スーパー英雄大戦F   作:ゲーマーN

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第1話「ブレイブスター・クロニクル」

 東宏。身長百七十一センチの中肉中背と言っていい体格で、眉が太めであること以外にこれといった特徴のない顔立ちの高校三年生である。

 別段おかしなセンスの服を着ているわけでもなければ、妙な着崩し方をしているわけでもないのに、どういうわけかどんな格好をしても野暮ったいと言われてしまう。

 恐らくは、彼が全身から発散させているヘタレオーラがその要因の一つだろう。

 

『ちぃーっす』

 

『お、ヒロさん、ばんわ〜』

 

『こん〜』

 

 親との約束を律儀に守り、宿題と一時間程度の受験勉強もどきを済ませた宏は、ようやく作った空き時間にウキウキとヘッドギアを被り、いつものVRMMO『フェアリーテイル・クロニクル』にログイン。グループチャットで挨拶をすると、固定パーティーを組んでいる面子から次々と挨拶が返ってくる。

 と、受験生なのにゲームに現を抜かしているところを見れば分かるように、割と流されやすいタイプで、ゲーム以外の趣味は読書――それも主にライトノベル系を好む、世間一般でオタクと評される人物だ。

 

 彼等が遊んでいる『フェアリーテイル・クロニクル』とは、宏が中学の頃に正式サービスを開始したVRMMOであり、”サバイバルからスローライフまで”、”ゲーム内のアイテムは全て自作可能”などのキャッチコピーで話題になったゲームだ。

 自由度の高さを謳っているためかRPG的な意味での職業の概念はなく、キャラクターレベルとスキル熟練度のハイブリッド育成システムを採用している。

 

 宣伝文句に偽りなしの自由度を実現しているゲームであり、本来なら三回か四回ぐらいの大規模アップデートで実装するほどの常識外れのボリュームを正式サービス開始直後から実装しており、単に実装されているフィールドの情報が出揃うだけでも一年近くかかるという廃人泣かせの偉業を成し遂げた。

 そして、たった二回の大規模アップデートでこのゲームは、もはや開発者以外誰にも全ての要素を把握できないだろうという巨大なタイトルに進化を遂げた。

 

 もっとも、一番の驚きは、それだけの規模なのにバグらしいバグやサーバーダウンのような不具合を一度も起こしていないということだろう。

 何よりも、これまで一度もハッカーに侵入を許していないという、一部の政府より堅固なセキュリティを実現していることが、ほとんどバランス調整を行わないにもかかわらず、ユーザーの支持を集めている理由に違いない。

 

 もうサービス開始から五年経つというのに、未だにユーザー数・プレイヤー満足度共にトップクラスを走り続ける化け物タイトル。それが『フェアリーテイル・クロニクル』である。

 

『ヒロさんヒロさん』

 

『なんや?』

 

『ヒーリングポーションとマナポーションの在庫ってある?』

 

『せやなあ。とりあえずレベル6のやったら倉庫に山ほど積み上がっとるけど、それでええ?』

 

『十分。てか、市場にゃレベル4ぐらいまでしか出回ってないんだよなあ』

 

 未だに、流通品が思いの外低レベルであることを意外に思いつつ、露天やオークションを長いこと利用していない宏としては、そんなものかと納得するしかない。

 とある事情があって、このゲームの職人達は自分が作ったアイテムを市場に流さない。そのため、露天やオークションに出回るのはドロップ品やクエスト報酬程度。レベル4のポーションも人型の雑魚がそれなりの確立で落とすドロップ品だ。

 

 また、上級の素材は上級の職人がモンスターを解体しないと手に入らない仕様であるため、そういった素材が市場に出回ることもない。上級職人ともなると、職人同士のネットワークを通じて余っている素材を直接物々交換する方が確実であるからだ。

 結果として、宏のような職人が市場を利用することは殆どなく、それ故に自分達が作る物の希少価値を理解していない現状に至るわけである。

 

『さよか。まあ、レベル5は安定して作ろう思ったら、中級カンストするぐらいの腕はいるからなぁ』

 

『うげえ、そんなにきつかったのか……』

 

 宏の言葉に呻くフレンドA。

 因みに、カンストとはネットゲーム用語でカウンターストップ、つまりは上限に達したことを指す。この場合は、中級をマスターした、と同じ表現である。

 

『まあ、生産は慣れと根気と諦めやからなあ……で、どんぐらいいる?』

 

『とりあえず、どっちも百本ぐらい欲しいけど、ある?』

 

『余裕余裕。百でええんやったらレベル8でもいけるで?』

 

 冬休みにスキル上げのために山盛り作った、ポーション作成スキルで製作可能な最高レベルの物を提示する宏。

 倉庫一マスに格納できる限界数で三マス分はあるので、誰かが食い潰してくれた方がありがたいのだが……それはやはり常識知らずの提案だった。

 

『いやいや、6で十分。てか、レベル8なんて使った日には、目立ってしょうがねえよ。で、いくら?』

 

 素材集め以外ではダンジョンに潜らない宏は知らぬことだが、レベル8のポーションは現状、上級プレイヤーの回復魔法を超える回復量を誇る。

 それ一本でどうにかなるほど甘いゲームではないが、中級ダンジョンのボスぐらいなら、上手いアタッカーと組めば回復魔法なしで落とせる程度の性能はある。

 

