パチパチと何かが弾ける音がする、焚き火だろうか、暖かくてまだ寝ていたいそんな感覚が…一気に覚めた。
『起きた?』
鈴が鳴ったようなきれいな声に目を向けるとそこには先ほどの彼女がいた。
プラチナブロンドの長い髪を後ろで結んで、背中が大きく空いたドレスを着た美しい女の子がそこにいたのだ。
『聞こえてる?』
『結婚してください』
『……?????』
彼はアゲートは全てが鮮やかに見えていた、今までの世界等灰色だった、だが彼女がそこにいるだけでもう尊く見えるほどだ。
意味が分からないが本人もよくわからないだろう、だがそんなものだ、誰かを好きになった時なんて。
『えーと気を失ってた私を助けてくれたのが貴方で良かった?』
『その通りでございます、そして結婚していただけないでしょうか。』
『?????』
彼女は混乱していた、世辞で褒められることはあっても初対面でプロポーズは経験もなかったしヤバイ。
『OK…OKとりあえず私の名前は……ホワイトとでも呼んで貴方は?』
『アゲートと申します、貴方に一目惚れいたしました、結婚を…』
『ストップ!ストップ‼、アゲートね、とりあえず助けてくれてありがとう溺れるところだったみたいだし、後私は結婚してあげられないのごめんなさいね。』
『こちらこそ出会って頂けてありがとうございます……あわわわわ』
『あぁ!おかしくならないで!えぇっと理由があるのよ理由が。』
諫めるのに困ったホワイトはアゲートに温めたお湯を差し出した。
『鞄の鍋とか借りたわよ、ごめんね使っちゃって、貴方の服とかも変えなきゃいけなかったし』
『いや全然 こちらこそありがとうございます……あわわわ』
アゲートは服を変えられた事実に慌てた、ホワイトもそんなアゲートを見てニヤケた。
『とりあえず、簡潔に言うわね、私はこの次元の…というよりこの世界出身の者じゃないのだからあなたと番に成れないわ。』
『そんなことどうだっていいですよ!、私は…』
『二つ目~!私は…うーんまぁ良いか、貴方とアゲートと同じ種族じゃないの。』
『そうですか、それは…文化を学ばせていただかないといけませんね。』
『そうだから、結婚できないんですねぇ…反応薄くない!?』
『あぁ、もちろん貴方が嫌なら、私も諦めます、ただ何でもやりますので、貴方の傍に居させてください。』
『怖いというか重い…重くない?』
アゲートは全てをホワイトに捧げたくなっていた、ホワイトはアゲートの感情に困っていた。
『うーん諦めてもらうには…はぁ見せるしかないか。ちょっとアゲート君、離れてもらっても良い?いや嫌ってないから!泣かないで!そうそれぐらいで良いよ。』
そうしてアゲートが離れると、むんっと彼女が力を入れていった、するとどういう原理だろうか、ホワイトが光り輝いていくではないかそうしてシルエットが膨らんでいったと思えば、羽根ができ尾が生え、口がグワッと大きくなり角が生えてゆくではないか。
光り輝くホワイトだったものの光が落ち着いて消えていく、ホワイトがいた場所に美しい白竜がいるではないか。
『怖がらないでね…私はドラゴン、そう怪物なの、だからあなたとは番えないのよ、わかった?あとごめんね。』
『……………………結婚してください!!』
『なんでぇ!?』
アゲートはここに至って気づいた運命とは彼女だったのだ、だってどんな姿に成ろうともこんなに愛らしい存在などもう見つけることはできないだろう、ホワイトの全てが好きだと思えるのだから!
