星と少年   作:Mk.Z

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第二話 冶金都市

     

 □■カルディナ 冶金都市グロークス 某所

 

 誰しもがささやかな秘密を抱えているように、権力者もまたそうだ。

 ひとつ違うのは、彼らのそれはささやかとは呼べないことも多かったし、それを隠すのに熱心な努力を注いだ、ということだろうか。私兵や口止め、賄賂、あるいは不気味な隠し地下室。

 グロークスの中枢、市長の屋敷の下にも地下室があった。地下堂、と呼んでも良いかもしれない。四方の壁は広く、街中の人々が入ってもまだ余りそうだ。

 ここはかつて、様々な用途に使われていた。怪しげな人物との密会や、人には見せられないような怪物を閉じ込めたり、或いは……殺せないが存在は不都合な人物を閉じ込めたり。裏金、賄賂、貴重な財宝を溜め込む宝物庫だったこともある。さながら死、苦痛、欲望の坩堝だ。

 そこへ続く隠し地下道を一人の男が進んでいた。恰幅のよい、豪奢な服を着た男だ。だが、貴族のような服装に身を包んだその顔はまるで虐げられる奴隷のように暗い。

 暗い地下道に、滴る水の音が響く。と、石の壁から薄ぼんやりと光る青白いものがはい出てきた。人の形をしている。古風な服の裾が揺れ、その口が動いた。

『私は哀れなフレイディ・モーント。グラマンに殺された、グラマンに騙された……』

「ええいうるさい!亡霊めが、失せろ!」

 無害な亡霊は悲しげにグラマンを見やると、『私は哀れなフレイディ・モーント』と呟きながら壁の中に消えた。

 グラマンは脂汗の浮いた膨れ面でとぼとぼと歩いた。あんな亡霊の類いは普段、五回に一回見るかどうかというところなのに、ここのところ毎回出くわしている。それがなにか、不吉な暗示のように感じられてグラマンは身震いをした。

 死刑宣告を待つ虜囚のような気持ちでグラマンは扉を開けた。金属で出来た扉は呻くような音を立ててゆっくりと開いた。

「ようこそ、マンドーリオ・グラマン市長」

 次の瞬間、グラマンは腰を蹴り飛ばされて冷たい床に転がった。その頭を冷たい視線が刺す。

「十二秒の遅刻だ、グラマン。我が時間を無駄に消費させたこと、大いなる罪と心得ろ」

 その声の主は、地下堂に作り上げた玉座に座っていた。青と黄金色に縁取られた衣服が煌めき、その傲慢さを示す。両の手には純白の手袋、黒い髪は肩まで伸びていた。

「加えて、私はお前に失望している……とても失望している。ネズミの始末、我が<劣級(レッサー)>の為の供出。どれも不十分だ」

「ど、努力しております!」

「だからどうした、と云うのだ?グラマン、目標とは約束……信頼だ。其を裏切るというのは此の世で最上の悪行の一つだ……異論は有るか?」

「お、畏れながら」

 グラマンは、グロークスを治める最上の権力者である筈の彼はひれ伏して言った。

「私は、私の役目を果たしました!計画通り、<UBM>を誘導させ、口封じも済ませました!都市の資源とて限界まで供出しております!想定外だったのは彼らが<UBM>を撃退してしまったことで……」

「それって、つまり計画を立てたオーナーの監督責任ってことですか?」

 穏やかな声で横から入ってきたのは、先ほどグラマンを蹴り飛ばした少年だった。柔和な表情、礼儀正しく慇懃な物腰。だが、グラマンはこの少年も恐ろしくてならなかった。その善良な表情はグラマンを蹴り飛ばす時も揺るがない。微笑みながらどんな残虐行為とてやってのけそうな薄ら寒さがその少年にはあった。

「オーナーの監督責任だなんて、大胆なこと言うんですね。もし僕が貴方ならそんなこと言えませんよ、さすが為政者。大した度胸だ」

「ウ……」

 グラマンは恐怖のあまり沈黙し、おずおずと玉座の男に目をやった。

 だが、彼は既にグラマンに興味を失くしてしまったようだった。幸い殺されずにはすみそうだ。

「追って指示する、失せろ」

グラマンはほうほうの体で逃げ出した。その後ろ、少年が重々しい扉を閉めると、男は再び口を開いた。

「遅かれ早かれ、嗅ぎ付けられるとは思っていたが……しかし、些か早いな。未来を読むと云うほどの戦略眼……噂ではなかったようだ」

「どうします?姿を見せて直接妨害した時点でこっちにとっては不利益ですけど、間接的な手ではもう止められないかも……都市の中を調べられても決定的な証拠が見つかるとは限りませんし、いっそ放置します?」

「それは賢明な決断ではないな、ユーリイ」

男はそう言うと、玉座に深く腰掛け直した。

「どのみちある程度は見せ札、奴らもまた切り捨てられる駒に過ぎない……腕彦とゴールデンに尾行させろ。少し早いが、本来の役目を果たして貰う。真の計画に気づかれることが、最も忌避すべき事態だ」

