セクハラがしたかった。
OoC注意→符離集焼鶏
15禁 エロいけどエッチまではないです。
悪ふざけの即興読み切り話です。
――それは事故だったのだ。
その夜は日頃の労をねぎらう飲み会だった。
とりわけ徳州と符離の二人の姉弟は目覚ましい貢献をしたとして、宴会の主役であった。
あまり酔わない徳州と違い、しこたま飲まされた符離はたちまち足元がおぼつかなくなるほどに酔っぱらってしまった。
徳州は口実を見つけ、前後不覚になった符離に肩を貸し、住屋まで二人で歩いて戻った。
片手で符離を支え、片手でドアの鍵を回し、なんとか室内に符離を連れ込む。
「まったく…。あれしきの酒で不甲斐ない。もう少しだからベッドまで歩いて」
真っ暗な部屋で記憶を頼りに進みながら、徳州は壁に指先を這わせた。
(この20㎝以内に電灯のスイッチがあるはず――)
さらに手を伸ばそうとしたところで、ぐいと肩口のマントが引っかかった。肩を貸している符の体重でマントが引っ張られているのだ。
徳州は符をずらしてマントを外し、両手を自由にして再び壁を探った。符離に気をとられたため、スイッチの位置がわからなくなってしまったのだ。彼女は闇雲に手を伸ばし、壁を探る――
と、その時背中でかすかなうめき声があがった。符離が酩酊状態から意識を取り戻したようだ。
「符、起きたのなら自分で立ってくれ。重くて電灯を点けられない」
「うーん……。」
まだ頭がふらふらしているのか、符離は歩き出そうとしたが真っすぐに立てず、バランスを崩して徳州を巻き込みながら床に倒れた。
とっさに符離の後頭部に手をやり、床に頭を打つことを防いだ徳州だったが、お蔭で符離の顔面は床と徳州の胸でサンドイッチになってしまった。
彼女の胸は女性としてはかなり大きい部類に入り、体に寸法を合わせると胸のボタンが留まらないため、仕方なくひと回り大きい制服を着ているのだが、長めの袖やゆったりとした丈は彼女の女性らしい体つきを包み隠し凛々しさを印象付けるのに貢献していた。
しかし今は違う。符離は厚い布越しに初めて感じるその柔らかな肉圧に、心臓が飛び出そうなほどドキドキしていた。重たくて温かいのに、ふわふわと柔らかい。
(これが…おっぱい……。)
彼女は大事そうにこちらの頭を抱えており、自分の胸が密着し、そのことで弟が動揺していることなどまるで気づかないようだった。
「大丈夫か?怪我はないか?」
徳州は身を起こし、符離の乱れた蜂蜜色の髪を撫で付ける。甘い愛撫に符離は思わず目を細めた。
符離の無事を確認した徳州が身を離そうとしたとき、符離はとっさに腕を回し、彼女の体を再び引き寄せた。
「ッ!?」
無理やり抱き潰された徳州は息を詰まらせ、符離の腕の中で身じろぎする。窮屈そうにしているその胸元に符離は顔を埋め、再び大きく息を吸った。酒気に混じって女性特有の甘い香りが鼻孔いっぱいに広がる。
こうして息遣いが伝わるほど密着して姉に触れたのは初めてだ。なのに不思議と安心感がある。いつも一緒に居るからだろうか…。
一方徳州は、符離の行動に動揺したのか、かすかに上ずった声をあげた。
「符、どうした?手を放してほしいのだけど…」
徳州は符離の腕から抜け出そうと身をよじったが、腕の中にすっぽりと収まる細い体と甘い香りは、普段から意識的に抑圧していた彼の欲望を呼び覚ましてしまっていた。
(――このまま逃したくない。)
無意識にそう考えた彼は、体ごとぐるりと上下を入れ替え、姉を床と自分との間に押さえつけた。
いつになく強い力で両腕を押さえつけられ、徳州はうっすらと顔を歪めた。掴まれた二の腕が痛い。
「寝ぼけてないで手を放して、風呂に入って寝なさい」
それでも徳州は毅然とした口調で弟を牽制した。
暗がりに慣れてきた徳州の銀の瞳が、弱い月明かりの中に輝く紅の瞳を探り当てる。符離のその瞳は、たった今組み伏せたばかりの姉をぼんやりと見つめていた。
