スーパー英雄大戦 F
第4話 オールマイティ・クラフター
☆
その日、冒険者協会は、早朝から大騒ぎであった。
「まずはドルクの枝と葉っぱを分けてまとめて、枝は皮を剥ぐ。それとエージュの茎とドルクの葉っぱは細かく刻んで、こんな感じに磨り潰して。割合があるから、間違って混ぜんようにしてや。いるんはアスリンは根っこ、エージュは茎だけやから、それ以外は適当に処分しといて」
宏の指示に従い、昨日の内に掻き集められた材料の山に立ち向かう春菜と職員達。
参考までにと、材料を分けてくれた薬剤師が、何人か協力に来ている。
「アスリンの根以外は、普通に作られている応急処置用の毒消しと変わらないのですね」
「そらそうでっせ。元々、あの毒消しは効きが弱いだけで、成分的には大抵の毒に干渉できるし」
「では、このアスリンの根は?」
「瘴気系の毒に強い効果があるんやけど、そのままやと劇毒やから、普通の毒消しの成分で劇薬になってる部分を弱めたるんです。ただ、普通に混ぜて煮込むだけやと肝心の瘴気系の毒に対する効能まで弱めてまうんで、そこで錬金術の要領でちょちょいと細工したる必要がありますん」
壮年の薬剤師の質問に答えながら、手際よくアスリンの根を処理していく。
肝心の素材だけあって一番分量が多いのに、この場にあるどの材料より早く処理が進んでいくあたり、熟練度の差というのは随分と大きいらしい。
エクストラスキルまで習得している熟練の職人と、多少製薬技術を持つ程度の素人との間には天と地ほどの差があるということだろう。
「見たことのない処理をなさっていますが、それが?」
「はい。言うてもまあ、初歩の錬金術とエンチャントの知識があったら難しないやり方なんで、機会があったらそっちも勉強したってください」
「分かりました」
宏の言葉に、壮年の薬剤師は真剣な面持ちで頷いた。製薬を生業としている彼は既に、目の前の青年が自らのはるか先にいる薬剤師であることを悟っていた。
「東君、この皮はどうするの?」
「剥ぎ終わったら置いといて。そいつと根っこは、ちょっと特殊な処理が要るから」
「了解。後は、葉っぱと茎を磨り潰しておけばいいんだね?」
宏の指示を受けた春菜は、磨り潰す作業に混ざりに行く。
それを横目にアスリンの根の処理を終えた宏は、次は大量の皮に取り掛かる。魔法を使って乾燥させ、刻み、磨り潰し、粉にして量を計っていく。
一連の作業の流れるような手際に、薬剤師を中心に方々から感嘆の声が上がる。
「蒸留水は?」
「用意してあります」
「ほな、代わりにそっちの作業やるから、竈と大鍋用意しといてください」
「分かりました」
アンに指示を出して、細かく刻まれた葉っぱをひたすら磨り潰していく。
他の薬剤師以外のメンバーが、せいぜい十五分程度の作業で休憩をしているというのに、宏はそれ以上の時間の作業を一切休憩せずにこなしてのける。
しかも、同じ時間で何倍もの作業量だ。製薬に限る話ではないが、熟練者と素人の間には、絶望的な格差が横たわっている。
「さて、下拵えも終わったし、後は一気に煮込むだけや」
慎重に計測しつつ、沸騰し始めた蒸留水の中に材料を投入していく。
まず最初にエージュの茎を磨り潰した物を両手鍋二杯分投入し、十秒ほどかき混ぜて全体を均一にする。
その後にドルクの枝の皮を粉にした物を混ぜ、更に十五秒ほどかき混ぜる。
最後にドルクの葉を磨り潰した物とアスリンの根を乾燥させて砕いた物を同時に投入。弱火にして四十分ほど、魔力を込めながらひたすらかき混ぜる。
徐々に色が変化していくので、澄んだ青色になったあたりで鍋を火から下ろす。
「後は瓶に小分けしたら終わりや」
魔法で粗熱を取りながら、瓶詰めのために未使用、もしくは洗浄済みの片手鍋に取り分け、ほぼ終了を宣言する。
「手伝うよ。どれぐらいの量を入れればいいの?」
「首の下ぐらいまで。そんなにきっちりやのうてもええで」
「了解」
この作業に於いても宏や薬剤師の面々は流石で、取り分けた片手鍋から直接入れているというのに、小さな瓶に零す気配もなく正確に流し込んでいく。
一方、春菜と冒険者協会の職員達はお玉と漏斗を使って小瓶に慎重に流し込む。
作業開始から三時間、そろそろ十一時というあたりで、三百を超える数の毒消しが完成した。
「これぐらいあれば十分やと思うけど、どう?」
「そうですね。従軍する騎士団の数から言っても、これがいいところでしょう」
「まあ、材料的にも設備的にも、これ以上はちょっと難しい感じやし、足らんかったら諦めて」
「分かりました。伝えておきます」
アンに対して言うべきことを言うと、宏達は協会の購買コーナーへ移動する。
お目当ては、採掘や採取に使う、ツルハシと手斧だ。
「とりあえず、これとこれでええかな?」
どうせ自作するまでのつなぎだ、ということで、品質的に普通に分類できる物を適当に選定。ついでに採掘した鉱石を入れるための丈夫な鞄を見繕う。
「そういえば、鍛冶道具とか貸してくれるところはあるんやろか?」
「東君、もしなかったらどうするの?」
「そらまあ、しゃあないから間に合わせで自作して、ちょっとずつステップアップするしかないやろうなあ……」
「また気の長い話を……」
「しゃあないやん。どっちにしても、ええ装備が必要やったら、最終的にはちゃんとした設備と道具を用意せなあかんねんし」
この場合、ちゃんとした設備を用意する、というのは、工房を持って設備を自作する、ということだ。
つまり、早々に宿暮らしを終えて、どこかに十分な広さの建物を確保する。或いはそれだけの土地を購入して、資材を集めて自分で建てなければならない。
「すんませ~ん」
「はーい」
購買担当の女性・ミューゼルが大急ぎでカウンターに駆け寄ってくる。
「こんだけ欲しいんですけど」
「分かりました。ちょっと待ってくださいね」
何やら黒板で計算を始めた……のはいいのだが、買い取りと違うのだから単なる足し算でいいはずなのに、掛け算が混ざっているのはどういうことだろうか?
