スーパー英雄大戦F   作:ゲーマーN

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第3話「アンノウン・コンティネント」

 

 

 

 

              スーパー英雄大戦 F

 

           第3話 アンノウン・コンティネント

 

 

 

    ☆

 

「あれが、ファーレーンの首都ウルスだ」

 

 冒険者達との合流地点から二時間ほど道なりに歩いたあたりで、大きな門が見えてきた。話によると、この門は東門らしい。

 冒険者の足で二時間なので、一般人なら最低でもあと一時間はかかるだろう。直線距離なら大したことはないのだが、途中に丘があるので、迂回するルートを通る必要があるためだ。丘がなければ、最初の位置から門が見えるぐらいの距離である。

 

「なんか、近いんか遠いんか判断に困る距離やなあ」

 

 今までのペースと門までの距離を考えると、ウルスに入れるまであと三十分はかかるだろう。

 

「片道二時間半はねえ」

 

 軽い補助魔法で移動時間を計っていた春菜が、微妙な表情で応じる。

 

「フィロリアル……いや、騎馬の類が欲しいところだな」

 

 自分の体力などを勘定に入れるなら、あと三十分程度の短縮は可能だろうと判断しているが、正直そのペースで長距離を歩きたくはない。

 因みに、フィロリアルというのは剣の世界に生息していた鳥型の魔物である。馬車を引くのが大好きで自分専用の馬車を欲しがるという生態をしており、剣の世界ではレース用の競走羽から荷駄羽、食用も含めて広く飼育されていた。

 

「因みに、他の街までの距離はどんなもん?」

 

「ウルスから一番近い村まで、冒険者の足で八時間、ってところか。でかい都市だと、カルザスとメリージュが一番近くて、徒歩で五日ぐらいか? 馬や馬車を使えばもっと早いか」

 

「なるほどなるほど」

 

 カルザスやメリージュまでの距離は、ゲーム中ではウルスから徒歩で二日ぐらいだった。どうやらゲーム内の地図とは、若干縮尺や位置関係が違うようだ。

 なお、ファーレーンでは割と安値で懐中時計が普及しており、中級以上の冒険者にとっては必需品となっている。その理由は時間指定の配達物などが多いからだ。

 

「それで、一番気になってたことなんだけど……」

 

「基本的に、住民登録をしてあれば出入りに金はかからない。例外は一部特権階級と冒険者だな。隊商に関しては、どうせ荷物の検査があるから、大体はその時に一緒に済ませることになる」

 

「ってことは、私達は今回は取られるんだ」

 

「ああ。まあ、大した金額じゃないから、今回は俺達が払う」

 

「そうそう。命の恩人だし、歌も聞かせてもらったしね」

 

 ランディとクルトが気負いなく答える。

 その後もいろいろと基本的な常識を教わり、ゲーム内での表現や認識との違いを埋めていく。

 

 その中でも特に重要だったのはポーション類の呼び方だろう。

 

 レベル○ではなく何級という呼び方になっているらしく、例えばレベル2ポーションなら七級ポーションということになる。最低が八級だが、回復効果はあるが弱い物を等級外と一括りで呼んでいるそうだ。

 等級外ポーションは駆け出しの薬剤師が練習で作ったもので、同じく駆け出しの冒険者に格安で売られているほか、どこのご家庭の救急箱にも絆創膏感覚で一本二本は入っているとのこと。

 

 ポーションの呼び方に関しては、現存する最も古い国であるファーレーンの建国王、その仲間の魔導師が作った最高の性能の物を一級、そこを基準に作りやすさと効果を考慮して等級が決められたそうだ。

 一級より上の物が存在するのでは、という意見に対しては、これ以上のポーションは、史上最強の英雄である建国王ですら即死手前から復活してお釣りが来るような効果になるため、無駄が大きくて必要がないと判断したとのことである。

 

 その他にゲームと現実の相違点としては、ゲームで使われていたクローネという通貨の下に、チロルという通貨単位が存在することが挙げられる。

 これに関しては、食材の購入単位がものによっては百単位と妙に大きかったり、宿の一泊料金が変に安かったり、ドロップ品の値段が余程のものでもない限り五クローネ程度だったりしていたため、宏も春菜もあっさり納得している。

 

 因みに、貨幣価値としては百チロルで一クローネ。そして、一クローネ銀貨は千円札と同じ感覚で使われている。

 

「そういえば、ポーション類って、普通はどの範囲まで買えるん?」

 

「そうだな……。値段を気にしなければ、七級のポーションぐらいまでは普通に冒険者協会で売っている。とはいえ、庶民が気軽に買える値段じゃないから、一般の薬屋には八級までしか置いてない。六級以上は国が抱えている薬剤師ぐらいしか調合できないから、まず一般に出回ることはないな」

 

「ほほう。そうなると、一級ポーションとか恐ろしい金額になってそうやな」

 

「現在一級を調合できる薬剤師は居ないと言われているから、金で買えるかどうか以前に、持ってるだけで国家間の大騒動になりかねないよ」

 

「たかが傷薬に大層な……」

 

「宏、お前はもう少し薬品類の重要性を考えろ。最高位の薬ならば、瀕死の状態にある人間を元気が有り余るくらいまで回復させることもできるんだ。ステージⅣの癌患者を完治させるような奇跡を起こすことができるのが、異世界の薬なんだ」

 

 大げさな話だと苦笑する宏に、錬は、真剣な面持ちで忠告の言葉を告げる。

 