「……」
いや、正しくは姉の胸を見つめている。
徳州が不穏な気配を感じとると同時に、符離は呼気を荒げ、両肩を掴む手にさらに強く力を籠めた。
「ッは…」
圧迫される痛みを紛らわすために徳州が大きく息を吸うと、プチンという軽い音と共に胸のボタンが弾け跳び、中に着ていた白いブラウスが露わになった。
――符離の中で何かのスイッチが入る。
彼は乱暴に徳州の胸ぐらを掴むと、力ずくで黒い詰襟をはぎ取って肩口までずり下げ、上半身をブラウスだけにする。いつも首から下げている蓮の葉袋がはずみで胸から床に転げ落ちた。
「符、やめるんだ…やめなさい」
脱がされた制服の袖と弟の大きな手のひらに両手首を拘束され、焦った徳州がなおも制止の声をあげる。なんとも如何わしい状況である。
しかし符離は聞いていないのか、眠たげな表情でやおら脱力し、徳州のその豊満な胸に頭を落とした。
これにはさすがの徳州も参った。弟とはいえ男性の全体重をかけられ、ただでさえ重い胸部を押し潰されているのである。重さと息苦しさで、彼女は空気を求めてか細く喘いだ。
「…ふ…、ど…て、くる、し…。」
符離はその声が聞こえないのか、しきりに大きく深呼吸をしながら、その柔らかい胸に顔面をグリグリと押し付け続けている。たゆんとした暖かいクッションに埋まっているようなものだ。
「んああ~…。気持ちいい~…。」
彼はすっかりリラックスしてその柔らかい谷間と甘い香りを味わっており、弟の悪気のなさに強く拒絶することもできない徳州は、だんだんとつられて変な気分になってしまっていた。このまま行為がエスカレートすると大変まずい。血が繋がらぬ人外同士とはいえ、自分達は仮にも姉弟なのだ。
いい加減にしろと声をあげかけたとき、おもむろに符離が戒めていた徳州の手を解放した。そしてあろうことかその大きな双丘をわし掴みにし、大胆に揉みしだき始めたのだ。
「あっ!?…あっ、あっ、符、やめっ、んっ…!」
驚いた徳州がついに甲高い嬌声をあげてしまう。
符離の指先が食い込むと柔らかい肉は自由に逃げ、くにくにとあちこちに膨れ上がる。じんわりと温かいぬくもりにどくどくと脈打つ指先が飲み込まれ、手のひらで掬い上げては重力に任せて逃がすことを繰り返してもこの感触に永遠に飽きることはなさそうだった。
一方の徳州は、リズミカルに力強く乳房を揉まれ、その谷間に符離の顔面がめり込んだ状況で、汗で蒸れた胸の谷間や太ももに挟まれじっとりと濡れたショーツの布地の感覚が気になってしょうがなかった。それらの軽微な不快感が否が応にも彼女の体の疼きを高めていく…。
敏感に勃った乳首の先がころころと布地に擦れるたびにゾクゾクとした快感が背筋を這い登り、秘部はとろとろと蜜を溢し続ける。このままでは頭がおかしくなりそうだ…。
もはや半泣き状態で息を荒げながら、彼女は符離の背を叩いて再び懇願した。
「阿符っ…、やめっ、やめっ…、てっ、はっ…、あ、あ、っ…いやっ…。」
秘部が焦れる不快感に腰をよじり、脚をもじもじと動かすが、符離の全体重をかけて抱え込まれているため、それ以上に動けない。それにこんな痴態に気づかれたら…。
彼女の理性が危うくなりかけた頃、やおらぴたりと胸を揉む手が止まった。
突然の変化を不思議に思って符離の顔を覗き込むと、なんと彼は――寝ていたのである。
(え?)
すやすやと穏やかな寝息が繰り返される傍らで、状況に理解が追い付かず呆然とする徳州。
寝てる。それはいい。よかった。でも――
寝てしまった弟に押し潰されたまま、下半身の秘部の疼きをどうすればいいというのか――!
徳州は腹いせに頭の中で符離を力一杯蹴った。
明朝、一晩中抱き枕にされた不機嫌な姉から、彼がたっぷりと説教をくらったことは言うまでもない。