ファーストコンタクトでここまで思えるのは一目惚れで目が曇っているから?違う‼違うだろう!一秒一分一緒彼女と過ごすごとに好きな気持ちが溢れるように募っていくこんな思いが間違いな訳がない!アゲートはそう感じた。
『あなたが好きだ!どんな姿でも食べられたって良い!振られたって良いけどこの気持ちを知ってほしい!あなたが好きだ結婚してください!』
いっそ清々しいまでの自分勝手な告白をアゲートは強行したが後悔はなかったし嫌われたらこの後の人生捨てるつもりでもいた怖いね。
『食べないよ!‥‥ぅぅぅぅ』
白い鱗に覆われた顔のはずなのにその顔は真っ赤になっているように見えた、そもそもホワイトはここまで強烈な感情をぶつけられたことがなかった平たく言えば耐性がなかったのである。あとドラゴンの自分を選ぶ人という変態にもあったことは無かった。
『…‥‥ィぃけど私ずっとこの次元にはいられないよ?』
『もちろん良いです、あなたのホワイトの傍に少しでもいられるなら僕は後悔しない。』
『結局離れ離れだよ、後悔するかもしれないじゃん』
『もししたとしても幸せな後悔になる事でしょう、ホワイトとの思い出を思い出せるんですから。』
『ぅぅぅぅぅぅう』
ホワイト、いや親に名前を付けられなかった白竜は次元を旅し続ける竜だった、強大すぎる力を抱えたが故に世界を壊さないように定住しないことを選んだ種族でありたまに出会う同族と番ったり、似たような種族と潰しあったり、そんな不毛な種族の一竜が彼女だった。
愛だの何だのは時折読む恋愛小説や吟遊詩人の話で聞くものであり自分には関係のないものだと今まで思っていた、なのにこんな事故の様に愛をぶつけてくる人がいるとは思ってみなかった、困惑、衝撃、そして少しの好奇心がホワイトの心中をぐるぐるしていた。
パチパチと焚き火がシンとした場を囃し立てるかのように鳴り響く
キラキラとした目に気持ちをのせてジッとホワイトを見つめている、そんな目に絆されたのかホワイトはついに答えた。
『わかった…ただしばらく一緒にいて…あげるから…少し考えさせて…。』
ホワイトが選んだのは先延ばしだった、好奇心は抑えられなかったしどうせ1週間もすれば冷めて覚めるだろう、そうも考えていたから。
『あわわわぁっやったぁ! ありがとうホワイト‼ 絶対に幸せにして見せるから!』
アゲートの心は暖かいものと多幸感でいっぱいだった、ホワイトに駆け寄り彼女のおなかのあたりに抱き着き、あれここ竜的には触って良い場所なのか?とかエロいとか考えながらほうずりした。
ホワイトはおなかに触られるくすぐったさと恥ずかしさに身悶えしたがなけなしのプライドか、恥ずかしそうにするだけで動かない様に必死に耐えていた、胸に暖かいものを感じながら。そうしてアゲートとホワイトは運命に出会ったのだった。
その後 アゲートとホワイト(人形態)はニコラス家にトンボ返りしてお礼を言うだけ言って去り
道中で今後どうするか二人で話すこととなった。
『ホワイトはこの世界にずっといれないって言ってたけどどれぐらいで行かなきゃいけないの?』
『うーん、本能で分かるというかだいぶ曖昧なんだけど、そうねぇ10年ちょいぐらいかなぁ』
『そっか…でも君を幸せにして見せるから!たくさん楽しいことしようね!』
『あーまぁ期待してるね ハハハ』
昨日まで平凡なだけの男だったアゲートは愛ある変態へと成り果てた、ホワイトの予想通りすぐに冷めて離れる訳がなく、あらゆることで彼女を幸せに楽しませようとする男がそこにいたのだった。
彼等は、旅の中で愛…を育むよりも先に遊びに遊び、楽しみに楽しんで、笑いに笑った。
路銀が足りなくてご飯に困ったときは、一緒に(ほぼホワイトが)狩りをして腹を満たし、ホワイトが風邪をひいて人形態に角や羽が生えてきたときは、アゲートが悶えながら看病し、旅の途中で一緒に寝ても良いとホワイトが思いだしたり。