 もっとも、生産スキルを鍛えているプレイヤーが非常に少ないこのゲームでは、生産か人型の希少モンスターから奪う以外に手に入らないレベル5以降のポーションはかなりの貴重品であり、一般に知られている最高レベルであるレベル6の各種ポーションなどは、市場に出回った瞬間に上級プレイヤーに買い占められるほどだ。

 しかも、どういう仕様なのか、レベル5以降のポーションはNPCが買い取ってくれない。そのせいで、キャラクターレベルが人口的にボリュームゾーンの範囲に居る宏の身内は、誰もレベル6ポーションの相場を知らない。

 

『せやなあ。どうせスキル上げで作ったやつやし、一本五百でええわ』

 

『安!!』

 

『いやまあ、正直なところ、出回ってないんやったらNPC売りの値段以外、相場とかあってなきが如しやし、ドロップ系の素材は皆からカンパしてもろとるしなあ』

 

『まあ、懐にあんまり余裕ないから、安いのはありがたいんだけどね』

 

『ほな、今から着払いで送っとくわ』

 

『了解。いつもサンキュ』

 

 倉庫から取り出したポーションを、宅配便システムで着払い指定にて送りつける。

 因みに、一本五百と言うのはNPCから普通に買える上限であるレベル2ポーションの値段である。投げ売りにも程がある超激安と言っていい。

 とは言うものの、序盤から中盤に必須になってくるポーション類だが、この値段でも必要とされる頃には懐が痛む値段設定となっている。ならば生産スキルで作ればいいと言いたいところだが、身銭を切ってでも購入した方が良いというところからも、生産スキルの不遇さを察することができるだろう。

 

『ヒロ、従妹が今度VR解禁になったからって、このゲーム始めるって言ってたんだけど、初心者向けにいい装備ってないか?』

 

『せやなあ。雑魚ドロップよりはええナイフと服ぐらいはあるけど、それで問題ない?』

 

『ちょっとスペック見せて』

 

『こんな感じやで』

 

 倉庫から引っ張り出した服とナイフのデータを、メールに転写して送りつける。

 

『悩ましいところだな』

 

『もっとええやつの方が良かったか?』

 

『いや、その逆だ。初心者に渡すには、ちょっと性能が良すぎるかもしれない』

 

『これ以下やったら、NPCから()うた方が早いで』

 

『そうか、了解。じゃあ、最初は安いやつを買っておいて、適当なタイミングでこいつをプレゼントするか。いくらだ?』

 

『せやなあ。NPCに売って千五百やから、三千かなあ』

 

『だから安いって』

 

『倉庫に積み上がった余りもん押し付けとるだけやし、気にせんといてや。ついでに余ってる練習用ポーションとレベル0ポーションも一スタックずつあげるわ』

 

 そう言って、もはや使い道も存在しないほど微妙な回復量しかない最下級ポーションを大量に押し付ける。

 役に立つのがチュートリアルから初心者クエストを完了し、最序盤の作業を終えるぐらいまでという寿命の短い、だが安定して作れるようになるのにレベル2ポーションが欲しくなる頃のパラメーターが必要という、生産スキルの不遇さを象徴するようなポーション類である。

 おまけに、ポーションには中毒というシステムがあり、連続使用に限界がある。なので、安全地帯で低レベルポーションを多用して回復という真似も難しい。

 特にマナポーションとスタミナポーションは中毒発生率が高いため、大抵はチュートリアルや初期のクエストで貰った分を余らせている。

 

『ありがたく頂きはするが、はっきり言って俺達のところでも余ってるぞ?』

 

『こっちは、余ってるってレベルやあらへんねん。悪いけど、中毒起こす勢いで飲んだって』

 

『しゃあねえなあ。全く、せめてNPCが買い取ってくれるか、空き瓶が回収できればいいんだがなあ』

 

『ほんまやで』

 

 容器が必要な割にNPCに売ろうにも低性能を理由に買取拒否される上に、使用しても容器が回収できるわけでもないという不良在庫を体よく押し付けることに成功した宏が、空いた容量を他のアイテムで適当に埋める。

 最序盤のスキル上げのためにはこれらの低レベルポーションを大量生産する必要があるのだが、これらの理由から赤字は必須であり、どうしても赤字を出したくないのであれば、他のスキルで容器から作る必要があるという、自由度を謳っている割には入門からプレイヤーを門前払いしているとしか思えないバランスが通好みとは、宏と同期のポーション職人の言い分だ。

 尤も、殆どのプレイヤーから生産が敬遠されている理由はその前の部分にある。

 

『そういや、ヒロさん。その手のポーションって、どれだけ余らせてる?』

 

『各種五スタックっちゅうとこちゃうかなあ』

 

『うげえ。よくあの時期のマゾさでそんなに作れたよ……』

 

『なんべんも言うとるけど、生産は慣れと根気と諦めやで』

 

『それで十分でスタミナ切れ起こすような作業を続ける根性、俺にはなかったよ……』

 

 このゲーム、何を作るにも必須である材料集めが他に類を見ないほどきついのだ。

 何しろ、最序盤は薬草一本を手に入れるのにも限界まで顔を近付けて観察しないといけない上に、使用可能な部位を正確に切り取る必要がある。

 スタミナ値の最大値にかかわらず、初期は十分も作業をすればスタミナが枯渇してしまい、五分は休憩しないと作業に復帰できない。

 なお素材を加工するスキルもスタミナの消費は激しいのだが、此方はそもそも材料がなければ先に進まないため、現実にはそれほど気になるようなものではない。

 

