今日は大の苦手な体育がある。頭は悪くは無いが、運動神経は、今の私はあまり良く無い。
種目はサッカー。昔は野球だったらしいけどあまりにもすごい生徒が二人居て、あまりにも試合にならなくなって、それ以来サッカーに変更されたらしい。
あれ?何かそんな人達に覚えが……。
憂鬱になりながら、リボーンに行ってきますと言って家を出た。……あの赤ん坊、自分の分の弁当も当たり前の様に要求して来た。
家から出ないくせに。
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「うわー最後に駄目ツナ残ったし」
「俺のチーム入れたくねーよ」
「俺だって!!」
体育の時間が来てチーム分けがあると、いつも私はこんな扱い。役立たずな自分を何所のチームに入れるかで揉めている。私は肩身狭く縮こまっていた。
「なんだよお前ら」
「それならお前は俺達のチームに入るといいのな」
私はそう声を掛けられて誰かに引っ張られる。
「獄寺君、山本君……」
……そして雨と嵐の守護者の息子。
まぁ、あっちは私が『沢田 綱時』だって事は知らないはずだけども。
2人が誘いをかけてくれたのは凄く嬉しかった。と言うかさっきから、山本君は私の肩に腕を掛けて軽く体重をかけて来ているんだけど。……結構恥ずかしい。
長い間森に引きこもってた所為で、私はコミュ障を変にこじらせていた。というか、引っ越してくるまで全く男子との付き合いが全く無かったから、男子との距離感が掴みにくい。
「いいのか!?ダメツナだぜ?」
「サンキュー!二人は強いから良いハンデだぜ!!」
ぶちっ
今、山本君からなんかキレた音がした!?
「コイツはハンデなんかねーからな」
彼がそう言って笑うと皆が一斉に固まる。笑ってるけど明らかにキレてる。獄寺君は、はぁ…とため息をついていた。
「澤田!!絶対勝ってあいつらビックリさせようぜ!!」
両肩を叩いて山本君はそう言った。ちょ、痛い。痛い。
悪魔が見ていると思ってはいたけど、私は明らかに浮かれていた。
「まさかあいつ等の息子も、並森に居るなんてな」
現在1-0こっちが勝ってる。……けど、どちらもあの二人の活躍でだし。まぁ、俺が運動で脚光を浴びるとか無いよな。運動とか駄目駄目だし。……本当は運動も、だけど。
けど少しでも役に立てたらいいな。誘ってもらえて嬉しかったから。
「澤田!!」
山本君からこっちに、正確なボールが飛んでくる。
と…取るぞ!!
「アイタッ!?」
しかしそのボールは俺の顔面に直撃した。
「ラッキー」
さらにボールは敵の方へ。そのまま点を入れられて、追いつかれてしまった。
あぁ。やっぱり、やっぱり俺……
「どんまい、気にするなって」
そう山本君が声をかけに来てくれた。
山本君は優しいな……。さっきもかばってくれたし。
「ごめん。やっぱり、オレ……」
俺が何やっても駄目なんだ。
どんっ
「!!?」
「こんな序盤で諦めてんじゃねーよ。それこそ駄目だろうが」
それだけ言って獄寺君は走っていった。
オレだって!!…だけど……。
はぁ…はぁ……。
後半に入って、俺はバテながらも一応走ってはいた。そして前にはボールを持った敵が走っていた。
何時もならここで諦めていた。けど、けど!!!
そう思って追いかけても、どんどん突き放されていく。ついには足がもつれて転んでしまった。2人の心配する声、そしてそれ以上に聞こえる周りからの笑う声。
……あぁ。やっぱり……。
その時何か眩しい物が目に当たってそっちを見ると、リボーンが銃をこちらに向けて構えているのが見えた。……って銃!?
ズガンッ!!
突然頭に衝撃が走った。
……え?俺死ぬの?あぁ……死ぬんなら。
「澤田!!勝ってあいつらビックリさせようぜ!!」
「こんな序盤で諦めてんじゃねーよ。それこそ駄目だろうが」
自分だけのためじゃない。俺に声をかけてくれた二人のために、何か役に立ちたかった。
周りの景色が凄く遅い。けれど何時まで経っても、俺の意識が途絶えて死ぬ事は無かった。
「……あれ?」
なんだか身体が温かいと思いながら、立ち上がった。体が軽い!?軽く走り出した体は、さっきまでの疲れなど全く覚えていないかのようだった。
これなら……いける。違う、今死ぬ気でやるんだ!!!
「死ぬ気で役に立つ!!」
そう小さくつぶやいて加速した。
「うわっ!!?」
敵からボールを取る。
「こっちだ澤田!!!」
山本君が手を振っている。
オレは本気で蹴った。
ダンッ!!
しまった、強すぎた!?
「ナイス澤田!!」
蹴ってからそう思ったが山本君はちゃんと取ってくれた。そしてそのまま山本君のシュートが、キレイにゴールネットを刺した。
ピィィィイイイイ!!
結局5-1で俺達のチームは勝った。1ゴール2アシスト。
「終わった……」
そう言った瞬間、気が抜けたのかかくんと膝が折れた。
……勝った…かっ!?
