私は何故この能力を発現したのだろうか。
私の転生には『神』が居ない。性格にはどこぞの小説の様に、転生させてくれる神様の類に会った記憶が無い。
……持っていなければ、女として生きる事を諦められたのに。
私は転生したときから『私』の記憶があったが、それ以外はただの赤子にすぎなかったのに。
その能力が発現したのは3歳の頃だった。
いきなり体が熱くて苦しくなって、体から何かが溢れ出て行った。そして、遅れて濁流の様に人の『心』が喜怒哀楽の区別無く押し寄せて来たのだ。
他人の心に飲まれて絶叫を上げた後、昏睡した私が再び目を覚ましたのは三日後だったと聞いている。
そして起きた私は、当たり前の様に『精神干渉能力』の使い方を理解していた。
ボンゴレの血《ブラッド・オブ・ボンゴレ》の『超直感』もその時目覚めた。
そして力を使うと私は女になるのだと知った。
夜の時間が来た。それは、『私』が自由で居られる刹那。
翔也に出会った日の真夜中、寝たまま私は能力を発動する。広げた意識が触れた隣の小さなそれをを、夜へと
少しずつ、深く、深く、夜闇に優しく包みこむイメージで……。
リボーンが『眠り』に付いた事を確認した私は、自分の奥へ潜って鍵を開けた。
「……服、どうしようか」
夜空の元、刹那の自由へ駆け出した。
****
夜に来ると言っていたし、何所で落ち合うかも決めていなかった。
最初は始めて会ったあの公園へ行こうかと思ったが、色々な面倒を考えて応接室に残っていた。
「翔也」
そして僕の目の前には、あの日見たままの少女が居た。
少し大きい男物の服を着ていた。とても昼間に外を出歩ける様な服装ではない。
「何、その格好。風紀が乱れる」
「男物しか無いんだよ、表向き男の一人暮らしだったんだし。女物の服が合ったら……ね」
気まずい間が空いた。
「……で、いいのナツ?君、監視は?」
「監視は大丈夫。リボーンが凄腕のヒットマンだから、他に監視は要らないと思ったんでしょうね。誰も居なかった。おかげさまでこうして、
リボーンは寝させたし。彼女は嬉しそうな顔をしてそう言った。
「ふぅん。強いんだ、あの赤ん坊」
「少なくとも、今の貴方じゃ勝てないよ?」
ワォ……それってさ。
「まるで君なら勝てるとでも言いたそうだね」
「……まぁ。本気でやるなら人間相手に私が負けることは無いだろうね」
彼女はその言葉に目を丸くして驚いたと思うと、苦虫をかみつぶした様な顔をして静かにそう言った。
「そういえば、昼間のアレって何?」
「あぁ。あれ、私の能力。所為『テレパシー』って奴」
「ふぅん。君って色んな能力持っているよね」
女になるのと、変な場所に潜るのと……。
「翔也が見たのは今の所一つだけだよ。使い方を変えているだけでね」
****
「なるほどね……」
私は能力の事を翔也に話した。
私が前世の記憶を持っていることも。
女になると異常に戦闘能力が上がることも。
……全ての人間を操れるこの能力のことも。
さすがにこの世界が漫画の未来、って事は伏せたけど。
「そういえば、私翔也との約束の事『弱いから、守って』ってことにしたから。まぁ、男だと素で弱いしね。ちょうどいいかなって思って」
翔也と話すのは気を使わなくて済むので楽だ。
それは外見や精神年齢と関係無く普通に話せるということ。
後は、翔也自体が大人びているから。
いちいち一つづつ説明しなくても良くて、私が話しやすいのもある。
「そう」
「感覚としては、『共犯者』に近い感じがするけどね」
「……そうだろうね。
そういえば、君の事を知っている人は他に要るの?」
「両方なら、後一人しか居ない。今イタリアにいるけどね。可愛い弟みたいなものだよ」