 業が深いのは、単にスタミナなどの消費が速いから捗らないだけでなく、VRMMOとしての特性を活かして、スタミナが枯渇すると指一本動かすことすら億劫になるほどの疲れを感じるところだろう。

 その上、スタミナの消耗に比例して作業効率や成功率が目に見えて落ちるため、実際には五分程度の作業で休憩しないとまともな作業にはならない。

 初級生産のスタミナ消費は地味に最大値に比例するため、ある程度キャラが育ってからだと更に育てるのがきつくなるのである。

 

『その程度でマゾい言うとったら甘いで。中級からは、普通に他の生産スキルで作るアイテムとか機材が絡んで来おんねんで?』

 

『うへえ……』

 

『しかも、モンスター素材も結構要るようになってくるから、今みたいに基本ソロで材料集めなあかん状況やと、最低限の戦闘能力は要るしな』

 

 その上、中級に入るまではNPCから購入できるレベルのものしか作れない、という達成感の無い仕様。全力でプレイヤーを篩い落としに来ているとしか思えない。

 この無駄にえげつない生産の仕様こそが『フェアリーテイル・クロニクル』のユーザーにとって、唯一にして最大の不満点と言っても過言ではない。

 そうでなくとも、職人雲隠れ事件と同じ理由で生産職の人数が大幅に減っているので、せめてもう少し育成をやりやすくしてほしい、という要望は何度も出されているのだが……その結果は先述の通りである。

 

『本気で、上級の連中って頭おかしいよなあ』

 

『頭おかしいとは失礼な。何度も言うとるやん。生産なんざ、慣れと根気と諦めと惰性やって。駄弁りながらやっとったら、案外育つもんや』

 

 宏の身の程を知らない一言に、いろいろツッコミたいのを諦める友人一同。

 この手の行き着くところまで行き着いた連中に対しては、何を言っても無駄だと思ったのだろう。それで普通に育つのなら、職人雲隠れ事件の後、こんなに生産アイテムが枯渇したりしないし、知り合いにもっと職人プレイヤーがいるはずである。

 

『前から思ってたけど、いっぺんヒロさんの倉庫の中身、見てみたいよね』

 

『見せてもええけど、生産品と採取系の素材で埋まっとるから、貴重品はほとんどあらへんで』

 

『いやいや。その山と溢れてるっていうレベル8ポーションが、既に普通に貴重品だから』

 

『上級生産やってる連中の倉庫は、みんな似たりよったりやで。多分、売りに出したらあっという間に値崩れするんちゃうか?』

 

『そんなにすげえの?』

 

『そら、レベル8をランク落とした素材で失敗せんと作れる連中は二十人もおるんやし、一人一種一万は持っとるやろうから、それだけで各種最低二十四万本やで?』

 

 一見すると途方もない数と思うかもしれないが、プレイヤー総数と消費量を考えるとあまり多いと言えないところが、このゲームの深淵を覗かせる。

 何しろ、廃人クラスが通う攻略時間の長い高レベルダンジョンの場合、現状一回の攻略でパーティー全体で普通に五十や百は食い潰すのだ。特に中毒の発生条件が軽めのヒーリングポーションは、前衛から後衛まで満遍なく中毒ギリギリまで消費するため、本当に消費量が馬鹿にならない。

 

『まあ、それはそれとしてさ。ヒロさん、これからダンジョン潜らない?』

 

『おー、ええなあ。そろそろドロップ系の素材使い切りそうだし、明日か明後日ぐらいから受験のためにちょっと休止する予定やから、今からやる作業が終わったら混ぜてもらうわ』

 

『今、何作ってるの?』

 

『後でのお楽しみや』

 

 人を食ったようにおどけながら作業を続ける宏に、とりあえず集合場所と開始予定時間を告げて自分の準備に移る友人達。

 そんな彼等を横目に、ひたすらちまちま作業を続け……。

 

「よっしゃ、スキルカンスト!」

 

 作業の目的を達成。

 最近、クエストでゲットした特殊スキルをマスターしたことを確認する。

 集合場所に向かうために移動しようと倉庫から転送石その他諸々を取り出したところで、メールが届いたことを示す効果音が鳴った。

 

「ん?」

 

 メールボックスを覗くと、明らかに文字化けしたと思われる、よく分からないタイトルのメールが三通。速攻で削除しようかと思ったが、念の為に知人友人に声だけ掛ける。

 

『なあ。誰か今、僕にメール出した?』

 

『いや、出してないけど、どうした?』

 

『何ぞ、文字化けしたメールが三通ほど届いてなあ』

 

『……それ、触らない方がいいぞ』

 

 宏の言葉に、一番年上のメンバーが忠告する。

 

『やばそうやから中身を見るつもりもあらへんかったけど、何で?』

 

『最近、文字化けメールでクライアントが破壊されるトラブルが何件かあったらしくてな。公式でも注意が出てる』

 

『へ~。そんな致命的なバグが出るって、初めてちゃうか? お、ほんまや。運営からのお知らせにのっとるわ』

 

『だから、運営に連絡したら、削除も含めて絶対触らないようにしておけ』

 

『了解。注意してくれてありがとうな』

 

 GMコール、文字化けメールについて連絡。運営の方にもスクリーンショット付きでバグ報告として通報。念の為に件の文字化けメール以外のバックアップを取る。

 そして、今度こそダンジョンを潜りに行こうと転送石を起動させた瞬間、

 

