ゼロの王子様   作:織姫ミグル

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第45章

 

 

(·······違う)

 

 

ノクトはそう断言した。

 

自分はアンリエッタに覚悟しろと言ったが、それは正しくない。アンリエッタに現実を見せるのは自分ではないと、ノクトは気付いたのだ。

 

何が正しいのか、何が間違いなのかはわからない。

 

それでも、それでもノクトは前へと進む。

 

その判断を任せるため。

その決め手を任せるため。

 

剣を握る。

 

迫り来る巨大な水の竜巻に怯えもせずに。

 

それは、

 

主を守る使い魔としてなのかもしれない。

 

あるいは、大切な者を守る人間としてなのかもしれない。はたまたは、アンリエッタを救う救世主としてのかもしれない。

 

しかし、元を辿れば答えなどたった一つだけである。

 

 

道を作ってあげる。

 

 

それだけだ。

 

それ以上考えるのがめんどくさいからか、ノクトは叫ぶ。

 

 

「後はお前の仕事だルイズ! お前自身の手で、アイツらを救ってやれ!」

 

 

 

△▼△▼△▼△ 

 

 

 

ルイズの体内で何かが終わりを告げたと同時、瞑っていた瞼をゆっくりと開いた。

 

開けた視界の先にノクトがいる。目の前の巨大な竜巻に立ち向かっていた。不思議な事に、ルイズ本人は焦る事なく冷静でいられた。

  

なぜなら、あのノクトなら守ってくれるから。そう、思っていたからである。

  

バシャーン! と水の竜巻がノクトのデルフリンガーが刀身に触れた瞬間、四方に弾けて滝のように降り注いだ。

 

その姿に、ルイズは違和感を覚えた。いつもは守ってくれるそれ。しかし、今回はそのような感じを与えてくれない。

 

まるで、自分が歩く道の障害物をどかしたかのように、

 

この先は自分に任されたかのように感じた。

 

 

「後はお前の仕事だルイズ! お前自身の手で、アイツらを救ってやれ!」

 

 

その感触は正しかった。今回は使い魔ではなく、主の力で救え、と。

 

実を言うと、ルイズもわからなかった。

 

本当は自分が行っているのが間違いで、アンリエッタを行かせるのが正しいのであるかもしれない。

 

しかし、今のノクトの発言がルイズを後押しする。

 

そうだ。アンリエッタが去るという事はもう会えなくなるのだ。

 

自分の国の女王。

 

幼い頃を共に過ごしてきた親友。

 

そして、

 

たとえ自分が何を失ったとしても守る、大切な、かけがえのない人。

 

それは、アンリエッタがウェールズへの恋と比べたらちっぽけな理由である。だが、それがなんだというのだ。

 

たった一つの理由があれば充分ではないのか?

 

それだけで相手と真っ正面から戦う青年を知り、憧れていたというなら、同じように振る舞ってもいいのではないのか?

  

その青年が自分に託してくれた。

 

その青年が自分のために道を作ってくれた。

 

ルイズは、ようやく決心がつく。何が正しくて、何が間違いなのかなんて考えなくていい。

 

自分が信じた道を歩く。

 

いいではないか、憧れた行為を自分がやったとしても。

 

最後に皆が笑って暮らせる世界を目指して、

 

ルイズは魔法を放つ。

 

虚無の魔法、『ディスペル・マジック』を。

 

 

瞬間、ウェールズが崩れた。

 

 

 

△▼△▼△▼△ 

 

 

 

呆気ない幕切れとはこの事を言うのかもしれない。

 

防ぐ術がない虚無の魔法をウェールズは身に浴びて、そのまま倒れ込む。一方のアンリエッタも精神力が底を尽きたのか、被さるように倒れ込んだ。

 

 

「姫様!」

 

 

呆然としていたルイズが慌てて駆け寄った。

 

一方、ノクトの方も力尽きたように地面に倒れ込んだ。相当な無理な戦いをしたのだろう。激しい戦闘に、傷だらけの体。もはや起き上がる体力すら残っていないのかもしれない。

 