「ツルハシと手斧、鞄が全部二つずつで六十五クローネです」
「安ない?」
「急なお仕事をお願いしましたので、ちょっとしたサービスです。報酬については、現在国と交渉中ですので、後日おいでください」
「了解。ほなありがたく割引きしてもらいますわ」
全く裏がない訳ではないだろうが、さして警戒するほどのことでもなさそうだ。
昨日と今日で余計な方向で目立ってしまったのだから、目を付けられるのも当然だろう。ならば、せめて多少の利益を頂戴するぐらいは構わないはずだ。
尚、その利益を過剰に頂戴している剣の勇者という盗賊モドキには目を瞑ることにする。現在、彼は武器屋巡りをして店売りの剣をコピー中だ。無論、剣をコピーしますから、などと店員に言えるはずもないので無断でコピーしている。
罪悪感が無い訳ではないが、戦力確保が急務である以上、自分の心を押し殺してでもウェポンコピーはしなければならない。
「それで、質問なんですけど」
「はい、どうぞ」
「この付近で、鉄とか採れる場所ってあります?」
「鉱石類ですか……」
春菜の質問に、少し考え込むミューゼル。
「そうですね。北にあるレーネ山中腹辺りにある崖で、少し採れたという話はありましたね~」
「少し、ですか?」
「はい。採れるのは採れるそうですが、質も量も大したことがないそうで、結局鉱山としては使い物にならなかったんですよね~」
その言葉に二人は思案する。
「それで、どうして鉱石が?」
「まあ、大した話ではないんですが、材料を持ち込めば、安くいい装備が手に入らないかな、と思ったんですよ。後、東君の話では、錬金やエンチャントの素材に鉱石を使う物があるっていう話なので、集めておけば初歩の物は自力でどうにかなるかも、と」
「ああ、なるほど。私はてっきり、武装も自作するのかと思いましたよ」
その言葉には、二人も全くの無反応を貫くことはできなかった。そして、その反応を見て真実に気付かないほど冒険者協会の職員の眼は節穴ではない。
「まあ、実際のところ、アズマさんほどの力量を持ち合わせている方はあまり見かけませんが、薬や武装をある程度自作する冒険者の方は、それほど珍しくはないですからね~。薬剤師の中にも、自分で材料を集めるために冒険者になった人とか、自分で使いやすい道具を追求するために鍛冶を習っている人とかも居ますし」
「つまりは?」
「協会の設備に鍛冶関係の物もありますので、必要でしたら声を掛けてくださいね」
「……分かりました」
所詮はまだ高校生の若造二人。戦闘能力は十分以上に高かろうと、こういったやり取りで大人を相手にできるほど
冒険者協会相手には、隠すだけ無駄らしいと諦めることにする宏と春菜であった。
☆
「この辺りか」
教わった辺りに辿り着いたところで、崖を見上げながら疲れたように宏が呟いた。
基本的に狩人が薬の材料を探しに来る人間しか入らないような山なので、道と呼べるようなものもほとんどなく、二人は延々獣道を歩く羽目になったのだ。
二人共一般人の平均よりは大幅に高い耐久値を持っているため、枝や茨で怪我をする、ということはなかったが、春菜の服は彼方此方がほつれており、今も必死になって毛先に絡んだ枝葉を引っ剥がしている。
ゲームでは、流石にこういう細かいトラブルはなかったため、こんなしょうもないことでも、今の状況が現実であることを思い知らされて、地味に落ち込む。
服にしても、一応汚れという要素はあったが、こんな風に袖や裾がほつれたりすることはなかった。耐久値という概念は存在したため、戦闘で破れたりはしていたが、木の枝に引っ掛けたり、などということはなかった。
「流石に、有望な鉱脈もないと判断されるような場所じゃ、ちゃんとした道なんてないか……」
「まあ、そうやろうなあ」
「そういえば、その手斧でいろいろ払ってたけど、集めてたのは薬の材料?」
「そんなとこや。まあ、薬だけやのうて、錬金に使うもんもあるし、服に処理する触媒にしたりもするけど」
そう言って、宏はジッと崖を見渡した。早速、採掘モードに入ったようだ。
ズブの素人である春菜には何処も同じように見えるのだが、職人の目には鉱石のある場所と無い場所の違いがあるのだろう。
「あったの?」
「そんな期待はできへんけど、まあきっちり精錬すれば使えるやろう」
崖を掘り始めた宏に確認を取ると、そんな心許ない言葉が返ってくる。
とはいえ、崖を掘っている宏の表情は実にいい笑顔で、このヘタレにこんな表情ができるのかと心の底から驚いてしまうのだが。
「それで、作業しながらでいいから、聞いて欲しいんだけど……」
「何?」
「先に謝っておくと、今まで、ちょっとだけ嘘をついてたの。ごめんなさい」
「嘘って、どんな?」
「最初に、この辺りの土地勘ほとんどなくなってるって言ったでしょ?」
「そういえば、言うとったなあ」
『土地勘がないので、どっちに行けば街があるのかが分からなくて困ってまして』