『何じゃこら!?」

 

 異常が発生した。

 文字化けメールがメールボックスを埋め尽くし、それ以外のウィンドウにまで侵食を開始する。

 唐突な展開に、無意識にグループチャットで叫ぶ。

 

『どうした?』

 

『文字化けメールがメールボックスから溢れ出しおった!』

 

『どういうことだ!?』

 

『僕に言われても! って、何で触ってもないのに勝手に開くねん!!』

 

 宏の悲鳴を聞きつけたチャットメンバーが慌てて声をかけてくる……が、それに応える余裕すら与えられず、文字化けメールがどんどん視界を埋め尽くす。

 転移石の行き先選択表示に文字化けした地名が追加され、そこが勝手に選ばれる。

 

「待てい! 移動キャンセルや!」

 

 宏の叫びも虚しく、転送石が起動し、目の前がエラーとアラートで埋め尽くされる。

 不規則に表示され続けた二つの警告表示が、まるで魔法陣のような図形に並んだところで、宏に意識は途絶えたのであった。

 

    ☆

 

 

 

              スーパー英雄大戦 F

 

           第1話 ブレイブスター・クロニクル

 

 

 

    ☆

 

「……なんじゃこら……」

 

 辺りを見渡した宏は、顔を顰めながら呟いた。

 目が覚めた時、見覚えがあるようなないような森の中に倒れていたのだ。

 森、と言っても、それほど深い場所に入っているわけではないらしく、ちょっと明るい方に歩けば、すぐに開けた草原が見える。何処を指して森の入口というかは曖昧ではあるが、入口付近という認識で問題はなさそうだ。

 

「本気で、どないやねん……」

 

 周囲をじっくり観察した宏は突っ込みどころの多さにため息を吐く。

 森を構成している植物が全く知らないものばかりならばまだ良かった。元々、宏には、草木の種類など見分けがつくほど知識はないのだから。

 なのに、この森の植物についてはほぼ全ての名前を知っている。それも、現実世界には無いであろうものが多いという有り様で。

 

「しかも、この格好。なんぼなんでもこれはないで……」

 

 服装が、ヘッドギアを被る前の物でも、ゲームの中で着ていた物でもなく、作りのあらいシンプルなシャツを身に着けており、スラックスと呼ぶのも烏滸がましい粗っぽい縫製のズボンと、裸足よりマシ、程度のまともな靴底もない靴を履いている。

 記憶にある、『フェアリーテイル・クロニクル』の初期衣装……ぶっちゃけ、みすぼらしい。

 持ち物も、着てる服以外にはちゃちなナイフが一本だけ。財布も鞄もない。元の服装でも財布は持っていなかったから、ナイフがあるだけマシと言えばそうかもしれないが、それにしてもやってられない状況である。

 

「さて、どないしたもんか……」

 

 一通り状況確認を兼ねた現実逃避を終え、ぼやきながらも今後の行動指針となりそうなものを探す。

 もしかしたら、冗談抜きに命にかかわってくる可能性もあるのだから、ここは真剣に探した方がいい、などとじっくり環境を観察していた時のことだった。

 

「いやーーーーーーーーーー!」

 

 唐突に女性のものらしき悲鳴が聞こえてきたのは。女の声、という理由で、反射的に声が聞こえた方から逃げ出そうとした宏だが、状況の変化の方が早かった。

 

「ちょい待てい!」

 

 声が聞こえてから十秒と経たずに、森の奥からなんとなく見覚えのある金髪の少女が、悲鳴を上げながら必死の形相で走ってくる。普通の人間が出せるとは思えないスピードで走る彼女の後ろには、三メートルはあろうかという巨大な熊が。

 少女の姿を見て震えながら硬直していた宏は、足を取られてバランスを崩し、熊に追いつかれそうになった彼女を見て、頭で何かを考えるより早く両者の間に割り込んだ。

 

「逃げて!」

 

 聞き覚えのある声で、見覚えのある容姿の美少女がそう叫ぶよりも早く、体に染み付いた動作でナイフの柄を熊の腹に叩き込み、力一杯吹っ飛ばす。

 

 既に頭の中は真っ白、全身の震えは収まらない。

 

 女という生き物に対する、体の芯まで染み付いたトラウマと、巨大熊という物理的な危機、双方に対する恐怖に理性も感情もすっかり萎縮しているのに、本能は熊を脅威だと認めていない。

 

 怖いからこそ、とにかく前に出る。

 

 宏は、収まらぬ震えと怖気を抱えながらも本能に押され、体に染み付いた動きで巨大熊の動きを封じ込めにかかった。

 

「す、すごい……あ! 東君、わ、私も援護するから!」

 

 がくがく震えながらも懸命に巨大熊の攻撃を受け止める宏の姿に、少しだけ冷静さを取り戻した少女が補助魔法で宏を援護する。

 ゲームでの初期装備である貧弱なナイフで攻撃することで、少しずつ巨大熊の体力を削いでいく。どうやら、幸か不幸か能力とスキルだけはゲームのそれと同じらしく、巨大熊の攻撃を受けても多少の怪我を負うくらいで致命傷にはならない。

 

「……ふむ。この調子なら手助けせずともどうにかなりそうだが……」

 