ノクトはそのまま地面に倒れたままでいたが、近くにシルフィードが降り立ち、ノクトを咥えて自分の背中に乗せて上げる。

 

 

「くそッ!! 今日のところはここまでにしておくわッ!!」

 

 

そういうとフーケは口笛を吹いて、ずっとシルフィードを追いかけていたドラゴンの背中に跨がり、空高く飛ぶ。

 

 

「ちょ、待ちなさ─────ッ!!」

 

 

キュルケがそう叫ぶも、タバサが自分の身長よりも高い杖でそれを制止し、無言のまま首を橫に振る。これ以上の戦いは無意味だと判断したのだろう。命を大事にしているタバサはガンガンと突っ込むタイプのキュルケの足を止めさせる。

 

そしてそのまま·······。

 

フーケが跨がったドラゴンは地平線の彼方に消えていった。

 

 

 

△▼△▼△▼△ 

 

 

 

ノクトは気がつくと、シルフィードの背中に乗せられていた。

 

途切れ途切れの記憶は、あまり当にならない。

 

断片的に残っているといえばウェールズとアンリエッタの放った魔法をデルフリンガーで吸収し斬り込んだ後倒れたこと、ルイズ達が何やら叫んで駆け寄ったこと、彼女らがフーケと敵対していたこと。

 

そして今に至る。

 

たったそれだけでは、意味がわからない。

 

 

(いったい·······?)

 

 

何があったのだろうと、ぼんやりとしている頭をゆっくりと起き上がらせる。

 

 

『おや、おい嬢ちゃん。起きたみたいだぜ』

 

「ノクトッ!!」

 

 

背中からデルフの声が聞こえてきたかと思えば、突然耳元で叫ばれ、驚き、細目だったのを見開く。横には今まで自分を看病していたのだろうか、ルイズがいた。

 

周りにはタバサやキュルケ、アンリエッタ。

 

そして、

 

ノクトと同じく横たわっているウェールズ。

 

 

「いッ·······っ~ッ!?」

 

「まだ怪我が治ってないんだから·······安静にしてて」

 

 

とりあえず事情を聞こうと今度は体を起き上がらせようとしたが、身体中から痛みが襲いかかって来た。見ると、不器用ながらも自分の体には包帯らしきものが巻かれていた。

 

ルイズの目頭から水晶のような粒が溜まっていく。

 

自分を心配してくれたのだろう。今までは魔法でどんな怪我も治してきたのかもしれないが、今回は違う。もしかしたら死んでしまうかもしれないノクトに、つきっきりで看ていたのだろう。その心配が安心へと変わり、気が緩んだからに違いない。

 

もっとも、彼女の性格からは絶対にそんなことは言えないが。

 

 

「あー、えっと。悪いな、心配かけちまったみたいで」

 

「え? あ、へ? い、いや·······べ、別にアンタなんか心配する、わ、わわわ、わけないじゃない! そ、そうよ。これはただ単に、あ、アンタが死んじゃったらこう、迷惑というかなんというか·······と、とにかくそういうんじゃないんだから!!」

 

「·······」

 

 

人はそれを心配というんじゃないだろうか、とノクトは決して口に出せないツッコミをした。

 

風が、気持ちいい。

 

ノクトは横にいるルイズに何があったのか訊ねた。

 

 

「なぁ、俺がぶっ倒れてから何があったんだ?」

 

 

溜まった涙を腕で拭うと、ルイズは答える。

 

 

「フーケは連れてきていたドラゴンに乗って逃げたわ·······後ちょっとまで追い詰めちゃったんだけどね」

 

「そっか·······んで、今俺達はどこに?」

 

「えっと、行けばわかるわ」

 

「?」

 

 

何故か行き先を口にしないルイズ。心なしか、視線も僅かばかしノクトから逸れる。そんな言動にノクトは疑問を持つが、何か事情があるんだなと察して黙ることにした。

 

 

 

△▼△▼△▼△ 

 

 

 

目的地、ラグドリアンの湖にたどり着いたのは意外と早かった。

 

