10年越しの再会   作:幸(pixivでも活動中)

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幸福の天使

二人分の体重で軋むベッド…

ジェラールの深い口付けに必死で応える…。

 

「…ンっ、んぅ……!」

「………」

 

……少し息苦しいけれど、

なんだか頭がぼ~っとしてきた…

私の表情を見たらしいジェラールは

唇を離して胸を揉み始めた。

 

「……んっ、ゃ…ぁあ…!」

「…嫌じゃ、ないだろう…?」

 

ジェラールは意地悪な笑みを浮かべていた…

胸を揉みながら、耳朶を甘噛み…

 

「っ、や……やめ…!」

「ここまで来て、止める筈ないだろう…?」

「ジェラー…っ、んん…!」

 

鎖骨から胸元に舌を這わせられて、

背筋がゾクゾクした…

 

「…我慢強いのは結構だが、

そういう表情は相手を欲情させるだけだ…」

「っ…よ、欲情って……!?」

「…俺だけがウェンディのそういう一面を

知っているのだと思うと、少し…興奮するな…」

「…興奮、って……ひゃ!」

 

ジェラールの舌が胸の先で止まっていた。

 

「……ジェラー…ル?」

「………愛している…」

「…わ、私も…だよ……ジェラー…っ」

 

私が言い終わっていないのに

言葉はいらないとでも言うかのように唇を塞がれた…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

今日もジェラールより早く目が覚めた。

理由は……昨晩そういう事をやったからで…

そういう事をした翌日は決まって早く目が覚めて……

 

現在、抱き枕状態の私は違和感を感じた。

腰が痛いのは……いつもの事だから

いいんだけど、今朝はなんだか

頭が酷くぼんやりとしてて……

暑いのか寒いのか、よくわからなくて…

 

「…ジェラー…ル…」

「……………ウェンディ…?」

「頭がぼんやりするの…」

「………」

 

ジェラールが私の額に手を当てた。

あ、少しひんやりしてる…

 

「…熱があるな」

「熱…?」

「ああ、少し待っていてくれ…」

 

ベッドから抜け出て、私の傍から

離れて行こうとするジェラールの腕を掴んだ。

 

「…ウェンディ?」

「…行かないで…」

「……すぐに戻る」

 

私の手を振り解いて

部屋から出て行ったジェラール…

 

「………ジェラール…」

 

少し寂しく思ったけど、眠る事にした…

 

「……ジェラール、早く…戻ってきて…」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「ウェンディ、今戻っ…」

「………」

 

俺が部屋に戻った時、ウェンディは眠っていたが、

その顔には涙の痕があった…

 

「…すまない…」

 

そう言って、冷え〇タを彼女の額に乗せた。

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「…っ……?」

「…大丈夫か?」

「ジェラール…」

「…食事は出来そうか?」

「…うん」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

お粥を食べて、水に溶けた粉薬を凝視中…

 

「これ、苦い…?」

「ああ、かなり苦い」

「………」

「自分では飲めないようだな。

俺が飲ませてやろう…」

「え?」

 

飲ませる…?

あれ?なんでジェラールが薬飲んで……?

………なんとなく意味がわかったから、

とにかく逃げようとしたけれど………

腕を掴んだ後、後頭部に手を添えられて……

ジェラールが行ったのは、口移し…

とても苦かったけど、なんとか飲めました。

 

「…ちゃんと飲めたな…」

「……うん…」

「…どうだった?」

「……何が…?」

「口移しの感想だ」

「………びっくりした…」

「そうか…」

「…あの…眠っても、いい…?」

「ああ…」

 

そう言ったジェラールは

私の口端に付いていた水を舐めて、

私を抱き上げてベッドに降ろした…

 

「ゆっくりと眠るといい…」

「……おやすみ、ジェラール…」

 

額に口付けられて、指を一本一本絡められた。

 

「ジェラール…」

「今日はずっと君の傍にいるから、安心してくれ…」

「うん…!」

 

幸せを感じて、目を閉じた…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

…鳥の、囀り…?