 その様子を見ていた一人の青年は、宏と少女の奮闘を冷静に分析していた。貧弱装備にもかかわらずダメージを受けている様子はなく、逆に巨大熊は目に見えて負傷を重ねている。宏達の勝利という形で決着が着くのも時間の問題だろう。

 

 とはいえ、それが彼等に手を差し伸べない理由にはならない。

 

 勇者が()()()()のではなく、()()()()など……傲慢、ここに極まれりというものだ。それを理解している今の()()()()が、誰かの危機に動かないはずがなかった。

 

「力の根源たる剣の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、我が剣をここに」

 

 青年が手のひらを上に向けて呟くと、バチバチと彼の手のひらから剣が出てきた。

 

「よし……だが、理が違うようだ。力は出せないか」

 

 完全に、力を消失したわけではない。今まで解放していた剣の技能やステータス付与に関しては効果を発揮している。

 だがLvが1に低下しており、今まで使っていた剣の殆どが使用できない。理が類似しているのか、ステータス魔法を使用できるのがせめてもの救いだろう。

 しかも弓の聖武器の強化方法にある魔物の素材を入れてステータスLvを上げるというものは全ての剣に掛かるものであるから、その分だけ彼のステータスは向上している。普通のLv1よりは遥かに強いのは間違いない。

 

「だが、今はこれで十分だな」

 

 少なくとも……目の前の巨大熊を瞬殺できるぐらいには。

 

「アサッシングソード!」

 

 目の前の獲物に釘付けになっている巨大熊の背後から強力な斬撃を叩き込む。不意の一撃は巨大熊の首を刈り取り、血飛沫と共に熊の死骸は地面に倒れ伏す。

 

「え?」

 

「へ?」

 

 突然、目の前の脅威の首が飛んだことに呆然とした表情を浮かべる宏と少女。巨大熊の背後から出てきたのは、自分達と似たような服装をした一人の青年だった。

 

 その外見は、美青年と表現するのが一番しっくり来るだろう。

 体格は身長一七〇センチほど。白い肌も相まって、女装をしたら女の子と間違いそうなほど、端正な顔立ちをしている。

 切れ長の瞳からは如何にもクールという印象を受ける。装備しているのはNPCから購入できる初心者用の剣なのに、妙に様になっているのはその雰囲気が故か。

 

 剣に付いた血を振り払うと、青年は宏と少女へと話しかけた。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい。私は大丈夫です。……宏君は?」

 

「僕も問題あらへん」

 

「そうか。……まあ、俺が助けに入らずともお前達ならなんとかしてただろうしな」

 

 青年の言葉に、宏達は「そんなことはない!」と咄嗟に否定の言葉を吐こうとして、実際に目の前の熊を相手に戦えていた事実に思い至り、口を閉ざしてしまう。

 その代わりに、少女は見知らぬ青年の名前を尋ねることにした。

 

「あの、あなたは……?」

 

「俺の名前は天木錬。年齢は18歳、剣の勇者だ」

 

    ☆

 

 藤堂春菜。身長百六十七センチと日本人女子の平均よりは高めの背丈と、海外の血が混ざっていることを示す天然の長い金髪と透き通るような青い瞳が特徴的な、文句なしに美少女と言っていい女の子である。

 歌手である母親が、日本人の血が四分の一入った日系イギリス人であるため、イギリス人の血が八分の三混ざっているという、表現に困る血統を持つ少女でもある。

 イギリス人の血がものを言ってか、やたらメリハリのきいたグラビアモデルに喧嘩を売っても余裕で勝てるであろうボディラインは、男達の目を引き付けて離さない。

 

「藤堂さんも『フェアクロ』やっとったとは、結構意外かもしれへん」

 

「別に、今どきVRMMOなんて、オタクとかじゃなくても遊んでるじゃない。むしろ私としては、東君が上級生産まで行ってた方が驚いたよ」

 

「サービス開始初日の混雑にうんざりして、現実逃避的にそこらの人と駄弁りながら草むしりしてるうちに、深みに嵌まってしもてん」

 

 意外な状況で顔を合わせた意外なクラスメイトと、しみじみその意外性について語り合う宏と春菜。

 それ自体はネットゲーム、それも数年前からすっかり市民権を得たVRMMOでは、よくあるというほどではないが、さほど珍しいというわけでもない光景である。

 

「人のことは言えないけど、この時期にゲームなんてしてていいの?」

 

「心配してくれるんはありがたいけど、これでも通信課の予備校通っとるし、一応志望校のA判定にはギリギリ引っかかってるんよ。それに元々、もうちょっとでスキル一個上げ終わるところやったから、そこまでやったら休止するつもりやったしな。で、藤堂さんは?」

 

「息抜き、ってところかな? もう春休みぐらいからログイン自体はほとんどしてなかったし」

 

 この会話で分かるとおり、二人ともゲームに現を抜かして受験勉強を蔑ろにしている、というわけではない。元々二人の通っている高校が、公立とはいえ成績では県下でもトップクラスの学校であるため、彼等の学力は決して低くないのである。

 

 春菜の方は親譲りの記憶力が威力を発揮してか、全国模試でも常に順位三桁を叩き出しており、目指す大学の合格率A判定はずっと維持し続けている。

 宏の方もヘタレ故に半ば惰性で毎日コツコツと勉強に励み、一部科目は春菜と互角の成績だ。もっとも、苦手強化が激しく足を引っ張るタイプであり、そこが足切りに引っかからないか、常に不安を抱えている。