昨日ないし一昨日に訪れたこともあったので、ノクトはすぐにそこが何処であるか気がついた。

 

 

「ここで、何をするんだ?」

 

 

先ほどは聞けなかった理由、目的地にたどり着いたら聞けるものだと思っていた。

 

と、突然ウェールズとアンリエッタがシルフィードから降りた。

 

ウェールズは怪我を負っているのだろうか、アンリエッタに肩を預ける形でゆったりとしたテンポで前へと進んでいく。

 

 

「ウェールズ様が、生き返ったのよ」

 

 

突然のルイズが口を開き、は? と思わず口に出す。

 

そして言われて気付く。確かにウェールズが歩いているのはおかしいと。ルイズの魔法でウェールズが崩れたのはこの目ではっきしと見た。

 

あれはアンドバリの指輪の効力を消す魔法ではなかったのだろうか。

 

偽りの命が失われた今、ウェールズは再び死人と化しているはずだが·······

 

 

「どういう────ッ?」

 

「わからないわ。多分偶然と言えると思うけど·······とにかくウェールズ様は生き返ったのよ。でも、以前受けた傷も蘇ってもうすぐ·······」

 

 

そのあとは喋れなかった。顔を伏せ、やり切れない思いで体が震える。この前の傷とは、ワルドのだろう。致命傷となった傷故にそう永くは生きていられない。

 

 

(なるほどな、だからみんな黙っていたのか)

 

 

いくらアンリエッタとウェールズが先程まで敵であったとはいえ、戦いが終わればこの国の女王とその愛してた人。

 

とてもじゃないが戦いに勝利した気分になれないし、今回の件について責めることはできない。

 

タバサはどこからか取り出した本を読み、キュルケは寝転がっている。そんな様子を見て、ノクトは幾分か考えた後、傷ついたその体に最後の鞭をいれる。

 

 

「ノクト!?」

 

 

突然立ち上がろうとしたノクトにルイズは驚く。ルイズの声に二人が振り返る。タバサだけがすぐに本へと目を戻した。

 

 

「アイツには·······アンリエッタ姫にはまだやるべきことがあるからな」

 

 

そいつを確かめに行くのさ、と付け加えて、シルフィードから降りた。といっても、身体中に傷と打撲しているノクトの足はふらついている。

 

まだ応急処置しかしていないその体は悲鳴をあげている。

 

しかし、それでもノクトは足を進めた。

 

最後の仕事を果たしにいくかのように。

 

と、そんな青年の腕を少女が自分の肩へまわす。

 

 

「そんな体で一人歩こうとするなんてバカじゃないの·······?」

 

「·······悪ぃな、付き合ってくれて·······」

 

 

感謝する青年の言葉に、少女は頬を赤くする。

 

 

「ア、アンタのためじゃないのよ? 私はただ姫様が心配だからついていくだけなんだから!」

 

「あーはいはい」

 

 

わーってるよ、と青年は投げやりに答えた。

 

 

 

△▼△▼△▼△ 

 

 

 

「アンリエッタ·······誓ってほしいことがあるんだ」

 

「·······何を、誓えというのでしょう?」

 

 

ウェールズは声を出すことすらも難しい状態の中、愛するアンリエッタ姫に向かってこう話しかける。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「·······え?」

 

「その言葉が聞きたい。このラグドリアンの湖畔で。水の精霊を前にして、君のその誓約が聞きたい」

 

「なッ!? 一体何を·······ッ!?」

 

 

おっしゃるのですか!? とアンリエッタは思わず聞き返してしまった。

 

ウェールズの命が後僅かというのもわかっている。

 

生気は失われていつ死んでもおかしくない。

 

おかしくないのだが、

 

もう一度聞いてしまった。

 

聞き間違いであってほしいと。

 

しかし、言い間違いでも聞き間違いでもなかったようだ。

 

 

「僕はもう死んだ身だ。だからもう、この世にはいてはいけない存在なんだ。だからこそ、君には僕のことを忘れてほしい。君のために、君が幸せになるために、僕のことを忘れてほしい」

 

 