 

「…っ……」

「……起きたか?」

「…ジェラール…」

「熱は……下がったようだな…」

「…うん」

「…よかった…」

「看病してくれて、ありがとう…」

「…いや」

「…ジェラール」

「どうし…」

 

ジェラールにキスをした…

すぐに唇を離したら、後頭部に手が…

 

「ちょっ、ジェラー…っ!」

「ウェンディ…」

「……っ…」

 

施された深い口付け…

なんだか、いつもより熱く感じて…

服の上から胸を撫でられた…

 

「っっ……!」

「……いつもより熱いな…」

「ジェ、ジェラール……」

「なんだ?」

「看病のお礼のつもりだったんだけど…」

「そうか」

「…ジェラールは…何を思って……」

「誘っているのかと思った」

「っ!?」

「病み上がりの妻を襲うわけないだろう?」

「つ、妻……」

「…そう呼ばれるのは、まだ慣れていないんだな…」

「…うん」

「…ウェンディ」

「?」

 

ジェラールは頬、額、唇の順にキスを落とした後、

私を抱きしめてきて…

 

「行って来る」

「…い、いってらっしゃい…」

 

仕事に向かったジェラール…

 

「………」

 

暇になったから、着替えて…出掛けることにした…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

―夕方・城下街―

 

ウィンドウショッピングを楽しんで

今、城へ帰る最中です。

 

(ジェラール、もう仕事終わってるかな…)

 

そんなことを思っていたら

 

「ウェンディ」

「あ、ジェラール」

 

変装中のジェラールが現れた

 

「帰ろうか」

「うん。………わざわざ

迎えに来てくれて、ありがとう…」

「…結婚式直後のようなことが

あっては困るのでな…」

「…ごめんね…」

「俺は君を誰かに取られるのが嫌なだけだ」

「ジェラール…」

「帰ろう…」

「…うん」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

食事を済ませて、現在二人で入浴中です。

……未だに私はジェラールに

背を向けて体を洗ってます。

理由は…明るい所で裸体を見せるのは、

まだ抵抗があるからで……

 

「ジェラール、後ろ…向いててね…」

「ああ」

 

ちらりと後ろを振り向くと、

ジェラールはちゃんと後ろを向いてくれていた。

浴槽に身を沈めて……

少し経って、後ろから抱きしめられた。

 

「ジェラー…ル?」

「………」

「どうかし…」

 

耳朶に、生暖かい何か…舌が当たって…?

 

「ジェ、ラー………ル…ッ」

「……どうした…?」

「何、して…っ!?」

「…悪戯だが?」

「……………」

「…病み上がりの妻を襲う気は無い」

「本当…?」

「ああ」

「…よかった」

「…どうかしたのか?」

「!…大丈夫、だと思う…」

「そうか…?」

「…うん」

「…こちらを向いてくれるか?」

「うん」

 

ジェラールに向き直ると、改めて抱きしめられた。

 

「…愛している」

「……私もだよ…」

 

『例の日』から一月は経つけれど、

どうしてか…何の兆候も無い。

…もし、私が考えていることが当たっていたら

嬉しいけど、違うよね…

 

妊娠、しているかもしれないなんて…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

暗い、暗い…。此処はどこ…?

 

―グランディーネっ!―

 

あれは、幼い私と……グランディーネ…

ああ、私は夢を見ているんだ…

 

グランディーネ……私の、お母さん…

 

―グランディーネ、ずっと一緒にいようね…―

 

その言葉に頷いてくれたのを、

私は今でも覚えている…

 

(グランディーネ…)

 

『……ディ…』

(…え…?)

『ウェンディ…』

(グランディーネ…?)

『…ウェンディ?』

(グランディーネ……私は元気だよ)

『そうみたいね…

とても幸せそうな顔をしているから』

(グランディーネは、寂しくない…?)