 剣の世界には、イグドラシル薬剤という薬が存在していた。イグドラシル薬剤は死者すらも蘇らすとも語られる薬であり、遺伝性の病で余命幾許もない亜人の少女や高齢からくる病気で死に瀕していた老婆を全快させるほどの効力を持っていた。

 元々、死にかけの病人だったとは思えない彼女達の活躍を知る錬としては、「国家間の大騒動になりかねない」という評価は笑い話にならないものだ。

 

 実際、この世界におけるレベル6以上のポーション、つまり三級以上のポーションには部位欠損を治す能力がある。但し、『フェアリーテイル・クロニクル』にはプレイヤーの部位欠損が実装されていないため、これを宏が知らないのは仕方がない。

 なお、一級ポーションが重要視されるのは、三ヶ所以上の欠損、それも失われてから何年も経っているようなものですら回復させる能力があるからだ。

 

 この機能はヒーリングポーションだけだが、マナポーションは加齢や反動などで落ちた魔力や最大MPを最盛期に引き戻す効果があり、スタミナポーションには部位欠損を伴わない病や事故の後遺症を治療する効果がある。

 これらも、等級が高いほど重度のものが治療できるため、一級ポーションは国家間の戦争を引き起こしかねないほどの危険物となっている。

 

 考えてみれば、レベル5以上のポーションは必ずドロップ素材が噛むようになってくる上、レベル7や8は結構な大物を倒さなければ、素材そのものが手に入らない。

 そして、ドロップ素材というものは、それが素材として機能することを知っている人間が死体を解体しないと、まず素材として使える状態で剥ぎ取ることはできない。

 レベル5以上、四級以上のポーションが希少品なのは何もおかしな話ではない。

 

「薬は、それだけ重要なものなんだ」

 

「そら分かるけどなあ……」

 

 この世界の生産能力の低さに宏は思わず内心で頭を抱えてしまう。薬でそれとなると、武器防具などどうなることか考えるのも怖かった。

 

 プレイヤーが鍛冶で作れるものなど大したものではないが(と、宏をはじめとした職人プレイヤーは思っている)が、それでも上級なら、ドロップ素材もエンチャントもなしで、それほど危険の無い場所で採れる低級素材だけでも、一般的なNPC販売品の倍ほどの性能の物が製造可能なのだ。

 そして、ランディやクルトが身に付けている防具を見る限り、一般に出回っている装備品の性能は、ゲーム中のNPC販売店と大差ないと判断できる。

 

 これが普通の装備なら、宏の倉庫の中にゴミ同然で転がっていた製造装備が、全て此方に転がり込んできた日には、平気で国家間のバランスを崩しかねない。

 これでは、宏は下手なことができない。冗談抜きに戦争の引き金を引きかねない。

 

「さて、ちょっと手続きをしてくるから、少し待っていてくれ」

 

「はーい」

 

「了解」

 

「分かった」

 

 そんな話をしている間に、少し大きな声を出せば、門番と会話ができるくらいの距離まで近付いていた。

 ランディとクルトが三人の分の手続きや支払いをしている間に、気になったことを三人でこっそりと話し合う。春菜との距離が近くなったため、宏は微妙に鳥肌が立ち足が震えているが、今回ばかりは我慢するしかない。

 

「なあ、二人共。作ったポーションを買い取ってもらうん、ちょっとまずいかもしれへんわ」

 

「そんな感じするね。でも、正直レベル3の特殊ポーションはともかく、レベル2の各種ポーションは、あっても荷物にしかならないよね?」

 

「せやねん。それが問題やねん」

 

「どういうことだ?」

 

「生産スキルで作ったアイテムは、作った時の生産スキルの熟練度によって、効果に補正がかかることが確認されているんや」

 

 これが中級程度の技能で作った物なら大した差はないのだが、宏は神酒製造や神薬製造まで持っている、最高峰の職人である。

 流石に一つ上のポーションと同じ、とまでは行かないまでも、普通のポーションより高い効果が発揮されるのは間違いないだろう。適当に作った間に合わせの道具が多少はプラス補正を打ち消してくれるだろうが、それもどこまで効果があるか。

 

「……どうする?」

 

「……腹を括って、売っちゃう?」

 

「……そうしよか……」

 

 他の金策方法を考えたところで、結局リスクが変わらないことに思い至り、腹を括ることにする三人。どうせ、そんなにすぐに指名手配はかかるまいし、その気になればしらばっくれることもできよう、と、甘く考えることにしたのだ。

 もっと正確に言うのならば、国家レベルの厄介事に巻き込まれるかもしれないリスクより、今日明日の食事と宿をとった、というのが正解である。

 

「三人共、ちょっと来てくれ」

 

 門番のところに駆け寄ると、三人はいろいろと質問された。どうやら、初めて訪れた人間に対する面談らしい。

 どう答えていいかが分からないものもそれなりにあったのだが、二人の忠告に従って、分からないものは分からないと全て正直に答えておく。

 

「知られざる大陸からの客人か」

 

「知られざる大陸?」

 

「極稀に飛ばされてくることがある、君達のような出身地不明の人物が居た場所を、王宮ではそう呼んでいるんだ」

 

「それって、一般の人には知られてるんですか?」

 

「あまり有名な話じゃないかな? せいぜい冒険者の間に、都市伝説みたいな形で流れている程度だろうね」

 

 それもそうだろう、と納得する三人をニコニコと見守る門番二人。

 

「あの、それって、騙りとか居ないんですか?」

 

「今のところ、そういう人は見たことがないね」

 

「そういうのがおったとして、見分け方とかはあるんですか?」

 

「さっきの質問がそう。知られざる大陸からの客人は、こっちの常識を殆ど知らないからね。幾つか答えられない質問があったでしょ?」

 

