医薬品等が納められた一見して医務室と思える室内に赤いメッシュが混じった長い白髪を三編みにした男がデスクに広げられたカルテと業務日報を煙草を吸いながらデータ管理をしていた
「え~っと…隣町のゴール・ゴゴーレムさん家のお子さんは容態が安定してきたから計画観察に移行して……この街で働いてるハーピー族はそろそろ羽毛の生え変わり時期だから炎症止めの薬と包帯…後は無理して飛んだお馬鹿さん達用の傷薬もだな」
とせわしなく背中から生やした黒い腕を含めた四本の腕で《シンデレラ・ポリス》本部が置かれてる都市周辺の人・獣人・亜人問わず医療を一手に引き受ける男……カンサキは今日も今日とて自身の睡眠時間を10分だけ残し働いていた
次のカルテは~と手を伸ばしたその時
「ん?……平行世界の俺が死にかけてるな………」
カンサキは種族特性の副産物として平行世界の自身と同じ魂を持つ者を子機としその人物の記憶・経験、更にその世界の技術や歴史と言った物を自身の糧とする事が出来るが余り平行世界の問題に首を突っ込む事を善しとしなかった
故に今までも子機が死にそうに成っても放置していたが
「フム、まだ子供か…本来なら手助けなんてするべきじゃないけど…たまには良いか。ついでに映姫にお土産でも持っていくか」
そう言いながらいましがた終えたデータを保存し吸っていた煙草をピンと弾き室内に漂っていた煙事《室内の時間を吸う前に巻き戻し》て消し去り椅子に引っ掻けていた白衣に袖を通して影に沈んで行った
この男……カンサキ・もも
邪神ヨグ=ソトースと聖女の間に産まれし半人半神の医師にしてシンデレラ・ポリス幹部《戦力序列最下位》のなんだかんだ言いつつお人好しな男である
・洞窟内
「ハァ…ハァ…ハァ……ウグッ…痛い……」
薄暗くゴツゴツとした岩場に天井から射す月の光によって照らされた仰向けで倒れている少年は端から観れば一発で重症と分かる程体から血を流し右腕は紫色に変色し両足は逆方向に曲がっていた
「(僕……あそこから落ちたんだ)」
いまだにパラパラと砂が落ちる穴は遥か高く恐らく少年が今まで住んでいた里の大人達が5・6人縦に並んでもまだ天井の方が高そうで少年は穴から見える月をただボーッと眺めていた
「(…僕…このまま死んじゃうのかな…いや、どうせ時間がたてばまた再生するんだろうな…何時もみたいに)」
少年は人間の里で産まれたが母親は物心つく前には居らず父親が男で一人で育ててくれたが半年前に過労で倒れそのまま息を引き取った
それ以降は里の大人達が面倒を観てくれたが数ヶ月前、少年の額から角が生え始め大人達は化け物と罵って少年を里の外に捨てた
それから少年は野生の獣・妖怪に狙われながらもなんとか逃げて生き残り切り傷や打撲痕は数時間の内に綺麗に無くなっていた事からこの傷もその内治ると思い込んでいた
「(……なんだか…すごく…眠い……起きたら……ここ…から…出…な…い…と)」
しばらくして少年の瞳から光が消え呼吸が停まると岩影から全身が爛れた生き霊の様な妖怪が姿を見せ少年の方へと歩み寄る
「えっ餌だ……新鮮な…餌…おでが見付けた……おでの…餌」
妖怪が少年だった物に喰らいつこうと周りを見渡してから歩みよろうと少年が流した血を踏んだその瞬間
バクンと血の池より出てきた黒い影の様な物が妖怪を飲み込み変わりに白衣を着た男が妖怪が立っていた場所に入れ替わる様に立っていた
「悪いが、この少年にはまだ生きててもらわないといけないんでな」
そう言って男が指を鳴らすと少年の血は時間を巻き戻す様に少年の中に戻り折れた手足は傷の無い綺麗な状態となり止まっていた筈の呼吸も寝息となって再開していた
「さて、また死にかけられても困るし……少し鍛えてやるとするかね」