『大丈夫よ、ウェンディ』

(グランディーネ、私ね…)

『……子供でもいるの?』

(えっ!!?)

『貴女から違う命の気配がしたのよ』

(本当…?)

『私が貴女に嘘をつく必要があるのかしら…』

(うれしい…っ)

『そっちで上手くやっているようで安心したわ…』

(妖精の尻尾の皆は…)

『…シャルル、と言ったかしら…

その子が私に貴女の近況を聞いてきたの』

(シャルル…)

『今日貴女から聞いたことを伝えておくわ』

(ありがとう、グランディーネ…)

『幸せにね、ウェンディ……』

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「…ん……」

「…もう起きたのか」

「…ジェラール…」

「おはよう、ウェンディ」

「…っ…おはよう…」

 

夢でグランディーネに

言われた事を思い出して、赤くなった…

 

「…ウェンディ?」

「ジェラール、あのね……

言わないといけない事があるの…」

「…?」

「私……妊娠、してるみたい…」

「……本当、か?」

「うん、グランディーネも言ってたよ」

「……どうやって、グランディーネに会ったんだ?」

「…夢だけど、しっかり覚えてるの」

「…そうか」

 

何故か、右手首を掴まれて…

 

「ジェラール?」

「…ウェンディ」

 

そのまま、押し倒された…

 

「……あ、の…?」

「…暫く、見れなくなるからな…」

「…何が?」

「ウェンディの『可愛い』姿だ」

「っ!!?」

 

ジェラールの言葉の意味は、理解できた。

だからこそ、身の危険を感じた…

 

その直後、唇を塞がれて……

舌が侵入してきたのがわかった。

 

「…ん……ッ」

 

執拗に…何度も何度も舌を絡められて……

その間、私は目を強く閉じていた。

呼吸が苦しくなってきた頃に舌を吸われて、

唇が離れた後に目を開けた…

 

「…可愛い姿が見れた…」

「…ジェラー……ル…」

「暫く、我慢できそうだ…」

「…ここから先は、しないんだね…」

「妊娠しているのだから、

そんなことをする筈ないだろう…?」

「よかった…」

「皆が起きる時間になったら、医者に診せに行こう」

「…うんっ」

「ゆっくり過ごそうか…」

「…ベッドで…?」

「ああ」

「………」

「……………」

 

ジェラールに抱きしめられて長時間過ごしたので……

私はまともに頭が働かず、ぎこちない動きしか

できない状態でお医者さんに

診てもらうことになりました…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

検査が終わって…

 

「…陛下、王妃様…」

「……早く言ってくれ」

「………おめでとうございます!」

「…!」

 

ジェラールは、私を抱きしめた。

私は真っ赤になった……だって、

少し前まで抱きしめられてたから…

 

「っ……!」

「ウェンディ…!」

 

腕に力が込められた…

 

「…陛下。嬉しいのはわかりますが、

王妃様の意識がありません…」

「!ウェンディっ!?」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「…ん……」

 

何故かベッドに横たわっていた私…

 

「大丈夫か?」

「…ジェラール…っ」

 

また、抱きしめられた…

 

「……ウェンディ…」

「……どうしたの…?」

「…愛している…」

 

頬に片手を添えられた後、ジェラールの顔が

近づいてきて……ゆっくりと唇を重ねられた…

 

すぐに唇は離れて、お腹を撫でられた。

 

「…ウェンディ」

「…?」

「寂しい思いはさせたくない…

だから、できるだけ早く戻るようにする………

仕事に行ってもいいか…?」

「いってらっしゃい、私…待ってるね…」

「ああ、行ってくる」

 

部屋を出て行ったジェラール…

 

「……ウェンディを、頼んだ…」

「…?」

 

ジェラールの姿が見えなくなると、

長い緋色の髪が視界に映った…

 