昨日、ウルスに向けて移動中に、確かに春菜は土地勘がないと言っていた。
「あれ、半分は本当なんだけど、半分は嘘だったの」
「と、言うと?」
「私、一度行ったことのある場所とか、一度見聞きしたことのあるものって、そう簡単には忘れないの。だから、ゲーム内でのファーレーンの地理も、ほとんど覚えてるんだ。あの辺りを歩いたのが四年以上前、っていうのも嘘じゃないし、久しぶりにウルスに来て、あっちこっち冷やかそうと思ってゲート潜った途端にこっちに飛ばされたから、後から実装された建物とかがあると分からないのは事実なんだけどね」
「なるほどなあ。で、半分本当や、言うには、後から実装された建物がどう、いうのは弱いで。それに、実際にあんまり道とか分かってなかったみたいやし」
「よく見てるね」
「そら、ちゃんと観察して、違和感になるようなところは頭の片隅にとどめておくんが、天敵相手に身を守るコツやからな」
「天敵って……」
あまりの言い様に、そんなに自分と行動するのは嫌なのか、と、思っていた以上にショックを受ける。
「別に、藤堂さんがどうとかいうことやないで。僕は基本的に、女の子と関わりたくないねん」
「……アンさんとかミューゼルさんに対する態度で、そんな気はしてたよ」
昨日も今日も、女性が至近距離に居た時は、宏の顔は明らかに青褪めていた。
そういう反応がなかったのは、作業の最中の、目先のことに意識の大半が向かっていた時ぐらいだ。それ以外の時は、よく見れば、鳥肌が立っていたぐらいである。
初日の、緊張していると勘違いしてもおかしくない時以外近くで会話をしていないアンは兎も角、ミューゼルは恐らく、宏が対人恐怖症――それも女性に対して洒落にならないレベルのそれを患っていることに気が付いているだろう。
「自分こそ、よう見てるやん」
「運命共同体だからね。相手がどんな人か、何が好きで何が嫌いか、どんなことが負担になってるか、っていうのはちゃんと見ておかないと、余計なトラブルは破滅への第一歩だし」
「そっか。悪いな、こんなんが運命共同体で」
「そんなことはないよ! 私は、東君が一緒でよかった、って思ってるよ!」
自嘲気味に呟いた宏に、慌てて否定して見せる。
実際、右も左も分からないこの土地で、宏が一緒というのは非常に幸運だった。
女性恐怖症に彼には悪いが、貞操の危機を感じずに済み、それ抜きでもこういう状況で最低限の信頼を置ける人柄をしており、何より大抵の物を自作できる。
そもそも、宏がいなければ、バーサークベアに殺されていたかもしれない。命の恩人に文句を付けるなんて罰当たりな真似、春菜にはとてもできない。
「無理せんでええねんで。正直、天敵やのなんやの、物凄い失礼やって自覚はあるし」
「詳しくは聞く気はないけど、余っ程のことがあったんでしょ? だったらしょうがないよ」
「ごめんな」
「こっちこそ、ごめんね。できるだけ不要な負担はかけたくないんだけど、性別だけはね……」
「いや、藤堂さんが謝ることでも気にすることでもないと思う、言うか、むしろ男やったらもっとしゃっきりせい、みたいなことを言うてもええくらいやと思うんやけど……」
「言えないよ」
春菜の目から見れば、宏のそれは明らかに、カウンセラーか心療内科にかかるべきレベルだ。正直、一歩間違えれば引きこもりになるか精神病院に隔離されるのではないか、という種類の危うさを感じる。
そのことには錬も同意見であり、もし仮に宏が剣の世界の勇者であったのならば、即座に『カースシリーズ』が発動するだろうという確信を得ている。
カースシリーズとは、勇者に自ら死を選ぶほどのトラウマや強い負の感情が生じると、その感情を糧にして解放される七つの大罪をモチーフにした武器のことだ。
宏のように女性恐怖症を発症するまでには至らずとも、味覚をなくすほどの人間不信に陥った盾の勇者が『憤怒』のカースシリーズを解放したことから、これは決して大袈裟な話などではない。
去年も同じクラスだったというのに、身近にこれほど危うい人間がいて、それに全く気が付かなかったあたり、自分の観察眼と思いやり、というやつもまだまだだ。
「で、話を戻して。覚えとる、言う割には道がよう分かってない感じやったんは、何で?」
「VRと現実では見え方が違った、っていうのもあるけど、一番大きいのは、覚えてるのと地形が違ったの」
「ほうほう。例えば?」
宏の質問に、何処を例として挙げれば分かりやすいかを考える。
「ウルスに行く途中に、丘があったでしょ?」
「うん」
「あれ、VRの方ではなかったの」
「そうなん?」
「うん。街道に出た時点で門が見えてなきゃいけなかったんだけど、あの丘があって見えなかったから、地形が違うんだ、って確信した」
そう言われて、ふと宏の脳裏に過ったのは転移初日に錬に言われた言葉だ。
