シエスタとノクトがタルブの村に行く為に消費した三日間、ルイズはずっと授業を休んで部屋に閉じこもっていた。
もっとも、食事と入浴の時だけは外に出たが、それも出来る限り他の人に会わぬよう時間を遅らせたりした。
そして、部屋に戻ったらまたベッドに身を預ける。出し尽くした涙がシーツにこびりついているが、気にかける余裕もない。
心の中にぽっかり穴が空いてしまったような感覚。
人形の気分をルイズは味わった。
最初は、『なんでアイツの事を考えなきゃいけないのよ!』と自分に逆切れしてきたが、ノクトが寝ていた藁の束や、未だに倒れている本棚を見ると、寂しくなってしまう。
気分転換に何をしても、やっぱりノクトの存在を考えてしまうのだ。
(·······私はノクトにどうして欲しかったんだろ·······)
口ではああ言ったが、それは望んでいなかったのではないか?
当たり前だ。
ノクトに死んでほしくないに決まっている。
じゃあなんで言っちゃったんだろう?
「·······っ!!」
やるせなさが自分を支配していき、ギュッと枕を胸元で抱きしめる。
今更何を考えたってもうノクトは戻ってこない。自分が引き離してしまったのだから。今頃、あのメイドと仲良く幸せに暮らしているのだろう。
幸せに·······暮らしている?
(そんなの·······やだッ!!)
今は怒りに身を任していない。落ち着きを取り戻した分、冷静に考えた結果導き出された結論。
やっぱり、隣にノクトが居てほしい。
理由とか、理屈とか、そんなの関係ない。
ただ居てほしいのだ。
今この場に、目の前に居てほしい。
決して叶う事のできない願いを少女は願う。
神様に、お祈りするかのように。
ぽたぽた、と。水滴が落ちるような音が聞こえた。とうの昔に出し尽くしたはずの涙腺から、再び透明な雫が落ちていた。
しばらくすると、
コンコンと扉を叩く音がした。
(ノクト·······ッ!?)
正常に働かない思考は、最高の客が来る事を望む。次第に景色が、思考がクリアになってくる。
もしノクトだったら嬉しい! 凄く嬉しい!
嬉しいけど·······許さない。
(一発ぶん殴ってやるんだから·······!)
しかし、世の中はそううまくできていない。
いつまで経っても返事をしないルイズに我慢しきれなかったのか、がちゃりと扉が開いた。
ぐすっ、とルイズは鼻をすすり、目頭に溜まった涙を手で拭き取る。
確認をとらずに叫んでいた。
「バカ! ノクトの·······あ」
「ごめんなさいね、ノクトじゃなくて」
扉の所から現れたのはキュルケだった。
ルイズの思い違いに、キュルケはニヤリと笑う。
「な、何しにきたのよ!」
恥ずかしくなったのか、ルイズは顔を赤くしてシーツに潜り込んだ。どうあってもこの場から離れてたくないという意志表示を示す。
はぁ、とキュルケはため息を吐くと、ベッドの目の前まで歩み寄り、がばっと毛布をはいだ。
ネグリジェ姿のルイズが、キッとキュルケを睨む。なによ、と言わんばかりの眼差しでもある。
「あなたが三日も休んでいるから、見にきてあげたんじゃないの」
キュルケにとっては予想外であったのだ。まさかメイドが食事を持ってきたぐらいで、ルイズがノクトを追い出すとは思わなかったのだ。
さすがのキュルケもこれには良心が痛む。
キュルケは本棚が倒れているのをルイズの仕業だと思うと、正直呆れた。ここまでするのか、と。