ウェールズは再び同じ言葉を口にする。それが彼自身の願いであっても、アンリエッタは首を縦に振ることはできない。

 

 

「無理ですそんなの·······わたくしの本心ではないのを誓えるわけがないじゃないッ!!」

 

 

溜まりに溜まった涙が零れそうになる。しかし、耐える。この時間を、この大切な時間を無駄にしないためにも·······

 

 

「お願いだアンリエッタ。君が頷いてくれないと一生不幸になるだろう·······それでいいのか?」

 

「そんなの·······いいわけないじゃない」

 

 

当然だ。愛する人を不幸にするなんて出来るわけがない。だけど、だからといって誓いたくもない。自分が本心ではない、すなわち嘘を誓うことなんて無理だ。

 

 

「お願いだ·······僕はもう永くはいられない·······僕が生きている間に·······」

 

「なら、誓ってください。わたくしを愛すると·······それを誓ってくださるなら、わたくしも誓いますわ」

 

「·······あぁ、誓うよ」

 

 

その言葉を聞き、アンリエッタは目を瞑る。

 

自分の悲しげな顔を、ウェールズに見せたくないからだ。

 

 

「·······誓います。ウェールズ様を忘れ、そして他の誰かを愛することを·······ここ、に、誓い、ます」

 

「·······ありがとう·······」

 

 

ウェールズは満足げな表情で静かに目を閉じる。それに合わせるかのように、アンリエッタの目がゆっくりと開く。

 

その目には涙が溜まっていた。

 

苦しく、辛い、本当なら誓いたくもない誓いをアンリエッタは涙ながら誓うと言った。

 

 

「さぁ、あなたの番ですわ。誓ってください」

 

「あぁ、僕を水辺へと運んでくれないか?」

 

 

アンリエッタは頷き、さらに前へと進む。目の前の景色が開けてくる。

 

もう、朝であった。

 

このハルゲキニアの中でも最上位に入るだろう美しい光景を背景に、アンリエッタは口を開く。

 

 

「さぁ、おっしゃって。わたくしを愛すると。この一瞬、この一瞬だけを永久に抱きますわ。たとえなんとおっしゃてもわたくしはそうしますわ」

 

「·······」

 

 

だが、返事はなかった。

 

ウェールズは、

 

勝ち誇っているかのように、

 

満足したかのように、

 

眠っているかのように、

 

目を閉ざしたまま、微笑んでいた。

 

 

「·······ウェールズ、様?」

 

 

体を揺らす。

しかし、応えはない。

 

ウェールズがここまで生き続けたのは奇跡と言っても過言ではない。しかし、どうしてこんな重要なところで終わってしまうのだろうか?

 

今までの思い出が頭に浮かび、心の奥底へと放り投げられる。

 

再びウェールズと出会えるようなことは、

 

絶対に、ない。

 

 

「意地悪·······」

 

 

アンリエッタはぽつりと呟く。

 

 

「最後の最後まで·······誓いの言葉を·······口にしてくれないんだから·······」

 

 

アンリエッタはウェールズの亡骸を水に横たえた。

 

そして、小さく杖を振り呪文を唱える。湖の水が動き、動かなくなったウェールズの身体は湖水に運ばれ、沖へと沈んでいく。

 

湖の水は綺麗で、沈んでいくウェールズの亡骸がまだはっきりと見える。

 

それを見たアンリエッタは、目を閉じ、その瞼から涙が一筋垂れ、頬を伝った。

 

 

 

△▼△▼△▼△ 

 

 

 

「それで、アンタはどうするんだ?」

 

 

不意に声をかけられ思わず振り返る。 

 

そこには、ノクトとルイズがいた。

 

ルイズの肩にノクトが体を預けるその姿に、自分とウェールズの姿が重なる。だけど、彼らはお互いを失うことはない。今もこうして生き続けているのだから。

 

そんな二人に、アンリエッタは訊ねた。

 

 

「わたくしは·······どうすればいいのでしょう? この過ちをどうすれば赦されるのでしょう?」

 

 

今回の騒動で、何人もの人間が死に、傷つけてしまった。その罪の深さは、おそらくとてつもなく深いはずだ。

 