『二人には、この世界に関するゲーム知識があるみたいだが、それを過信しちゃいけない。異世界というのは夢だけでは存在していないんだ』
「ゲーム知識を過信するなっちゅう錬さんの言葉通りだったわけやな」
「うん」
異世界転移の先輩である錬の言葉の正しさを宏と春菜は改めて実感する。
その上で、春菜は、採掘を続ける宏に本題を切り出した。
「それで、東君はゲームの初期設定とか、どれぐらい覚えてる?」
「ほぼ覚えてない、言う感じやな」
「じゃあ、やっぱり
「ゲームでも、そういう設定やったん?」
「うん。ゲーム通りだとすると、私達はこの世界の一般人より、能力やスキルの面では成長が早いはずなの」
そんな細かい初期設定まで覚えている春菜の記憶力に思わず感心する宏。
なお春菜は、過去に細かいステータスを覚えていない、と言っているが、彼女は自身のステータスぐらい、熟練度の小数点以下まで全て覚えている。
もっとも、今となっては全然役に立たない記憶であるが。
「まあ、考えてみたら、いくらゲーム内で二十年修行積んでる言うても、それだけでここまで技能が育つわけあらへんわなあ」
「うん。私もそう思う。で、問題になるのは、ゲームで鍛えた能力が使えるのはいいとして、能力やスキルの成長が早い、っていう設定は生きてるのかどうか」
「そやなあ。ただ、生きてるかどうかを、どうやって確認するんか、いう問題はあるわな。ゲームとちごて、ステータスを見られへんし」
「ステータス魔法……だっけ? 錬君はステータスを見れるらしいけど、明らかに私達とは別の理で動いてるから、物差しとしては不適切だろうし」
「そもそも能力値が一つ二つ上がっても、見て分かるほどの影響はなかったやん」
崖を掘りながらの宏の言葉には春菜も苦笑するしかない。
気が付けば、宏の足元には、いつの間にか大量の岩石が転がっていた。掘りながら仕分けを済ませているらしく、よく見ると岩石の山が二つできていた。
「大体、修練するにしても、元の能力値が高くなってくると、一ポイント伸ばすのにかかる時間とか、一回の修練での伸び率とかは悪なってくるし」
「うん。そこも問題なんだよね。多分、私達は一番低いパラメーターでも、一般の人よりは随分高いだろうし」
『フェアリーテイル・クロニクル』というゲームにおいて、装備補正なしの能力値を増やす主要な手段は三つ。
一 キャラクターのレベルを上げる
二 スキルの熟練度を上げる
三 伸ばしたい能力値を使う作業を行って鍛える
例外として、クエストボーナスによる能力値上昇もあるが、クエスト数が少ない上に、グランドクエスト二章以降到達が解放条件と、ハードルが高いため主要な手段からは外れる。少なくとも二章を攻略していない二人には不可能な手段だ。
また、レアドロップの消耗品の中に、使用すると特定の能力値を永久に一ポイント増やす、というステータス上昇アイテムもあるが、ゲーム中でも五年で四つしか出現していないレア中のレアなので、此方も数に入れる必要はないだろう。
因みにそのアイテム、宏は生産可能だが、材料集めが洒落にならないので、未だに作ったことはない。
この内、最初に述べた主要手段の三つの中で、狙った能力だけを伸ばせるのは、最後の『伸ばしたい能力値を使う作業を行って鍛える』というやり方だけだ。
レベルアップはスキルやそれまでの修練の傾向から、自動的に上昇する能力値を割り振るため、低い能力は何時まで経っても低いままである。
そして、スキルの熟練度を上げて得られる能力ボーナスは、大抵の場合二つ以上の能力が伸びる。そもそも、スキルを鍛える、という作業自体が能力値の修練にも繋がっているため、熟練度ボーナスが得られるタイミングに関係なく、いつの間にか関連する能力値が上がっている、などということも珍しくない。
このように、現実に比べればコントロールしやすいゲーム中において、ステータス表示を見ながら調整しても完全に思うようにはコントロール出来ない類のものなのに、比較基準もないのに闇雲に訓練して、伸びやすいかどうかなど確認のしようがない。
「そもそも、『フェアリーテイル・クロニクル』の能力値って、主観だと十ぐらい変わらないと影響が分からないけど、他所から見ると数値が大きくなるほど、一ポイントの差が絶望的な影響を持ってるのが分かる類の仕様だったし」
「そうやっけ?」
「うん。例えばね、筋力が百五十くらいの場合、百五十一になると十五ぐらい基礎攻撃力が増えるの。主観だとたった十五、ってことになるけど、武器で言うなら初期のナイフと同じぐらいの攻撃力が増えてるよね。これが、筋力が三百になると、基礎攻撃力が三十増えるのかな? 筋力三百の頃の三十って大した数字に見えないけど、筋力二十五ぐらいの頃の攻撃力と同じだけ伸びてるわけだから、一般の人から見たら、たった一ポイントでも絶望的な差になるよね?」
「そうやなあ。それにしても藤堂さん、えらい細かい数字に詳しいなあ」
