?
そこまで考えて、その案を取り止める。
クラウドたちが辿ることになる道も簡単なものではなかったはず、奇跡と呼べるようなものなのだ。
むしろ俺が何か余計な手を出すことによって道筋が狂い、星が滅びてしまうようなことがあるかもしれない。
それだけは避けなくてはならない。
少しだけ悩み、決断する。
(本当にこの世界が記憶にある通りの道をたどるのか、見届ける)
本来の道筋から外れていないか、クラウドたちから姿を隠しながら観察し、もし彼らにどうしようもない危機が迫ったなら、そのときこそ力を貸す。
できることなら関わらない方がよいことに変わりないのだから。
クラウドたちの旅を見守るにしても彼らの現在地も、今が前世の記憶におけるどのタイミングなのかも不明だが、確認する方法はある。
ミッドガルだ。
あの街は事件が目白押しであるし、どの事件がいつ頃起きたかで現在の時期が判断できるだろう。
時期によっては、直接クラウドたちを見つけることもできる。
「いざミッドガルへ…、と言ったところか」
もともと星の危機に関してはクラウドたちが解決するだろうと楽観視していたセフィロス(擬態)くんですが、肉親の魂がライフストリームの一部になったと知り危機感を持ちました。