 

 気さくで気配りができる性格の美人と、ヘタレオーラ全開のライトオタク。

 

 たとえクラスメイトであっても、本来事務的な会話以外では、一切関わり合いを持つことはなかったであろう二人。それがまさか、こんな状況で関わり合いになろうとは、数時間前の彼等に言ったとしても信じることはないだろう。

 

「しかし、卒業まで、まともに話する機会なんかあらへんと思っとったのに、こんなところでゲームについて語り合うことになるとか、人生って分からへんなあ」

 

「東君、私と関わりたくないオーラ全開だったもんね」

 

「別に、藤堂さんがどうとかいうんちゃうで。単純に、顔の広い女子と一緒に行動すると、碌な目にあわへんっちゅう人生経験のもと、誰であってもリアル女子と関わるんは嫌なだけやで」

 

「……なんだろう、ひどいこと言われてるはずなのに、自分でもすごく納得しちゃってるこの理不尽な状況……」

 

 微妙に落ち込む様子を見せる春菜と、その台詞に微妙に引き気味になる宏。

 元々会話するにしては大きく取っていた距離を、さらにもっと広げようとする。

 

「藤堂さん自身に心当たりがあるとか、やっぱり触らぬ神に……」

 

「この状況でそれはないと思うんだ、私」

 

「せやな。そろそろ現実逃避やめて、もういっぺん状況確認しよか」

 

 そう言いながら、ざっと周囲を見渡す。

 

 VRMMO特有の、あえてアニメ寄りに振った現実感が薄い光景ではない、鮮やかな色彩と圧倒的な質感を持つ風景に空気の匂い。

 ゲームでは散々狩った、現実世界では見たこともないような造形の生き物。

 これがゲームだとしたら、明らかに色々と規制を無視している。そもそも、普通に入手可能なVR用ハードだと、設計段階から一定以上の現実感を持たせられないように作られているため、ここまで現実と区別できない状況は再現不可能だ。

 

「藤堂さんも、文字化けメールが来たんか?」

 

「東君も、か……」

 

「僕の時は、転送石が最後のトリガーやったみたいやけど、藤堂さんは?」

 

「私は、ウルス東門の転移ゲートを潜ろうとした時」

 

 やはり、会話をするには結構距離を空けていて、しかも未だに身構えている様子があるが、そういうものだと理解した春菜は特にツッコミも入れない。

 

「何ぞ巻き込むだけ巻き込んどいて、装備もアイテムも金も全部チャラとか、ものすごく不親切な話や」

 

「だよね。しかも、安全地帯を探してたら、いきなりバーサークベアだし……」

 

「藤堂さん、案外ついてないんやな」

 

「本当にね……」

 

 宏と出会った時の状況を思い出して、しみじみと溜息を漏らす春菜。

 宏と同じようにここに飛ばされてきた春菜は、安全地帯を探している最中にあの熊に襲われ、パニックになって全速力で逃げ出してしまった。

 どれほど身体能力があったところで、パニックを起こしていればその能力を十全には発揮できない。そもそも、自分の能力がゲームの頃から据え置きのままと知らなかった彼女は、ボス熊に対抗できるだけの力があるとは知らなかった。

 結局、少し走ったところで石に躓き足をもつれさせて、巨大熊に追いつかれそうになったというのが先程の状況である。

 

「今にして思えば、別にこの貧弱なナイフでも、あれぐらいソロで始末できたんだよね……」

 

「そうやな。ありがたいことに、レベルとスキルとパラメーターは、ゲームからそのまま引き継いどるみたいやし」

 

 実際、バーサークベアは初心者殺しのフィールドボスだが、中堅ぐらいのプレイヤーキャラから見れば、ダンジョンの雑魚より劣る程度の相手でしかない。

 二人であれば、貧弱な初期装備でも余裕で始末できるような相手だった。

 

「しかし……」

 

「どうしたの?」

 

「解体手順分かる、ちゅうんも変やけど、そもそもゲームん時って、ここまで細かくリアルに解体はせえへんかったよなあ?」

 

「というか、それやらされたら、いくらゲームで見た目がある程度デフォルメされてても、流石に普通は引くよ……」

 

「やんなあ。やっぱり、ゲームでも夢でもありえへんよなあ」

 

「うん。状況からすると明らかに、日本じゃない。というか、高確率で『フェアリーテイル・クロニクル』、もしくはそれによく似た世界、だよね」

 

「せやな。『フェアクロ』に近い世界やいうことは分かるけど、ゲームん中やないやろなあ」

 

 あまりによろしくない状況に溜息をつくと、顔を見合わせて同じ言葉を発する。

 

「どうしよう……?」

 

「どないしようか……?」

 

 ゲームで染み付いた行動原理に従って現実だと思い知らせてくれた熊の残骸を処理しながら、途方に暮れたように語り合う二人に、錬は真剣な表情で告げる。

 

「どうするもなにも元の世界に帰るための方法を探すしかないだろうな」

 

 この世界が二つ目……いや、三つ目の異世界である錬は、これから自分達がするべきことを冷静に考えていた。

 

「俺は……この異世界召喚を終わらせるために活動するつもりだ」

 

「異世界召喚を終わらせる……けど、どないするつもりなんや?」

 

 確固たる意志を示す錬に、宏は疑問の言葉を投げかける。

 

「それは、まだ分からない。……だが、やらないといけないことは想像がつく」

 

