魔王系Vtuberやっていたら本物の魔王にされそうです。   作:ゆゆっけ

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15話 決意と報告

「実はね、今日マリーナさんが来たの」

 

 夕食の片付けも終わり紅茶を淹れソファーに座ってのんびりとした時間が流れ出した頃、意を決して話を切り出した。

 

「マリーナが!?」

 

 何かを感じ取ってこちらに向き直ったリーゼが私の口から出た言葉に驚きの表情を浮かべる。

 

「ええ、新しい顧客との打ち合わせだと思ったら、ね。それがマリーナさんだった」

「どうしてすぐに言ってくださらなかったのですか?」

「危ないことはなかったし、リーゼさんに心配かけてしまうかと思って……、それにどうやって話したらいいかわからなかったの」

 

 驚きから困惑へと表情を変えたリーゼが眉尻を下げて問いかけてくると申し訳なく思ってしまう。きっととても心配しているのだろう。

 

「それでマリーナはなんと?」

 

 私はマリーナから聞いた話を説明していく、リーゼの父親のこと、黒惟(くろい)まおが現れたことによる影響……そして。

 

「近い将来魔王を継いでほしいって」

 

 真剣な表情で私の話を聞いてくれていたリーゼが、あぁとどこか予測していたような反応を見せ申し訳無さそうに口を開く。

 

「わたくしが不甲斐ないばかりに申し訳ありません……。本来ならばわたくしが継ぐという話でしたのに……」

「そんな、リーゼさんのせいじゃないわ」

「いえ、こちらの世界でも活躍されているまお様が次期魔王にという話があがるのは当然です……。が、ひとえにわたくしの力不足のせいでそんなお願いをしなくてはいけないなんて……」

 

 リーゼが魔王についてどう思っているかは計り知ることはできないが、彼女が将来継ぐはずだった魔王という地位に黒惟まおという存在が現れたせいで余計な横槍が入ってしまった状態だ。文句を言われることはあってもまさか謝られるとは思ってもみなかった。

 

「まお様はどうされるおつもりですか?」

 

 覚悟を決めたはずだったが、改めて聞かれれば答えるのにまだ躊躇いがあるのは確かだ。それでも、決断するきっかけをくれたリーゼにははっきりと答えなければならない。それが黒惟まおとしてこの先もやっていくために必要な覚悟だ。

 

「話を受けようと思っているよ」

 

 まっすぐに相手を見て言葉にする。

 

「それに私のために事務所を用意してくれるって話だもの、チャンスは活かさないとね」

 

 真面目な表情を崩してニコリと笑いかける、念願の事務所所属だ。これまでの苦労を考えればきっかけはともかく嬉しいことには変わりない。

 

「マリーナが事務所を……。わたくしで力になれることがあれば何でも言ってくださいませ」

 

 なにやら考える素振りを見せるリーゼだったが、すぐに私につられるように表情を柔らかくしてそう言ってくれた。

 

「ありがとう。詳しいことはマリーナさんと話し合うことにはなると思うけど、リーゼさんはどうする?」

 

 とりあえずマリーナとの問題が一段落したのだからリーゼが滞在する理由はなくなったことになる。いつまでもここにいる訳にもいかないであろう。というかあまりの出来事に考えることを放棄してしまった節はあるが家出少女を匿っているようなものなのだ。しかも会って間もないファンの子を家に泊めて……、冷静に考えてみるとなかなかにやばい字面である。

 

「あっ、そうですね……。もうわたくしは必要なくなってしまったのですね……」

 

 リーゼも私の言いたいことを察したのか、しゅんと落ち込んでしまう。

 

「そんなことはないけど、この部屋だとリーゼさんにとっては過ごしにくいでしょう?」

「そんなことはありません!」

 

 こちらが最後まで言い切る前に返ってくる言葉の勢いに気圧され思わず身を引く。

 

「ええっと……、そう! マリーナとの話し合いがきちんと終わるまでは何があるかはわかりませんから、それまでわたくしは居たほうがいいと思うのです! その……まお様のご迷惑にならなければ……ですが」

 

 まるで名案だと一息に言い切るが続く言葉は不安そうに語気は弱くなっていき、最後にはダメですか? と言わんばかりに上目遣いで見つめられる。着ぐるみパジャマを着た美少女にそんなことをされれば大抵の人間は抗えないだろう。もとより追い出そうなんてことは全く考えていないので抗うも何もないのだが。

 

「リーゼさんがそう言うなら私は全然大丈夫よ」

 

 ころころと表情を変える様子に小さく笑い声を漏らしながらそう答える。リーゼとの生活は妹ができたようで楽しく、それがもう少し続くことに思った以上に嬉しさを感じていた。

 

 

「それじゃあ、私は隣の部屋で作業しているから何かあれば呼んでね」

「わかりました」

 

 話したかったことも無事に話せて心なしか軽くなった足取りで配信部屋へと向かう。背後ではリーゼがタブレットを取り出しおそらく配信のアーカイブを見始めたのであろう、黒惟まおの声が漏れ聞こえてくる。

 ほんとに好きなんだなぁ……。嬉しくはあるのだがやっぱり恥ずかしい。

 

 そんな事を考えながらゲーミングな椅子に座ってディスプレイへと顔を向ける。

 届いているメッセージをチェックして返信が必要なものを優先度順に整理していく。依頼のメッセージにコラボのお誘い……日程の調整等々……。あとは忘れずに(しず)にも報告のメッセージを入れておかなくては。

 

 

 魔王まお:【朗報】事務所に所属できるかも

 

SILENTが入力中...

 

 忙しいだろうからすぐに反応はないだろうと思っていたが予想に反してすぐに入力中になるのを見てメッセージが表示されるのを待つ。

 

 SILENT:騙されてない? 大丈夫? お母さん心配です

 魔王まお:だれがお母さんだ

 SILENT:黒惟まおのママは私だが?? 

 魔王まお:それはそう

 SILENT:冗談はともかく本当に大丈夫なの? 

 魔王まお:大丈夫、だと思う

 

 ついつい、いつもの調子でやりとりを始めてしまうがすぐに軌道修正をしてこれまでの経緯を軽く説明する。もちろん、リーゼのことや魔王については触れずに仕事絡みで偶然マリーナにスカウトされた、という形にしておく。たぶん静に嘘をついてもすぐにバレてしまうだろうし。

 

 魔王まお:だから今度詳しい話を聞いてみるつもり

 SILENT:新しい事務所ねぇ……

 魔王まお:心配? 

 SILENT:そりゃね、でもまおが納得できるならいいと思うよ

 魔王まお:うん、ありがと。詳しい話聞いたらまた相談すると思う

 SILENT:わかった

 

 静は少し思うところがあるような様子だったが、それは仕方ないだろう。逆の立場だったら私だって色々心配する。そんな静に嬉しい報告ができるように願いながらマリーナから受け取った名刺の連絡先へとメールを送信した。

 

新規メッセージ

件名 黒惟まおです

改めて契約内容や条件について詳しい話をお聞きしたいと思います。

 

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