……うん、ちょっと遊びすぎたけどね。あれは。
「私だけなら少し。逃げる時のために、色々伝手を作っておかないとって思ったし」
「それで、君は何から逃げたいの?」
そう、コレが今日の本題。
「NO1マフィア、ボンゴレファミリーとマフィア全般かな」
「マフィア?」
どうやら翔也はマフィアの事を聞かされていないらしい。
「そう。翔也ってお父さんの名前、恭弥だったりしない?」
「そうだけど。それがどうかしたの?」
「やっぱり。翔也のお父さんも『一応』ボンゴレの人だから」
「父さんがどこかに所属するなんて思えないけど」
まぁ。それもそうだろうね。
「だから一応。雲の守護者の使命は、『何者にも囚われることの無い孤高の浮雲』。非常事態以外は呼ばれないんじゃないかな?」
「……確かにそれなら父さんはぴったりかもね」
納得したようだ。
雲の守護者『
雨の守護者『
嵐の守護者『
雷の守護者『ランボ』
霧の守護者『
晴の守護者『
大空のボス『
「コレがボンゴレの幹部。ボスであるお父さんはもう死んでるけどね。後晴の人は、私の母の兄だから私の叔父さんだったりする。
今日翔也が会ったあの二人は雨と嵐の子供。それで貴方が雲の子供で、もう一人の協力者は霧の子供」
「……それって」
ここまで言うと気が付くよね。さすがに。
「本当にビックリする位。私の周りって、ボンゴレ関係者だらけだよね……」
まぁ、今周りに多いのは、私の保護目的かも知れないけど。
「多分、明日にもリボーンが翔也を勧誘に来ると思うよ。『お前もツナのファミリーに入れ』って」
「そういえばツナって呼ばれてるの?」
「あぁ、そっちの名前言ってなかったね。澤田綱時でツナ。
『ナツ』は昔の呼び名って事にしといたから、今度指摘したらちゃんと変えてよ?」
「分かった」
今日私達は『昼間に応接室でしか合っていない』のだから、すぐに変える訳にもいかない。
「あと、ファミリーの話断ってね?まぁ翔也が受けるとは思わないけど」
誰かの下に付くの嫌がりそう。
……いや、私の直感は『受ける』と出たから止めに来たのだけど。
「……じゃ無いとさらにボスが近くなる」
私は遠くを見る目をした。
「ボンゴレのスパイは、もう一人の子に頼もうと思ってるの。幻術使いだから、向いてるしね」
ピク
「……分かった」
「……翔也?」
「そういえば、『笹川』に聞き覚えがあるよ」
「マジで?」
「君より二つ上で、柔道部の部長しているはず。今度調べておくよ」
「ありがと。でも今は名前だけでいいよ、ボンゴレにバレたら本気で不味いし」
……美味いことはぐらかされたな。
「まぁ、と言うことで家族にもこの話とか内緒でお願いね?」
『雲雀恭弥』と『六道骸』は協力してくれるかも知れないと思いはした。
けど迂闊な想定で動くなんてことしない。
それに直感が『ダメ』だと言っていた。
「話すつもりも無いよ。君と僕の『秘密』だからね」
そう言って翔也は微笑んだ。
私の心臓がドキリと一つ心臓が動いた。
翔也は顔がいいからマジでヤバイ。女子として色々と。
……まぁ、表面上は一瞬で無理やり抑えたけど。
「あぁ、コレに関する会話をするときは絶対にこっちから話掛けるまでダメだから」
「?」
「電話とかは、私のほうでプロテクト掛けても多分翔也のほうからたどられる。監視カメラとか盗聴器とかも警戒しないと。それにプロの気配はまだ翔也には気がつけないと思う」
私の場合はチートのおかげで大体分かったりする。
「そんなに警戒するんだ」
「相手は世界最大のマフィアだからね」
「そうこなくっちゃ。面白くないよ」
翔也の笑みがニヤリに変わる。
こうして二人での打ち合わせは終わった。