凡人と次元渡りドラゴンのなれそめ
あるところに男がいた、その男は平凡な魔法族だった。
男は平々凡々な一生を幸せに静かに過ごすはずだったのだ、そうあの日までは。
なんとなく選び、なんとなく勉強し、なんとなく生きる、そして今日なんとなくこの『ホグワーツ魔法学校』を卒業しようとしていた男がそこにいました、その男の名は『アゲート・ダンブルドア』
現校長の親戚という目立つ立ち位置とはかけ離れた平凡でおっとりとしたそんな男でしたが、今その男は進路というモンスターと戦っていたのです。
その日アゲートは先生に呼ばれていました、校長先生であり親戚のおじさんでもあるアルバス校長に。
理由はもちろん進路を選べずポヤポヤしているアゲートのお尻に火をつけるためです。
そうして親戚のよしみとポヤポヤ具合に元気なころのアリアナを思い出してしまい、世話焼きおじさんと化しているアルバスは言いました。
『アゲートや、よく来てくれたね、進路は決まったのかな?』
『おじさん、もちろんき…決まりましたよ』
『ほほう、やっと肩の荷が下りるのう、今日で7回目の面談じゃそろそろワシも飽きておるぞ』
その言葉にすこーし青ざめて見えるアゲートは言いました。
『その、僕はやりたいことも特になく、かといっておじさんの伝手で魔法省は恐れ多いし…そのですねぇ……一部の先輩方に聞いたような事をしてみたいと思うのです。そう見分を広める旅というやつを。』
嘘である、働きたくもなくかといって特にやりたいこともない、お金もないので家にも籠れず、時間稼ぎ代わりの言い訳をしよう。
アゲートの脳内はそのような事で埋め尽くされていた。
聞いたアルバスは予想通りといった渋い表情となった、なにせ7回目なのだ。
話をあっちにこちょこちょ、そっちにちょこちょこと適当に言い訳するのが甥であるアゲートの悪い癖というものである今回も先輩に話を聞いたのは本当であろうが旅がしたいというのは本気でないのだろうと見抜いていた。
ただ7度目にしてついに隙というか進路を選んだ答えを選んだアゲートにアルバスは背中を押すというか逃げ道を塞ぐ事に決めた。
『…なるほど、いい進路じゃないか』
『え?あぁいや僕も本気じゃぁ…』
『ワシ達の世代でも見識を深めつつ広めていくために旅というのは割と人気の選択肢じゃったしの。』
嘘である、アルバスの世代でも旅をしようとする人間など一部の変人か、職を選べなかった落伍者ぐらいだったのだ。
『手始めにフランスの方かの、はたまた東方の妖怪を見に行くのも面白いかものう』
『いや…そのぅ』
『良かった良かった、アゲートは選ぶのが苦手な子じゃったからのぅ、でも選べたなら大丈夫じゃろう。ところで旅の最初の目的地ついでにワシからお使いを頼んでも良いかのぅ、アゲートも知っているニコにこのレモンキャンディ―を持って行って欲しいんじゃが。』
『あわわわ…』
もう逃げ道など与えません、隙を見せたアゲートに残された選択肢はYESのみだったのです。
そんなこんなで彼はホグワーツ魔法学校の卒業式を迎え、おつかいと自分磨き()のために旅にでました。
最初に彼はお使いの目的地、二コラス・フラメルの住んでいる地 フランスに足を向けた。
ただ普通に誰に妨害されることもなく辿り着いてしまった彼はお茶菓子を頂き、頼まれていた荷物を渡し、すぐにお暇する事となった。
ただニコラスは玄関から出ていくアゲートにこう言った。
『君は、運命に出会うだろう、私もなぜかはわからない、近くの森で一夜過ごすかどうかが君の運命の分岐点だ』
ニコラスはなぜか泣きそうな顔をしながらそう言ったのだ。
アゲートはなぜかその言葉を信じたくなった、理由はわからないがこれまで生きてきた中で一番強く信じたくなったのだ。
カラッとした日差しが森を進むごとに感じられなくなっていき、鬱蒼とした森といった風景に変わっていく。
気づけばジメジメとした湿気と青臭い葉の匂いが強く漂っている事にアゲートは気づいた。
ただそれでもアゲートは帰りたいとは思えなかった、この先にある何かを強く信じていたから。
真っ暗な森の中でルーモスを唱えた杖が震えた気がした、疲れたのだろうかそれともここが運命に出会える場所なのだろうか。
直感を信じることにしたアゲートはここで一夜を過ごすことにした。
インセンディオで火をつけ、ニコラス家でもらっていたパンとチーズを温めて食べ、少し横になった彼はボーっと朝を待つことにした。
そもそも自分でもおかしいとは思うのだ、こんな慣れない旅の中で突然慣れない森に入る、入りたいと思うなど。
自分がこんなに直情的に動くのもおかしい僕という人間は面倒くさがりの楽観主義の引きこもり体質だ。
それに加えて『運命』? 普段の僕なら信じないし僕には縁がないことだと思うに決まってる。そんな感じで夜が白みだした頃。
ーーーーーーーーーーーーーーーその時が来た
最初に音だ、鳥の鳴き声も風の鳴る音も、木の葉のこすれる音も消えた
次に森の開けた場所の上の方僕が目を向けている、そこに何もないのに何かがある、来る予感がした。
そうして瞬きした直後、そこの空が裂けた、真っ黒の裂けた穴から小さな何かが落ちていった。
それを見た時、僕は危ないという想いより行かなければという想いしか心に浮かばなかった。
走った 走って 小さな何かは穴の下にあったのだろう池に落ちたことに気付いた、気づけたのなら後は簡単だ。
服を脱ぐ時間も惜しんで僕は池に飛び込んだ、ただの池なのになぜだろうとても澄んでいて小さな何かが見えてきた。
それはその子は女の子だった、身体が泡立った様な感覚を覚えた僕は、必死になって泳いだ。
その子は気を失っているようだった、ようやく辿り着いた僕は彼女の手を取り必死で岸まで泳いだ、人生で一番必死だったといえる僕は泡魔法の事などすっかり忘れてただただ泳いだ、ようやく岸に上がれた僕は彼女の息がある事を確認して、気が抜けたのか、気絶してしまったのだった。