「…エルザ、さん…」

「…エルザ・ナイトウォーカーだ。王妃よ、

貴女はアースランドの私を知っているのか…?」

「はい、私は妖精の尻尾の魔導士でしたから…」

「…エルザは、元気か…?」

「幸せに暮らしてますよ」

「そうか…」

「……あの…エルザさんはジェラールに

頼み事でもされたんですか…?」

「陛下のいない間、

貴女の世話と護衛をするようにと…」

「そうですか…」

 

エルザさんは私に跪いた…

 

「あ、あの…」

「誠心誠意、貴女に仕えることを誓う…」

「仕える…?………じゃあ、普段通りに過ごして……

友達になって下さい」

 

こんなことを言い出した理由は、

国の皆が私を王妃扱いして

『ただのウェンディ』として見てくれないから……

ジェラールしか、そういう風に見てくれないから……

友達を一人でも作りたかったから…

 

「……は?」

「これは王妃としての命令じゃなくて、

ただのウェンディとしてのお願いです」

「しかし…」

「ダメ…ですか…?」

「………」

「エルザさん……」

「……わかり……わかった」

「ありがとうございますっ!」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「ウェンディ、今戻っ………」

「あっ、ジェラール!」

「陛下…」

 

ジェラールが目を白黒させていた。

 

「ナイトウォーカー…?」

「なんでしょうか」

「…ウェンディ?」

「友達になってもらったの!」

「……そうか…」

 

ほんの少し、微笑んだジェラール…

 

「では、これにて失礼します」

「また来て下さいね、エルザさん!」

「ああ、ウェンディ…」

 

エルザさんが見えなくなると、

突然ジェラールに抱きしめられた…

 

「……ジェラール?」

「…寂しくなかったか…?」

「エルザさんが友達になってくれたから、大丈夫…」

「そうか…」

 

一瞬、唇を重ねられた…

 

「ジェラール…?」

「…ナイトウォーカーに

嫉妬するとは、俺も重症だな…」

「…嫉妬…?」

「ああ、…食事は済んだか?」

「うん」

 

私は俯いていたから、ジェラールが

笑みを浮かべているのに気付かなかった…

 

「先に入って待っている…」

「うん、わかった…」

 

ジェラールがバスルームに行って、

私はジェラールが少し前に増設した…

私専用の衣装室(ジェラールには無い)で

下着とパジャマを選ぶ…

 

…そういえば、ここにはプレゼントされた服以外に

膨大な量の下着と衣服があるけれど、

私はその殆どを自分で選んだ覚えがない。

つまり、ジェラールが買って来ているということで…

…しかもサイズがぴったり合っていて……

 

………ジェラール、凄いね…

 

「…これとこれにしよう…」

 

シルクのパジャマと

レースがあしらわれた下着を選んで脱衣所に向かった

下着まで脱いで、自分の身体を見た。

…衣服で隠せる部分のあちこちに

無数のキスマークが刻まれている。

これは……あの、ジェラールと

そういうことをした時に基本的にされることで……

 

タオルを身体に巻き付けて、

バスルームに足を踏み入れた。

 

「………」

「ジェラール?」

「!ウェンディか…」

「どうかしたの…?」

「…いや」

「?」

 

少し不思議に思いながらも、

私は巻き付けていたタオルを取ってから

シャワーで身体を流して……

 

ザバ…ッ

 

「え」

 

振り向く前に、後ろから抱きしめられた…

 

「……ジェラー…ル…?」

「…ウェンディ」

 

耳元で囁かれて、吐息が……っ

 

「ジェ…ジェラール?私、今…裸…っ」

「知っている」

「ならっ、離れて…」

「ああ、少し待ってくれ…」

「…?……っ!!」

 

項のほんの少し下…多分衣服を着ても

見えるか見えないか…という場所に唇を落とされた。

 

「ジェラー………んっ!」

 

少しの間そこを吸われて、

唇が離れると同時に身体も離れた…

 