「知り合いと協力して、能力値と派生パラメーターの相関関係を計算したことがあったんだ。因みに、サービス開始時スタート組のボリュームゾーンは、キャラクターレベルが百二十から百八十の間で、最高値じゃない能力値が百五十から二百の間ぐらい」
「それで、能力値百五十を例に取ったわけか」
「そういうこと」
掘る手を止めて感心する宏に、胸を張って少し自慢気に答える。
因みに、キャラクターレベルという観点なら春菜自身もボリュームゾーンに入る。
能力値自体はエクストラスキルの影響があるものを除けば、一番高いもので二百五十程度。修練のきつい補助魔法と料理をマスターしていることと、生活系とはいえマスターしているエクストラスキルを持っている分、能力値はボリュームゾーンを超えて上位の下の方に入る部類だ。
習得しているスキルの数が多く、一度の戦闘で複数のスキルが上昇することも大きい。
能力値の上昇は、スキルの補正なしで三十を超えたあたりから伸び率が急激に悪くなり、五十を超えるとレベルアップとスキルボーナス以外で伸びることはまず無くなってくる。
七十ぐらいで一レベル上がったぐらいでは能力値が増えなくなり、素の値で百を超えると、レベルアップでも殆ど上昇することはなくなる。
そして、上位の戦闘スキルをマスターした場合でも、せいぜい合計で十五程度の補正しか入らないため、殆どのプレイヤーの能力値が、高くて二百程度に収まる。
ところが、これらの補正ボーナスは、生産スキルと上級の補助魔法、そして各種エクストラスキルの影響が例外的に他のものより大きくなっている。
いずれも取得難易度が修練のきつさに応じた、洒落にならない能力値補正を持っており、とりわけ、エクストラスキルの補正量は大きく、取得すればそれだけで、普通の攻撃系上級スキル四つ分程度はボーナスが入る。
単純な積み重ねが全てという仕様は、何も生産スキルに限った話ではないのだ。
もちろん、攻略組に位置するレベル五百や八百などという廃人になると、五百や六百という数値を叩き出す能力値も平然と持っている。
修練そのものの回数と密度が違う上に、ありったけのクエストボーナスを総取りしているのが普通だからだ。
「どうでもええことやけど、今んとこ、能力値的に一番高いのって、どのぐらいやろうな?」
「聞いた話だと、七百六十五がトップらしいよ。何の数値かまでは知らないけど」
「……そんなもんなんや……」
宏の微妙な表情に、どうやら八百やそこらではきかない能力値を持っているらしい、と当たりをつける春菜。
生産のエクストラスキルを幾つも持っているのだから、耐久と精神が千を超えている、などと言われても、特に驚く気はない。
ただ、この数値が現実に反映されているのならば、それだけの精神力を持っていて尚、克服できない宏のトラウマの根深さには驚愕せずにはいられないが。
「まあ、そこら辺は置いとくとして、や」
「うん」
「そのことが分かったからいうて、今後の事になんぞ影響があるん?」
「影響っていうか、相談事?」
採掘を再開した宏に、どう話を持っていくかを考えながら声をかける。
「私の記憶が確かなら、ゲームのスタートの時って、ランダムな場所にプレイヤーが配置されて、その場所に居る兵士に声をかけられてお城に連れて行かれるところから始まったと思うの」
「そこら辺はちょっとうろ覚えやけど、確かお城であれこれチュートリアル的な感じで雑用を受けて、その報酬として支度金もらってスタートやった覚えはあるわ」
「相談っていうのはそこ」
「ん?」
「今更だけど、そのゲームのスタート時点の流れに乗るかどうか、っていうのを相談したいの」
「本気で今更やなあ」
思わず苦笑が漏れる。なるほど、確かに今更な話ではある。
第一、胡散臭いから迂闊に城に行くのは止めた方がいいかも、と最初に言い出したのは春菜だ。
もっとも、これに関しては、彼女が言わなくても他二人が持ちかけただろうが。
「確かに今更だけど、私達以外にも転移した人がいるのなら、まずはこの流れに乗ると思うんだ。無一文でこの世界に放り出されて、お金だって必要だろうし」
たまたま二人が生活系のスキルが充実しているタイプだったから勘違いするかもしれないが、無一文で放り出された現代日本人が普通に暮らしていけるほど、この世界は穏やかな世界ではない。もし仮に、二人がガチガチの戦闘系のコンビ、などという状況だった場合、いろんな意味で悲惨なことになっていただろう。
今も春菜が、昼食のために持ってきたパンや干し肉を少しでも美味しく食べられるように軽く手を入れているが、スキルがなければこんなこともできないのだ。
割と軽視されがちな生活系スキルだが、実際にゲームに似た世界に飛ばされてしまえば、大きな魔法が使えるより美味しい料理を作れる方がずっと役に立つのである。
「せやけど、やっぱり胡散臭いから、まずは武器の用意からやと思うで。最低限、自衛できるだけの装備は整えておくべきや」