ユーリイと呼ばれた少年は頷いた。

「指示しておきます。最後の一つの錬成は?」

「予定通り執り行うとも。ゆえに、努々ネズミを近づけさせるな」

 

 ◆◆◆

 

 街に入った調査隊を待っていたのは、まず退屈な取り調べだった。無駄にながったらしく調べられて、メンバーはそれぞれすっかり閉口していた。

「なんかあったのかい?普段、こんな取り調べなんて受けたことないよ?」

「うむ。何かただならぬものを感じるな」

「俺が説明してやろう!」

と、そこへ顔を出したのは藤堂だった。持ち前の明るさと厚かましさで事情を聞いてきたらしい。

 なんでも、現在グロークスは検問の強化が敷かれていて、その原因というのが、指名手配犯の目撃情報だというのだ。

「大したことはない只の犯罪者だ。罪状はティアン数人の殺害やら傷害とか。都市を滅ぼすほどのやつじゃないんだが、それでもティアンにとっては結構な心配事だからな」

「うーん……まぁ、気を付けておこう。多分、俺たちが関わることはないだろうけどね。グロークスも広いから」

そこへ最後の一人、AFXが扉を開けて入ってくる。そしてそのまま疲れた様子で座り込んだ。

「面倒臭い……絶対無駄に引き伸ばしてるだろこれ!僕はこういうのが一番嫌いなんだ」

その台詞に、彼らは顔を見合わせた。

「確かに、わざと手続きを煩雑化して立ち入りを遅らせることは市長なら可能だ、犯罪者の目撃情報は名目に過ぎないのかもな」

「しかし、こんなやり方をしては経済が滞るぞ」

「なりふり構わず……ヒヒヒ、コワいねぇ」

「よほど街のなかに調べられたくないものがあるのであろうか?とはいえ、我ら以外にも来訪者は数多いはずであるが」

AFXはメアリーにだけ聞こえるように言った。

「愚痴のつもりだったんだけど」

 

 ◆◆◆

 

 一行は外壁を抜け、そしてバラバラになった。

「十五人で行動してたら目立つかもしれんぜ?ここは別行動すべきでしょ」

という藤堂に賛同したからだ。

 念のため、何かあったら連絡を密に取り合うよう言い含め、おおよそ数人ごとに別れた。彼らは決して隠密や調査のプロではない。自由に行動した方がやり易い、との面も確かにあった。問題は、

「そもそもそも、プロじゃない僕らに何故こんなことをやらせるのか、ってことじゃない?」

そうAFXは愚痴った。

「なに調べりゃいいのさ」

「えーとねぇ、貰ったリストによれば……」

メアリーがパラパラと紙をめくり、そして写真を示す。

「シハール・ミンコス。商人ね。金属資源の取引をしてる。最近、市長に難癖つけられて商品を徴発された、らしいよ」

 

 ◆

 

「全くもって横暴なんだ!そうは思わんかね!」

「や、本当にそうだと思います」

AFXは能面のような顔でその怒りを受け流した。ここはシハールの商店、正確にはその事務所だ。

「全くもって横暴ですね」

「そうだろう!うちが持っていた神話級金属はお陰で全てパァ!大損だ!」

「ちなみに、その徴発理由とはどんな……」

「脱税、その追徴課税だ!全くもって度しがたい、そこは暗黙の了解というか、前もって合意があった筈なのにあのグラマンと来たら……」

脱税はしてたのかよ!AFXはその言葉を飲み込んだ。傍らでメアリーが口を開く。

「いや、脱税はしてたんかい!」

なんで言うんだよ!AFXは思わず天を見上げた。幸いシハールはなんでもない風で続けた。

「その程度のことは皆やっている。これは高度に政治的な話なのだ。それよりうちの損害が問題だ!明らかに難癖だ、いくら神話級金属を集めているからといって!」

「集めている?」

その発言をAFXは聞き逃さなかった。

「集めている、というのは?」

「最近になって、市長が大量の金銭を使って神話級金属を買い集め始めたのだ。もちろん、その他の希少金属も、だがな。お陰で値が上がっていたからかなり儲けさせて貰ったが……あぁ、何でも武具や兵器の類いも買い集めているとの噂だ」

「それって……」

狼狽える二人に、シハールは大笑して続けた。

「クーデター、か?あり得んな、グラマンはそんな大それた男じゃない」

 

 ◆◆◆

 