「……俺は上がることにする」

「……うん」

 

バスルームから出て行ったジェラール。

私は暫くシャワーを浴びて、きちんと身体を洗って、

少し浴槽に浸かった後、脱衣所に向かった。

身体を拭いて、頭を乾かして、パジャマを着て……

部屋に戻るとジェラールは本を読んでいた…

 

「…ジェラール」

「案外、早かったな…」

「そう…?」

「…寝るか?」

「うん」

 

二人でベッドに横たわる…

 

「ねぇ、ジェラール…」

「どうした?」

「腕枕、して…?」

「…わかった」

 

ジェラールが私の方に腕を伸ばしてきたから、

少し頭を上げて……腕枕をしてもらった。

 

「…ふふ」

「幸せそうだな…」

「うん、……グランディーネに、

ジェラールを紹介…したい…な…」

「……ああ、俺も君の母親に会ってみたい…」

「……ジェラー…ル…」

「眠いなら、眠った方がいい」

「…ん……おやすみ…ジェラー…」

「おやすみ、ウェンディ」

 

唇を重ねられた記憶を最後に、

私は眠りに落ちていった…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「……ん…」

 

何故か、花畑で眠っていた。

…隣にはジェラールがいて…

 

「…ウェンディ、ここは一体…」

「……夢、なのかな…」

 

『……ウェンディ…』

 

「グランディーネ…?」

「!」

 

突然現れたグランディーネ

 

「グランディーネ、どうしたの?」

『……貴女だけを呼んだつもりだったのだけど…』

「あのね、グランディーネ。この人は…」

「ジェラール・フェンリルだ。

昔はミストガンと名乗っていた…」

『貴方が…私がいなくなった後、

ウェンディを救ってくれた子?』

「ああ…」

『ありがとう、貴方のお陰で

ウェンディは独りにならずに済んだわ…』

「あれは……偶然だ」

『それでもウェンディを救ってくれたのは事実よ。

……大体予想はできるけど、

貴方達二人の関係は…?』

「え……それ、は…っ」

 

『グランディーネに紹介したい』

そう思ったのは事実だけど、

関係を言うのは恥ずかしい…!

えっと…『ふ』で始まって

『ふ』で終わる3文字の………

 

「夫婦だ」

 

キッパリと、ジェラールは言った。

きっと私の顔は真っ赤になってる…

 

『やっぱり、そうだったのね…。

じゃあウェンディは貴方との子を身篭っているの?』

「っ!!?」

 

グランディーネ!?そんなに直球で聞いて来ないで…!

 

「ああ。一度ウェンディが

襲われかけた事があったが……」

『貴方が守ってくれたのね…。

………身篭っている、という事は……

そういう事をしたのね…?』

 

グランディーネの纏う空気が

少し変化した…ような気がする…

 

「?ああ……

その時のウェンディは、とても可愛らしかった…」

 

天空魔法の源『空気』が集まって……

 

「っグランディーネ!!」

『ごめんなさいね、ウェンディ…――』

 

グランディーネがジェラールの方を見て、

ゆっくりと口を開けた。

私はジェラールの前に立って…

 

「天竜の…」

「『――咆哮!!』」

 

全く同じ咆哮がぶつかり合った。

けど、さすがグランディーネ…

私の咆哮はゆっくりと押し負けていって……

私に当たる寸前で、咆哮が消えた。

 

「…グランディーネ?」

『私が貴女を傷つけると思った?』

「でも、ジェラールを…」

『何故か、怒りが芽生えたのよ…。

…ウェンディにジェラール、

また此処に来て…話を聞かせてくれないかしら?

貴方達を気にかけている、もう一人の私や

妖精の尻尾の皆にも伝えられるわ…』

「うんっ!