「で、どーすんの? 使い魔追い出しちゃって·······」
「アンタに関係ないじゃない」
毅然とした態度に、キュルケは冷たい視線を送る。よく見ると、ベッドにはいくつものしみがついている。
どうやら相当の量の涙を流したようだ。
(全く·······)
はぁ、とキュルケは呆れながらも口を開いた。
「あなたって、バカで嫉妬深くて、高慢ちきなのは知っていたけど、そこまで冷たいと思わなかったわ。仲良く食事してたぐらい·······別にいいじゃないの」
「それだけじゃないもん。よりによって、私のベッドで·······」
ルイズは小さく呟いた。
これにはキュルケも驚きを隠せない。どうやら予想外であったようだ。
「あらま、抱き合ってたの?」
違うもん、押し倒してたもん·······と悲しげにルイズは頷く。
さすがにそれはショックに違いない。
ノクトって実は積極的なのね、とキュルケは関心した。といっても本当はシエスタがした上、演技であったのだが、キュルケは知る由がない。
「そりゃ、好きな男が他の女と自分のベッドの上で抱き合ってたらショックよねー」
「好きなんかじゃないわ! あんな奴! ただ、貴族のベッドを·······」
「そんなの言い訳でしょ? 好きだから、追い出すほど怒ったんでしょ」
「ぐっ!!」
キュルケの正論に言葉が詰まる。キュルケの言っている事は正しい。正しいのだが、認めたくないのだ。
「しょうがないじゃないの。あなた、どうせ何もさせてあげなかったんでしょ。そりゃ他の子といちゃつきたくもなるってものよ」
「·······ッ!!」
ルイズは黙ってしまった。キュルケはぐいっとルイズの顔をこちらに持ってきた。
「ラ・ヴァリエール、あなたがここで流した涙は一体なんなの? 悔しかったんじゃないの? 辛かったんじゃないの?」
キュルケは続ける。
「あなたはもう少し素直になるべきよ。殴ったり、蹴ったり、追い出したり·······それを今後悔してどうするのよ?」
キュルケの言ってる事は正しい。自分の心の中を見透かしているかのように正しいのだ。
「前に進みなさい。一度躓いたからってなに諦めてるのよ? いい? 躓いたってことは、あなたは今まで歩いて来たのよ?」
キュルケの迷いない瞳から逃れようと顔を逸らす。しかし、キュルケは手を使って、ルイズの顔を再び目の前へ戻す。
「誰だっていつでも上手くいくわけないじゃないの。でもね、そこで立ち止まっちゃダメよ。そこで何が悪かったか反省してまた立ち上がるんでしょ? 起きてもう一回挑戦すればいいじゃないッ!!」
ルイズは不意に青年の顔を思い出す。
もし、また会えるとしたら?
また話せるチャンスを得たら?
そのためにはどうすればいい?
ここでベッドに引きこもって過ごしていたらできるのか?
違う。
ルイズは断言する。
自分から動かなくてはいけないのだ。いつまでもうじうじしているわけにはいけないのだ。
そうだ。
ベッドに押し倒していたのはメイドであった。ノクトがそれを望んでいたとは限らないのだ。
まだ、ルイズにもチャンスがある。まだ、終わったわけではない。キュルケの言った通り、また立ち上がればいいのだ。
自然と、気持ちが沸いてくる。嬉しさが顔から零れてくる。どんなに違う表情に変えようと思っても、変えられない。
そんな自分に言い聞かせる。
(べ、別に好きだからというわけじゃないんだから! ただ、使い魔としてまだ居てほしいんだから。うん、そうに違いないんだから!)