「やらないといけないこと?」

 

「世界を救うなんてやっていられるか、自分の世界は自分で守れとは思うところもある。けど大体の理として、やることをやらないと帰してくれないだろう。だから、一刻も早く世界を救う」

 

 それは、剣の勇者という彼の名乗りと合わせて、ともすれば現実が見えていないただの厨二病と受け取られたとしてもおかしくない内容だった。

 しかし、錬の言葉を耳にした二人には、それを厨二病の戯言と切り捨てることはできなかった。その言葉の節々から単なる厨二病の戯言にはありえない、本気で口にしているからこその言葉の重みを感じ取ることができた。

 

「どうしてそんなにやる気なの?」

 

「……実は昔、俺は別の異世界に召喚されたことがあるんだ。この剣はその時に使っていたものだ」

 

 錬は、自らの手にした剣に嵌められた青い水晶を見つめる。

 

「それに、昔言われたんだ。俺が愚かにも突き進んだせいで失った人達の分まで俺は贖罪をしなくてはいけない。だから……この世界の人々も、元の世界の人々も出来る限り救いたい」

 

「……何が、あったの?」

 

「……ゲーム知識を頼りに突き進んだ結果、大事な仲間達を死なせてしまった。……いや、仲間だけじゃない。多くの人々を死なせてしまった」

 

 錬は顔を上げる。そこには、悲壮な決意があった。

 

「二人には、この世界に関するゲーム知識があるみたいだが、それを過信しちゃいけない。異世界というのは夢だけでは存在していないんだ」

 

    ☆

 

 バーサークベアソードの条件が解放されました。

 バーサークベアミートソードの条件が解放されました。

 バーサークベアボーンソードの条件が解放されました。

 バーサークベアレザーソードの条件が解放されました。

 ポイズンウルフソードの条件が解放されました。

 ポイズンウルフミートソードの条件が解放されました。

 ポイズンウルフボーンソードの条件が解放されました。

 ポイズンウルフレザーソードの条件が解放されました。

 

 バーサークベアソード

 能力未解放……装備ボーナス、スキル「ベルセルク」

 

 バーサークベアミートソード

 能力未解放……装備ボーナス、料理品質向上

 

 バーサークベアボーンソード

 能力未解放……装備ボーナス、攻撃力10

 

 バーサークベアレザーソード

 能力未解放……装備ボーナス、防御力8

 

 ポイズンウルフソード

 能力未解放……装備ボーナス、敏捷2

 

 ポイズンウルフミートソード

 能力未解放……装備ボーナス、敏捷1

 

 ポイズンウルフボーンソード

 能力未解放……装備ボーナス、攻撃1

 

 ポイズンウルフレザーソード

 能力未解放……装備ボーナス、防御1

 

 錬の言葉に静かになった二人は、黙々と熊の解体を行った。

 途中、血肉の匂いを嗅ぎつけた魔物がやってきたが、どれも錬が剣を一振りするだけで倒してみせた。そして、その死骸の幾つかを剣に吸収させる光景を見て、二人は、別の異世界に召喚されたことがあるという錬の言葉により真実味を感じていた。

 どうにか熊の解体を終えた二人は、肉を分け合ってざっと調理し、錬を合わせた三人で腹を満たしながら改めて互いの状況を確認し合う。

 

「あの、東君」

 

「何?」

 

「私、アバターの外見は結構いじっていたんだけど、今どうなってる?」

 

「どうって、服装以外はごく普通に、いつもクラスのムードメーカーやっとる藤堂さんやけど」

 

「……やっぱりか……」

 

 春菜のため息混じりの台詞に、いまいち何をガックリしているのか理解できない宏。

 

「こんなよく分からんところに飛ばされる異常事態に比べたら、外見がどうとか大した問題やないと思うんやけど……」

 

「とは言うけどさ。こういう不特定多数にある程度個人情報が流れるゲームで、すっぴんの素顔を晒すのは結構抵抗あるよ」

 

「あ~、藤堂さんやったら、そういう意味では気を付けた方がいいかもなあ」

 

「分かってくれた?」

 

「うん。親が有名人っちゅうのも大変や」

 

 その言葉に、「ん?」と錬が疑問の声を上げる。

 

「有名人なのか?」

 

「知らないの? 藤堂雪菜、世界的に有名な歌手なんだけど……」

 

「……ああ。どうやら、俺達は別々の地球から来たみたいだな」

 

「別々の地球って……所謂、並行世界ってやつか?」

 

「前に召喚された時も、四人の勇者は別々の地球から召喚されていたからな。そういうこともあるだろう」

 

 異世界召喚が二度目の錬はあっさりと受け入れていたが、これが初めての異世界召喚である宏と春菜としては驚かずにはいられない。

 

「それにしても……」

 

 と、錬は春菜の方に視線をやり、直ぐに視線を明後日の方向に逸らす。それに春菜は不思議そうな表情をするものの、宏は「ああ」と納得したような表情を浮かべた。

 

「確かになあ」

 

「ん?」

 

「このゲームの初期衣装って、リアルやと案外目のやり場に困るなあ……」

 

「……言われてみれば……」

 

 アバターの時には気にならなかったが、ゲームの初期衣装はゆったりとしたデザインのため、意外と隙間が多い。一応見えてはまずいところは見えない作りだが、それでもポーズや角度次第では、胸の谷間ぐらいは見えなくもない。