「……なるほど。それなら確かに知らないフリをするのは無理があるか。此方の常識であるのならば、どこかでボロが出るだろうしな」

 

 その答えに、錬は納得したように頷いた。

 門番達は笑顔のまま、三人に一つ教えてくれる。

 

「知られざる大陸からの客人は、王宮からいろいろなバックアップを受けることができる。今、紹介状を用意してるから、明日にでも行くといいよ。あと、このチケットがあれば、冒険者が使う宿なら無料で泊まれるから」

 

「それはまた、お手数をおかけします」

 

「これも仕事だからね」

 

 イメージと違って愛想のいい兵士達から通行許可証と紹介状を受け取ると、見送りに手を振ってその場を立ち去る。

 

「また、えらく愛想のいい門番やな」

 

「ある意味で国の顔だからな」

 

「ファーレーンは商業の国でもあるし、無駄に威圧的にやて評判を落とす必要はない、ってことらしいよ」

 

 ランディとクルトの説明に感心すると、三人は、さっさとお勧めの宿を紹介してもらうことにするのだった。

 

    ☆

 

「ポーション類とかの買い取りって、何処に行くとええかな?」

 

 ランディとクルトのお勧めの宿、黒猫の瞳亭。

 宿に着いて直ぐに、今後のために一番必要なことを確認する。

 

「それなら、冒険者協会が一番だな」

 

「その心は?」

 

「お前達みたいな素人に対しても、基本的に足元を見ない。物によっては交渉に応じてもらえるし、少なくとも必要以上に安く買い叩くことはしないからな」

 

「冒険者協会は駆け出しの冒険者のサポートもやってるんだ。実力不足なのはともかく、ちゃんと働いているのに報酬を叩いて新米が育たなかったら、困るのは協会の方だからね」

 

 中級冒険者の言葉に納得する宏と春菜。一方の錬は、剣の世界の冒険者ギルドが大分恣意的な組織だっただけに感心した表情だ。

 

「そうだな。この際だから、冒険者登録もしたらどうだ?」

 

「三人共、それなりには戦えるんでしょ?」

 

「まあ、バーサークベアぐらいならどうにかできるけど……」

 

「その装備でバーサークベアをどうにかできるんだったら十分。俺達も用事があるし、飯食ったら案内するから、登録してきなよ」

 

「登録しておいた方が、買い取り交渉とかにも色が付く」

 

 ランディとクルトの説明に頷き、そういうことならと登録することを決める。

 

「登録には金がかかるのか?」

 

「手数料として五クローネだ」

 

「あと、簡単な審査があるけど、手に職を持ってる人間にとっては、それほど難しくないから」

 

「なるほど、それなら冒険者登録自体は直ぐにできそうだな」

 

「バーサークベアの皮とかは、登録した後に買い取り交渉した方がよさそうやな」

 

「そうだな。手数料については後払いもできるが、今回は俺達で持とう。もっとも、通行税と同じく、知られざる大陸からの客人とやらなら、手数料も免除されるかもしれないが」

 

 どうやら、予想以上にこの国は『知られざる大陸からの客人』とやらを重要視しているらしい。何か裏の一つや二つありそうで、どうにも不安になる話だ。

 

「まあ、何にしてもまずは、普通に冒険者登録を済ませてから、やな」

 

「だね。ご馳走さま」

 

「二日ぶりのまともな食事……こういうのも久しぶりだな」

 

 ウルスの街並みは、ヨーロッパとアジアの融合したような一種独特の雰囲気を醸し出している、石やレンガでできた建物と木造の建築物が入り混じったものだ。

 聞くところによると、ファーレーンの大都市は、多少の地域性はあれど、基本的にこういう雰囲気らしい。道端にはゴミの類も落ちておらず、清潔な印象である。上下水道が完備され、汚物の処理もシステム化されているとのことで、排泄物などが原因の異臭もしない。

 

 南北に長い(と言っても、幅も日本列島の南北より長いのだが)大国ファーレーン。その首都・ウルスは、国土のほぼ中間地点にある港湾都市だけあって、非常に発達した街だ。

 北にある山脈を背に建てられたウルス城。城から続く太い大通りを幾重にも囲むように広がった街は、南西にある湾にまで届いている。

 この世界では数少ない、住民登録されている人口が百五十万人を超える大都市である。世界で三本の指に入るファーレーンの人口が、国が把握できている数でせいぜい一億に届かない程度であることを考えれば、ウルスがいかに巨大な都市か分かろうというものだ。

 

 元々は城塞都市ウルスと港湾都市アグリナという二つの街だったのだが、七代目の国王の頃にはウルスの出口からアグリナの入口まで子供の足でも徒歩で一時間かからない、というところまで双方が大きくなっていたため、区画整理を含めた大規模な公共工事を行って、一つの街にしてしまったのだ。

 当然、国庫に対してかなりの痛手を負うことになったが、おかげで国の内外から多数の労働者が訪れ、旺盛な消費で大量の金を落とし、凄まじい勢いで人口が増えたことで、結果として百年ぐらいを想定していた費用の償却が十五年程度で済んだとのことである。

 

 東門から西門まで、一般人の足で歩き切るには一日では難しいその広大な街は、何本もの運河が縦横に走り、船が人々の足として利用されている。

 また、陸路としても彼方此方に乗合馬車の待機所があり、それとは別に小さな馬車や馬がタクシーのように稼働している。街と街を繋ぐ駅馬車に比べれば半分以下の速度だが、一般人の場合は自分で歩くより早いため、それなりに重宝されている。