「って言ってたけどさぁ……」

AFXは偶々入ったオープンカフェのテーブルに突っ伏しながら呟いた。

「怪しすぎるよ、絶対クーデターじゃん」

「でも、そんな男じゃない、ともいってたよ?」

向かいでメアリーがグロークス名物らしい七色のドリンクを飲みながら答えた。

「クーデター、ってつまりカルディナ中央への反乱でしょ?そんなことするだけのメリットがあるの?グロークスは普通に儲かってるみたいだし」

「意外と理由があるのかもよ、或いはカルディナ全土を征服する気かも……」

「あたしはそれこそあり得ないと思うけど……」

メアリーはぐいっとドリンクを飲み干すと、おかわりを取りにカウンターへと歩いていった。

 AFXは突っ伏していた顔を上げた。太陽が帽子を熱し、温い風が頬を撫でる。と、その日差しを遮るものがある。人影だ。

「甘酸っぱいねぇ、お二人さん」

「そういうのじゃないよ……」

下世話に笑って立っていたのは藤堂だった。人好きのする柔和な顔が朗らかに笑う。

「単独行動は避けろって話じゃなかったっけ?」

「カルテット兄弟なら近くにいるぜ、大体、お前さんがいるから一人じゃないだろ」

それもそうだ、とAFXはアイスコーヒーを飲みながら頷いた。その隣では、藤堂が手慰みにか、自らの<エンブリオ>である粘土を弄くっていた。白い粘土が赤く、黄色く、黒く染まり、形を変えて一杯のコーヒーカップになる。

「面白いな、あんたの<エンブリオ>……アダム、だっけ?」

「あぁ、赤き土より造られし原初のヒト……熱心なクリスチャンにゃ怒られそうなモチーフだな」

「変形、変色の能力だったっけ」

「そうだ」

 藤堂の手の中の粘土がゆっくりと大きく膨らんだ。その色が深紅に染まり、右手に剣を携えた、等身大の戦士の彫像のような姿になる。形を少し整え、満足げに唸りながら藤堂は続けた。

「せっかくだからな、能力の共有はしておいた方がいいだろう……通常の変色変形は《立体造形(オブジェ)》、こんな風に色や形を変えられる。都度俺のSPをコストとして消費するがね、まぁ安いもんさ。あぁ、強度は粘土のままだから防御や攻撃には使えないぜ」

「ふーん……」

AFXがコーヒーを飲み干す。藤堂はニヤッと笑って言った。

「必殺スキルは《自由自在の土細工(アダム)》っていうんだ。良い名前だろ?」

 そして、深紅の彫像の右腕が動く。瞬間、その手に握られた長剣が閃き、背後からAFXの頭を唐竹割りに打ち据えた。

 

 ◇◆◇

 

 テーブルが割れ、コーヒーのグラスが転がる。それだけではなく、その下の石畳にさえ、大きく傷が付いていた。

 《自由自在の土細工(アダム)》の効果は、変形能力の強化だ。宣言と同時に、どのようなものでも作り上げる。すなわち、形や色にとどまらない硬度、強度、あるいは……攻撃力までをも再現可能になるのだ。勿論、形を崩せば効果は切れてしまうし、リソース面での限度はあるが。

 今回造ったのは神話級金属の彫刻……動く人形だ。攻撃力も上級職の戦士と比べられるくらいはある。それゆえに、

「なんでかねぇ……?」

今、目の前でAFXの頭が()()であることは、不可思議でしかない。

「【偵察隊(リコノイター)】、間違いなくAGI型だ。それが今の一撃で無傷とはね、どういう理屈だ?」

 その藤堂の疑問には答えずに、AFXは立ち上がった。その胸に再度、アダムが突きを食らわせる。だが、その一撃は完全に止められた。腐った棒切れの方がまだ傷を負わせられそうだ。AFXが口を開く。

「あんたが裏切り者だったのか、藤堂」

「そうだ……なんだ?知ってたような口ぶりだな?まぁ、とりあえず一人倒して、あっちに取り入る材料にするつもりだったんだが……当てが外れたな」

「取り入る?誰にだ?市長か?……あんた、何を知ってる?」

藤堂はふーっと息を吐き、肩を竦めた。

「噂だよ。ただし、真実味のある噂だ。グロークスには<エンブリオ>を売る商人がいる、ってな」

「只の噂だろ」

藤堂はその言葉を無視して、AFXに語りかけた。

「なぁ、お前さんがどう思ってるかは知らないが、二つ目の<エンブリオ>を手に入れられるとしたら紛れもないお宝なんだぜ。感じたことはないか?自分の<エンブリオ>に対する、何て言うかな、不満を?」

 AFXは答えなかった。藤堂は彫像を撫でながら物憂げに続けた。

「俺もよ、アダムは気に入っちゃいるんだ。好きな部分だって沢山有る、が、それァ文句無しってことじゃない。むしろ好きだからこそ、考えるんだ……別の可能性もあるんじゃねえかな、ってな」

 AFXは口をつぐんだままだった。藤堂は尚も続けた。

「どうだ?また別の<エンブリオ>が欲しい、そうは思わねぇか?思うんなら俺と来いよ、俺の持ってる情報を分けてやる。一緒に第二の<エンブリオ>を手に入れに行こうじゃねえか」