「東君がそれでいいなら、私の方に異存はないけど、なんかリスクを押し付けて、おんぶに抱っこになってる感じなのが申し訳無いかな……」
「現時点ではしゃあない。多分、僕が普通の戦闘キャラやったら、生活費から何から何まで藤堂さんに頼り切りになっとった話やし」
生産系のエクストラスキルを複数所持する宏の影に隠れがちではあるが、歌唱のエクストラスキルを持つ春菜はおひねりだけで生活費を確保できる程の歌手である。
宏の言う通り、宏が生産系で無ければ、宏の方が彼女に依存していたことだろう。
「で、武器はええとして、防具どうする?」
「どうする、とは?」
「藤堂さん、金属鎧ってタイプやないやんなあ?」
「その前に、今日掘って持って帰るぐらいで、金属鎧を作れるの?」
「一回では多分無理や。僕の道具も作らなあかんし」
「だよね」
宏の返事を聞いて、しばし考え込む。
「まあ、金属鎧がええんやったら、別に遠慮がせんでもええで。どうせ他の事に使う材料も足りへんから、あと一回二回は掘りに来なあかんやろうし」
「そっか。まあ、全身金属鎧、ってのは勘弁して欲しいけど、胸当てあたりはそっちの方がいいかもしれないかな、とは思ってるよ」
「ブレストプレートか。僕もそっちの予定やし、まあなんとかするわ」
「いいの?」
「言うたやん。どうせ何回かはこっちに掘りに来なあかん、って。それより、ブレストプレートや言うても、ここいらで採れる素材で強度出すとそんなに軽くならへんし、結構ガチャガチャうるさいけどええ?」
「それはしょうがないよ。作ってもらえるだけで、感謝です」
「了解」
そう返すと、ラストスパート、という感じで採掘作業を続ける。
途中から、今後のために春菜もポイントを教わって崖を掘り始め、そこそこの量の鉱石を鞄につめて下山を開始する。
行きで懲りた春菜が結構複雑な感じで髪を纏めてアップにしていたのが新鮮で、普段と比べて随分と印象が変わったのだが、ヘタレの宏はそっちの方を殆ど見ずに、ひたすら藪を払う作業に専念していたため、わざわざ手間を掛けて髪型を変えた意味は殆どなかったのはここだけの話である。
☆
「溶鉱炉と鍛冶場を使わせて欲しいんやけど」
翌日、忘れていた住民登録を済ませ、アンから昨日の討伐作戦の成功を聞き、ついでに報酬として六千クローネを受け取り、その足で生産施設管理人のもとへ来た宏は、単刀直入に要件を切り出した。相手が壮年の男なので、気後れもせずに堂々とした態度である。
因みに、毒消しの売値は一本五十クローネ、その内訳は材料費及び協力者への報酬として十クローネ、残りを協会と宏達で折半、という形で落ち着いた。三百を何本か超えている分のお金は、協力者への報酬に回している。
即効性の強さが効いて、普通の毒消しより十倍近い高値で売れたとのことである。
「溶鉱炉は二時間で薪代込みで二十クローネ、鍛冶道具は熱源込みで十クローネだ」
「……結構ええ値するんや」
「鉱石を精製できるほどの温度まで上げるとなると、かなりの量の薪がいるからな。ついでに言や、短時間でそこまで温度を上げにゃならんから、薪も特殊処理した特別製の物を使っている。熱源を自力でどうにかするんだったら、鍛冶場と合わせて八クローネでいい」
壮年の男性の言葉に、納得すると同時に頭の中で算盤を弾く。毒消しの報酬で手元には大金があるが、それはポイズンウルフの大量発生という異常事態があってこそのもの。普段は、そこまで簡単に稼げるような額ではない。
ならば、少しでも節約しておくべきだろう。そう結論した宏は、此処を使う回数を可能な限り減らすことを考え、一番手間のかかる手段を取ることにした。
「……そやなあ。普通の薪って、ここで買える?」
「ほう、そう来たか。普通の薪なら、そうだな。その量なら五十チロルってところか」
「なら、口止め料っちゅうか人払いも兼ねて一クローネ払うから、まずは薪頂戴」
「了解。持ってきたら席を外すから、溶鉱炉を使う時は声をかけてくれ」
「はいな」
用意してもらった必要な量の薪一本一本に、宏は何やら模様を刻み込んでいく。
結構な量のそれに作業をしている最中に、とうとう最初から持っていた安物のナイフが欠ける。元々、手入れができるほど質のいい物ではないので仕方がないだろう。
「藤堂さん、ナイフ貸して」
「はい」
なので、作業の続きは春菜のナイフで行うことにしたのだが、結局、彼女のナイフも最後まで作業を続けたあたりで刃が欠けてしまった。
所詮割引無しでも五十チロルで購入できる粗悪品、この数日の扱いを考えれば、これも当然の末路であろう。
模様を刻み終えた薪とは別に、鍛冶場に置いてあった粉を少し使って地面に魔法陣を描き、春菜にはよく分からない儀式を始める。
十分程の儀式の後、一瞬、薪に青い光が迸り、表面に刻み込んだ模様が消える。