·······やっぱり素直になれないのはちょっと問題かもしれない。
キュルケは立ち上がり、告げる。
「あたしはこれからノクトの所に行く。あのメイドに取られたまんまってのは嫌だからね。それで? あなたはどうするの?」
「·······」
少女は力強く頷く。
キュルケは笑った。ようやく見せた、ごくごく普通の笑みを。
△▼△▼△▼△
「ノクトさん·······?」
シエスタがノクトの視界にひょっこりと現れる。呆然としているノクトを不安に思った様子であった。
「ん·······ああ、悪い」
「ひょっとして、この字が読めるんですか?」
シエスタは台座に書かれてある字を指差す。
そりゃあ自分はこっちの文字は読めないし、こっちの人は自分達の世界の言葉が読めるはずないよな、とノクトは納得する。
「ん·······まぁ、な」
「す、凄い! 異国の文字で誰も読めないのに、なんて書いてあるんですか!?」
「えーっと、『ルシス王国王の剣“アルマ・マスキュリナム”、異界ニ眠ル』·······って書いてある」
へぇ~、とシエスタは台座に書かれた文字を覗き込む。
「ルシス王国って、一体どこにあるんでしょう?」
「さ、さあな·······?」
ノクトは敢えて知らんぷりをした。
シエスタは気付いていない。
ノクトの本名にもなっているルシスのことを。ノクティス・ルシス・チェラムと前に名乗ったのだが、どうやら忘れているようだ。
自分が愛称であるノクトという名で呼ぶように言ったおかげで、ルシスの関係を悟られなかった。
「なあシエスタ? 他に何か遺品とかないのか?」
「あ、わかりません·······ここには『竜の羽衣』しかありませんからでも多分家にもないです·······」
ごめんなさい、とぺこり謝るシエスタ。ノクトはここに置かれている代物を見上げた。
「これ、『竜の羽衣』って言われてるのか?」
「あ、はい·······ってもしかしてちゃんとした名前を知っているのですか!?」
シエスタが目をキラキラ輝かせて迫ってくる。ノクトは困ったように頭を掻くと、とりあえず答える。
「えーっと、多分これ、戦闘機だな」
「·······せんとうき?」
「ああ、俺がこの前言ってた『飛行機』だ」
「この前ノクトさんが言っていた、ひこうき?」
ああ、とノクトは頷いた。
ニフルハイム帝国の揚陸艇とは違って、動翼が必要となる乗り物だ。しかし、見た限りだとこれは随分と古いものだ。今のルシスでは最新技術を取り入れているため、翼を必要としていない。
おそらくは昔のルシス王国機動艦隊の奴だったものだろう。
とまあ、動くかどうかもわからない乗り物を見たってしょうがない。
その日の夜、ノクトはシエスタの家にお邪魔する事になった。
年頃の女の子が男を連れて家に帰ってきた、それだけで騒動になるのだが、シエスタが冗談で、
「私の夫です」
と言ってしまった。
なので、ノクトはシエスタの父親と命懸けの鬼ごっこを一時間ばかし繰り広げた。
寿命が一年は縮むという珍しい体験をやり過ごしたノクトは、無事家族に受け入れられた。正直、これが試練だとしても全くおかしくはないというのも怖い。
シエスタ達の家族は大家族であり、八人兄弟の長女である。
つまり、ここにいる人達はみんなノクトの国の王の剣の子孫になるのだ。
家族に囲まれたシエスタは、幸せそうで、楽しそうであった。
それを見てノクトは笑う。ノクトにはもうない、家族の温もり。それを擬似体験しているようで、ノクトはその日幸せな一日を過ごした。
△▼△▼△▼△
「どうしたのですかノクトさん?」
「ん? ちょっと、な」
翌日の朝。
あの綺麗な草原の上に散歩しにいこうと提案されたノクトは、シエスタと共に再びあの絶景が見える大草原の所に来ていた。
ノクトがぼーっと突っ立っていると、後ろからシエスタに声をかけられた。いつもの優しい声でノクトに話しかけてくる。
ノクトは黙って空を見ていた。
(シエスタのひいじいさんは、この空を飛んでいたのか)
ハルケギニア上空を眺め、あの古い戦闘機でこの異世界の空を飛んでいたのか、と思うとなんとも言えない気持ちになる。
シエスタは、そんなノクトに首を傾げながらも続けた。
「ひいおじいちゃんの文字が読める人と出会ったなんて、なんだか運命的な物を感じちゃいました。父も·······よかったらこの村に住んでくれないかって」
「え?」
「そしたら私も·······そ、その、ご奉公をやめて、一緒に帰ってくればいいって」
「·······そう、か」
そう言われて返答に困るノクト