そう言って、藤堂は握手を求めるように手を伸ばした。

「僕は……」

 AFXが口を開く。そして、その伸ばされた手が藤堂の手を払いのけた。

「悪いね。僕は、裏切り者を信じないことにしてるんだ」

「そうかよ」

 藤堂が残念そうに首をすくめる。そして、深紅の彫像が再度、AFXめがけて刃を振り下ろした。

 

 ◆◆◆

 

 神話級金属(ヒヒイロカネ)。最上たる深紅の金属は、いまや惨めに圧倒されていた。振り下ろす刃は幾度叩きつけようともかすり傷がせいぜい。逆に、恐るべき強度を誇る筈のその彫像の身体はボロボロに破壊されている。

「理屈に合わねぇな……それが、お前の<エンブリオ>か?だが、身体強化だとしても……」

他人(こっち)のせいにするなよ……むしろ、()()()()()()()()だ!」

 そう話すAFXの拳は、神話級金属を砕き、その刃をへし折っていた。明らかに【偵察隊】の所業には見えない。神話級金属を素手の一撃で砕けるものなど、超級職でもない限りはそういない。

「潮時か……」

 藤堂は呟くと、一歩下がって足元の石畳を踏みつけた。瞬間、地面が崩れ、藤堂がすっぽりと穴に落ちる。

「アダムで石畳に偽装した蓋を……?ッこの!」

 AFXは神話級金属の彫像を粉々に破壊すると、そのまま穴へと飛び込もうとする。だがその瞬間、地面が陥没し、穴は埋まってしまった。

「藤堂ォォォォ!!!」

憤慨するAFXの肩を、細い手が叩く。

「落ち着いて」

「……見てたなら加勢してくれたって良かったのに」

「……ごめん、なんか圧倒されちゃって」

 メアリーのその言葉に、確かに少し興奮していたAFXは頭を振って熱を飛ばすと、少しだけ冷静な顔で口を開いた。

「……いつもこうだ。裏切り者……」

そう呟くと、AFXはカフスを取り出した。これは明らかに有事だ。

 

◇◆

 

『そうか、理解した。しかし藤堂が……』

「あいつは確信があるようだった。何か確かな根拠があるんじゃないのか」

『実は、カルテット四兄弟も通信が繋がらなくなっているんだ。藤堂は彼らと行動していた、グルなのかもしれない』

「奴らが“商人”とやらと通じている……と?」

『可能性はある。信憑性もある』

そう言うと、キュビットは少しだけ声を低くした。

『俺たちが見つけた浮浪者の証言だよ。ここ最近、市庁舎に匿われている謎の集団がいるらしい。表向きはいないことになっているようだが』

「それが、“商人”?」

メアリーの質問に、キュビットは真剣な声で答えた。

『グリゴリオ達が市庁舎に向かってみたらしい。一見普通だが、実のところ厳戒態勢。監視網が敷かれている上に付近の野生動物さえも全て駆除されているそうだ。【偵察隊】等への対策だろうね』

 AFXは通信を切り上げると、憂鬱な顔でため息をついた。どうも雲行きが怪しくなってきた。

 メアリーがその顔を見上げる。そして、気遣わしげに問いかけた。

「さっきの……あの怒りかたは尋常じゃないよ。どうしてあんなに?」

「藤堂のときのこと?大したことないよ、裏切られて苛ついただけだ」

「嘘。そんなんじゃなかったよ絶対!何かあるんでしょ!……教えて」

その真っ直ぐな視線に怯んで、AFXは瞳を伏せた。不躾に他人の心の中に踏み入ってくるこの少女のこういうところが、AFXは苦手だった。なんと言うか、勝てない、という感じがするのだ。

「嘘じゃない、裏切り者が嫌いなんだ」

それが本心であり、全てだった。AFXにとっては。

 

 ◆◆◆

 

 ■【偵察隊】AFX

 

 AFX。彼の人生は、裏切りの連続だった。ドラマチックというわけではない。むしろ、ほんのつまらないことから大きなことまで、裏切りがついて回る、そのことのほうがAFXを絶望させた。

 ジンクス。まさにそれだった。彼が何かに“所属”したとき、絶対に彼を裏切るものが出るのだ。些細なグループから、無二の共同体……家族や友人、恋人であっても。

 不合理であり、非科学的だ。だからこそ、防ぎようなどなかった。常に、不思議な巡り合わせが彼に裏切りをもたらした。地球でも、そして<マスター>となってからも。

 ゆえに、彼はそれを恐れ、忌避した。当然の帰結として、彼の<エンブリオ>もまた……

「僕の<エンブリオ>の能力は、共通点を探すこと」

物憂げに彼は口を開いた。

彼の<エンブリオ>の銘は、【背信定理 メドラウト】。アーサー王の武勲(いさおし)にて、かの王の不義より生まれ、そして王国を滅ぼす裏切りの騎士の名前である。

 その能力特性は、裏切りものからの攻撃に対する耐性。

「所属国、パーティ、クラン、年齢、身長、性別、人種、嗜好、<エンブリオ>、ジョブ……あらゆる要素を比べて、共通点が多いほど、僕は強くなる」

 人間が分析し得ない微妙な差異でさえも読み取り、それをひとつの関数として自らを強化する第五形態のTYPE:ルール。その性質上、限られた状況でしか満足に動作しないが、いったん嵌まれば先だってのように神話級金属の刃すらものともしない防御力を得る。