また来るね、グランディーネっ!」

「どうすれば此処に来れるんだ?」

『…私に会う事を強く願って眠れば大丈夫よ』

「わかった」

「妖精の尻尾の皆によろしくね!お母さん!」

『ええ…』

 

ウェンディとジェラールが消えて…

 

『イグニールにメタリカーナ、

貴方達も…こんな気持ちだったのね…。

子が親から離れていくのは、少し辛くて…

そして――…相手に意地悪してしまいたくなる…。

幸せになるのよ……二人共…』

 

*~*~*~*~*~*~*

 

二人同時に目が覚めた。

 

「…ジェラール、夢の内容覚えてる?」

「…ああ。君の母親は少し過保護だな…」

「グランディーネは人が好きなのに……

ジェラールに咆哮を放とうとするなんて…」

「…だが、君を想っての事だろう…」

「…うん!」

「…ウェンディ、愛している…」

「…私も、だよ。ジェラール…」

 

 

…それから、悪阻が来て……

いろんな人にお世話になって、

お腹も大きくなっていって……約10ヶ月後…

 

「………いっ…!!?」

 

陣痛が来た…。今までよりも…

凄く…重くて…痛いっ…!

 

「ぁ、…ぅ、だれか……たすけ…っ」

 

私の意識は、そこで途切れた…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「ディ………ウェンディ!!」

「……ジェラー…ルっ!!?…痛っ!痛い…!!」

「頑張れ……頑張るんだウェンディ!」

「頭が見えて来ましたよ!」

「っっ~~~!!」

 

痛みに耐え続けて……

 

産声が…命の声が聞こえた…

 

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

「……!」

「可愛らしい女の子ですよ!」

「女…の子…?」

 

抱かせて貰った、小さな命…

 

「私と、ジェラールの…娘…」

「よく頑張ったな、ウェンディ…」

「……うん…っ」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

いろいろと落ち着いて…

 

「ミスティって名前はどうかな?」

「……明らかに『ミストガン』から

取られている気がするが…」

「うん。でも『ミストガン』だって

『ジェラール』だったでしょ?

ミストガンの『ミス』と私の『ディ』

……だけど『ミスディ』だと

何か変な感じだから…ミスティ。ダメかな…?」

「いや。それでいい…」

「これからよろしくね、ミスティ…」

 

眠るミスティを二人で撫でた…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

―数週間後―

 

ただいま授乳が終わったので

ベビーベッドに寝かしつけたところです。

 

「おやすみ、ミスティ…」

「ご苦労だったな…」

「お帰りなさい、ジェラール」

「ただいま、ウェンディ…」

「……グランディーネに、報告したいなぁ…」

「そうだな…」

「グランディーネ、喜んでくれるかな…?」

「大丈夫だ…」

「…うん!」

 

グランディーネの事を考えて

眠りについたんだけど…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

―翌朝―

 

『――ディ………ウェ……ディ…』

 

すごい近くからグランディーネの声がする……

 

『…ウェンディ』

「………?」

 

声も匂いも雰囲気もグランディーネと一緒。

…だけど、そこにいたのはシルバーに

薄いスカイブルーが混ざった髪の綺麗な女の人で……

 

「……貴女は…?」

『…天竜グランディーネよ』

「……え?」

『思念体を弄りに弄ったら、こんな姿になれたわ』

「…グランディーネ、なんだね?」

『そうよ』

「グランディーネ!私ね、娘ができたの!」

『…まだ赤ん坊ね』

「名前はミスティ…」

「……どうしたんだ?ウェン……」

『………』

 

ジェラールとグランディーネの視線が合った

 

「…ウェンディ。その女性は…?」

「グランディーネの思念体だよ」

「グランディーネは竜ではなかったか…?」

「…なんか色々やったら、

人間になれたって言ってたよ」

「………」

『今日から此処に住まわせてもらおうかしらね…』

「嬉しい…!」

「……そう、だな…

(ウェンディとの夫婦生活が…っ!)」

『よろしくね。ジェラール…』

「……ああ…」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

今日の城は少し騒がしく感じる…

いや、理由はわかっている。

わかってはいるんだが………

 

