スーパー英雄大戦   作:ゲーマーN

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盾の勇者ルート 第3話「霊亀」

 レルノ村の警護と事件の調査を始めて三日目の夜。

 

「あの馬鹿共!」

 

 二日目の夜に三勇者は報告に来なかった。その時から嫌な予感がしていた尚文であったが、その予感が的中していたことを女王ミレリアに聞かされた。

 仲間の方を追跡していた影の報告が来たのが三日目の昼過ぎ。事件解決のために三勇者が任されていた地域から移動を開始したとの話だった。

 レルノ村の調査をしていた尚文がこの話を聞かされたのが現在というわけである。

 

 謎の魔物に卵のようなモノを植え付けられたキールは城の治療院で検査後、本格的に治療している。復帰するには暫しの事件が必要になるだろう。

 謎の魔物に心当たりがあるというリーシアは、女王直属の影と共に城の図書館で調査中だ。

 そして、肝心の謎の魔物は、やはり数を増やしながら近隣の村や町を襲っているようだった。蝙蝠の方は驚異になるほどではないので対処はできているが、雪男の方は数こそ少ないが一般の冒険者たちも苦戦している。

 冒険者ギルドの方でも熟練の冒険者に向けて依頼が既に手配されている。

 

 閑話休題。明らかに何かを隠している様子であった三勇者が遂に――と言うには、あまりにも自制が足りてないが、尻尾を出した。

 報告によれば、三勇者はメルロマルクの国境を突破して強引に突き進んでいる。予想通りではあるが、この一件に関して何らかのゲーム知識を持っていたようだ。

 

「国境を突破する時の証言が残されています。これがその時の証言を記したものです」

 

「何々……『今回の事件を解決するためだ! 邪魔をするんじゃない』?」

 

 書類を受け取った尚文はその内容を見て眉根を寄せる。

 そこには、他にも『事件解決のためにやむなくだ』などと三勇者の言い分が書かれていた。正直、悪いことをした子供の言い訳にしか聞こえない。

 

「どうする? 追跡するか?」

 

「そうですね……ですが、今から追跡するのは骨が折れるかもしれません」

 

「なんでだ?」

 

「道中で飛竜やフィロリアルに乗り換えをして、休むことなく進んでいっているようなのです」

 

「……それは厄介だな」

 

 尚文たちの移動の足はフィーロだ。フィロリアルクイーンであるフィーロは、普通のフィロリアルでは追いつけない速度を出すことができる。だが、生き物であるフィーロは道中で休む必要がある。

 三勇者が飛竜を利用しているという点も厄介だ。空を飛ぶことができる飛竜は地形に関係なく同じ進行速度で進むことができる。飛竜やフィロリアルを乗り換えながら進んでいるのならば、フィーロだけで追いかけることはできない。

 

(フィーロと乗り換えを並列すればどうにか追いつけるか?)

 

 しかし、三勇者はそれぞれ別ルートで何処かへ向かっている。三手に分かれて追いかけるにしても、追いついたとして止める手段がない。

 強引に取り押さえるというのも転移スキルを持つ三勇者が相手では困難だ。

 そもそも、次の波まで四日しかない。追いかけている最中に波に巻き込まれるのが関の山だろう。尚文たちは、波に備えて準備する他ないわけだ。

 

「勇者共がどこへ向かおうとしているかわかるか?」

 

「それぞれの勇者様方が向かっている方角から推測するに……」

 

 と、女王が指差したのは東の国だ。

 

「……また東か」

 

「はい。今回の事件と何らかの因果関係があると見て間違いないでしょう」

 

「どれくらいで目的地に到着する目算だ?」

 

 女王は僅かに考える素振りを見せる。

 

「この進行速度だと……勇者様方は三日後辺りに到着できるかもしれません」

 

「波まで一日か……連中は何をすると思う?」

 

「警戒しておいた方がいいのは確かですね。しかし……この魔物達は、まさか……」

 

 四聖勇者にはポータルという転移系のスキルが存在している。龍刻の砂時計の砂で解放できる武器が内包しているこのスキルは、自分が行った先で任意の転移点を三箇所まで登録することができ、自分と近くにいる仲間の中から最大6名までを登録した場所に転送することができる。

 メルロマルクの外に出たことがない尚文は、当然、メルロマルクの外に転移点を登録しておらず、東の国に転移することができない。

 他に、東の国に転移点を登録している勇者の仲間がいればよかったのだが……

 

「……ん?」

 

「どうしましたか?」

 

「ちょっと追いつく方法に心当たりがある。待っていてくれ」

 

    ☆

 

 盾の転移スキル”ポータルシールド”でラフタリア達と合流した尚文は、頭の天辺に生えているアホ毛を揺らしているフィーロに声を掛けた。

 

「なーに? ごしゅじんさま?」

 

「フィトリアと話がしたい」

 

「わかった!」

 

 ラフタリアとエクレール、エルラスラは首を傾げる。

 

「えっとねー。なーに? だって」

 

 尚文は地図を広げて三勇者が向かっているであろう箇所を指差す。

 

「お前の転送能力で俺達をここに飛ばせられないか? 勇者共が向かっているんだ。追いかけて何をするか問い詰めたい」

 

 すると、フィーロのアホ毛がピコピコと動いた。

 

「うん、うん。わかったー。あのね。そこへ行くのはフィトリアの管轄から外れるからダメだって」

 

「は? ちょっと待て、勇者共が何をするのかわかってるのか?」

 

「うん。本当なら手伝いたかったけど、四聖勇者がここまで仲が悪いなら……世界のために諦めてくれって」

 

 ふと、尚文の脳裏に過るのはいつかのフィトリアとの会話だ。

 

『……何度目かの波の後かわからないけれど、世界が全ての命に犠牲を強いる時がくる』

 

『……』

 

『勇者はその戦いに参加するか、選択を迫られる。フィトリアはその時を待っている』

 

『選択?』

 

『人々のためか世界のためかの二択。もしも他の勇者と仲良くできない、使命を放棄したいのなら、それまで生き残って。その時、世界のためを選べば多大な犠牲こそあれど使命は果たせる』

 

『人々のためを選ぶとどうなる?』

 

『……茨の道、だけど過去の勇者はその道を選んでほしいって願っていた。だけど今のままじゃ無理、盾の勇者一人じゃ乗り越えるのは難しい』

 

『むう……お前はどこまで知っているんだ? 詳しく教えろ』

 

『フィトリアも忘れてることが多い。だけど、覚えてる。世界を救うのと人々を救うのは別』

 

(これが……その時だと?)

 

 フィトリアは人間がどうなろうと知らないと思っている節がある。世界のためならば、人々に多大な犠牲が出ようと関係がないと。

 

「上手く行けばもう波が来なくなるかもしれないって言ってるよ?」

 

「これがそうなのか?」

 

「あの、ナオフミ様、フィーロ……じゃないですね。フィトリアさんと何を話しているのですか?」

 

「ああ、前にフィトリアと会った時に二人で話したんだ。世界のために全ての命の犠牲を強いれば世界は助かる……と」

 

「あの勇者達が世界のために何かをしようとしているのか?」

 

 エクレールは身を乗り出して問いかける。

 

「とにかく、何が起こるかわからないが今回の事件、更には波全体が、勇者共が何かをするお陰で解決するかもしれないそうだ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「些か不安だな。守らねばならない地域が多すぎて俺の手に余る……だが」

 

 尚文はフィーロのアホ毛に向けて声を出した。

 

「諦めるわけにはいかなそうだからな。追いかけるさ」

 

「えっとねー。じゃあがんばって、フィトリアは遠くから見守ってるって」

 

 フィロリアルの女王は既に人間を見限っている。人間のことなど何も考えず、教えることもしない。少なくとも尚文は彼女の返答をそのように受け取った。

 

 それでも尚文は知っている。

 

 フィトリアが、四聖勇者に人々のために戦ってほしいと願っていることを……。

 ならば、ここで諦めるわけにはいかないだろう。この世界の人々のために戦うような義理はないが、善処はすると彼女と約束をしたのだから。

 

    ☆

 

 仲間達を連れて女王の下へと移動した尚文は事情を説明した。

 

「なるほど……やはり、勇者様方が何を目指しているのかわかりましたね」

 

「そこに何が眠っているんだ?」

 

「――ふぇええええええええ!!」

 

 そこで、奇声を上げながらリーシアが玉座の間に駆け込んできた。

 彼女は青い顔をしていた。どうやら女王と同じく、彼女も何かわかったようだ。

 

「ふぇ!」

 

「何をしているんだ?」

 

「ふぇえ……そ、そうでしたぁ。あの……」

 

「ん? なんだ?」

 

「イツキ様が向かった国を知って私、あの魔物が何なのか思い出しました」

 

「お? わかったのか?」

 

「はい。過去の勇者の伝説に出てきた。霊亀と呼ばれる魔物の使い魔があんな感じだと物語で読んだのですよ」

 

「はい。間違いないでしょう」

 

「霊亀……?」

 

 霊亀、地球世界では中国神話等に登場する伝説上の幻獣だ。

 四聖獣、四神と比べればマイナーな存在ではあるが、此方も四霊や四瑞などと呼ばれる霊獣の一体だ。

 

 四聖、四神が青竜、朱雀、白虎、玄武。

 四霊、四瑞は麒麟、霊亀、鳳凰、応龍。

 

 似たような生き物だから同じだと間違う人もいるだろうが全くの別物だ。

 霊亀は、背中の甲羅の上に蓬来山という山を背負った巨大な亀の姿をしている。

 一方の玄武は、尻尾が蛇で描かれることの多い足の長い北方の守護獣だ。蓬来山は東にある仙人の住む山であるので、それを北方の守護者が背負っているはずがない。

 

「で? 今回メルロマルクに出現した謎の魔物の正体は霊亀の使い魔であると?」

 

「おそらく……」

 

「ふむ……」

 

 東洋の神話等においては、亀は千年以上生きると強大な霊力を発揮し、未来の吉凶を予知できたのではないかと言われており、霊亀もまた千年以上を生きた亀が強大な霊力を得た事で変異・巨大化したのではないかと言われている。

 