どんっ!
「やったぜ澤田!!」
俺に飛びついてきたのは、獄寺君だった。
「ずるいぞ颯!!」
続いて山本君も飛びついてくる。獄寺君が俺の頭をわしゃわしゃとなでながら、
「お前凄かったぞ!!オレ見直しちまった!」
そう言ってくれた。
「そうそう!今日の澤田は凄かったのな!!」
「ありがとう!山本君、獄寺君オレ……」
他のチームメイトもノリで飛びついて来て、押しつぶされながらやっぱり三人で笑っていた。
「じゃあなツナ」
「ツナ!また明日な!」
「うん!」
今日は三人で帰ろうって、山本君が誘ってくれたんだ!しかもオレの事をツナって呼んでくれるって!!……友達が出来たみたいで、凄く嬉しい。
スキップをしない様に、浮かれすぎている気分を押さえながら帰り道を歩く。
「良かったじゃねーか」
「リボーン!?」
塀の上を歩くスーツの赤ん坊が居た。にやりと笑うその笑い方は、とても赤ん坊らしく無くて、寒気と嫌な予感を呼んだ。
「着実にファミリーを増やしているみたいだな」
「は、はぁ!?ち、違う!!」
俺は全力でブンブンと手を振る。せっかく俺に良くしてくれてる2人を、マフィアなんかに関わらせるつもりは無い。
「それにマフィアにはならないって言っただろう!?」
頭の中に黒いスーツを着た怖い人が、抱えた銃で人を打っていく姿が浮かぶ。
「何もマフィアは悪い集団って訳じゃないんだぞ」
「は?」
「その始まりは自警団だからな。町の弱い奴らを守るのがマフィアの役目なんだぞ」
そう言って表紙の黒い一冊の本を取り出し、これを読めば分かるぞ。とか言いながら渡して来た。
嘘臭い!!
スチャ
「ひぃ!?」
リボーンは嘘じゃねぇと言いつつ銃を向けて来た。
「……何度も銃を向けて来るやつから、そういわれても説得力0だから!!」
「お前の父親である『沢田綱吉』が、血を血で洗うボンゴレとマフィア社会を変えたんだ」
一気に心が冷えた。
「ねえリボーン。それで父さんは死んだんじゃないの?」
マフィアに殺されたんじゃないの?
「……」
「オレはマフィアにはならない」
「……きっとリボーンには分からないよ。誰も居ない家に『ただいま』って言うオレの気持ちなんて」
リボーンは真っ直ぐ俺を無表情で見たまま、何も言わなかった。
暗く深いその黒い瞳を見ていられなくて、目をそらした俺はそのまま走って帰った。
****
私は布団にもぐり込んでいた。あの言葉は、ただの勢いで言った言葉だった。だけど背中に感じたリボーンの心は、深く悲しんでいた。
……なんて事を言ってしまったんだろう。
生徒の死をリボーンが悲しんでない訳なんて無いのに。
「「いただきます」」
静かな中だけど、私達は律儀にそう言ってから食べ始める。
……。
「リボーン」
「なんだ?」
「さっきは当たってゴメン」
「気にすんじゃねぇ。お前をずっと一人にしちまったのが、
「……オレさ、今はそんなに寂しくないよ。リボーンが来て、一人じゃ無くなったから」
耳が熱くて、今にも溶けそうだ。
「…そうか。もうお前を一人にさせねぇから安心しろ」
そう言ってこっちを真直ぐ見てきた。
ニヤリ
「それに
「だ・か・ら!!マフィアにはオレはならないの!!」
その後、今日学校で何をしたかとかをリボーンに話した。
「そういえば、まだ言ってなかったな」
「?」
「お前が体育の時間にどうして急に身体能力が上がったかだぞ」
「そういえばいきなり銃を!?って、アレってリボーンのお陰だったの!!?」
やっぱり『死ぬ気弾』!!?けどあの感覚は……。
「そうだぞ、コイツを使ったんだ」
「……銃弾?」
死ぬ気弾来たー!!
「死ぬ気弾と言って、ボンゴレに伝わる特殊弾だぞ。コイツを脳天に撃つと普段押さえられている身体の全力を出せるんだぞ」
「す…すごい」
あれ……全力?それだったらどうして戻らなかったんだ?……まぁ助かったけど。と言うか危なかった……。
死ぬ気弾の所為で
「まぁ、『死ぬ気』になれるような後悔が無いと死ぬけどな」
「っておい!!もしもオレ死んでたらどうするんだよ!!」
「オレは殺し屋《ヒットマン》だぞ、そんなの気にするか」
「気にしろ!!!!」
賑やかな一日は今日も過ぎた。
それにしても……死ぬ気弾打たれて服脱げなくて良かった。けど、死ぬ気モードとアレが違うのなら、どうして似た感覚が……?
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アイツの死ぬ気は、
ー彼の人生を変えた銃弾。
ーその違いに意味はあるのだろうか。
次は明るい話を目指そう。うん。
一話を長くするとシリアスで必ず終わる不思議。