*~*~*~*~*~*~*

 

―今朝の出来事―

 

『よろしくね。ジェラール…』

 

目が、全く笑っていない…

 

「……ああ…」

 

一応そう言ったが、この女性(竜)は

ウェンディの母親で……

 

「…俺は貴女をどう呼べばいいんだ…?」

『好きに呼べばいいんじゃないかしら…』

 

やはり、全く笑っていない…

 

「では、……義母上…」

『そうね、それでいいわ』

 

………平行世界のアースランドから

妻の母(姑)がやって来た…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

ウェンディがミスティを抱いて

義母上が城を見て回っている…

 

城の皆にウェンディが自分の母だと紹介した結果、

『祖母』にしては明らかに

若すぎる容姿(恐らく20代後半)の彼女に対する

疑問の声が聞こえる…

 

「グランディーネは

私を育ててくれたお母さんなんです!」

 

ウェンディのその言葉に納得したらしい城の者達…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

問題は、義母上がウェンディの前では

にこやかに表情を変えるのに対し、俺と二人になると

あまり表情を変えなくなることで…

 

「…義母上」

『何かしら』

「………俺の何が気に食わないのかを

教えてもらいたいのだが…」

『そう…ね。私も

人の事を言える立場ではないけれど、過去に

ウェンディを泣かせた事があるから…かしらね』

「………」

 

幼い彼女にギルドへ預ける事を話したあの日の事か…

 

『私も、同じ事をしたのだけれど…』

 

そういえば、初めて出会った彼女は

何かを探しながら泣いていた…

 

『自分の事を棚に上げるのもどうかと思うけど、

他人がそうしたのを聞くと何か……

怒りが込み上げてね…』

「……そう、か…」

『ジェラール、貴方はウェンディを…

私の子を幸せにしてくれるの?』

「ああ、約束する」

『それを聞いて安心したわ……

もし、違う答えだったら『咆哮』を

使っていたかもしれないわね…』

「………」

 

この人は、恐ろしい…

 

『…貴方の子供の教育方針は?』

「…それなりに自由に育てて、

少しずつ王族としての教育を…」

『……魔力があったとしても使う事ができないのは、

私としては悲しいけれど……仕方ないわね…』

「………」

『とりあえず、自由に育てるといいわ。

……そして、あの子達を絶対に幸せにしてあげて…』

「!」

 

義母上の思念体が僅かに歪んだ

 

『この私は思念体……

私は一旦消えるけど、また時々来るわ…』

「…ああ」

『本当の私に会いたくなったら、

あの場所へ来なさい………

ウェンディを、よろしく頼むわ…』

「…勿論だ」

 

綺麗な笑顔を見せた後、

義母上の思念体は掻き消えた…

 

「ジェラール!

グランディー……あれ?」

「ウェンディ」

「グランディーネは?」

「一旦アースランドへ戻るらしい」

「そう…」

「また来ると言っていた。

本来の姿の自分に会いたくなったら、

あの場所に来い……とも言っていた」

「いつでも会えるんだねっ!」

「ああ…」

「?」

 

俺はウェンディを抱きしめた…

 

「…ジェラール?」

「絶対に幸せにする。

もう君の泣き顔は見たくない…」

「……私、幸せだよ?

ジェラールと結婚できて、子供もできて……」

 

ウェンディの唇に自分のソレを重ねた……

ウェンディの顔は相変わらず真っ赤で…

 

「…俺も、幸せだ…」

「……不意打ちは卑怯だよ…」

「……そうか」

 

俺はウェンディを抱きしめたまま、

ベッドに倒れ込んだ。

 

「!」

「不意打ちでなければ、いいんだろう?」

「……ジェラールの意地悪…」

 

再び唇を重ね、抱きすくめた…

 

 

『二人目』の子供ができるのは、

もう少し先の話―――…

 

嘘をついてもいい日?