 そのほかの移動手段としては、少々値が張るが何ヶ所か転移ゲートが設置されており、市民は必要に応じて使い分けている。つまり、街中の交通の便はそれほど悪いものではない。区画整理を担当している者の苦労が伺える。

 

 彼等が利用している黒猫の瞳亭は、中心付近と東門の中間、やや東門寄りの辺りにある。この辺りはまだまだ海からは遠く、潮の香りがする、というほどの距離ではないが、少し高い建物の屋根に登れば、微かに見える位置にある。

 或いは、南に馬車で一時間も移動すれば、海が見えるようになるだろう。この辺りはやはり、ウルスが港街であることを伺わせる。

 

「ん~、冒険者、か~」

 

「当分は、安全第一でお願いします」

 

「分かってるよ。と言うか、そんな難しい仕事、いきなりできるわけないし」

 

「まずはレベル上げから、だな」

 

「あ~、確かに錬君の場合はレベル上げをしないといけないね」

 

 この世界に来た影響でLv1にダウンした錬にとってレベル上げは急務と言っていい。いくら勇者の武器の強化方法で多少は補えるとはいえ、Lv1ではステータスもたかが知れたものであり、使用できる武器にも大幅な制限がある。

 元のLv300まで上げることは不可能だとしても、早いうちに、Lv40ぐらいまでは上げておきたいと錬は考えていた。

 

「ところで、武器とか防具はどないする?」

 

「とりあえずお金が貯まったら、適当に安くて丈夫そうなのを見繕って買うつもり」

 

「武器に関しては、俺はこの剣があるから問題ないな」

 

「防具は?」

 

「腕のいい職人に任せたいところだな」

 

 錬の脳裏を過るのはメルロマルク城下で武器屋を営むエルハルトという男だ。ゲーム知識でゼルトブルの品揃えを知っていた錬は召喚当初こそエルハルトの腕を下に見ていたが、最終的には彼の作った武器を大切にしていた。

 この世界でも信頼の置ける職人に出会うことができたのならば、その人物に己の防具を任せたいと考えるのは当然の流れだろう。

 

「そういえば東君って、ゲームでメインは何使ってたの?」

 

「これっていうのはないねん。とりあえず、よう使っとったんは斧、ツルハシ、鎌、ナイフあたりやけど、ハンマー振り回してる時もあったし」

 

「……もしかして」

 

「言わんといてくれるとありがたい。っちゅうかよう考えたら、最低限つるはしは絶対買わんとあかんやん」

 

 冒険者協会までの道すがら、三人の会話を聞くとはなしに聞いていたランディとクルトは、ツルハシという単語に首を傾げる。

 

「薬剤師がツルハシなんか、何に使うんだ?」

 

「いろいろ使うで。一番沢山いるんが、ポーションを入れる瓶を作るための石英やし、物によっては特殊な加工をした瓶を作る必要があるから、その材料が含まれた石を掘るのに、ツルハシがあった方がええし」

 

「瓶から作るのかよ……」

 

「むしろ、瓶を作れんかったら話にならへん。一定ラインから上の薬は、作る段階から瓶にいろいろ小細工せんとあかんし」

 

 そんな話、聞いたこともないと言いたげな冒険者達に苦笑し、自分が教わったやり方だとそうだった、と言って誤魔化す。

 そんな話をしている間、左右の店を覗き込んでいろんな物の値段を確認していた春菜が、ため息を漏らす。

 

「どないしたん?」

 

「いや、着替えもどうにかする必要があるから値段を見てたんだけど……思ってたより、いい値段をするものだから……」

 

「どんな感じ?」

 

「上下合わせると、平均で十五クローネぐらい。長期滞在だと、黒猫の瞳亭に二日泊まれるなあ、って」

 

「日本円にすると大体一万五千くらいか……確かに悩ましいところだな」

 

 宿代については、今日一泊は無料、そこから六日分はランディ達が既に前金で払ってくれている。

 一週間以上だと長期滞在で割引があり、一泊七クローネ。気を利かせて男女別々の部屋を取ってくれているため、二部屋分で八十四クローネ。そこに加えて、とりあえず当座の資金として二十クローネほど受け取っている。

 結構な金額なので、これ以上を薬代としてせびるのは気が引ける。……彼等からすれば、薬代だけでなく、歌に対するお捻りも含んだ金額なのだが。

 

 食事に関しては、朝晩は宿代に含まれるが、夕食のメニューは先程食べた昼飯と大差ないもので、サラダとスープに、パンと干し肉を炙ったものかソーセージ、もしくは焼き魚がつく程度。日によってはスープと肉類の代わりにシチューが出てくるものもあるようだが、それほど大きな差があるわけではない。

 朝食に至っては、もっとシンプルにパンとスープのみだ。

 更に昼食は自力で用意する必要があることを考えると、服代一着十五クローネは中々にきついものがある。

 

「いっそ自作するか……? でも、そのためには織機がないとちょっとしんどいしなあ……」

 

「そこからなんだ……」

 

 ランディ達に聞こえないように呟いた言葉を聞きつけ、春菜が少々離れた場所から苦笑ガチに突っ込みを入れる。

 

「ただでできることはただで済まさんと。でも、よう考えたら、自分の分はともかく、藤堂さんの分はちょっとしんどいか」

 

「どうして?」

 

「いくらクラスメイト言うても、それほど接点なかった男に自分の体型とか教えるん、嫌やろ?」

 

「……確かにちょっと抵抗ある……」

 

「まだ、上着ぐらいやったらええけど、下着とかは流石になあ……」

 