 これだけなら、単に裏切りを忌避する心として片付けられた。だが、裏切りを恐れると同時、AFXの心にはまた別の暗い動きがあった。

 どうせ裏切るのだから、先に一線を引いてしまえばいい。裏切られる前に裏切ればいい。

「メドラウトの能力はもうひとつ。攻撃力の強化でもある」

人を信じ、裏切り者への盾を持つか、あるいは裏切り者としての矛を持つか。

 現状、その矛は裏切り者に抗うためのものとして機能している。しかし、いつまでそうであるかは分からない。

「結局、怖いんだよ、僕は」

 他人が。そして、何より自分が。あるいは人間同士の間にあるもの……信頼が。

 メドラウトは未だに必殺スキルを持っていない。きっと、盾と矛のどちらを選ぶか、人を信じるか否か、それを決めて初めて現れるのだろう。AFXの心が結論を出せれば、だが。

 メアリーは黙ってその言葉を聞いていた。と、その唇が開く。

「バッカじゃないの!?何よ、自分だけ被害者ぶってさ、あいつのが裏切りだっていうならあたしたちだって裏切られたんじゃない!」

AFXは驚きのあまり目を逸らすことも忘れて少女を見つめた。メアリーの怒気がAFXを刺す。

「怖い?裏切り?そんなのはさ、自分と他人って線引きだけで世界を見てるからそうなるのよ!自分の主観だけで見てるから!」

メアリーは熾の様に怒りを燻らせながら、続けた。

「あたしは?」

「え?」

「あたしも信じられない?裏切るかもって思う?」

メアリーはそう言うと、踵を返してずんずんと歩いて行ってしまった。

 後には、途方に暮れる少年だけが残されていた。

 

 ◆◆◆

 

「それで、こっちに隠し通路があるってのは本当なのか?」

「ぁあ本当だよ、見ィた見ィた」

いまいち舌の回らない浮浪者を船頭に、グリゴリオたちは市庁舎の周りをうろついていた。

「はァいっていったよ、そこから、たくさん」

もう使われていないらしい石造りの建物を指して、浮浪者が楽しそうに笑う。

「……だそうだが。どうする?入ってみるか?」

『……気を付けるなら』

「よしきた」

通信越しのキュビットの声にグリゴリオは強く頷いた。その後ろではシマがニヤついている。と、彼はその顔を上げ、天を見上げた。

「グリー、不味いな」

「どうした?」

シマはその言葉とは裏腹に、喜色を滲ませて言った。

「敵だ」

そして、隣を歩いていた浮浪者の身体が粉々に粉砕された。血が飛び散り、臓物が転がる。

グリゴリオの判断は素早かった。即座に大鉈を取り出し、天から落ちてきた影に振るう。だが、伝説級金属で出来た丈夫な筈の大鉈は、

「オラァ!」

その人影の拳に粉砕された。その勢いのまま、グリゴリオが蹴り飛ばされ、カフスが落ちる。人影が顔を見せ、してやったりとばかりに笑う。

 屈強そうな男だ。鳶色の短髪は無造作に刈り込まれ、下半身のみに鎧をつけている。上半身は何故か裸だった。

「その顔、見覚えがあるねェ……」

シマが呟いた。

「ドラグノマドでティアン相手に傷害殺人事件起こして指名手配になってたネ、違うかぃ?」

「あぁ、俺も知っているぞ」

グリゴリオが唸る。どうやら指名手配犯の目撃情報は確かなものだったらしい。その名は————

「【硬拳士(ハードパンチャー)】腕彦だな?」

「あらぁ、俺も顔が売れてんだね、嬉し恥ずかし」

腕彦はそう言って陽気に笑い、

「つうわけで、指名手配犯らしく通り魔でもすっかな」

拳を構えた。その足が踏み込む瞬間、グリゴリオが動く。

「《地塩土(ジエンド)》」

 その宣言とともに、グリゴリオの足が大地を踏み鳴らし、土埃と共にその足元が白く染まった。

「《塩害(メラハ)》」

 続いて成された宣言により、その白色……塩の塊が歪み、膨らむ。そして、大地から塩の結晶が杭のように襲いかかった。だが、

「効かねぇな!」

腕彦はそれを正面から受け止めた。その肌には傷ひとつついていない。

「抜刀ォ!」

 いつの間にか背後に回っていたシマが双刀を振るう。だが、その刃も等しく止められる。まるで木の棒ででもあるかのように。グリゴリオは塩の結晶を辺りに広げながら口を開いた。