実を言うと、嬉しかった。
そう言ってくれて。
シエスタは固く決断したのにも関わらず、その意志は揺らいでしまう。それだけ彼女の言葉には力がある。シエスタはちらっとノクトを見て、手の指をいじった。
そして諦めるように一言。
「·······でも、いいです。やっぱり、無理みたいですね。ノクトさんは·······どこか飛び立ってしまいそうです」
「·······」
その言葉を聞き、ノクトは隠していた真実を告げる。
「なあ、シエスタ」
はい? と聞き返すシエスタにノクトは告げる。
「俺や、お前のひいじいさんは·······ここの世界の人間じゃないんだ」
真実を打ち明かさなければ、きっとシエスタは納得してくれない。
だから告げる。
告げなければならない。
こんな自分を好きになってしまった人の為に。
「え?」
とシエスタは確認を求めてきた。しかし、ノクトはただシエスタを見つめるのみ。
「またからかってるんですか? 嫌なら······私が嫌いなら、そうはっきり言ってくれてもいいのですよ?」
シエスタは口を尖らせた。
だがノクトは首を横に振った。
「信じてくれねぇのはわかってる·······けど、本当なんだ」
ノクトは真剣にじっとシエスタを見つめる。真面目に、信じてもらう為に真正面からシエスタを見る。
シエスタはその目を見て、ノクトが本当に冗談を言っていないことを悟る。
「·······そう、なんですね·······」
本当に冗談ではないんだ、とシエスタは悟った。
(だけど·······)
そう言われてもどうしようもない。
異世界の人間であろうとも、好きになってしまったのだ。
しかし、おそらくこの青年は、
確実に、
絶対に、
自分の告白を、断ってしまうだろう。
「それで·······そこに帰るおつもりなのですか? ノクトさんは?」
「·······いや」
そう言われてノクトは俯いてしまう。
帰りたくない、って言えば嘘になる。けど、自分はもう死んだ身。その世界では生きることを許されないのだ。
一度死んでしまった人間は生き返らない。
それは、どの世界でも同じ。
ノクトの場合は異世界転生。よく物語で使われるお決まり展開の一つに過ぎない。そして、異世界転生した人間、というか登場人物は元の世界に帰ることはほとんどない。
その世界で、スローライフするのがお決まりの展開だ。
ノクトはそれに該当する。
こっちの世界に転生してしまった以上、元の世界に帰るわけにはいかないのだ。
だからノクトは悲しげな表情を浮かべてこう言う。
「俺に帰る場所なんてない」
「·······え?」
「俺はもう·······こっちの世界の人間だ」
そう言ってノクトは乾いた笑みを浮かべる。
シエスタに安心してほしいと思ったからだろう。どこかへ飛んでいってしまうと、先程言っていたから、自分はどこにも行かないということをアピールした。
これでシエスタも喜んでくれる、と思ったノクトだったが、
「そんな悲しいこと言わないでくださいッ!!」
「·······え?」
急に怒鳴られたノクトは唖然としてシエスタを見る。シエスタはノクトの目を真っ直ぐ見つめて、
「帰る場所がないだなんて、そんな悲しいこと言わないでください·······おそらくですけど、多分、絶対に、ノクトさんが帰ってきてくれることを願っている人達がいるはずですッ!!」
「ッ!?」
シエスタの力説に、ノクトは驚愕の表情を浮かべる。しかし、確かにシエスタの言う通りなのかもしれない。
(グラディオ、イグニス、プロンプト·······)
仲間達の顔を思い出してまた俯くノクト。
しばらく下を向いたままだったノクトだったが、やがて首を横に振り、
「ああ、確かに、こりゃ駄目だわ、やばかった」
そして両手で自分の両頬をバチンと叩くと、
「っし、オーケー! ありがとなシエスタ。そう言ってくれて」
「·······はい!」
シエスタは小さく微笑んだ。
わがままなら幾らでも言える。攻める手立てはまだ色々残っている。
しかし、それらは捨てた。
ノクトがそれを望んでいないのなら、それはきっとよくない事なのだと。
しかし、もちろん諦めない。失礼な言い方だが、もしかしたらノクトは帰れないかもしれない。その時自分を選んでくれるように頑張ればいいのだ。
だけど今はその時ではない。
シエスタは、元気を取り戻したノクトの手を取り、
割と、本気で。
「私、諦めませんから·······だからノクトさんも諦めないでくださいッ!!」
力強く、シエスタはそう言った。