そうして一年経った頃、音信不通で流石に心配となったアルバスがそわそわし始めたころに唐突に彼らが帰ってきた。
ゴドリックの谷のダンブルドア家の離れにあるこじんまりとした家、それがアゲートの家だった。
卒業以来、久しぶりの帰郷となったがホワイトへ家を案内できるそれだけで彼は幸せそうに顔を緩ませていた。
家に入る前にアルバスに帰ったと伝えるためのフクロウを飛ばすと5分もしないうちに彼がやってきた。
『アゲートお帰り、家の守りが大きく揺らいでいたから飛んで帰ってきたんじゃが…そちらのお嬢さんは?』
『あぁアルバスおじさんただいま、こちらのお嬢さんはホワイト!僕の奥さん!』
『どうも・・・アゲートの奥さんのホワイトです』
『そうかそうか奥さんか、あわわわわわわ』アルバスは乱心した、甥っ子が強大な生き物を連れてきたと思ったら奥さんと言ったからだ。
落ち着いたアルバスに改めてアゲートが紹介する、そんなアゲートを見ながらそもそもアゲートの表情から旅に出る前と全然違うなと思う、幸せそうだが緩みっぱなしで楽しそうだが何だか腹が立つ、それが惚気まくる夫婦を見た時に感じる時の呆れと気づいたアルバスは次にうれしくなった。
アゲートはアルバスからすると父親の弟の孫、両親が亡くなってしまって身寄りが亡くなったアゲートを家で引き取ったのだった、平凡でもいい幸せに暮らしていてほしい、その思いを抱えて今まで見守ってきたアルバスは、惚気ていようが幸せそうなアゲートを見れて本当にうれしかったのだ、一抹の不安があるとするなら彼女ホワイトは何者なのだろうという想いだけ。
『それでホワイトさんはどういうお方なんじゃろうか。』
『そそそれはですねぇ、はい、ァアゲートどうしよう。』
『彼女は美しい白いドラゴンなんだ、そんな彼女に僕は惚れたんだ!アルバスどうですいい奥さんでしょう!』
アルバスは遠い目をした、アゲートのテンションの高さと人と成れるドラゴンの規格外差に。
『そ・・・そうかアニメ―ガスの方じゃったかな、ドラゴンとは凄まじいですのう』
『いやいや、本物の美しいドラゴンだよ!おじさん!』
『いや、そのすいませんご迷惑をおかけして。』
『いいんじゃよ…ただ…時間を…いただけますかな』
その情報を飲み込むのにアルバスは数分ほど時間を必要としたのだった。
『あーそのドラゴンの姿を見せましょうか?得体のしれない女は怖いですよね。』
『大丈夫です、大丈夫ですよホワイトさん、アゲートが愛の霊薬を食らったかのような顔をしておればともかく…しとる様な…、まぁ唯々あなたを愛しているだけのようですしそれだけで信頼できますのう。』
『ありがとうございます…』
ホワイトは照れて縮こまってしまったがどことなく嬉しそうだった。
『とりあえずしばらくは家にいるよ、おじさんこれお土産のレモンキャンディ―ね二ホンで買ったんだ、それと次はワガドゥーのあるあたりに行ってみようと思うんだ』
『ほほ、そうかそうか楽しんでおいで。』
アルバスは幸せそうに目を細めていた。
そうしてまた月日が流れる。
結婚式もしたしまた旅もした、仕事は行わなかったが金銭も地位もいらない、二人でいる事が彼彼女の生きる理由に成っていた。
国内が何事かでキナ臭くなっても彼彼女にはあまり関係がなかった、そうして1980年、彼女が隣にいなくなった彼が家へと帰ってきたのだ卵を抱き抱えて。
アルバスは思ったなぜ今帰ってきてしまったのか、と。
イギリス魔法界はこの時荒れに荒れていた、当然闇の帝王ヴォルデモートとの戦いのために。
アルバスはゴドリックの谷の離れの家にアゲートが帰っていたことは知っていただが、自分が会いに行けばヴォルデモート陣営にアゲートが目をつけられてしまうのではないかと、そう思い会うことをやめていた。
だがあの夜、ハロウィンの日にセブルスからヴォルデモートがアゲートを狙っていた事を聞いたときには全てが遅かった。