「通り魔、と言ったな?お前のドラグノマドでの犯行の理由は口論と喧嘩からの私闘だったそうじゃないか。通り魔をやるようなタイプには見えん」

「あ?うるせぇなぁ、今日の俺は通り魔なんだよ」

「ほざけ!」

塩が飛び散り、グリゴリオが詰め寄る。

「言い訳が見え見えだぜ、お前、俺達に何か知られたくない事があるな?」

「例えば……市長について、とか?キヒヒ」

それを聞いた瞬間、腕彦の表情が変わった。両の腕を広げ、塩の柱を打ち砕く。

「うおおおお!俺は通り魔なんだよぉ!」

 その破壊の余波に吹き飛ばされながら、グリゴリオとシマは同時に同じ結論に達した。

「こいつゥ……」

「……単純バカだな」

 

◇◆◇

 

「何かあったな」

キュビットは厳しい顔で言った。突然の轟音。怒号。そして、通信の断絶。散開しての別行動は失策だったか、と頭を悩ませる。

「完全に異常事態だ、パラダイスたちに合流して、グリゴリオたちを回収しに…」

「……」

「カルテットは?どうするんだい?」

「た、多分状況的に藤堂さんと同じく、敵に接触を試みてると思われ……」

「うむ。口惜しいが、通信してこないと言うのは離反と捉えて良かろう」

その言葉にキュビットは深く頷いた。

「メアリー・パラダイスとAFXが優先だ。西側に向かうぞ」

そして、一行は足早に歩きだし……

「あらやだ、それは駄目よ」

瞬間、爆発に行く手を遮られた。土煙が巻き上がり、視界を茶色に染める。少し離れた通行人が慌てて逃げ出していった。

「……なんだ!?」

キュビットの叫びに、呼応するように煙が晴れる。

そして、土煙を吹き飛ばした()がキュビットたちの身体をもみくちゃに叩き散らした。

「あらあら、こんなものなのね……まぁ、アタクシが強すぎる、というのが悪いのだから、気に病まなくてよくってよ?」

「…ッ…誰だい、アンタ」

リンダの問いかけに、その人影……フリルの沢山付いた服を着こんだ、でっぷりと肥えた女が答える。栗色の髪を流し、化粧の濃い顔は嗜虐的に歪んでいた。深紅の宝石を嵌め込んだピアスがギラリと光る。

「【金雷術師】レディ・ゴールデン。以後、お見知りおきを……」

「GAW!」

そして、女の背後にいる黄色の竜が、その大きな尾を振り回しなから雄叫びを上げた。

 

 ◇◆◇

 

「……」

Moooの合図でソラリスが膨れ上がり、リンダが短剣を構える。キュビットは【司令官】のバフを起動し、ユーフィーミアを連れて一歩後ろへ下がった。Ⅳ世が馬上槍(ランス)を向け、レディ・ゴールデンとやらに向かって口を開いた。

「何故我らを襲う?」

レディは微笑みを浮かべ、答えた。

「そうね、貴方たちにとっては通り魔だと理解してもらって良いわよ?」

「市長との繋がりは?クーデターの一味のものか?」

それを聞くと、レディは愉快でたまらないというように顔を歪めた。

「ふふ、疑っているのね?でも、通り魔という言葉に嘘は無いのよ?確かに標的の選定にすこし恣意的なものがあるのは否めないけれど、通り魔だって襲う相手は選ぶもの」

そう言うとレディは贅肉を揺らし、

「さぁ、始めましょ?……フルゴラ」

「GAW!」

そして、黄色い竜が突進を開始した。瞬間、キュビットの脳裏に嫌な予感が走る。

(『フルゴラ』!ということは……)