「そんな化け物が今回の事件の黒幕である……か」

 

 三勇者は尚文を出し抜くためにあの場で話をせずに勝手に先行したのだろうことは想像に難くない。そして、その目的が何処にあるかも容易に想像できた。

 

 おそらく、三勇者にとって霊亀は強力な武器を落とす魔物ぐらいの存在なのだろう。上手く霊亀を倒せば、世界を脅かす事件の解決と同時に強力な武器を入手できる。そして、人々は尚文よりも自分達を称賛するに決まってる。

 

 と、大方の予想を付けた尚文が「はあ」と大きなため息を漏らした。

 

「ですが霊亀は過去に勇者が封印し、解き方も勇者が墓まで持っていったとの話です」

 

「あの三人の勇者共は元々この世界に関して情報通を気取っていたんだぞ?」

 

 ゲーム知識では、と失伝している封印を解く方法を知っている可能性は十分にある。おそらく、元となったゲームの知識を使って封印を解くつもりなのだろう。

 三人共、同じ場所に向かったということはLv80前後で倒せる敵なのだろう。

 事ここに至り未だにゲーム知識を頼りにしている三勇者に、尚文は呆れ果てる思いだった。これではフィトリアが見限るのも無理はない。

 

「ですが、ここまで使い魔が暴れている状況。既に封印は解けているのでは?」

 

「……そうだな。これは勇者共とは関係ないか」

 

 フィトリアの話では、ここで尚文が何もしなければ波が勝手に収まるようになるらしいが、何もしないでいることはできない。

 

「念の為に戦いの準備をしておいてくれ。俺達は念の為に勇者共を追いかけてみる」

 

「わかりました。イワタニ様の協力によって原因もある程度特定できましたし、魔物の対処も冒険者ギルドに委託しました。どうか勇者様方の力になるよう、お願い致します」

 

「まったく、本当に自分勝手な連中にウンザリするな」

 

「はい。霊亀の封印された国へ勇者様方が入る時、できる限り時間を稼ぐように通達しておきます」

 

 こうして玉座の間を後にした尚文は、クールタイムを終えたポータルシールドで南西の村に戻り、フィーロに馬車を引かせて出発した。

 馬車の中にはハガネとルージュの二人の姿もある。本来、この世界とは関係ない二人ではあるが、彼等もまた今回の一件に協力を約束してくれたのだ。

 

 

 

 国境を越えて隣国へ移動したのが四日目の朝になった頃のこと。フィーロを夜通し走らせてようやく隣国という現実に道のりの長さを思わずにはいられない。

 揺れる馬車の中、エクレールとリーシアは乗り物酔いでダウンしている。

 

「た、盾の勇者殿……止めて――うぷ」

 

「ぶぇえええ……うぷ……」

 

「止めたら追いつけないだろ」

 

 二人は夜からずっとこの調子だ。既に胃の中身が無いのにまだ吐こうとしている。

 とはいえ、フィーロが疲れた様子を見せ始めているのも事実。

 

「しょうがない。無駄かもしれないが、休憩を取るか」

 

「はーい……フィーロ疲れたーねむーい」

 

 と、馬車を止めたフィーロはそのままぐっすりと眠ってしまう。

 馬車での旅は徒労で終わろうとしていた。途中の町で影から報告を受けたところ、また目的の国へは入れていないらしい。それでも波の一日前には到着するかもしれないとの話だ。一方の尚文たちは途中で時間切れになりそうな状況である。

 などと、追跡をしていたのが波が来る二日前のことだった。

 

 ――突如、ガラスを叩き割る音が耳に響き、頭を揺らすような大きな衝撃が走った。

 

 波が起きる時にも世界中に響き渡るガラスを割るような大きな音が木霊する。しかし、三度の波を乗り越えた尚文はそれとは微妙に異なるものに聞こえた。

 

「今……何が起こった!」

 

「は?」

 

「どうした尚文……何かあったのか?」

 

 尚文は周囲を見渡す。

 四聖勇者は波が起きると龍刻の砂時計に波の発生地点に飛ばされる。故に転送されたのかと思ったのだが、尚文は何処にも転移しておらず、そのまま馬車に乗っている。

 

「一体どうしたのですか?」

 

「何かが起こったのだけは確かだ。フィーロ、もしかしてこれ、霊亀の封印が解けた……のか?」

 

 予定では、まだ三勇者が目的の国に到着するには時間があるはずなのだが、もう三勇者が到着したのかと尚文は怪訝そうな顔をする。

 尚文は視界の隅にある波を知らせる赤い砂時計のアイコンを呼び出した。

 

 ――タイムカウンターが波まであと二日というところで停止していた。

 

 そして、その隣にはもう一つの……青い砂時計が現れ『7』という数字が刻まれていた。

 

「もう一つの砂時計が出現している。7という数字が書かれているが、これが何を意味するかわからない」

 

 この時の尚文は、これでもしかしたら盾の勇者としての役目を放棄できるかもしれないという期待と、犠牲を強いるということで世界を見捨てる罪悪感との間で迷っていた。

 

「ど、どうしましょう?」

 

「ふむ、このまま追いかけるしかないのではないかの?」

 

 何が起きているかはわからない。だが、何もしないわけにはいかない。

 

「ポータルは使えるか?」

 

 確認すると、普通にポータルシールドが使用できることがわかった。朗報ではあるが、やはり何が起きているのかは見当もつかない。

 考えられるのは東の国の方で何かが起きているということ。

 それを確認するために、尚文達はそのままフィーロの馬車で一日ほど進んだ。

 

「盾の勇者殿、どうかメルロマルクに一時帰還してください」

 

 すると、途中の町の前で影が現れて尚文達を呼び止める。

 

「何があった?」

 

「それが――」

 

 事件の始まりはここからだった……フィトリアの思惑も、尚文の考えも、勇者の暴走も……全てを破壊して始まった、世界を揺るがすまさしく大事件の始まりだった。

 

    ☆

 

 

 

                盾の勇者ルート

 

             第3話 霊亀

 

 

 

    ☆

 

「霊亀は人の多い地域へと進行中です。女王が盾の勇者様の帰還を要請しています」

 

「なに?」

 

 封印されるほどの怪物が人口密集地域に進行中……その危険性を理解できないほど、尚文は愚かな人物ではなかった。

 

「勇者共を追いかけていた影からの情報は?」

 

「それぞれの勇者に付けておりますが……消息不明です」

 

「ふむ……わかった。じゃあ一時帰還する」

 

 尚文達はポータルシールドを使ってメルロマルクに帰還すると、女王と話をするために玉座の間へ向かった。

 

「出かけて早々これじゃ散々だな」

 

「真に申し訳ありません」

 

「で? 勇者共の追跡はどうなっているんだ?」

 

 目的の国に到着するなり、ゲーム知識を頼りに封印を解きに行くという常識知らずなことを仕出かした、というのが尚文の予想だ。しかし……

 

「はい。それが、勇者様方が霊亀の封印されている土地に入る前に霊亀が動き出し……その混乱の最中に勇者様方は名乗りを上げて霊亀へ向かっていったようです」

 

「それで?」

 

 女王の目が泳ぐ。

 

「……消息、不明のようです」

 

 三勇者が原因で封印が解けた訳ではないだけまだマシではあるが、勝てない相手にゲーム知識頼りに突撃をかました三勇者に呆れずにはいられない。

 

『霊亀は弱いから封印を解いても大丈夫だ!』

 

 と、自信満々に言う三人の姿が尚文の脳裏に浮かぶ。

 女王の顔色は悪い。実の娘がその場にいたはずなのだから、当然の反応だろう。

 

「イツキ様ー!」

 

 リーシアが何処かも知れない事件現場へと走り出す。

 

「フィーロ、リーシアを捕まえてこい」

 

「はーい」

 

 フィーロは颯爽とその後を追いかけて捕まえる。

 

「放してください! 私はイツキ様を助けに行くんです。イツキ様ー!」

 

「”スリープ”」

 

「――すやぁ……」

 

 と、体を拘束されたリーシアの目の前に誰かが指を突きつけた。かと思えば、必死の形相を浮かべていたリーシアは一瞬で眠りに落ちる。

 

「よっ!」

 

「……ハガネか」

 

「如何にも単独行動を取りそうなヤツがいたから眠らせたが、ダメだったか?」

 

「いや、助かった」

 

 その誰かの正体はハガネだ。ポータルの定員は最大6名までであり、それを超過する二人は馬車と共に置いてきたのだが、彼等にも長距離を移動する手段があった。

 

 ――転移魔法 ”テレポート”

 

 ポータルと同様に予め登録している場所にテレポートする魔法だ。ここ数日の間にメルロマルクの城下町を登録していた彼等は、この魔法で尚文達に追いついたのだ。

 

「二人も合流したところで……とりあえず、霊亀とやらを見に行くとするか」

 

「これが救済の方法と言われて、それでは大量に犠牲者を出しましょうとはいきません。できる限り、抗うしかないのです」

 

    ☆

 

 ――二日後。

 

 尚文達は女王が手配した騎士団を連れて、対霊亀戦に備えて近隣の国と合わせて連合軍を組むこととなった。

 その道中で、霊亀の被害が逐一伝えられた。既に都市が五つ、砦が三つ、城が二つ落ちている。犠牲者数も相当な数に上っている。

 霊亀は巨大な化け物で、その周りに霊亀の放つ使い魔が集まってきているそうだ。これまで封印されていた間に使い魔を増やし、一斉に暴れ始めたと見ていいだろう。

 霊亀自身が出す被害もあれば、使い魔が辛うじて逃げ延びた人々を襲ってトドメを刺しているなど、意図的に人が多い地域に移動していると分析されている。

 

「勇者共は生きていると思うか?」

 

「生存は確かでしょう」

 

「なんでわかるんだ?」

 

「フォーブレイの四聖教会には勇者の生存を確かめる機材が存在します。念の為に確認を要請したところ、勇者様方の生存は確実だとの返事を頂きました」

 

 その吉報にリーシアもホッとした表情を浮かべた。

 尚文が最も恐れているのは三勇者が死亡して四聖が尚文一人の状態で霊亀を倒してしまうことだ。その場合、世界のためと称してフィトリアが殺しに来るからだ。

 上手く霊亀を倒せさえすれば、まだ可能性はあると見ていいだろう。

 