 そして、春菜の体型はゲーム中の、中学一年生の頃から設定をいじっていない洗濯板なそれではなく、現実と同じグラビアアイドルに喧嘩を売って勝てるレベルであり……。

 

「ファンタジーの衣装って、結構いろいろ問題があるよね……」

 

「一応、作ろう思ったら服も作れんことはないで?」

 

「裁縫もやってるの?」

 

「裁縫も、っていうか、上位生産に行こうと思ったら、基本的に全部やらんと厳しいで」

 

「そうなんだ?」

 

「そうやねん」

 

 様々な事情から生産職に関係する情報はそれほど一般には知られていない。

 少なくとも、”ゲーム内のアイテムは全て自作可能”というキャッチコピーが事実である、ということは職人以外は誰も知らないだろう。

 

「っちゅうても、流石に機材が足らんから、今直ぐどうにかできるわけやないけど」

 

「まあ、そうだよね。その辺りを解決するにしても、まずは街を探すところからになるかな?」

 

「とりあえずそこからやろうけど、街に入るにしても、お金どうするかやな。門くぐるのに、通行料がいるとかやったら、どうにもならん」

 

「そこは、魔物の素材を売ってお金を稼ぐしかないんじゃないか?」

 

「それしかないかなあ……初期設定通り無一文とか、本当に酷いよね……」

 

「鞄もあらへんからなあ」

 

 そうぼやいたところで、ざっと処理した熊の毛皮が目に入る。

 着の身着のままでほっぽり出されたも同然の状況では、宝の山と言えなくもない熊の残骸を前に、いろいろ作れそうな物を思い浮かべる宏。

 

「せやなあ。これで鞄作るか」

 

「そんなこと、できるの?」

 

「まあ、それほど問題はあらへん。とりあえず、糸と針がいるけど、糸はそこらうろうろしとるウサギの毛でどうにかするとして、針は……せやな。川があったから、魚の小骨でどうにかしよか」

 

「それでいけるんだ……」

 

「鞄作るぐらいやったら、多分何とかなると思う。まあ、そういうわけやから、ウサギから糸作るから、悪いんやけど藤堂さん、さっきの料理の手付き見てた限りやと僕より料理スキル高いみたいやし、魚捕まえて骨取ってくれへん?」

 

「了解。ついでに干物にでもしよっか」

 

「尚文も初期はこんな風に過ごしていたんだろうな……よし、俺もウサギを捕まえるのを手伝おう」

 

「助かるで」

 

 川の方に向かう春菜を見送り、宏と錬は手当たり次第にウサギを捕まえる。

 このウサギは、アンゴラウサギのようにふかふかの毛皮を持っているため、糸を作るのに向いているのだ。更に言うと、高レベルの紡織スキルがあれば、道具がなくても最低ラインの糸を紡ぐことはできる。

 流石に、布を織るのは難しいが……。

 

「この感じやと、当分は野宿でサバイバルやなあ……」

 

「そうなるよね……」

 

「夜襲には気を付けないといけないな」

 

 春菜が戻ってきたあたりで、素手で作れる限界まで細く糸を紡ぎながら、ついついぼやきを漏らしてしまう宏。魚を捌き終えスモークする準備をしながら、春菜もため息混じりに同意する。異世界経験者である錬も何処と無く憂鬱そうだ。

 

「とりあえず、道具がある程度揃えば売りもんになる程度の薬とかは作れるから、まずは間に合わせで機材自作するところからか……」

 

 必要量を紡ぎ終えた糸と最低限の加工を済ませた針を手に、深いため息を漏らす宏。

 道のりの長さにうんざりしながら、異世界生活初日は更けていくのであった。

 

    ☆

 

■フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~が参戦しました。

■盾の勇者の成り上がりが参戦しました。

■魔獣戦記ブレイブスター(仮)が参戦しました。

 

■東宏が加入しました。

■藤堂春菜が加入しました。

■天木錬が加入しました。

 

■バーサークベアソードが解放されました。

■バーサークベアミートソードが解放されました。

■バーサークベアボーンソードが解放されました。

■バーサークベアレザーソードが解放されました。

■ポイズンウルフソードが解放されました。

■ポイズンウルフミートソードが解放されました。

■ポイズンウルフボーンソードが解放されました。

■ポイズンウルフレザーソードが解放されました。

 

 

 

 ユニット名:東宏

 サイズ  :M

 移動力  :5

 地形適応 :空A 陸A 海B

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~

 モデル  :コン・バトラーV(超電磁ロボ コン・バトラーV)

 

 武器

 ・基本攻撃

 ・スマッシュ

 

 

 

 ユニット名:藤堂春菜

 サイズ  :M

 移動力  :7

 地形適応 :空A 陸A 海A

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~

 モデル  :炎神レイアース(魔法騎士レイアース)

 

 武器

 ・剣

 ・魔法剣

 ・エレメンタル・ダンス

 

 

 

 ユニット名:天木錬

 サイズ  :M

 移動力  :7

 地形適応 :空A 陸A 海B

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :魔獣戦記ブレイブスター(仮)

 モデル  :ランスロット・アルビオンゼロ(コードギアス 反逆のルルーシュⅢ皇道)

 

 武器

 ・ハンドレッドソード

 ・流星剣

 ・流星剣[MAP]

 ・エアストバッシュ

 ・二刀流

 

 その他

 ・アサッシングソード

 ・ベルセルク

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