 宏のぼやくような言葉に思わず顔を引きつらせ、それでも念の為に聞くだけ聞いてみる春菜。

 

「……作れるの?」

 

「作ったことはないけど、手持ちにレシピはあったから、多分やろうと思ったら」

 

「……ごめん。私今、実利と羞恥心の間で凄く葛藤してる……」

 

「いや、上着はともかく、下着とか肌着とかは、作れ言われても僕の方が困るんやけど……」

 

「……そこまで考えてなかった……」

 

「とりあえず、上着だけ作る方向性でいいんじゃないか?」

 

 そんなこんなを話しているうちに、ようやく目的地の冒険者協会へ到着した。

 

    ☆

 

 黒猫の瞳亭から徒歩四十分程度。

 

「思ったより、こぢんまりした建物やねんなあ……」

 

「まあ、そんな大商店みたいな建物が必要なわけでもないしな」

 

 宏の感想に苦笑しながら、勝手知ったる様子で建物に入っていくランディ。

 街の彼方此方にある大きな商業施設と比較すると確かに小さいが、購買部をはじめとした幾つかの施設が入っているためか、それなりの面積と階層はある。

 なお、ここはファーレーンの冒険者協会を統括する施設でもあるため、他の協会施設よりもかなり大きい。また、ウルスには、あと三つほど協会の出張所がある。

 

「あら、ランディさん、クルトさん。護衛でメリージュへ行かれたのではないのですか?」

 

「ちょっとばかし状況が変わってな。雇い主の意向で、連絡も兼ねて俺達だけ戻ってきた」

 

「レイテ村近郊にポイズンウルフの大群が居座ってて、正直、護衛対象を連れて突破できるような状況じゃなかったから、依頼人には村で待ってもらったんだ」

 

「……それは事実ですか?」

 

「ああ。正式な依頼として処理されている。こいつが依頼表だ」

 

 受付嬢は、ランディが差し出した依頼表を確認する。

 

「それで、被害状況は?」

 

「依頼人をレイテに連れ込む時に二人、突破する時に三人やられた。村は魔物よけの結界があるから大丈夫だが、食糧の問題もあるから、あまり長く孤立させるのはまずい。というわけで、向こうの村長と足止めを食らってる連中とが共同で、ポイズンウルフ殲滅の依頼を出すそうだ」

 

「状況が状況だから手付金も含めて後払いになるけど、村長さんから依頼表を預かってるから、悪いけど手続きよろしく」

 

「分かりました」

 

 割と大事になっているらしいそのやり取りを、ぽかんと眺める宏と春菜。

 

「ランディ、それにクルト」

 

「なんだ?」

 

「随分と大事のようだが、先に此方へ来なくてよかったのか?」

 

「考えなかったわけじゃないが、クルトを医者に連れて行って治療する時間を考えたら、誤差みたいなもんだったからな」

 

「それに、この後のことを考えたら、君達の機嫌を損ねるのはまずい、って判断もあったし」

 

 クルトの言葉にピンとくる。

 

「その程度で機嫌を損ねることはないが……初対面で分かることじゃないからな。機嫌を取る、という意味なら、確かに食事を先にするべきか」

 

「そういうこと」

 

 ポイズンウルフの大群をどうにかする、となると、相当数の毒消しが必要になるのは想像できる。それも、宏が持っているような、魔法で消すのと大差ない効力を発揮する、即効性の強い毒消しは喉から手が出るほど欲しいだろう。

 

「そちらのご三人は?」

 

「ああ。クルトの命の恩人だ。妙な魔法でこっちに飛ばされてきたらしい」

 

「ああ、知られざる大陸からの客人ですか。命の恩人、というのは?」

 

「恐ろしくよく効く毒消しをくれた。あの薬がなかったら、ここまでクルトが持ったかどうかも怪しい。何しろ、貰った時点で歩けなくなる程度には回ってたからな。あれはまだ残ってるのか?」

 

「あと九本。材料があればいくらでも作れるけど、それなりに時間はかかるで」

 

 宏の答えに、受付嬢は胡散臭そうな目を向ける。

 

 ぱっと見た印象では、三人共、ひよっこという年齢なのは間違いない。

 体格や体型から察するに、辛うじてファーレーンの成人年齢である十五歳は超えているようだが、上で見積もっても二十歳には届いていまい。

 見た目せいぜい成人年齢に達した程度の子供が、歩けなくなるほど回ったポイズンウルフの毒を、一日も経たずに普通に動き回れるほど回復させるような効果の強い毒消しを作れるなど、にわかに信じられる話ではない。

 

「まあ、そう睨むなって。本当にこいつが作ったのかどうかは関係ない。それだけの毒消しを持っていて、俺達に惜しげもなくふるまってくれた、という事実の方が重要だ」

 

「……申し訳ありませんが、その現物を見せていただけます?」

 

「ええよ。元々買い取ってもらうつもりやったし。何やったらレシピも教えよか?」

 

「教わっても、今このギルドに居る人間では検証できませんので結構です」

 

 警戒心バリバリの受付嬢の態度に苦笑しつつ、とりあえず赤みがかった緑といった色合いの毒消しを差し出す。差し出す手が震えているのはご愛嬌だろう。

 それを買取カウンターの方に持ち込んだ受付嬢は、何やら妙な機材の上に載せてごちゃごちゃとやっている。

 その結果を見て、買取担当の女性と共に驚愕の表情を浮かべた。

 

「申しわけありません。先程までの態度を謝罪させていただきます。この薬、本当にいくらでも作れるのですか?」

 