「七星勇者とやらも来るのか?」

 

「要請はしておりますが……此方の方が数日早く到着する予定です」

 

 七星勇者の到着を待つのもいいが、その分犠牲者が増えては勇者の面子に関わる。そもそも七星勇者の実力が当てになるのかもわからない。

 いや、尚文ですら危険な可能性は十分にある。

 それでも、霊亀に挑まなければならない。黙って見ていれば波が終わるらしいと言われても、そんなにも犠牲を出すのなら逃げることもできない。

 本当に、霊亀を好きなように暴れさせれば波が静まるという確証もないのだし。

 

「……どちらにしてもやるしかないか。で、此方の兵力はどの程度なんだ?」

 

「近隣諸国の騎士、兵士、冒険者を集めた連合軍が集まっております。ただ……一部の国が先行して交戦し、惨敗した模様です」

 

「勇者が到着していないのに攻めたのか?」

 

「自国が目の前で滅ぼされようとしているのです」

 

「……そうか」

 

 先行した彼等も無謀であることは百も承知であったことだろう。だが、目の前で自分の国が滅びようとしているのに座して待つことなどできるはずもない。

 

「頼れる勇者は俺だけ……か」

 

(これだけの大被害を出している魔物に対して勇者一人、それも防御特化の盾だけでは無謀にもほどが……)

 

「――いや、ここにもう一人いるだろ?」

 

「ハガネ……?」

 

「正直、勇者なんてガラじゃないが……元々は、俺も異世界に召喚された勇者の一人だ。この世界を守るために戦うくらいはしてやるさ」

 

 その言葉に、尚文は肩の荷がうんと軽くなるのを感じていた。

 

「……ああ、そうだな。俺は一人じゃない」

 

 この世界に召喚された四聖勇者は尚文一人かもしれない。だがここには異世界の勇者であるハガネと、それにこれまで苦楽を共にしてきた仲間達がいる。

 ならば、一人で全ての重荷を背負う責任なんて存在しないはずだ。

 

「見えてきたようです」

 

 女王が指差す。尚文は地平線を見つめ――絶句した。

 

「ええっと……地平線の先にある山が動いているように見えるのだが……」

 

 尚文の世界のモンスターを狩猟するゲーム(モンスターハンター)には山のように巨大なドラゴン(ラオシャンロン)が登場する。しかし、霊亀と呼ばれた存在はそれを軽く上回る巨体の持ち主だった。

 インド神話における天地創造神話である乳海撹拌の場面では、攪拌棒に用いられた曼荼羅山を海底から支える役割を果たす大亀が存在する。聖典の一つ『マハーバーラタ』ではその亀はアクパーラとされており、『ラーマーヤナ』ではヴィシュヌ第2の化身である大亀クールマに役目を譲ったとされている。

 霊亀は、まさにその神話から抜け出てきたかのような怪物だった。その背中の甲羅には、町があったかのような残骸がある山を背負っている。

 

「ところで女王、霊亀と戦った勇者の伝説とやらでは、アレとどう戦ったんだ?」

 

「背負っている山脈の中から体内に侵入して心臓を封じたことで辛うじて封印することができたそうです」

 

 つまり、霊亀の足を止めて体内に侵入する必要があるわけだが……どう考えても、あの山の如き化け物の足を止めることなど不可能だろう。そんなことをしている間に連合軍に多大な被害が出てしまう。

 

「作戦はあるのか?」

 

「一応はあります。どうも霊亀は人口の多い地域を重点的に狙う習性があるようなので、進行方向にある村や町、砦にいる者を避難させ、攻撃しやすい地に誘導し、そこで叩くことを考えております」

 

「それだけじゃないんだろ?」

 

「ええ、伝承の通り霊亀の体内に勇者様を導き、心臓部を叩きます」

 

「だが、その方法だと被害も甚大なんじゃないか?」

 

 尚文達が霊亀の体内に入った後も霊亀は暴れ続けるだろう。そうなれば、倒すまでに相当な被害が出ることは間違いない。

 

「……はい」

 

「放せ! ワシは、ワシは戦わんぞ! 盾! 盾が行けぇええええ!」

 

「……」

 

 女王の隣の席で喚く翁。女王は無言でそのクズの顔面を片手で掴むと氷の魔法で仮面を作った黙らせる。

 

「なあ尚文、あのクズは何者なんだ? どうしてこの場所にこんなのがいる?」

 

「この国の元王様だからだろうな。名前はクズだ。俺が改名させた」

 

「はあ!?」

 

 そう、このクズこそがメルロマルク国女王ミレリアの夫オルトクレイ=メルロマルク32世……改め、クズである。目の前のクズが王配であるという事実と、その王配をクズに改名させたという尚文の発言にハガネは驚愕の表情を浮かべる。

 

「分かっております。ですが確実な手であの化け物を倒すしか道はないのです」

 

「ダメだな。色んな意味で」

 

「というと?」

 

「お前の夫もダメだが、それだと大きな被害が出る。後々の波に対応できなくなるぞ」

 

 霊亀、この化け物を倒すだけで波が終わるのならそれもありかもしれない。だが、霊亀を倒した後も波が続くことを考えれば、大きな被害を出すわけにはいかない。

 

「とりあえず……連合軍の会議に出席致しましょう」

 

「わかった」

 

 本陣に戻った尚文はハガネやラフタリア達を待機させて作戦会議を行っている連合軍の所へ向かった。

 

「おお……盾の勇者様!」

 

「どうか世界をお救いください」

 

「お願いします。奴の所為で我等の国は……」

 

 連合軍の上層部の顔色は悪い。

 

「まずはどのようにしてあの巨体と戦うかでしょう」

 

 女王が厳しい顔で言葉を発する。邪魔にしかならないクズはこの場にはいない。

 

「そうだな。あんなの相手に勇者は役に立つのか?」

 

 勇者である尚文自身が尋ねる。

 以前、尚文はかなり大きな魔物である次元ノ勇魚を止めることができた。だが、それよりも遥かに大きな霊亀を相手に同じことができる自信はない。

 

「一応確認するが、霊亀を封印する方法は現存しているのか?」

 

「はい。調査した結果、使うことは可能です」

 

「俺達にも扱うことのできる魔法か?」

 

「それは……」

 

 女王が言葉を濁す。その反応が何よりも雄弁に答えを述べていた。

 

「……そう都合良く事は運ばないってことか」

 

「連合軍の魔法部隊の集団魔法で辛うじて再現できるという状況です」

 

「となると霊亀を弱らせてから唱えるとかで封印するのか?」

 

「……はい」

 

 テーブルに乗せた地図で霊亀の居る地点と付近の都市を確認する。その距離は近い。このままでは巻き込まれることになるだろう。

 

「避難誘導は済んでいるのか?」

 

「……厳しいところです」

 

「そうか。じゃあ俺達が時間稼ぎをするしかないな……」

 

 相手は、明確な目的を持って進軍してくる化け物だ。

 近付くだけでも相当な地響きを感じる上に、場所によっては地割れも起きている。

 まさに天災の化身。ただの人間が相手できるような存在ではない。

 それでも、やるしかないのだ。

 

「進行先の避難はどれくらいで終わる?」

 

「霊亀の到着までには間に合いそうにありません」

 

 世界のために犠牲……ここで逃げれば偽勇者の汚名と共に波から生き残ることができる。それでも、尚文は出来る限り抗いたいと思っていた。

 別に正義に目覚めたとかではない。人々のために戦うような義理もない。

 ただ、自分を信じてくれたラフタリアのために……尚文は、霊亀に立ち向かう。

 尚文が黙っている間に、女王は連合軍に霊亀の目的を話した。

 

「まさか……そんなことが……」

 

「真のことなのか?」

 

「はい。霊亀が暴れることで波が抑えられるとの話が来ております」

 

「そんな話を信じられるか! それでは元も子もない!」

 

「……ですが、世界を滅ぼすのと、一部の者が生き残って世界が延命するのと……どちらを選びますか?」

 

 前向きとは言い難い。目の前の人々を犠牲にして世界を救うか、目の前の人々のために世界を犠牲にするか、究極の選択だ。

 尚文は作戦会議をしているテントから休憩中のフィーロに視線を移す。フィトリアならば正面から霊亀を倒すことも不可能ではないだろう。もっとも、既に人類と勇者を見限ったフィトリアが力を貸してくれることはない。

 三勇者は生きているらしいが、これから仲良くできる自信もない。

 

(だが……敗北して自らの弱さを実感しているのなら、少しは俺の話に耳を傾けてくれるかもしれない。上手くいけばフィトリアも見直してくれるかもな)

 

 尚文が視線を戻すと連合軍は予想以上に荒れていた。

 

「どうでしょうか?」

 

「フォーブレイは何をしているんだ!?」

 

「あの国はいつも腰が重く、問題が起こってから対処する!」

 

「盾の勇者を軸に、七星勇者の到着を待つというのが賢明だ!」

 

「だが、七星勇者が到着するまでに幾つの都市や砦が犠牲になると思っている!」

 

「まだ自分の国が被害を受けていないから言えるんだ! 一秒でも早く倒さねばならない!」

 

「それも世界のためなのだろう!?」

 

「既に剣、槍、弓の勇者が行方知れずではないか!」

 

 尚文としては四聖勇者の立場が危うい現状を改善しないといけないから迂闊なことは言えない。何か言おうものなら必ず反論があることだろう。三勇者が生きているのならば、同じ勇者である尚文がこの事態を片付けるしかない。

 正直に言えば、尚文は、この世界の連中が幾ら死のうが関係ないと思っている。何故なら、彼等は尚文に対して碌なことをしない者達だからだ。

 

 だが、尚文は自分を信じてくれる人のために戦うと誓った。

 

 ラフタリアは、尚文が少ない犠牲で世界を救ってくれると信じている。親代わりだとしても、少しくらいはカッコいいところを見せたい。

 それに、こんな方法でしか救えない世界には最初から価値がない。

 フィトリアもそれを理解しているからこそ、尚文が世界と人々の両方を救うと期待しているのだ。

 