「皆、離れ……」

「ふふふ……《雷庭(ガルテン)》」

 竜ーーフルゴラの尾が唸り、白く輝く。その光が弾け、周囲に雷撃が走り回った。踊る稲光があらゆるものを舐め、焼き焦がす。それに対応して、

「ぬん!」

ゴルテンバルトⅣ世が皆を守らんとその身で雷撃を受ける。更に、

「……!」

Moooが手を広げ、ソラリスが防壁として周囲に流れ出した。波打つ表面で電撃が踊る。

「【スライム】……相性はこちらが有利かしらね?」

レディの言葉通り、物理衝撃ではない雷撃はソラリスの体積を削り取っていく。

「この……!」

リンダが叫び、疾駆した。猫のような身のこなしでフルゴラに飛びかかり、短剣を突き立てる。だが、

「《雷掟(フェッセルン)》」

いかずちが集束し、リンダの身体を貫いた。しびれに耐えかねた身体が落ちる。その頭を踏み潰そうとフルゴラが前脚を掲げ……

「あら、うっかりしていたわ」

リンダの身体が蹴り飛ばされた。

「いけないわね、こちらでも闘わなければ……」

レディが右手を伸ばす。その手にはいつの間にか一振りの鞭が握られていた。鞭が唸り、風を切り裂いてリンダへと迫る。だが、

「させぬ!」

Ⅳ世が馬上槍でその鞭を絡めとった。鍔迫り合いのように槍と鞭がぶつかり合う。鞭が蛇のように蠢く。

「ただの武器ではないな?もぞもぞ動きおるわ」

「もっと面白いものもあるのよ?」

レディは笑うと、左手を威嚇するように広げた。

「《ゴールデン・グリッド》!」

金色の雷球が顕現し、そして鞭に吸い込まれるように消える。黒い鞭の上を火花が走り抜け、

「ぐ……!」

Ⅳ世を雷が襲った。鎧がパチパチと鳴り、煙が上がる。

「制御に難のある雷魔法を……鞭で伝導した?」

リンダが叫ぶ。ただの鞭でないことは明らかだった。レディが得意気に笑いながら鞭を振るわせる。

 と、その後ろから新たな人影が現れた。ローブを着こんだ厚着の男、三人だ。くすんだ色味のローブは砂にまみれて汚れていた。レディが訝しげな表情を見せる。

「そこまでだ!往来での戦闘など許してはおけん!我ら<トロワ・マジシャンズ>が成敗する!」

「ぬ……グロークスの<マスター>であるか……」

呻くⅣ世を無視して、その三人は杖を掲げた。光が迸る。

「おい、俺達も纏めて撃つ気か!?」

キュビットの抗議に、彼らは毅然と言い切った。

「両成敗だ!《クリムゾン・スフィア》!」

「《エメラルド・バースト》」

「《ホワイト・フィールド》」

三種の上級奥義がレディ含め彼らに襲いかかった。だが、

「ふふ、残念だったわね」

レディがⅣ世の槍から鞭を剥がし、素早く振るう。と、黒い鞭が上級奥義を絡めとった。凄まじいエネルギーの塊が鞭を伝って暴れまわる。

「お返しよ」

 そう言って、レディは<トロワ・マジシャンズ>に鞭を叩きつけた。三種の魔法が同時に炸裂し、主たる魔法職の脆弱な身体を粉々にする。

 その隙をキュビットは見逃さなかった。

「《喧騒曲:最終楽章(ヤマビコ)》、衝撃波!」

キュビットの宣言と共に、音の発展形たる衝撃波が指向性と威力を操作され、レディを襲う。だが、

「ハッ!」

レディは返す鞭で衝撃波さえをも絡めとった。その返報を受け止めたⅣ世が吹き飛ぶ。

「ヤマビコの必殺まで?」

キュビットが唸る。

「鑑定は不能。高位の特典武具か?魔法の伝導が能力特性?だが……」

キュビットの《鑑定眼》はかなりの高レベルだ。それで覗けないとなると……

「<エンブリオ>?いや、それはあのフルゴラのほう……」

 考え込むキュビットにフルゴラが突進をかます。その全身をいきり立つソラリスが覆った。迸る電撃に焼かれながらも、フルゴラを押さえつける。フルゴラのいかづちとソラリスの溶解消化が互いの身を食いあう。

「いずれにせよ、強い」

キュビットは渋面を作って言った。

 

 ◇◆◇

 