月の光に照らされた男の影が広がり少年の影とくっつくと男と少年は影の中に潜り込む様にしてその場から消え去り変わりに少年を喰らおうとしていた妖怪がいびつな団子状となって影から吐き出されそのまま洞窟の奥へと転がって行った
真っ黒く一切の光源の無い世界をしばらく落下していると足元から赤色の扉が現れ男と眠っている少年はその扉の前で止まり男は少年を抱え扉を開けるとそこには部屋全体が真っ白く部屋の中央に緑に光ってる球体が浮いただけの何も無い部屋だった
男は球体に近付き球体に触れると球体からタブレットサイズの画面が投影されそれを操作すると壁の一部が動き中からベットが出現しそこに少年を寝かせた
「さてと~少年を担いだ感じ鬼と人間のハーフっぽいよな……ただまだ鬼としての能力は目覚めきって無い……そんで妖力はまだ少ないが気はそこそこある……これ自然で生きてきた結果か。能力もまだ未発達で脆い状態か……なら」
男は少年の頭部に手をかざし平行世界の技術の中から少年に合いそうな技術と能力を分け与える
「自然で生きる為のサバイバル術と自然の気を扱う気孔術…ついでに鬼繋がりで響鬼さん達の鬼術も全部覚えさせるか。となると……うん、能力も鬼術関連で《触れた相手を落ち着かせる程度の能力》で音撃関連で清める方向で良いだろ。後は戦闘技能に流派東方不敗を覚えさせてっと……」
男が思い付く限りの知識と経験を少年に流し込んで行くと少年の身体はまるでその経験が元から有ったかの様に筋肉が変化し強靭な肉体へと変貌していく
~数時間後~
「ん……あれ?僕こんな所でなにを…?」
何時のまにか洞窟内に戻されていた少年は起きるなり天井に眼を向け
「……あ、そうだった!?鍛練の最中にあの穴から落ちたんだった!?」
ガバッと起き上がり左手首に付いてる一角の鬼が彫られブレス《変身音弦・音錠》と右腰のホルスターに入った《変身音又・音角》と《変身音笛・音笛》、左腰にぶら下げた三枚の円盤状の物が壊れて無い事を確認しほっと一息付いてから立ち上がり天井の穴を睨み付け
「さっさと戻って鍛練の続きをしないと…ね!!」
洞窟の両壁を蹴って天井へ近付き穴の縁に手をかけ一気に体を持ち上げ地上に飛び出す
「フゥ…ヅッ!?」
地上に出て一息ついた時、急に激しい頭痛が起こりその場に蹲ってしまうがそれ時少年の記憶には無い光景が浮かび上がった事に驚いていた
『俺との記憶は一時的に消させてもらう。安心しろ、俺はお前だ。また何時か遊びに着た時にでも全て思い出すさ』
「ハァ…ハァ……今のは……」
姿がボヤけ声も男女の声が混ざった様な不快な声だったが《この人は決して敵じゃない》と断言出来る…そんな不思議な感覚に苛まれるが頭痛が引くに連れてその事も朧気に成って行ったが少年は深く考えず「とにかく走り込みでもしよう」と人間の里の柵周辺を砂煙を起こしながら走り込み始めた
そんな少年を木の枝から見下ろす男…カンサキは
「フム。手助けはこんな物か、後は彼岸経由で映姫の所にでもよって帰りますかね~」
と呟きながら白衣の内ポケットから煙草を一本取り出して咥え指先から火を灯して煙草を吸いながら木々の枝を足場に彼岸に向かって移動し初めたのだった
少年のスペック
・before
能力:
未確定
身体能力:
能力を持たない人間の子供程度
使用可能技能:
無し
・after
能力:
触れた対象を落ち着かせる程度の能力
効果:文字通り触れた対象(人・妖怪・幽霊を問わない)の精神を落ち着かせる能力
カンサキが与えた鬼術を併用する事で対象(生命が在る物)を清め浄化させる事も出来る
身体能力:
素の状態で在れば中級妖怪であれば問題なく対象でき、音鬼(本来は孟士)状態で在れば上級妖怪とも渡り合える
使用可能技能:
・鬼術(仮面ライダー響鬼で使用された技全て)
・流派東方不敗(ドモン・マスターアジアが使っていた技全て)
・常時発動中
時間干渉・運命干渉の無効化
(完全にカンサキのお節介、故に本人も知らない)