「アイツを倒して、犠牲者を一人でも減らすべきだ」

 

 もはや、尚文は今までのように動くわけにはいかなくなった。盾の勇者は世界を救う正義の勇者という面を押し出して公表しておかないといけない。

 たとえ、自分の心を偽ったとしても。

 

「それもこれも四聖勇者が頼りないのが原因ではないか! 現に今ここに盾の勇者しかいない! 他の三人はどうしたのだ!」

 

「俺以外の勇者は現在行方不明だ」

 

「それ見ろ! 口だけではないか! そもそも攻撃のできない盾の勇者だけで何ができる!」

 

「では、お前等に尋ねよう。勇者とはなんだ?」

 

「そ、それは……」

 

 尚文の問いに言葉を濁す人々。

 

「勇者とは強い力を正しいことに使う、勇気ある者のことです」

 

 尚文の意図を正確に汲み取った女王が即答した。

 

「勇者とは心だ。どのように絶望的な状況にあろうと諦めない心、人々を守ろうとする意志が勇者となる! この場にいる全ての者に力が足りないと言うのならば、俺が盾となり力を貸そう」

 

「盾の勇者様……」

 

 話を聞いていた者が感銘したような声を漏らす。

 

「盾の勇者様。先程の無礼をお許しください」

 

「気にするな。貴公の……いや、全ての人々の、無力な勇者に対する怒りを、全て俺が受け止めよう」

 

 尚文は他国の将軍と思わしき人物に手を伸ばす。

 

「だから、今だけは力を貸してほしい。協力して奴を倒そう!」

 

「はい!」

 

 尚文が差し出した手を握った将軍は力強く頷いた。

 

(ちょろいな)

 

 これで霊亀を倒した後の問題は片付いた。可能な範囲で大声を出したので、外で聞いていた者も多いだろう。連合軍の士気も多少は高まったはずだ。

 後は霊亀を倒す算段を立て、尚文が公言通り正義の勇者として戦えばいいだけ。

 

「では話を戻す。皆、絶望的状況に屈せず、一人でも犠牲を減らす方法を考えてほしい」

 

 そんな尚文の姿を女王は微妙な表情で見つめていた。尚文の本性を知っている女王は、尚文がこんなことを言うような人間ではないことをよく理解していた。

 しかしそれを口に出すことはなく、女王は、一度頷くと会議を再開させた。

 

「では、準備が整い次第作戦を開始します」

 

 

 

 会議が終わり、尚文がテントを出るとため息混じりのラフタリアに声を掛けられた。

 

「ナオフミ様、また何かしたんですか?」

 

「ああ、カルミラ島の詐欺商に囁いた時と同じだ」

 

「はぁ……何のことかはわかりませんが、納得します」

 

「お姉ちゃん、ごしゅじんさまね、全ての人々の――」

 

「黙れフィーロ」

 

 正直、微妙な顔をされるだけなのでラフタリアが聞いていないのならそれでいい、というのが尚文の本音だ。元より、外に聞こえるように大声で宣言したのだから。

 と、そこでリーシアが上目遣いに尚文を見上げる。今までにない目の輝き具合に尚文は思わずたじろいでしまう。

 

「私、感動しました! 怖いですが、頑張ります!」

 

 フィロリアルであるフィーロだけでなくリーシアまで聞いていたことに尚文は訝しげな顔をする。人間であるリーシアが聞いていたならば、亜人であるラフタリアにも聞こえていたはずなのに、何故かラフタリアだけは聞こえていない様子なのだ。

 

 ちなみにその答えは彼女が水を分けて貰いに行っていたからだった。そして、帰ってくると尚文が問題を起こした時のように周囲の状況が変化していた。

 これまで尚文が何かすれば悪いことだったので、経験則から尚文を疑ったというわけである。ある意味、信頼されていると言ってもいいだろう。

 

「ふむ、私も感動する演説だったぞ。盾の勇者殿は言葉は悪いがやる時はやるお方だったのだな」

 

 真面目を人の形にしたようなエクレールは尚文のことをよく思っていないところがあったので、先程の演説に素直に感動している様子だった。

 

「いや、似合わない演説だったよな。あれでやる気になるのはちょろすぎる」

 

「グラブジャムンのように甘ったるい発言だったの」

 

「ちょろあまだな」

 

 と口にするのは異世界組のハガネとルージュ。あんな使い古された化石のような台詞でやる気を出した連合軍のあまりのちょろさに二人は呆れていた。

 

「いったい何を放していたのですか? 教えて下さいよ」

 

「ああ、盾の勇者殿はな――」

 

「それ以上言わなくていい。どうせハッタリだ」

 

「ハッタリ……だと?」

 

「あそこで逃げたら勇者の評判が下がるから、嘘八百を並べたんだよ」

 

「ナオフミ様……やっぱり何か言ったんですね」

 

 察したラフタリアはため息を吐く。

 

「俺は常に自分が損しないように行動しているだけだ」

 

「そんな自慢げに言われましても……」

 

「感動した私の気持ちを返せ!」

 

 逆に絶句していたエクレールは憤懣遣る方無い様子だ。

 

「今まで俺は冤罪と戦ってきたんだ。物怖じしたり、相手の意見をそのまま受け入れたりしていたら無実の証明なんてできなかったんだ。時にはハッタリも重要なんだと覚えておけ」

 

「エクレールさん。ナオフミ様は、口は悪いですがやることはやりますし行動はしっかりしてますから信じてください」

 

「む……ラフタリアが、そう言うなら……」

 

 ラフタリアに説得されるエクレールを見て尚文は複雑な表情になる。エクレールのポジションが今までの自分の立ち位置だったからだ。嫉妬、ではないはずだ。

 

「時にハッタリも重要ですじゃ。ワシは昔、そのように虚勢を張って結果を出した七星勇者を知っておりますぞ」

 

 エルラスラはうんうんと何度も頷いている。

 

「早く、あの勇者も使命に目覚めてほしいところですじゃが……」

 

 エルラスラ・ラグラロック。変幻無双流の伝承者である彼女は若い頃、多くの戦場を駆け抜けた修羅でもある。当然のように七星勇者とも知り合いであった。

 

「さて、会議で決まってことを話す」

 

「はい」

 

「俺達が先行して霊亀に挑む。連合軍が後方で強力な魔法を唱えて援護するそうだ」

 

「今までの波と変わりませんね」

 

「変わらないがシンプルだろ? なに、見た目だけのデカブツかもしれない。まずは戦えるか様子を見よう。ついでに時間を稼がないと。進行先に避難ができていない町があるんだとよ」

 

「それは……やるしかありませんね」

 

「はーい!」

 

「わかりました。ですがナオフミ様は大丈夫なのですか?」

 

「使い魔の攻撃は痛くも痒くもない。後は霊亀の攻撃に耐えられるかを試すだけだ」

 

 最悪、尚文は呪われた盾を使って霊亀の攻撃を受け止めるつもりだ。

 

「リーシア、怯えるなよ」

 

「はい、頑張ります!」

 

「そう言えば思っていたんだが、お前は口癖を直せ」

 

「ふぇえ……」

 

「それだ。お前は何か自分に不利益があるとソレを口にする。聞いているとイライラしてくる」

 

「ふぇええ!?」

 

「喧嘩売っているのか? お前は精神を見直せばもっと強くなれると思うんだ。まず、その口癖から直していけ」

 

「ど、努力します」

 

 この口癖を直さないとリーシアは精神的に成長できない。ラフタリアという実例を知る尚文は、まずは心から改善していくつもりでいた。

 

「リーシア、状況によってお前には女王へ伝令を頼みたい」

 

「で、ですが」

 

「わかっている。その着ぐるみの力で足も速くなっている。戦えるかどうかの判断もいるんだ」

 

 尚文の見たところ、勇者の力で勝てるとかそんな相手には見えない。だが、恐れて逃げている場合でもないのも事実だ。

 例のゲームでも恐れて逃げてばかりでは敵を倒すことなど出来はしない。勇気を振り絞り、魔物に立ち向かうことで始めて勝機は生まれる。

 

「尚文。あの化け物と戦う上で試してみたいことがあるんだが……」

 

「なんだ?」

 

「俺の奥の手を使いたい。もしかしたら、あの化け物を倒すことができるかもしれない」

 

「それは本当か!?」

 

「ああ。何せ、俺の世界では人類最大威力の攻撃手段と言われていた魔法だからな」

 

「わかった。まずは、その魔法が通じるかを試すところからだな」

 

 尚文は女王へ視線を向ける。

 

「わかりました。状況次第で作戦を変更致します」

 

「後方援護を任せる。最悪、俺も撤退して七星勇者の到着を待つ」

 

「わかりました。イワタニ様、以降の士気に関わります。必ずご帰還ください」

 

「了解した。フィーロ、あのデカブツの所へ向かえ」

 

「はーい!」

 

「ラフタリア、いつも通りやればいい」

 

「わかりました」

 

「リーシア、お前は自分のことだけを考えろ。最悪戦線離脱して女王に保護してもらえ」

 

「は、はい」

 

「エクレール、お前の腕なら大丈夫なはずだ。錬と戦った時みたいにやれ」

 

「わかった。だが、なぜそこで剣の勇者が出てくるんだ?」

 

「ババア……お前に言う事は何もない。やりたいようにやれ」

 

「はいですじゃ!」

 

「ハガネ、それにルージュ。お前達にも全ての力を振り絞ってもらうぞ」

 

「うむ、その代わりに最高の美食を所望するぞ。ぬしの作る飯は美味いと聞いておるからの」

 

「仕方ないな……祝勝会は楽しみにしておけ」

 

 各々に命令を出し、準備を整える。

 

「おいおい、ルージュ、お前の飯を作るのは俺の仕事だろ?」

 

「その通りじゃ。それはそれとして、食の探求者として目の前の美食を見逃すわけにはいかんかや」

 

「そーかい」

 

 ヤキモチを焼いたのだろうか。若干、つまらなそうな表情をするハガネと、そんなハガネを見てクスクスと笑うルージュが最後に馬車に乗り込んだ。

 

「いっくよー」

 