「材料があれば。あ、そうそう。これも買い取って欲しかってん」

 

「……これは、七級ポーションですか?」

 

「ついでに作ったやつ。もしかしたら騒ぎになるかな、思って買い取ってもらうかは悩んどってんけど、そっちの毒消しで大事になるんやったらええか、思って」

 

 そう言って、カウンターの上に三十本ほど並べてみせる。駆け出しの冒険者だと、それだけで一財産と言える量である。

 

「七級ポーションの値段を知らなかったのは分かるが、作りすぎじゃないか?」

 

「藤堂さんに、瓶作ってるところを見たいとか言われて、つい調子に乗ってん。作るだけやったら百本でも二百本でも作れてんけど、持ち運びができんからこのぐらいでやめてん」

 

「だって、見たかったんだもん……」

 

「まあ、作ってしまったものは仕方がないだろう。捨てるのはもったいないし、お金になるならそれでいいだろ」

 

 それもそうだな、と一同はこの話を切り上げる。

 

「それにしても、七級のポーションってえらい高いなあ」

 

「そりゃ、九級辺りの冒険者だったら、瀕死の重傷でも一本で完全回復する代物だからね」

 

「俺達でも、いいとこ三本あれば、即死でない限り無傷まで治る。値段相応の価値はあるさ」

 

 一本五百クローネ、日本円に直すと五十万の傷薬。とんでもない暴利に聞こえるかもしれないが、その効能を言われてしまえば納得するしかない。

 

 何しろ、ゲーム的に言うなら、一レベルで基本攻撃以外のスキルを一切持たないキャラのヒットポイントが五十程度。八級(レベル1)ポーションの基本回復量が百、七級(レベル2)で五百、そこに耐久力や作った職人の技量、調合のアレンジによる補正があれこれかかるのだから、ランディやクルトの言葉はまじりっ気なしの真実ということになる。

 

 ゲームでは、冒険者や兵士以外のNPC、所謂普通の人の殆どのキャラクターレベルが高くてせいぜい五であったことを考えると、一般家庭では八級(レベル1)ポーションまでしか必要にならないのも当然だし、瀕死の重傷を五万円で治療できると考えれば、八級(レベル1)ポーション五十クローネは高いとは言えない。

 

「もっとも、五級以上の冒険者になると、これぐらいでないと回復が追いつかないみたいだが」

 

「それで、こんなたっかいポーションを普通に売ってるんか」

 

「協会としても、もう少し安価に流通させたいところなのですが……」

 

 渋い顔でため息交じりに口を挟んできた買取担当に、思わず顔を見合わせる宏と錬。

 なんとなくピンと来るものがあり、春菜が理由を聞いてみる。

 

「その理由は?」

 

「需要の問題もあるのですが、それ以上に七級を調合できる薬剤師がそれほど多くなく、特別な素材も必要で一日に作れる数も知れているようでして」

 

「あ~、なんとなく分かる……」

 

 予想通りの理由に、ため息しか出ない。

 宏曰く、レベル2ポーションの調合は初級をほぼマスターしなければ、確実に作れる腕は身に付かないとのこと。それがどれほど大変か、ゲームで身に染みて知っている春菜からすれば、そこに辿り着かない人間の方が圧倒的に多くても仕方がないとよく分かってしまう。

 スタミナ消費が最大値に依存するという最序盤の理不尽な仕様は、どうやら、現実であるこの世界でも変わらないらしい。

 

「そういえば東君、この辺りっていうか、バーサークベアの辺りの草で作ってたよね?」

 

「うん。応用レシピやから、八級のポーションの材料でもいけるで」

 

「そのレシピを教えてあげたら……」

 

「難しいやろうなあ」

 

 宏の言葉に首を傾げ、直ぐに昨日の話題を思い出す。

 

「あ、もしかして?」

 

「うん。製薬以外に、錬金術の知識とある程度のエンチャントの技量もいんねん。っていうても、エンチャントの方は一番簡単なんが失敗なしでできる程度でええんやけど」

 

「話に聞くと大変そうなんだけど……」

 

「全く知識なしやったら、できるようになるまで最低でも一ヶ月ぐらいかかるやろうなあ」

 

「だよね」

 

「逆に言えば、一ヶ月もあればそのレシピで作れるようになるんだろう? 冒険者協会からの長期依頼という形式で講座を開くのもありじゃないか?」

 

「……そうやなあ。定期収入を得られるという意味ではありかもしれへん」

 

 錬の提案に、冒険者協会の一同は期待に目を輝かせる。契約内容を詰める必要はあるものの、確かにそれなら薬剤師の腕を引き上げることができる。

 

「ま、難しい話は置いといて、だ。アン、この三人の登録を頼む」

 

「……分かりました。此方の書類に記入をお願いします」

 

 日本語……ではなく、当然、この世界の言語で記された書類に錬の動きがピタリと止まる。この世界を訪れたばかりの錬はこの世界の文字を読むことができない。

 

「……読める、だと?」

 

 ……読むことができない、はずなのに、その文字を普通に読み取ることができた。

 確かに、勇者の武器には異世界語などの自分の知らない言葉を翻訳してくれる翻訳機能が存在している。だがそれは、あくまで言葉のみであり、文字は勇者本人が勉強して覚える必要があった。

 それなのに、錬は、未知の言語であるはずのこの世界の文字を読むことができた。

 

「どないしたん?」

 

「い、いや……なんでもない」

 

 とりあえず、受け取った書類に書き込める範囲で書き込んでいく。

 

(……まさか、既に何かの影響を受けている?)