闇の帝王のスパイとして動いていたセブルスは今夜、帝王たちがゴドリックの谷へ向かう事、そしてあなたの…あなたの親族がそこにいる事を知られてしまった、という事が伝えられた。
更に悪い事にアゲートの妻は竜のアニメ―ガスだという話が帝王の耳に入ってしまっていたのだ、それが間違いだろうが関係ないもう一部の死喰い人の耳には探せと命令が告げられてしまっているというのだ。
急ぎゴドリックの谷へと向かった二人、セブルスは念のためリリーの元へ アルバスはアゲートの元へと急いだ、単独行動による危険などどうでもよかった。
そうして辿り着いた家の扉は引き裂かれていた、家の中にはたくさんの足跡と魔法が当たって焦げた匂いがしていた。
『アゲート!声を声を聞かせておくれ!』
涙は出なかった、ただしゃがれた声しかでなかった、ただただただただなにも無かったかのように『おじさん』と聞かせてほしかった。
リビングにはたくさんのアゲートとホワイトの写真が飾ってあった、幸せそうな彼らの笑顔が見える、しんとした静かな部屋のなかで写真の向こう側にだけぬくもりが感じられる気がした。
奥へとすすみ、寝室の扉を開けると…
『あぁ‥‥あぁ…』
クローゼットのまえで座り込んだアゲートがそこにいた。
血のしみ込んだ床の上でアゲートは座っていた、死の呪文ではなく、苦しませる呪文を沢山使われたのだろう、腕はズタズタ足はもう外れかけている、顔の半分は焼け焦げていた、だれがどう見てももう生きてはいないだろう。
血に塗れた彼をアルバスが抱きしめる
どうしてだろうと私の手から いつも いつも零れていく、どうしていつも間違えていつも遅いのだ私は。
『…ぉじさん』
奇跡だろうか、意地だろうか、彼は語った。
『僕…たち‥‥の愛し子…』
『ア…ルディの事…お願い……ごめんね…じさん……ゴメ…ネ…ホ……』
彼が事切れた後、彼の背中のクローゼットから暖かな光が零れていた、そのなかには彼が守った命
アルディだろう卵が光ながらそこにあった。
光が落ち着いて暗闇が戻る頃、小さな赤ん坊がそこにいた泣きながらそこにいた、その子をアルバスは優しく抱き上げた、すまない、すまないと泣きながら。
アルバスはその子を抱きとめながらその場を動くことができなかった、セブルスの守護霊が傍に立つまでずっとずっと。
『ダンブルドア先生、納得できません!なぜハリーはあの家でその子はダンブルドア先生が預かるんですか!その子が良いのならハリーだって守れるはずじゃないですか!』
大きな大きな大男が憤慨しながらアルバスを問い詰める、今しがたハリーをアルバス達と共に親戚の家に届けたハグリッドだったが騎士団メンバーと合流した際に疑問と怒りがこみ上げたのだろう。
『ワシの下なら確かにハリーだけなら守れるかもしれん』
『そうでしょう!ならその子は他の人にお願いしてハリーを守ってあげて下せえ』
『ハグリッドよ、その意見ははもっともじゃ、ただハリーが一番安全なのはあの家、この結論は変わらない、そしてワシが必ず守らなければいけないのはこの子アルディ―なのじゃアルディ―だけはいかなる理由があろうとも他の者の意見は聞けん、申し訳ないがの。』
その言葉はこれまでのアルバス・ダンブルドアからは想像もできないほどはっきりとした否定の言葉だった
。
そうしてアルバスはアルディを養子として引き取った。
ゴドリックの谷から引っ越してイギリスの片田舎の山の畔に人払いの陣を張り
家を建てハウスエルフも雇い、万が一にも見つからない様に家の秘密の守人を自分に定め。
アルディの事を愛して愛された。
父親そっくりの眼と母親譲りの髪、ふとした時に妹のアリアナと重ねてしまうその笑顔、アルバスは自分がいなくなるその時までは必ず守るのだと心に誓う、次こそは間違えないと。
驚きゃ角羽尻尾がポロリと飛び出る系娘、クシャミをすれば炎が漏れる
動物見つめりゃ恐れられて、常識しらずの箱入りドラゴンガール『半竜血の愛し子』アルディの物語は1991年に始まる。