たとえ帰ることになろうとも、シエスタはノクトのことを想い続ける。そう心に決めたシエスタは、ノクトを元気付けるように、温かい手でノクトの両手を握った。
そんなシエスタに、ノクトは感謝する。
「ああ、どうもな、シエスタ」
△▼△▼△▼△
「それじゃあ先に行っててください。朝ごはんができてるので」
「シエスタは?」
「私は·······もうちょっとこの景色を眺めてます」
そっかと、言い残して去っていった。
ノクトが見えなくなる所まで行くと、シエスタは体を小さくして座り込んだ。
「フラれちゃったなあ·······」
ぽつりと呟く。いつの間にか、涙が目頭に溜まっていた。
「でも·······私、まだ諦めませんからね、ノクトさん!!」
つー、と涙が頬を伝う。
その涙を拭って、ノクトと同じように自分も両手でバチンと両頬を叩くと
「よーし、頑張ろうッ!!」
するとシエスタの視界に、タバサの使い魔であるシルフィードが目に入った。
「あれは·······ッ!!」
おそらく、あそこにはルイズがいるのであろう。ノクトを連れ戻しにきたようだ。
シエスタはそれを見て、誰もいないこの場所で一人話しかけた。
「今日まで·······私が貰い過ぎちゃったから·······今回は譲ってあげます」
シエスタは何か吹っ切れたように、大草原の上で笑顔を浮かべた。
△▼△▼△▼△
急に目の前に風が吹いたと思ったら、聞き覚えのある声が飛んできた。
「ノクト!」
懐かしい声がした。見るとシルフィードが飛んでいた。
そこには、ルイズとキュルケとタバサが乗っている。どうやらノクトを連れ戻しにきたと見て間違いなかった。
地面に降りてくると、ルイズが真っ先にノクトの元へと走ってくる。ノクトは四日ぶりとは思えない普段の口調で迎えた。
「おお、ルイズか」
「おお、ルイズか·······じゃないでしょッ!!」
そう言って手が飛び出そうになる。
しかし、寸での所で止まった。
防御の体勢になっていたノクトも、ルイズからのお仕置きが来ないことに疑問を抱き、首を傾げている。
頬を赤くして、ツン、とそっぽを向く。
そんな仕草をするルイズをからかうように、ノクトは小さく笑った。
「で? 俺はクビになったんじゃなかったか?」
「う·······そ、そうは言ったけど、そ、その、や、やっぱり、その、ま、また戻ってきてほしい、っていうか·······ッ!!」
言葉を詰まらせるルイズに一緒についてきたキュルケは額に手を当ててため息をついている。その隣では、やっぱりいつも通りのタバサが本を読んでいた。
ノクトは、そんなルイズにこう告げる。
「人様を勝手にクビにしておいて、また戻ってきて下さいとかいうならもう少しそれなりの心構えが必要じゃねぇの?」
「じゃ、じゃあどうすればいいのよ」
ノクトは頭を傾げ、うーんと唸る。
そしてニヤッと悪い笑みを浮かべて、
「使い魔のノクティス様、わたくしルイズが全て悪うございました。この通り、反省しておりますので、再びわたくしに仕えてくれないでしょうか·······とか?」
すらすらと文字を並べて言ったノクトは、この手に関してならば色々あって強いのだ。
なッ!? とルイズは開いた口が塞がらない。
そんな言葉、絶対に言えるわけがない。
(ダ、ダメよ私·······ここでなんとかしなきゃメイドに負けてしまう。それだけは絶対に嫌!)
今回だけ、今回だけなんだからと自分に言い聞かせて小さな声で言った。
「つ、使い魔の、ノ、ノクティス様·······わ、わたくしルイズが全て悪うございました。こ、この通り、反省しておりますので、ふ、再びわたくしに仕えてくれない、でしょうか?」
「やだ」
笑って断った次の瞬間、拳が飛んできていた。
意識せずに体が動くとはこの事を言うのだろう。油断していなかったノクトはあぶねッ!? と顔を横に傾けて躱したが、ルイズの拳骨は標的を捉えるまで止まることを知らない。
「やれやれ、やっぱりルイズには無理なのかしらね」
「·······自業自得·······」
「ア、アアア、アンタって人はぁぁぁぁぁあ!」
「ちょ、落ち着けってッ!? ただの冗談だってぇぇぇえッ!!」
ノクトは再び鬼ごっこを体験するのであった。
結局、ルイズに捕まってボコボコにされたノクトは、半ば強制的に使い魔としての職を再び手に入れて学院に戻る事にした。
シエスタはこのまま休みを貰っていたので、村に居座った。
そしてその道中·······
アルビオン艦隊はトリステイン艦隊を攻撃し、タルブ村を占領したのであった。