 そしてフィーロが走り出し、一行は霊亀に向かって突撃を開始した。

 

    ☆

 

「近くで見ると大きいですね」

 

 目の前に巨大な亀が一歩、また一歩と近付いてくる。その一歩で周囲には地震が起こり、ふらつきそうになるのをどうにか堪える。

 

「そうだな」

 

「……逃げたくなります」

 

「気持ちはわかる」

 

 尚文は、一ヶ月と少し前までは他の勇者のおこぼれを貰っているような立場だった。なのに、何時の間にか他の勇者が勝てない相手と戦おうとしている。

 

(……物は試しだ。危険だったら即時撤退をすればいい)

 

 尚文に損はない。最終的に世界が救われるのなら、目の前の霊亀も一つの手段だ。

 霊亀用というわけではないが、所持している盾の中で一番強力な戦闘用の盾へと変化させる。

 

 勇魚の魔法核の盾(覚醒)+6 45/45 SR

 能力解放済み……装備ボーナス、スキル『バブルシールド』 船上戦闘技能2

 専用効果 水属性 熱線の盾(中) 魔法補助 魔法回復(小) 潜水時間延長

 熟練度 65

 アイテムエンチャントLv6 火耐性15%アップ

 カルマーペングーファミリアスピリット 水属性の装備能力向上

 ステータスエンチャント 魔法防御25+

 

 第三の波のボスである次元ノ勇魚から出たこの盾は他の盾より優秀な性能を持つ。

 勇魚が熱線を放つための器官である大きな丸い水晶を半分したような盾で、専用効果の”熱線の盾(中)”はそのまま熱線を放つカウンター能力だ。

 水属性の盾であり、火属性と水属性の相手には防御力に期待できる。

 専用効果にある”魔法補助”は魔法を唱えやすくする効果と、消費する魔力を削減してくれる効果がある。しかも魔力の回復を促進する”魔法回復(小)”があるので、スキル重視であった以前の盾よりも使いやすい盾となっている。

 

「おっきな亀さんだね!」

 

「ふぇえええええええ! イツキ様ー!」

 

 霊亀の使い魔(蝙蝠型)が群がってくる。主の正体、霊亀の名が判明してから使い魔の名前が尚文や”鑑定”技能を持つハガネに認識できるようになった。

 

「流星盾!」

 

 使用者の半径2メートルを取り囲む球状の[[rb:防御結界 > バリア]]を展開する範囲防御スキル。流星盾を展開した尚文は、リーシアを後ろに下がらせる。

 

「ヘイトリアクション!」

 

 続いて魔物を呼び寄せるスキルを使った尚文に、霊亀の使い魔は目から光線を発射しながら群がっていく。その数は結界の中が真っ暗になるほどだ。

 

 ガギンガギン!

 

 次々と霊亀の使い魔が結界にぶつかってくる。破壊されることはまだないようだが、これでは近付くのも一苦労だろう。

 

「ワシに任せるのじゃ! アチョォオオオオオー!」

 

 最初に、結界から飛び出したのはエルラスラ。彼女はくるくると回転して回し蹴りを繰り出す。それだけで竜巻が起こり、霊亀の使い魔達を薙ぎ払う。

 

「私も負けてられん! ハァ!」

 

 エクレールは剣先に手を添えて魔力を流してXの字を描く。すると、その剣先が剣閃となって霊亀の使い魔達に飛んでいく。

 ただ、エルラスラには遥かに劣るようで数匹を仕留めるに留まっている。

 その代わりに再使用までのクールタイムが短い。いや、そもそも勇者のスキルのようなクールタイムなど彼女の剣技にはないのかもしれない。

 

 ガッ! バクッ! バキュン!

 

「う~む、量は十分すぎるが味は最悪じゃのう」

 

 ルージュは唯一の攻撃手段である『食べる』で霊亀の使い魔達を次々とその胃袋に収めていく。その圧倒的な数は【暴食】の魔女であるルージュを満足させるに十分なものだが、やはり生ではとても美味しいとは言うことができない。

 戦闘後には大量の美食を要求するかのう、と心の中で呟きながら、椀子蕎麦の如くお代わりが止まらない亀の魔物を次々と食べていく。

 

「てい!」

 

「てりゃあ!」

 

 ラフタリアとフィーロも結界から出て霊亀の使い魔を攻撃する。

 

「ギィイイ!」

 

 霊亀の使い魔はそれぞれの攻撃を受けて事切れる。だがこれで上手くいくはずもなく、凄まじい数の霊亀の使い魔が後から後から群がってくる。

 

「チェストォオオオ!」

 

 戦士の攻撃技能”スラッシュ”でハガネは次々と霊亀の使い魔を薙ぎ払っていく。

 霊亀の使い魔自体は並の冒険者には厄介だが、尚文達の敵ではない。未だに流星盾を破壊できない以上は雑魚だと判断してもいいだろう。

 

「大丈夫か?」

 

「はい。少々数が多いですが倒せなくはありません」

 

「そうか」

 

 ドスンと音が響き、霊亀から何かが零れ落ちる。どうやら霊亀が新たな使い魔を作り出したらしく、亀の甲羅を背負ったゴリラみたいな魔物が尚文達に迫ってくる。

 霊亀の使い魔(雪男型)だ。

 

「”アル・ツヴァイト・オーラ”!」

 

 対象の全能力値を上昇させる勇者専用援護魔法”オーラ”。その中級魔法を応用することで、味方全体に能力値の強化を拡大させる。

 

「”ファスト・ガード”!」

 

 同時にリーシアが尚文に向けて防御力上昇の魔法を掛ける。

 

「行きます! 陰陽剣!」

 

 ラフタリアの剣が白と黒、交互に輝いて魔物を切り裂く。その切り裂いた魔物が二つに裂けて白と黒の玉に変わり、それぞれが別の魔物にぶつかって消滅した。

 

「おお! やるじゃないかラフタリア」

 

 エクレールが近くにいる使い魔を剣で貫いて称賛の声を漏らす。

 

「はい。エクレールさんから教わった通りにできるようになりました」

 

「私も負けていられないな。行くぞ!」

 

「はい!」

 

 エクレールの攻撃にラフタリアの剣戟が組み合わさり、相乗効果で霊亀の使い魔達は霧散していく。

 

「ぷちくいっくー」

 

 フィーロは加速を途切れさせることなく、使い魔達を次々と蹴り飛ばしていく。

 

「アチョー!」

 

 バキュン!

 

 その取りこぼしの半数をエルラスラが即座に薙ぎ払い、残りの半数をルージュが活きたままの状態で食べていく。

 

「ふぁ、”ファスト・ウォーターショット”!」

 

 リーシアが申し訳無さそうに結界に潜り込みながら使い魔に向けて水の魔法を放つ。倒せてはいないが、確実に動きは弱まっている。

 

「ハイスラァ!」

 

 大上段から振り下ろされた斧が雪男型の体を真っ二つに切り裂いた。職業全適性という女神謹製のチートは伊達ではなく、近接戦闘においてもハガネは秀でていた。

 

「これはいけるかもしれないぞ」

 

 尤も、使い魔程度が余裕なのは大前提。

 問題は本体。おそらく、他の勇者も本体を相手に苦戦したのだろうし、行方不明ということは、あるいは体内で戦闘中の可能性もある。

 

「とにかく、戦ってみるぞ!」

 

「はい!」

 

「はーい」

 

「ふえぇええええ!」

 

 と、霊亀に近付くに連れて強力になっていく……はずの使い魔を退かせて、尚文達は遂に霊亀の目の前までやってきた。

 

「……やっぱりデカイな。顔だけで一つの村くらいはあるんじゃないか?」

 

 霊亀は尚文達に視線を向ける。

 

「―――――――――――――――!」

 

 あまりにも大きな雄叫びに耳を押さえる。

 点滅気味で今にも効果が切れそうな流星盾を再展開。使い魔を弾いたところで霊亀の状態を確認すると、丁度、尚文達に目掛けて前足を出したところだった。

 

「やば!」

 

 咄嗟に盾を構えて攻撃に備える。ガラスの砕けるような音と共に流星盾が砕け散り、直後、尚文の全身を凄まじい衝撃が駆け抜けた。

 

「ぐ……」

 

 数歩だけ尚文は後ろに下がった。あの巨体から繰り出される強大な蹴りだ。流星盾程度で堪えきれるようなものではない。

 その隙を狙うかのように霊亀の使い魔達が尚文に群がっていく。

 

「邪魔です!」

 

 ラフタリア達は咄嗟に尚文の前に飛び出し、使い魔達を各々の技で薙ぎ払う!

 ただ一人、リーシアは尚文のマントに潜り込んでいて事態を理解せずに「ふえぇえ」と情けない声を漏らしていた。

 

「”魔導書”! さて……魔力を練るとするか!」

『黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう』

 

 霊亀討伐作戦、その第一の策を実行するためにハガネが詠唱を開始する。魔導書を中心に集まる莫大な魔力を感じ取ったのか、霊亀の使い魔が一斉に群がってくる。

 

「はぁああああああああ!」

 

「アチョー! 聖人様、気を付けてください!」

 

「ああ! お前等も何かあったら必ず俺を盾にするんだぞ!」

 

 エルラスラとエクレールはそれを薙ぎ払うと同時に霊亀の頭に攻撃を仕掛けた。僅かに血飛沫が上がってダメージが入ったようだが、霊亀は平然としている。

 クールタイムが過ぎたところで尚文は新たに流星盾を展開させた。

 

「ん? お前等! こっちへ来い!」

 

「わかりましたのじゃ!」

 

「了解した!」

 

 その直後、上空に雨雲が発生し、尚文達に群がろうとしていた使い魔達に雷が放たれる。感電した使い魔から生肉を焼くような焦げた臭いが発せられた。

 幾度となく降り注ぐ命中した使い魔を感電させ即座に撃墜、それだけには留まらず周囲にいる他の使い魔達に誘電していく。

 

 女王と連合の援護射撃だ。

 

 タイミングを練らないとラフタリア達を巻き込んでしまう[[rb:大量広域先制 > MAP]]攻撃だ。尚文が流星盾を発生させた直後に放つとは、おそらくは女王ミレリアの指示であろうが、中々に考えられた攻撃タイミングである。