それを確認した宏は大きく息を吐き出した。これでようやく、下準備を終えることができた。時計を見れば、既に職員が立ち去ってから三十分ほどが経過している。
「ちょっと、おっさん呼んでくるわ」
「うん。その間、掃除しとくね」
「俺も手伝う」
「頼むわ」
鍛冶場を出ていく宏を見送って、錬と春菜は足元に散らばった木屑を箒と塵取りで掻き集める。魔法陣は儀式の終了と同時に消えているので、後はこのゴミを処理すれば証拠隠滅完了だ。
「……この時間で、全部に自力で処理したのか?」
「大したことはしてへんけどな」
「まあ、お前さんがエンチャントを使えるらしい、ってのはアンやミューゼルから聞いているが」
「そういうこっちゃ。でまあ、今から溶鉱炉と鍛冶道具を使わせて欲しいんやけど」
そう言って、十クローネを職員に渡す。受け取った金を見て一つ頷くと、職員は溶鉱炉に薪を放り込み、火を熾す。
明らかに、自分達が普段使っている薪より大きな火力だが、職員は特に驚く様子を見せない。先日の毒消しの件で、この程度の事は予想できていたのだろう。
もっとも、その予想の更に上を行くのが東宏という職人の為せる技であるのだが。
「あんまり驚いてへんね」
「知られざる大陸からの客人なら、多少平均から外れていても驚くようなことではないからな」
「さいですか」
職員の反応に苦笑を返した宏は、次々に鉱石を放り込んでいく。
春菜が運んできた分も投げ込み終わったところで、刃が欠けて使い物にならなくなったナイフと、昨日使っていた手斧とツルハシ二本も、柄の部分を外して放り込む。
「……ナイフは兎も角、斧とツルハシはまだまだ新しかったみたいだが、いいのか?」
「今日、全部作る予定やったからええかなって。あ、そうそう。置いてあるヤスリとかタガネ、かなり痛むかもしれへんから、その分のお金も後で払うわ」
「どんな使い方をするつもりだよ……」
職員のボヤくような言葉には答えず、宏は指先で空中に魔法陣を描く。魔力の光で描かれたその模様が、溶鉱炉の中に吸い込まれていく。
掌を炉に向けて、意識を集中する宏。
その様子を、微妙に冷や汗を流しながら職員と春菜は見つめる。平然としているのは、こことは別の異世界で似たような光景を見たことのある錬ただ一人だ。
魔力を炉の中に流し込みながら、そのまま通常の精製手順を続ける。
いくつか職員の知らない手順を踏みつつ精製を続けた宏は、それなりの時間が経ったところで、炉の中から溶けた金属を引っ張り出し、様々な大きさの型に入れて固め、インゴットを作る。
こんな時、いつものダサくてヘタレた空気が何処かに消えるのが本当に不思議だ。
「さて、どれから行くかな?」
「まずは、道具を作った方がいいかも?」
「そうやな。とりあえずはナイフとハンマーから行くか」
「ナイフ?」
「まずナイフ作っとかんと、ハンマーの柄が作られへんし」
えらく説得力のある台詞に職員がつい感心していると、口を挟む暇もないほどの手際で、流れるように二本のナイフを作り上げる。
素材をハンマーで叩く度に、刀身に魔力が流し込まれていく。
どうやら、精製段階だけでなく、鍛造の段階でもエンチャントを行うらしい。
「ナイフはこんなもんでええとして、次はハンマーかな?」
あっという間に刃先の焼き入れ焼き戻しを終え、砥石で刃の形を綺麗に整える。
本来なら鉄と鋼、二種類の金属を作り、鍛造で引っ付けることで剛性と弾性両方を上げるやり方をするらしいのだが、今回は素材にあれこれエンチャントをかけているし、所詮間に合わせだということで省略したとは宏の言だ。
職員からすれば、とても間に合わせとは思えないような出来であったが。
「作ってると間に合わへんなるから、柄は今回は手斧のヤツを流用するか……」
そんなことを言いながら、途中二度ほど時間延長をして次々と道具類を作り上げていく。
相手の素材が硬いからか、浅間通りヤスリが二本とタガネが一本駄目になったが、端材で代用品を作ってあったため、今回は事なきを得た。
なお、その駄目になったヤスリとタガネは新しい剣を解放するための素材にされた。
鑢の剣の条件が解放されました。
鏨の剣の条件が解放されました。
鑢の剣
能力未解放……装備ボーナス、簡易鍛造レシピ1
鏨の剣
能力未解放……装備ボーナス、見習い鍛冶
両方共に技能系のボーナスだ。鍛冶道具を素材にしているためか、どちらの装備ボーナスも鍛冶に関係するものとなっている。
「ほんなら、本命いこか。どんぐらいの長さがええ?」
「ん~、えっとね……」
完成させたハンマーで手斧とツルハシを作り終えた後、春菜の注文をいろいろ聞きながら、最後に残ったインゴットを鍛え始める。
先程よりも丁寧に作業を進め、祈るような真摯さで刀身を作り上げる。
叩く時に込められる魔力の量も、今までの物とは桁違いだ。
その真剣な表情と手際に春菜が見惚れている内に、美しいシルエットの刀身が完成する。そのまま残りの材料で柄と鞘を作り上げ、冒険者協会に置いてあるどの剣よりも見栄えのする、シャープな印象の細剣がその姿を現した。