しかし、

 

 

「そんなことは聞いてねぇよ」

 

 

青年はそんなことなど気にしてはいなかった。

 

え? と目を丸くするアンリエッタに、ノクトは更に口を開く。

 

 

「アンタはこれからどうするんだ?」

 

 

その青年の言葉に、時間が止まったように感じられた。

 

 

「たとえ死んだとしても、あいつらはきっとアンタのことを恨んでない。今回の騒動の原因がアンタだとわかったとしても、今アンタが生きていることを、前に向かって進んでいることを知ってさえいれば、それで充分なはずだ」

 

 

彼らは命懸けでアンリエッタを連れ戻そうとしたのだから。辛ければ逃げ出せるのに。苦しければ逃げ出せるのに。誰も責めないその行為すら彼らは捨てたのだ。

 

そんな彼らがアンリエッタを恨むわけがない。

 

 

「残った人間達も、アンタにその傷を押し付けて満足するような人間じゃないはずだろ?」

 

 

ぽつりと、アンリエッタの瞳から涙が零れた。

 

 

「アンタがウェールズを大切にしたい気持ちってのは、この国の人間がアンタに抱いている気持ちと同じくらいなんだよ」

 

 

そう言ってルイズを見る。

先程の一連の流れを見ていたルイズは、すでに子供のように泣きじゃくっている。しかし、それもアンリエッタを想う気持ちがあるからこそだ。

 

この国の人達を見たからこそ、たとえ世界が違うノクトであろうとも、この国が持つ『想い』は感じられるのだ。

 

 

「もう一度聞くぞ。アンタはこれからどうするつもりだ? このまま府抜けたままでいるのか·······それとも、切り替えて立ち上がって、前に進むのか?」

 

 

ノクトの問いに、アンリエッタはウェールズが死ぬ間際でさえ耐えていた涙が勢いよく零れた。

 

まだあるのだ。

 

アンリエッタにはやらなくてはならないことが。

 

それはここで過去について考えるのではなく、未来についてどうするべきか、だ。

 

 

「立ちっ、立ち上がって·······い、いいんですか?」

 

「·······あぁ」

 

「な、何人も·······しっ、死んじゃったのに·······あ、あなた達に傷を負わせたのに·······でっ、ですよ?」

 

「それでもだよ」

 

 

と、青年は答える。

 

 

「間違いを犯しても、その過ちが怖かろうと、新しいものに向かうべきだと思うぜ。アンタの周りの奴等はそんなアンタを笑う奴か? そんなわけねぇだろ。立ち上がろうとするアンタを助けようと、支えようとしてくれる奴等なんじゃねぇのかよ」

 

 

青年は続ける。

 

 

「それとも、アンタ自身が笑うのか? 新しく切り替えて立ち上がったアンタを、アンタ自身が笑いたいのか?」

 

「·······ッ!!」

 

「·······大丈夫·······」

 

「え?」

 

「たとえアンタが迷ったとしても、誰もアンタを見捨てねぇよ。周りの奴に直接聞いてみろ。少なからずとも俺は、立ち上がろうとするアンタを見捨てねぇからさ」

 

「·······」

 

 

赦されることなんてないというのはわかっている。仮に全員が赦したとしても、その責任はずっと背負わなければならないのはわかっている。

 

それでいて、

 

まだ自分にもう一度立ち上がってもいいと言うのなら、

 

まだ自分が女王をやっていいと言うのなら、

 

そして誰もその考えに反対しないと言うのなら·······ッ!!

 

 

「なら、なら·······わたっ、私は·······このっ、この国のひっ、人たちを·······ッ!!」

 

 

涙で泣きじゃくるアンリエッタは、それでも流れ出る涙を拭い、決意したようにノクトとルイズを真正面から見つめて、陽が登る朝日をバックに、こう宣言した。

 

 

「ま·······守ります! 守ってみせますッ!!」

 

 

そのアンリエッタの言葉に、青年は口角を上げて小さく笑った。

 

 

「·······言えたじゃねえか·······」

 

 

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