 

『覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!』

 

「よし! お前等、攻撃再開だ!」

 

 援護攻撃が途切れると同時に尚文は叫ぶ。

 女王達の援護攻撃のおかげで使い魔の数を大分削ることができた。そして、尚文達は僅かの使い魔なら無視して駆け抜けることができる。

 

「とおおおおおお!」

 

 フィーロが力を込めて霊亀の巨大な顎に蹴りを入れた。

 

「――――――――!?」

 

 霊亀の頭が上に仰け反った。

 

「わぁあああ……重い!」

 

「まだです!」

 

 ラフタリアが合わせて剣で仰け反る霊亀の首に水平切りをする。

 ザシュッという野菜を切るような音がしたかと思うと霊亀の喉元に亀裂が生まれた。

 

「んあ」

 

 バキュン! と亀裂を中心に歯型に削り取られる。しかし、その歯型は霊亀の全体からすればごく小さなものであり、僅かに血が噴き出す以上の成果はない。それどころか霊亀の喉元の傷は数秒も要さずに再生してしまう。

 怒りに満ちた霊亀がラフタリアとフィーロとルージュを睨みつける。

 

「ワシも弟子に負けてはおられん! 変幻無双流奥義! 三日月!」

 

 その隙を逃すことなくエルラスラが蹴りを繰り出すと、三日月の形をした何かが霊亀にぶつかった。霊亀の頭が蹴りで凹み、凹んだ場所が小さく爆発する。

 威力こそラフタリア達に劣るものの、効果は抜群だ。霊亀が目を回している。

 

「今のうちですじゃ!」

 

「魔円突!」

 

 エクレールが剣に力を込めて突きを繰り出した。

 魔力の込められた光を剣に宿し、切先が衝撃となって霊亀の頭に命中する。

 エルラスラよりも遥かに劣る攻撃であったが、霊亀の肌に傷がつく。

 

「ふぇえええ!」

 

 リーシアも自分なりに魔法を唱えているが、焼け石に水だ。効果があるようには見えない。

 

『踊れ! 踊れ! 踊れ!』

 

 リーシアの魔法とは比べ物にならない凄まじいまでの魔力が渦を巻く。確かにこれだけの魔力が込められた魔法ならば、目の前の化け物を倒せるかもしれない。

 

「……戦えなくはない、か」

 

 というよりも、ラフタリア達が想像以上に強くなっている。よくよく考えれば、ラルク達が規格外に強かっただけで、普通の波の魔物はそこまで強くはなかった。

 仮にこの霊亀が相当強い方の魔物なのだとしても、今の俺達ならそこまで苦戦しないんじゃないか? と、尚文が考えた時だった。

 

「――――――――――!」

 

 霊亀の前に巨大な魔法陣が展開される。

 直後、尚文の結界の外に居た面々が地面に吸い付くようにうつ伏せになる。

 

「ぐうぅうううう……」

 

「な、なんですかこれ……は」

 

「うぐ……体が重い……潰れる」

 

「気を込めるのじゃ!」

 

 ただ一人、エルラスラだけは立っている。

 変幻無双流、此処に在り! この程度で止まるエルラスラではない。

 

「何があった?」

 

「わ、わかりません。ですが体が地面に吸い付いて……お、重いんです」

 

「この感覚は重力魔法……! 超高等魔法の一つじゃな」

 

 あまりの超重力に一度は地に伏したルージュであったが、流石は『七大罪』の魔女の一人である【暴食】の魔女、ただの気合で超重力の重力場を振り払う。

 

「ふぇえ?」

 

 だが、そんな特別な力とは縁のないリーシアも間抜けな声を出している。

 よく見れば、流星盾で生み出された結界が振動している。どうやら、霊亀の魔法は尚文の魔法防御を突破できないようだ。

 尚文は自力で動けない三人が結界の中に入るように近付く。

 

「あ、軽くなりました」

 

 それだけで三人は立ち上がる。

 

『我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり』

 

 そして、切り札の発動準備も進んでいく。規格外の化け物である霊亀を倒すために、必要以上の、それこそ全ての魔力をこの一撃に!

 その危険性を霊亀も理解しているのだろう。

 魔法の発動前に、目の前の敵を確実に潰すための切り札を切った。

 

「――――――――――――――――――!」

 

「くっ!?」

 

 霊亀が口を開いて吠える。

 否、胴体から光り輝く何かが咽喉を通じて昇っていくのが視認できる。

 尚文は咄嗟に全員の前に出て流星盾を再展開する。

 バチバチと霊亀の口から雷のエフェクトが漏れ出る。

 

「……雷? やばっ、ソウルイーターシールド!」

 

 今、尚文が装備しているのは水属性の盾。咄嗟に盾に手を翳して一段回下のソウルイーターシールドに変化させ、シールドプリズンを唱えた。

 直後、霊亀の口から高濃度の雷が放出される。自らの使い魔を巻き込みながら一直線に突き進むそれは、もはやアニメとかで撃ち出される荷電粒子砲のようであった。

 

「ぐ……う……」

 

「な、ナオフミ様!?」

 

「わー!」

 

「ふえぇええええ!?」

 

 結界も呆気なく突破、肌が焼ける匂いが鼻を掠める。だが、それよりも全身を貫く痛みで意識を失うこともできない。

 永遠とも一瞬とも言える長い時間を尚文は感じていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 朦朧とする意識の中、霊亀の攻撃が止んだのを尚文は理解する。彼は、肉の深いところが焼けているのを感じていた。ここまでのダメージを受けたことは教皇との戦いでブラッドサクリファイス……呪いのスキルを放った時以来だ。

 

(危なかった……勇魚の魔法核の盾だったら俺、蒸発して、即死していたかもしれない。だが……)

 

「賭け、には……勝ったぞ……」

 

「ごしゅじんさま!?」

 

「ナオフミ様!?」

 

 これで、霊亀を倒すための準備は全て整った。

 

『万象等しく灰燼に帰し、深淵より来たれ!』

 

 最後の一節。

 正真正銘、ハガネの全ての魔力を込めた究極の一撃が今、解き放たれる。

 

「――待たせたな! これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法! ”エクスプロージョン”!!」

 

 霊亀の頭を中心に魔力が解放される。凄まじい爆発に飲み込まれていく霊亀の目は、その在り得ざる威力の攻撃に驚愕に彩られていた。

 

 ――爆裂魔法 ”エクスプロージョン”

 

 無属性のその魔法は人類やモンスターなど生物は勿論、神や悪魔、霊体などありとあらゆる存在に効果を発揮する究極の攻撃魔法。

 無論、その効力は霊亀にも及ぶ。先程の荷電粒子砲にも匹敵するほどの、或いはそれ以上の威力が込められた大爆発。

 如何に伝説に謳われる霊亀であろうともこの魔法を前に耐えきれるはずがない。

 

「”ツヴァイト・ヒール”!」

 

 その合間にも、尚文は自らに回復魔法を掛けていた。万が一、この魔法で倒すことができなければ、霊亀を相手にさらなる戦闘を強いられることになるからだ。

 だが、その万が一が訪れることはなかった。

 爆風が消える。後には、頭部どころか肩口まで背中の甲羅ごと消し飛んだ、霊亀の胴体だけが地に伏した状態で残されていた。

 

「やったな」

 

 流石の霊亀でも此処まですれば命を落とすだろう。

 実際、霊亀は再生するような様子を見せない。どうやら体内に侵入して心臓を封印しなければならないほどの敵ではなかったようだ。

 遥か後方から歓声が響いてくる。

 

「おい主様、これを飲むのじゃ」

 

「ゴクゴクゴク……ぷはあ。ルージュ、ありがと」

 

 念の為に用意しておいた魔力水を一気飲みするハガネ。爆裂魔法は使用に必要な魔力量が莫大であるため、どんな魔力の持ち主でも一日一発が限界である。それを更に強化して撃ち込んだのだから、如何にチート持ちでも魔力が尽きるというものだ。

 

「凄まじい魔法でしたね」

 

「ああ、本当にな。まさかここまで高威力の攻撃だとは……」

 

「言ったろ? 人類最大威力の攻撃手段だって」

 

 全ての魔力を使い切ったハガネは倦怠感から地面に座り込んでいる。それでも自慢気な笑顔を浮かべて半ば呆然としている尚文に言ってのけた。

 

「しかし盾の勇者殿……イワタニ殿も凄かった。あの絶望的なまでに強力な一撃を防ぎ切るとは……盾の勇者という名に偽りはない」

 

「まあ、それしかできないがな」

 

 そう言いつつも尚文は微かな焦燥感に駆られていた。

 確かに今回は耐えることができた。だが、それが何時まで続くかはわからない。

 

(……もしも耐え切れなければ俺だけではなく、後ろの仲間も死ぬ)

 

 これだけは肝に銘じておかないといけない。そして、それを許さないためにもこれからもより防御力を高めていかなければならない。

 

「これで一安心ですじゃ」

 

「凄いです」

 

 尚文を素直に称賛するリーシア。しかし、尚文には思うところがあった。

 

「リーシア、お前もラフタリア達みたいになれるよう、頑張るんだぞ」

 

「ふぇえええええ!? 無理ですよぉ!」

 

「無理じゃない。なるんだ!」

 

「私なんかじゃできませんよぉ」

 

 ブンブンと首が千切れるんじゃないかと思うくらいリーシアは否定する。

 

「こりゃあ精神から鍛えないとダメそうだな……」

 

「ふぇえええ!?」

 

 などと問答をしながら尚文達は霊亀を倒した余韻に浸っていた。

 

    ☆

 

「イワタニ殿、此度の戦い、言葉に出来ないほどの感謝を……」

 

 連合軍の会議所に行くと女王をはじめとした各国の首脳陣が尚文に礼を述べてきた。此処に来るまでの間にも尚文は連合軍の者から感謝の言葉を投げかけられた。

 

(悪い気分じゃないな)

 

 むしろ、今までの戦いで言われなかったことのほうが不思議なのだ。確かに波の被害に遭った者達は礼を述べていたが、心から祝われるのは味わったことがない。

 今、連合軍は勝利ムードに浸っている最中だ。

 今回のMVPであるハガネは連合軍の猛者達に囲まれて胴上げされている。

 