「ちょっと振ってみてくれへん?」
「ん、了解」
渡されたレイピアを恐る恐る受け取り、慎重に鞘から抜き放って、十分に距離を置いてから一通りの型をなぞる。少し眉間に皺を寄せてその刀身を睨みつけた後……
「少し重心が手前すぎるかな? あと、握りの小指のあたりを、もうちょっと細くしてもらえると助かるかも」
「了解。ちょっと貸して」
春菜のリクエストに応えて微調整をかけたところで、延長した残り時間もギリギリとなっていた。どうにか、修正作業を終えるのに間に合ったようだ。
「こんなもんでどない?」
「……うん、バッチリ!」
そう言うと、軽く演舞のように新品の剣を振るう。最後に光属性の魔法剣を発動させて調子を確認し、先程とは違う感じで眉を顰める。
「どないしたん? なんかまずかった?」
「まずかったわけじゃなくて、ちょっと釈然としなかっただけ」
「釈然とせえへん、って」
その質問に、どう答えるかを考えた春菜は、まずは質問から入ることにした。
「その前に……これって、間に合わせの武器なんだよね?」
「そうなるな。いろいろ小細工したけど、そもそも大本の素材があんまりええもんやなかったし」
「……やっぱり釈然としない……」
「せやから、何が?」
「明らかに、前に使ってたやつよりいい物なのが、ちょっと釈然としないな、って……」
「そんなにいい武器なのか?」
「うん」
「そういうことなら俺にも見せて欲しい」
その言葉で、何をするつもりなのかを春菜も理解したのだろう。
素直に、完成したばかりのレイピアを錬に手渡した。
ピリッという振動と共に、錬の視界にアイコンが浮かんだ。
ウェポンコピーが発動しました。
アイアンレイピアの条件が解放されました。
レッドアイアンレイピアの条件が解放されました。
ピンクアイアンレイピアの条件が解放されました。
ホワイトアイアンレイピアの条件が解放されました。
ブラウンアイアンレイピアの条件が解放されました。
ブルーアイアンレイピアの条件が解放されました。
スカイアイアンレイピアの条件が解放されました。
etc……
カラーバリエーションも含めてアイアンレイピア系の剣が解放される。それはいつものことであるのだが、明らかに普段とは異なる点が存在していた。
「これは……!」
それは、武器の能力値だ。同じ武器でも品質の良い武器をコピーするとボーナスがかかるが、そのボーナスの数値が尋常では無いものであった。
確かにこれは、間に合わせの武器とは思えない代物である。
宏の職人としての技量を再認識した錬は、驚きながらも春菜にレイピアを返す。
「とりあえず、壊した分のヤスリとタガネの代用品は、それで勘弁したって下さい。後、できればこのことは内密に」
「……分かってるよ。言っても誰も信じねえって……」
宏の言葉に、職員は苦笑しながら頷いた。
実際のところ、春菜のレイピアは協会に置いてあるどの武器よりも高性能だが、上がない訳ではない。名工と呼ばれるドワーフが希少金属を使って作った武器、それにガチガチにエンチャントを施せば、互角以上の物も簡単にとは言わないが、普通に作れる。
とはいえ、それは上記の条件を満たした場合の話だ。この辺りで採れる、質としてはイマイチな鉱石でそれを作り出した上に、単なる間に合わせなどと口走る男のことなど、誰かに話したところで与太話にしか聞こえまい。
「ほな、今日はこれで失礼します」
職員は、頭を下げる宏を見送って一つため息をつくと、完全に薪が燃え尽きてようやく冷めてきた溶鉱炉の熱源部分から、灰を掻き出す作業に入るのだった。
☆
■鑢の剣が解放されました。
■鏨の剣が解放されました。
■アイアンレイピアが解放されました。
ユニット名:東宏
サイズ :M
移動力 :5
地形適応 :空A 陸A 海B
タイプ :空、陸
登場作品 :フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~
モデル :コン・バトラーV(超電磁ロボ コン・バトラーV)
武器
・基本攻撃
・スマッシュ
ユニット名:藤堂春菜
サイズ :M
移動力 :7
地形適応 :空A 陸A 海A
タイプ :空、陸
登場作品 :フェアリーテイル・クロニクル ~空気読まない異世界ライフ~
モデル :炎神レイアース(魔法騎士レイアース)
武器
・剣
・魔法剣
・エレメンタル・ダンス
ユニット名:天木錬
サイズ :M
移動力 :7
地形適応 :空A 陸A 海B
タイプ :空、陸
登場作品 :魔獣戦記ブレイブスター(仮)
モデル :ランスロット・アルビオンゼロ(コードギアス 反逆のルルーシュⅢ皇道)
武器
・ハンドレッドソード
・流星剣
・流星剣[MAP]
・エアストバッシュ
・二刀流
その他
・アサッシングソード
・ベルセルク