「強いな」

グリゴリオは吐き捨てるように言った。

 グリゴリオとシマの<エンブリオ>の能力は、どちらも物質……他者に影響するもの。ただしそれには前提となる条件が存在する。

 グリゴリオ……【塩害条約 ソドム】の場合は攻撃全般によるダメージ。シマ……【拡縮双刀 エビングハウス】の場合は<エンブリオ>による刀傷。

それが発動していないということは……

「ダメージが皆無……掠り傷すらも負っていないのか。対した防御力だ」

「お、それ褒めてる?ありがとう!」

「違う。疑問だ」

グリゴリオは静かに言った。

「強すぎる。貴様はせいぜい二流のちんけな犯罪者だった筈。だがこの手応え、準<超級>とさえ思える。……どんなトリックだ?」

「グリー、おれも気になることがあるんだよなァ」

土にまみれたシマがむくりと立ち上がり、口を開いた。

「こいつの左手、紋章が二つあるんだ……おしゃれタトゥーだと思うか?」

 そう、腕彦の左手には二つの紋章が刻まれていた。ひとつは左手の甲、雄々しい男を象った紋。そして、

「左前腕部、正方形と円を組み合わせた紋章。それはなんだ?」

 腕彦は答えない。代わりに、その掌が獰猛に構えた。

「そーいう問答はいいだろ!今度はこっちから行くぜ!」

そして、その拳が唸りをあげて二人に襲いかかった。殴打は地面を割り、手刀が石をも切り裂く。あまりの攻撃力に大気すら歪み、大地が弾けとぶ。

「【硬拳士】の……《我が拳、巌となりて》か」

「グリー、ヤバイぜ、こいつ」

《看破》を済ませたシマが目をパチパチさせて呟いた。

「硬いわけだ。END:200596……二十万越えなんて初めて見たな」

「つまりあの拳の攻撃力はその三倍ちょっと、ぞっとするじゃないか」

グリゴリオが顔をひきつらせる。

「END倍加のテリトリーにしたって強すぎるぞ……+αがあるな」

「特典武具は見当たらねェ。超級職も違う……キヒヒ、まるで……」

「2つ目の<エンブリオ>か?……どうも現実味が出てきたな」

 そう言ったグリゴリオの頭を腕彦の拳が掠める。一発でも直撃すれば致命傷だ。AGIが対して高くないのが救いだった。躱すことは出来る。

「おい、どうなんだ?」

「知らねぇ!俺は通り魔だァ!」

「それしか言えねえのか」

「《真偽判定》に反応アリだぜ、とことんバカだ、キヒヒ」

シマが嗤い、グリゴリオがため息をつく。

「そうでもないぞ、どんな嘘に反応してるのかが分からん。情報が少なすぎるな」

 グリゴリオが替えの鉈を取り出し……しばし逡巡してまた仕舞い込んだ。

「どちらにせよ、知ってることを吐かせてやらねばな……河岸を変えるぞ」

「……!いいぜ、グリー」

 そう言うと、二人は脱兎のごとく腕彦に背を向けて駆け出した。腕彦が呆気にとられて叫ぶ。

「おいおい、マジかよ、逃げるのか!」

「貴様のような耐久バカに付き合ってられるか!」

グリゴリオの発言に、腕彦の額に青筋が浮かぶ。

「俺から、逃げられると思ってるのか……!このバカ!」

 腕彦の拳が唸り、地面を殴り付ける。瞬間、後ろの町並みが爆発し、腕彦の身体が射出された。

「STR移動だと!?」

「あいつのAGIじゃ、走るよりあれのほうが早いって訳か。あのENDならそりゃ反動は無いだろねェ……まるでミサイルだぜぇ」

 町を切り裂きながら移動する腕彦を必死で躱しながら、グリゴリオとシマが走る。

「あの場所まで行けさえすれば……勝機はある!」

「勝機って言えるかい、コレ?」

二人は笑いながら走った。空では、太陽が傾き始めていた。

 

 ◇◆◇

 

 AFXは高台……町を見下ろす展望台で立ち尽くしていた。眼下に広がる町は午後の太陽に照らされて影を伸ばしている。

 グロークスは起伏の激しい都市だ。都市を囲む城壁は厚く、それだけで一つの建造物……内部に沢山の屋内施設を抱えている。その根元は掘削によりいくつもの深い谷が出来上がっており、橋やロープウェイが架けられている。その地下は黒々としていて底が見えない。翻って、都市の南側には元の地面の高さを活かした高台が広がり、南北の傾斜を作っている。その美しい景色を前に、彼の顔は憂鬱だった。

 メアリーの言葉がずっと頭に残っていた。自分勝手。確かにそうだったのかもしれない。自分の都合に溺れ、自らの不幸に怯え……

「そりゃ当然か、端から一線引こうとしてればな」

 とはいえ、訊いてきたのはあっちじゃないか……AFXはため息をついた。メアリーは見つからない。キュビット達に合流しに行ったのか、単独行動しているのか。

 AFXは左手の紋章に目を落とした。これが自分の本質を読み取っていることは事実だ。裏切りへの恐怖と、他人への開き直り……攻撃性。

「<エンブリオ>にしてしまう程拘ってるんだものなぁ……」

 AFXは踵を返し、歩き始めた。メアリー達に合流しなければならない。

 

 

 そして、町のほうから爆発音が響いた。落雷が光り、土埃が舞い上がる。地響きと叫び声が聞こえる。

「……!」

AFXの顔が厳めしいものになる。

 無関係な事故、事件であれば良い。だが、

「そうは思えないな」

市長の疑惑や、その他さまざまな可能性が脳裏を走る。悪い想像などいくらでも浮かぶ。すぐさまAFXは走り出した。そして、

「《冷凍光線(ケイモーン・アルパ)》」

その移動の先に光が突き刺さった。白い煙が溢れ、湧き出した氷の壁が行く手を阻む。痛いほどの冷気が肌を刺す。

「!?」

 動揺するAFXが光の来た方を振り向く。頭上、空高く。そこには、

「はじめましてだな、そして、さようならでもある」

巨大な白い鳥に跨がった、冷たい目の女がAFXを見下ろしていた。

「誰だ!」

「【高位従魔師】白色矮星。あるいは……ただの通り魔と呼んでくれても、いい」

女はそう言うと、酷薄に笑った。

 

 To be continued

 

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