「わ、わわわわっ!」

 

 勇者である尚文は近寄りがたいのだろう。霊亀の荷電粒子砲を防ぎ切るという偉業を成し遂げたはずの尚文は胴上げされていない。連合軍の者達は敬礼をして会議所への道を開けるだけに留まっている。

 エクレールとエルラスラ、ルージュ、そしてリーシアはその様子を見ているだけだ。特にルージュは助けを求めるハガネをニヤニヤと見守っている。

 

「それはいいんだがな」

 

 勝利したことへの達成感は確かにある。

 会議所のテントから戦場であった場所の霊亀の死骸を見つめる。ピクリとも動かなくなった霊亀が静かに戦場に残されており……勝ったことは間違いないだろう。

 

「だが……一つ問題があるんだ」

 

「なんでしょうか?」

 

 まだ女王は……否、尚文以外は気付いていない。何せ、確認することができるのは勇者だけなのだから。

 

「視界に浮かぶ……青い砂時計が消えていない」

 

 今までの波ならば波が静まると同時に次の到来時間が表示された。だが、そちらのアイコンも沈黙したまま……青い砂時計は静かに自己主張している。

 

「青い砂時計の原因は……霊亀ではないようだ」

 

 何かが起きている。

 伝承の割にアッサリと死んだ霊亀も然ることながら、青い砂時計の存在……。

 まだ、何も解決していないと尚文の直感が告げていた。

 

「なんと……」

 

 尚文の言葉に会議所にいた者達が顔を見合わせる。

 当面の問題になっていた霊亀は葬った。だが、まだ何かがある。

 

「だから色々と調べてほしい。まだ秘密が隠されていると思うんだ」

 

「イワタニ様のお言葉、確かに承りました。引き続き警戒を強めつつ……原因を調査致しましょう」

 

「任せた」

 

「では現在此方に向かっている七星勇者様方には霊亀が眠っていた地の調査に行っていただきましょう。イワタニ様よりも早く現地へと赴けるはずかと」

 

 尚文は、七星勇者のことを一人も知らない。故に頼りになるかもわからないが、人手が多いに越したことはない。

 

「霊亀の調査はお任せを」

 

「ああ、じゃあ俺達は行方知れずの三人の四聖勇者を探すとするか……ついでに被害を受けた場所で連合軍と共に救助活動もしないとな」

 

「御意」

 

 霊亀の死骸の調査は女王達がしてくれる。霊亀の封印されている国の調査は七星勇者……ならば尚文がするべきことは、霊亀が通った道を遡って三勇者を探すこと。

 ここで、救助活動をすることで自分への評価を上げるという目論見もある。

 勇者四人で戦わなければいけないのに、一人……ラフタリア達や連合軍もいたが四聖勇者は尚文だけで戦った。それくらいの見返りがあっていいはずだ。

 

 

 

 夜通しで行われそうな宴に適当に付き合ってからラフタリア達を集合させる。

 

「そんなわけで俺達はこれから勇者共の捜索と救助活動をすることになりそうだ」

 

 何かあった時は女王から尚文に伝達が来るようになっている。霊亀のことを調べるというのも重要だが、今の尚文はそれ以外にも三勇者の身柄を確保する必要がある。

 どこぞに逃げ延びているにせよ、怪我で動けない上にあるにせよ、死んでない以上は尚文の側から赴かないといけない。

 

「ついでに霊亀の背中も調べる」

 

「死んだ霊亀に乗り込むのですか?」

 

「ああ、背中の山……甲羅に乗って町と山の捜索はする予定だぞ」

 

「わかりました」

 

 今のうちに調べるのが一番なのは間違いない。体内に行くという話もあるのだから、三勇者がそちらに行って戦っている可能性もあるのだから。或いは、現在進行系で霊亀の中で戦っている最中かもしれない。

 

 そういう訳で尚文達は霊亀の甲羅の上へと移動した。

 

 辺りを確認すると、飛び乗ったところの傍に町を見つけることができた。こんな化け物の上に町があったことを知った住民はさぞ驚いたことだろう。

 中華風の町並みだ。霊亀が背負う蓬来山が中国神話に登場する山である以上、それもおかしな話ではないのかもしれない。

 まさか、城らしきものまであるとは尚文も思っていなかったが……。

 

 連合軍の者達も尚文達の後を追って霊亀に乗り込んできた。

 

 廃墟と化した町には無数の死体が転がっている。直接的な死因は霊亀の使い魔の攻撃だろう……が、霊亀の使い魔の姿は殆どない。あるのは転がっている死体ばかりだ。

 ただ、霊亀の使い魔は寄生能力がある。もしかしたらその苗床にされてしまっているかもしれないので経過しつつ尚文達は調査を開始した。

 

「ちょっとあの建物に行ってみよう」

 

「はい」

 

「はーい」

 

「えっと、確か……この町で有名な寺院だったはずですぅ」

 

「リーシアは詳しいな」

 

 エクレールが辺りの死体の祈りを捧げながら呟く。

 

「古い旅行記で読んだだけです」

 

「ワシも昔、一度だけここに来たことがあるのじゃが、見るも無残で驚いたわい」

 

「寺院跡……ゲームだとこういう場所にヒントとかがあるんだよな」

 

「わかるぜ、尚文。ゲーマーの心が疼くよな」

 

 寺院の中に足を踏み入れる。霊亀が歩いていた所為で半壊状態だ。

 そこで尚文達は、霊亀の絵が描かれた壁画を見つけた。それだけなら何かを発見したとはいえない。問題は、その壁画の隅に書かれていた文字だった。

 

「これは……!」

 

「日本語!?」

 

 もしも日本から召喚された・がこの文字を読んでいるのなら、覚え・い・欲しい。

 こ・化け物はどれだけ厳な封印をしても終・の時に七・目・破・・るだろう。

 調べた結果、目的は・・・・・・・・・・・であり、世界を・・・だ。

 願わく・、意・的に封印を破らないことを祈る。

 犠牲者を出すのはもしかしたら世界のためともなりえる。

 その代価に見合う見返りがあるのだから。

 だけど……傲慢・し・かない。終末・・にこの文字を・む者がいるのなら、世・より人・のためにできる限り・く倒し・くれ。

 ・の化け物を倒す方法は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・の八・勇・ ・・桂一より。

 

「……掠れてあまり読み取れない。けど、何となくは内容は想像できるな」

 

「ああ、『七つ目に封印が破られるだろう』ってところだろうな」

 

 青い砂時計の数字と一致する。おそらく、封印数字がこの時に予測されていたのだろう。目的や肝心な部分が読めないと嫌な具合に消失している。

 

(犠牲者を出すのが世界のためか……フィトリアの言っていたことと符合するな)

 

 しかし……倒す方法の部分だけ不自然に切り取られている。霊亀が動いたからにしては傷が古く、意図的なものを感じずにはいられない。

 また、他には桂一という名前の勇者が過去にいたことぐらいだろう。元々古いものなのでどういった人物なのかはわからないが、尚文や三勇者のように異なる日本から来た可能性が高いだろう。

 

「しかし、八? 七星勇者なら数が合わないぞ?」

 

「八、か。実は、八人目の隠された七星勇者がいるとか?」

 

「……まさかな」

 

 尚文の脳裏に過るのは馬車を引く魔物形態のフィトリアの姿だった。そう言えば、あの馬車にも盾に施された宝石と同じ形の宝石が嵌まっていた。

 

「ごしゅじんさま読めるの?」

 

「まあな」

 

「へー、この文字、何か変わってるね」

 

「確かにメルロマルクで使われている文字じゃないな」

 

「これがナオフミ様の世界の文字なのですか?」

 

「ああ、前に俺が訳しているのを読んだことがあるだろ?」

 

「そう言えば……そうでしたね」

 

「勇者文字か」

 

 エクレールが文字に手をかざして呟く。

 

「勇者文字?」

 

「ふむ……ただの日本語が凄い言われようだな」

 

「勇者ごとに文字の意味が違ったりして解読するのがとても大変なんですよ」

 

 その意味は、日本人である尚文とハガネも理解することができた。

 日本、と一口に言っても日本の存在する世界は一つではない。四聖勇者の出身世界だけでも四つの日本が存在しており、それぞれ同じ言葉でも意味が違う可能性は否定できない。そもそも、同じ世界でも時代によっては意味が変わってくることもある。

 文字自体は同じでも意味が違うことがある勇者文字……研究する側からすれば、大変なことこの上ないだろう。

 

「これは解析されていたのか?」

 

「えっと……この国は百年以上前から鎖国気味で、簡単に入ることができなかったので何とも言えません」

 

「そうなのか?」

 

「はい。独自の文化を守るためと、私達の国の方も戦争とかで資料が消失したことが多くて……」

 

「うーむ。新大陸の勇者達に力を借りることも考える必要があるか」

 

「新大陸?」

 

「ああ、第三の波の後に出現した大陸のことだ」

 

 勇者が全員、日本から来たとは限らない。英語なら尚文でも読むことはできるが、それ以外の言語の場合は読むことができない。

 四聖勇者の武器には言葉の翻訳機能は存在しているが、文字の翻訳機能は存在しないため、日本語以外の言語の場合は勇者文字の解読が非常に困難なものになる。

 その点、新大陸の勇者一行は”言語理解”という言葉と文字、両方に対応する翻訳技能を持っている。正直、尚文としては新大陸の勇者とは関わり合いになりたくないのだが、最悪の場合、彼等に協力を求めることも視野に入れる必要がある。

 

「他に目ぼしいものはないみたいだな」

 

「そのようですね」

 

「旅行記で有名な寺院も霊亀が復活した所為でこれか……」

 

「ふぇえ……物悲しいものですね」

 

 などと感想を述べているエクレールとリーシアと横目に続ける。

 

「次はどこへ行きましょうか?」

 

「城の方とかか? 宝物庫に良い物が眠っているかもしれないぞ」

 

「待て、イワタニ殿。宝物庫の宝をどうするつもりだ?」

 

 エクレールが尚文に向けて眉を上げて注意する。ラフタリアも呆れ顔だ。

 