 

 何らかの干渉を受けていることは火を見るよりも明らかだ。今のところは自分達に有利に働いているものの、気付かぬ間に何者かの干渉を受けていたという事実は、錬の背筋を凍らせるに十分なものだった。

 

「今、思ってんけど……」

 

「どうしました?」

 

「こっちの人って、どんぐらいの人が読み書きできるん?」

 

「そうですね。ファーレーンの場合、都会に住んでいる人はほぼ九割が読み書きできますが、農村になると、辛うじて数字が読める程度の人が過半数でしょう。最近では地方の農村にも学校が整備されてきてはいますが、それでも国全体で見れば半分に満たないのが現実ですね」

 

 受付の女性・アンの説明になるほどなるほどと頷く三人。

 意外と高いと見るか、思ったより低いと見るかは微妙なところだが、少なくとも文字が書けるのも書けないのも不自然ではないレベルではある。

 

「読み書きができない人が登録に来た場合、どうするんですか?」

 

「書類自体は此方で代筆し、研修の時に最低限の読み書きは覚えてもらいます。読み書きを覚えるまでは、依頼表の内容も此方で読み上げます」

 

「そっか、なるほど」

 

「それやったら、農村を飛び出した無謀な少年が、登録もできんで努力の余地なしに路頭に迷うことはない、と」

 

「絶対ではありませんけどね」

 

「と言うと?」

 

「そもそも、戦技研修と読み書きの授業を受けながら仕事をするような人物は、大抵途中で挫折しますし」

 

「……身につまされる話だな」

 

 錬の脳裏を過るのは初めてカルミラ島を訪れた時の自分達の姿だ。

 

『尚文さん』

 

『なんだ?』

 

『魔法言語理解の効果のある盾は何処で手に入るのですか?』

 

『自力で覚えたんだよ! 何でも武器に頼るな!』

 

『出し惜しみですね!』

 

『そうだそうだ! 教えろ!』

 

 錬は、他の二人の勇者とは異なり魔法言語理解の武器の存在を詰め寄ることはなかったが、その存在を信じて真面目に勉強しただけの尚文に敵意の眼差しを向けた。

 尚文の言葉を信じようとはせずチートと決めつけていた当時の自分達は、まさに、途中で挫折して都合のいいように考えるだけの愚か者だっただろう。恐らく、あの時の自分達なら『こんな無駄なことをしている暇があったら強力な武器を探すべきだ』などと言い訳をして、読み書きの授業から逃げ出そうとしたのではないだろうか。

 もっとも、実際には戦技研修や読み書きの授業などなかったのだから、あくまで錬の想像の中での話でしかないのだが。

 

「……ふむ。では皆さん、順番に質問に答えていただきます」

 

 そう言って、アンはざっと面接のようなものを行うと書類に何かを書き込んでいく。

 先程までのやり取りで大体の人となりは把握しているが、一応規則は規則だし、何よりこの三人はファーレーンの法をよく知らないはずだ。

 暗黙の了解で見逃される程度の細かい軽犯罪ならまだしも、庇いようのない大きな犯罪を、住んでいた地域の法体系や文化の違いが原因で犯されてはたまったものではない。

 そういった部分が大丈夫かどうか、しっかり面接で確認しておく必要がある。

 

「それでは、実践試験に移りましょう。ダンジョンの探索許可は八級以上になるか許可を受けた人物に同行することで下りますので、今回は戦闘能力だけを確認させていただきます」

 

 一通りの見極めを済ませ、実技事件に。予想以上の実力を見せる三人にアンが舌を巻いていると、錬達からも驚いたような感心したような声が。

 

「アンさん、強い」

 

「ああ。正直、霊亀の一件の前の俺ではスキルなしでは敵わなかったかもしれないな」

 

「冒険者協会の職員は、皆最低限の戦闘訓練は受けているんです」

 

 なるほど、と錬は頷いた。冒険者という荒くれ者を相手取る協会の職員は、時に逆上した冒険者の攻撃を受けることもあるだろう。その時に護身術の一つも使えないとなれば、一方的に暴力を振るわれるだけになってしまう。

 

「それより、住所は登録されていないのですか?」

 

「今日、こっちに来たばかりですから」

 

「なるほど。でしたら、ウルスで一ヶ月以上活動するのであれば、明日にでも役所に行って登録してきてください。冒険者カードを見せれば、前歴などは特に確認されませんので」

 

「それで大丈夫なん?」

 

「我々冒険者協会は、そういう組織ですから」

 

 やけに説得力のある説明に思わず頷き、登録が済んだ証として十級と記されたカードを受け取る。

 その後、施設の使い方や依頼の受け方、昇級条件などについて一通り説明を受け、バーサークベアから剥いできた素材を買い取ってもらい、本日の予定を終える。

 ランディとクルトは、登録を始めたあたりで王城へ緊急支援要請へと向かったため、既にこの場にはいない。

 

「ポーション類も込みで一万五千か……」

 

「初日にしては十分……と言いたいところだが、必需品を買い揃えるには微妙に足りない金額だな」

 

 交渉を終えた春菜から渡された金額を見て、宏と錬は難しい顔をする。

 とりあえず、今後の行動費として三人で折半しておく。

 

「全部、とても丁寧に処理されていましたので、少し査定に色を付けておきました」

 

「一見すごい金額やけど、結構悩ましいところやなあ……」

 

「難しいところだよね……」

 

 冒険者協会に扱っている装備品を見て、渋い顔で囁き合う。

 安いものは五十チロル程度なのだが、高い物は一万クローネを超える物すらある。

 流石に値段が値段だけに悪くはないのだが……。

 