「持ち主はどうせ死んでいるだろうし、接収しようと思っているが」

 

「火事場泥棒ではないのか?」

 

「霊亀の被害で困っている場所で資金にすればいいだろう」

 

「む……そうだな」

 

「それとも連合軍の連中に明け渡すのか? 我こそはって顔で駆けていっているぞ」

 

「何!?」

 

 エクレールが城へ向かっていく連合軍の連中を睨みつける。確かに尚文のそれも火事場泥棒であるのだが、復興のために使うだけ彼等よりはマシだろう。

 

「そのような蛮行、見逃すことはできん! イワタニ殿、ぜひとも行くべきだ」

 

「ああはいはい。フィーロはエクレールを連れて行ってくれ」

 

「うん! じゃあ行こうか、赤い野菜みたいな髪の人」

 

「赤い野菜!?」

 

「むしろ、赤い果物じゃないかや?」

 

「赤い果物!?」

 

 エクレールがフィーロとルージュの呼び方に絶句する。確かに赤い野菜、或いは赤い果物みたいな人というのは呼び方としてかなり酷い部類だろう。

 

「いいか、私の名前はエクレールというのだ。フィーロ殿はちゃんと覚えるのだぞ」

 

「えー、エクレ……アお姉ちゃん?」

 

「違う! どこからアが出てくるのだ」

 

 何とも間抜けな光景だった。

 

「ババアは女王にこのことを伝えてきてほしい」

 

「わかりましたのじゃ。後ほどエクレール門下生と合流し、略奪から宝を守って見せますのじゃ」

 

 と、女王に連合軍のことを報告するためにエルラスラは高速で走り去っていった。

 残ったのはラフタリアとリーシア、そしてハガネとルージュだ。

 

「じゃ、俺達は引き続き調査を続けるか」

 

「そうですね」

 

「ふぇええ……なんか静かすぎて怖いです」

 

「確かにアンデッド系の魔物が出てきそうだなー」

 

「流石の妾も、完全に腐ったものを食べたくはないのう」

 

「ふぇええ!」

 

 日が沈んできたこともあって不気味さが倍増である。

 

「お二人共、リーシアさんが怖がってますから程々にしてください」

 

「はいはい」

 

「ハガネさん、はいは一回ですよ」

 

「やれやれ……じゃあ町の方は連合軍の連中に任せて山の方を調べてみるか」

 

「はい」

 

 尚文達は山の方をある程度調査したが結局目ぼしい物を見つけることができず、調査を中断したのだった。

 一応、伝承に存在する霊亀の体内へと続くと言われる洞窟も見つけ、翌日、日が昇ってから調査したのだが、所詮は伝承……体内に入ることなどできなかった。

 何もいない不気味な山、大量の死者が眠る町と精神上よくない霊亀の調査はこうして終わった。

 

 

 

 結局三勇者は見つからず、尚文達は三勇者が消息を絶ったと言われた町にまで辿り着いた。

 エクレールとエルラスラは別行動で三勇者の捜索をしている。リーシアも参加を望んでいたが、博識なので霊亀や伝承に関してメルロマルクの図書館で調べるのを任されている。

 この辺りまで来ると被害こそ受けたものの生存者がある程度存在しており、被災からの復興活動をしている姿が見受けられる。

 ちなみに、霊亀の使い魔は未だに活動している。本体が死んでも活動できるタイプの使い魔なのかもしれない。

 

「おーい! 錬ー、元康ー、樹ー、いるなら返事しろー。別に勝てなかったお前等が悪いわけじゃないんだからさー」

 

「ナオフミ様、棒読みは程々にしてください」

 

「だって、これで何日目だと思ってんだ」

 

 もう霊亀を倒してから三日目。あれだけの人数で捜索しても仲間一人見つからないというのはあまりに不気味だ。せめて勇者だけは見つけておきたいのだが……。

 

 

 

「でさー何でも今回の戦いに参加したのは盾の勇者様だけだったらしいぜ?」

 

 丁度、尚文が補給に立ち寄った町で冒険者が霊亀の話をしていた。ラフタリア達は馬車で休憩中で、尚文とハガネだけが近隣で目撃情報がないかと冒険者ギルドへ聞きに行くところだった。

 

「へー……他の勇者様達は? 四聖勇者って他に三人召喚されているんだろ?」

 

「それがカッコつけて霊亀に挑んでいったっきり行方知れずなんだと」

 

「負けたのか逃げたのか。偽物なのか知らねえけどカッコワリぃな」

 

 二人はそんな話を盗み聞きしながら、ギルドのカウンターで錬達の肖像画を受付嬢に見せて尋ねる。

 ……が、結果は芳しくなく、目撃情報は全くない。

 

「その話が本当なら……勇者は頼りにならねえな」

 

「そうだな。じゃ、俺は行くとするか。知らねえ顔だけどお前も気を付けろよ」

 

「ああ、色々と教えてくれてありがとよ」

 

 冒険者の雑談が終わり、二人も受付嬢と話を終える。

 そして、次の町へ向かうか考えている最中。

 

「間抜けの四聖最強の盾の勇者と異界の勇者……まだ終わっちゃいない。次はもっと犠牲者が出るのを覚悟しろ」

 

「「!?」」

 

 バッと振り返るが、そこには誰もいなかった。ただ……数枚の紙が散るように消えたような……気がしただけだった。

 

「なんだ今の?」

 

「多分、さっき話をしていた冒険者の一人の声だと思うけど……」

 

「幻聴……ではないか。二人が同じ幻聴を聞くとは思えない」

 

「ああ。気の所為で済ますには……あまりにも不吉だ」

 

 確かに尚文は盾を持っている。だが、現在立ち寄っている町では盾の勇者だとは明かしていないし、ましてやハガネの来歴を知っている者などいるはずがない。

 不吉な予感と、さっきの言葉がぬめりと纏わりついているような気持ち悪さが残る。

 

「まだ……霊亀には謎が隠されているような気がする」

 

 だが尚文達は確かに霊亀を倒した。既に霊亀に関してある程度は調べたし、現在進行系で女王や連合軍が霊亀の調査を続けている。

 今、自分達がやらねばならないのは行方不明の三勇者の足取りを掴むことだ。

 そう自分に言い聞かせ、尚文は三勇者の捜索に戻るのだった。

 

 ―――そんな彼等を嘲笑う人影に気付くことなく。

 

    ☆

 

 ■エクスプロージョンが解放されました。

 

 

 

 ユニット名:岩谷尚文

 サイズ  :M

 移動力  :6

 地形適応 :空B 陸A 海B

 タイプ  :陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :ガンダム(機動戦士ガンダム)

 

 武器

 ・エアストシールド

 ・セカンドシールド

 ・ドリットシールド

 ・シールドプリズン

 ・チェンジシールド

 ・流星盾

 

 その他

 ・アラートシールド

 ・ヘイトリアクション

 ・ポータルシールド

 ・バブルシールド

 

 未解放

 ・セルフカースバーニング

 ・チェンジシールド(攻)

 ・アイアンメイデン

 ・ブラッドサクリファイス 

 

 

 

 ユニット名:ラフタリア

 サイズ  :M

 移動力  :8

 地形適応 :空B 陸A 海B

 タイプ  :陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :ブラウニー(ガン×ソード)

 

 武器

 ・陰陽剣

 ・八極陣天命剣

 ・ファスト・ミラージュ

 

 

 

 ユニット名:フィーロ(人間形態)

 サイズ  :S

 移動力  :6

 地形適応 :空B 陸A 海B

 タイプ  :陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :Zガンダム(機動戦士Zガンダム)

 

 武器

 ・ぷちくいっく

 ・はいくいっく

 ・ファスト・トルネイド

 ・ツヴァイト・トルネイド

 ・すぱいらるすとらいく

 

 

 

 ユニット名:フィーロ(魔物形態)

 サイズ  :L

 移動力  :7

 地形適応 :空A 陸B 海B

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :ウェイブ・ライダー(機動戦士Zガンダム)

 

 武器

 ・ぷちくいっく

 ・はいくいっく

 ・すぱいらるすとらいく

 

 

 

 ユニット名:リーシア=アイヴィレッド

 サイズ  :M

 移動力  :6

 地形適応 :空B 陸B 海-

 タイプ  :陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :???

 

 武器

 ・格闘

 ・ファスト・ウォーターショット

 

 

 

 ユニット名:エクレール=セーアエット

 サイズ  :M

 移動力  :7

 地形適応 :空B 陸A 海B

 タイプ  :陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :ダン・オブ・サーズデイ(ガン×ソード)

 

 武器

 ・魔円突

 ・一閃

 ・連続突き

 

 

 

 ユニット名:エルラスラ=ラグラロック

 サイズ  :M

 移動力  :7

 地形適応 :空B 陸A 海B

 タイプ  :陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :エルドラソウル(ガン×ソード)

 

 武器

 ・無双活性

 ・変幻無双流 点

 ・変幻無双流 円

 ・変幻無双流 三日月

 

 

 ユニット名:ハガネ

 サイズ  :M

 移動力  :7

 地形適応 :空B 陸A 海A

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :職業全適性チートでスローライフを送ることにした

 モデル  :グリッドマン(SSSS.GRIDMAN)

 

 武器

 ・ストレート

 ・狙撃

 ・ハイスラッシュ

 ・トルネード

 ・カースド・ライトニング

 ・エクスプロージョン[MAP]

 

 

 

 ユニット名:ルージュ

 サイズ  :S

 移動力  :7

 地形適応 :空A 陸A 海A

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :職業全適性チートでスローライフを送ることにした

 モデル  :巨大サンユン(魔法騎士レイアース)

 

 武器

 ・暴食

 

    ☆

 

 ユニット名:霊亀

 サイズ  :5L

 移動力  :4

 地形適応 :空- 陸A 海-

 タイプ  :陸

 登場作品 :盾の勇者の成り上がり

 モデル  :デスザウラー(ゾイド -ZOIDS-)

 

 武器

 ・ハイパーキラーバイトファング

 ・ハイパーキラークロー

 ・重力場・超重力[MAP]

 ・荷電粒子砲[MAP]

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