「とりあえず、今日は宿に戻って休もうか」

 

「そうやな。なんかいろいろあって疲れたわ……」

 

「ああ。久しぶりにベッドで休みたいところだ」

 

「お疲れ様でした。もしよろしければですが、今回のポイズンウルフの駆逐のために、明日の朝からで構いませんので、毒消しを作っていただけませんか?」

 

「……そうやな。聞いてしもた以上、知らん顔は気分悪いし。ただ、材料を集めに行く気力が残ってへんから、代わりに集めてくれる?」

 

 微妙にアンから距離を取りながら、そんな提案をしてのける。

 

「分かりました。これより職員を総動員して、可能な限り掻き集めます」

 

「まあ、ポイズンウルフの毒やったら、特殊な材料は特にいらんから、数は集まると思うけどな」

 

 そう言って宏から告げられたレシピをメモして、奥の事務室や他の施設の職員に声をかけて回る。

 そんなアンの様子を見てため息を付いた宏は、もう一度協会の販売品をざっと眺める。

 冒険者の中には初歩の製薬術や錬金術を身に付けている人間も少なくはないとのことで、そういった者達のために調合用の機材も多少は売られている。

 

「乳鉢と鍋ぐらいは買っといた方が良さそうやなあ……」

 

「そこは任せるよ」

 

「今直ぐに決める必要はないだろう? 使うにしても明日からになるわけだからな」

 

「それもそうや」

 

 翌日の作業が、最も面倒な形で最も深く王宮に関わる切欠の一つになるのだが、どういう形で関わる羽目になるのか、この時の三人は知らなかった。

 

    ☆

 

「噂話の類なんて当てにならないな」

 

 とは言いつつも、昔の自分なら無条件に彼女の悪評を信じていたのだろう、と青年は自嘲する。それほどまでに昔の彼は思い込みの激しい性格をしていた。

 

『……呆れたね……まさか、今になってようやく気がついたのかい? ”人”を殺そうとしていることに』

 

 実際、彼は魔人族の女を手に掛ける――その寸前まで、魔人族とは「残忍で卑劣な知恵の回る魔物の上位版」、或いは「魔物が進化した存在」くらいにしか認識していなかった。あの世界に召喚されてから最初に教えられた通りに。

 

 魔物と共に在り、魔物を使役していることがその認識に拍車をかけた。

 自分達と同じように、何かのために必死に生きている、何かのために必死に戦っている”人”だとは思っていなかったのである。

 或いは、無意識にそう思わないようにしていたのか……。

 

『ごめん……先に逝く……愛してるよ、ミハイル……』

 

 その認識は、女魔人族の愛しそうな表情で愛する人の名を呼ぶ声により覆された。

 否応なく、自分が今、手に掛けようとした相手が魔物などではなく、紛れもなく自分達と同じ”人”だと気がついてしまった。自分のしようとしていることが”人殺し”であると認識してしまった。

 その結果、彼は敵の目前であるというのに剣の切先を下げてしまう。目の前の魔人族が自分達の命を狙う敵だというのにだ。

 

『か、香織……なにをして……早く、戻って。ここにいちゃダメよ』

 

『ううん。どこでも同じだよ。それなら、雫ちゃんの傍がいいから』

 

『……ごめんなさい。勝てなかったわ』

 

『私こそ、これくらいしかできなくてごめんね。もうほとんど魔力が残ってないの」

 

 その愚行が招いたのは仲間達の全滅という絶望の未来。

 彼の幼馴染である二人の少女も魔物の剛腕によって粉砕されていたことだろう。

 

『……相変わらず仲がいいな、お前等』

 

 紅い雷と共に、”魔王”が現れなければ。

 

「コウキ殿、ポイズンウルフ大量発生の報せは聞いたか?」

 

 昔のことを思い出していた青年に、金属鎧を身に纏う壮年の男性が話しかける。

 

「はい、ドーガさん。俺もポイズンウルフの討伐を手伝うことになりました」

 

「そうか。儂等は姫様の護衛があるので共に行くことはできぬが、ポイズンウルフの大量発生は一大事だ。対処は任せたぞ」

 

「分かりました」

 

 彼――天之河光輝は、壮年の男性の言葉に力強く頷いた。

 

    ☆

 

 ■ありふれた職業で世界最強が参戦しました。

 ■ありふれた職業で世界最強 アフターストーリーが参戦しました。

 

 

 

 ■天之河光輝が来訪しています。

 

 

 

 ユニット名:東宏

 サイズ  :M

 移動力  :5

 地形適応 :空A 陸A 海B

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~

 モデル  :コン・バトラーV(超電磁ロボ コン・バトラーV)

 

 武器

 ・基本攻撃

 ・スマッシュ

 

 

 

 ユニット名:藤堂春菜

 サイズ  :M

 移動力  :7

 地形適応 :空A 陸A 海A

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~

 モデル  :炎神レイアース(魔法騎士レイアース)

 

 武器

 ・剣

 ・魔法剣

 ・エレメンタル・ダンス

 

 

 

 ユニット名:天木錬

 サイズ  :M

 移動力  :7

 地形適応 :空A 陸A 海B

 タイプ  :空、陸

 登場作品 :魔獣戦記ブレイブスター(仮)

 モデル  :ランスロット・アルビオンゼロ(コードギアス 反逆のルルーシュⅢ皇道)

 

 武器

 ・ハンドレッドソード

 ・流星剣

 ・流星剣[MAP]

 ・エアストバッシュ

 ・二刀流

 

 その他

 ・アサッシングソード

 ・ベルセルク

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