 

今日は4月1日、エイプリルフール

 

「エイプリルフール、か…」

「陛下?」

「いや、何でもない…」

 

どうウェンディをからかうか、少し考えた…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

「ウェンディ」

「ジェラール!」

 

ウェンディの傍に控えていた

ナイトウォーカーをミスティと一緒に下がらせた

 

「あのね、私……ジェラールの…ことが…」

「………嫌い、か…?」

「!大好き、だよ…?」

「…そうか、俺もだ…」

 

ウェンディを抱き寄せて、耳朶を軽く舐めた

 

「っ!!?」

 

明らかに驚いている様子だ。

 

「襲ってもいいか?」

 

目を合わせて発言すると、ウェンディは

まるで助けを求めるように視線を彷徨わせた。

…が、ナイトウォーカーとミスティは

退室させたため、誰もいない事に気付いたのか、

あっという間に顔が赤くなった。

 

「……ジェラー…ル…?」

「なんだ?」

「私ね、今週は……その…っ」

 

なるほど、本気にしたのか…

いや、本当にする事もできるが……

 

「ウェンディ」

「…?」

「冗談だ」

 

耳元で、囁いた。

 

「………??」

「今日はエイプリルフールだろう?」

「!ジェラールの意地悪っ!!大嫌い!」

 

大嫌い=大好き、ということか…。

俺はウェンディを抱き寄せて

 

「本当に実行してもいいのか?」

「!!」

 

固まったウェンディにキスをして、

 

「愛している」

 

そう言って退室した。

次はどう可愛がるか、少し楽しみで笑みが浮かんだ…

 

*~*~*~*~*~*~*

 

天竜の………

 

ジェラールにからかわれて、

暫く真っ赤な顔をしていたら

大好きな匂いを嗅ぎ取った。

 

「グランディーネ…」

 

現れたのは人の形をした思念体……それでも、

私のお母さんである事に変わりはなくて……

 

『ウェンディ?』

「あのね、ジェラールが―――…」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

今、ウェンディがミスティに授乳をしている…

口を離したミスティを見ると、俺に見られている事に

気付いたのか慌てて衣服を着直した。

 

「……っ…」

 

ミスティをベビーベッドに寝かせ、

ほんのり赤く染まった顔でベッドに潜り込んできた…

 

「……ジェラール…」

「ウェンディ」

「?」

 

俺は彼女を抱きしめて、そのまま倒れ込んだ。

 

「っ!」

 

視線を彼女の目から唇へと移し、

顔を近付け……ゆっくりと唇を重ねた…

 

「愛している…」

「……うん」

「……返事は?」

「…え?」

「君からの返答がまだなのだが…」

「っ!」

 

更に赤くなった頬を両手で包み込み、

唇が触れるか触れないかの位置まで顔を近付けた。

 

「………好き…」

「よく聞こえなかった…」

「……大、好き…っ」

「俺もだ」

 

そう言って唇を重ね、抱きしめた…

 

「っっ…!」

「…おやすみ、ウェンディ…」

「……うん…」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

目が覚めた。だが、目の前にいるのは…

 

「…義母上…?」

『………』

 

…とりあえず、相当怒っているようだ。

なんとなく空気が震えているような……

 

『…ジェラール』

「…はい」

『あまりウェンディをからかわないであげて』

「…?」

『可哀相で堪らないわ』

「………」

『……………』

 

無言で口を開け、放たれた咆哮…

……凄まじい激痛が残された…

 

「……グランディーネっ!?」

『…ウェンディ』

「ジェラール!大丈夫っ!?」

「……ああ…」

 

体中痛くて立ち上がる事すらできないが…

 

「治癒魔法…!」

 

体中の痛みが少しずつ引いていく…

 

『…ジェラール、また何かあったら……

わかって、いるわよね…?』

「……はい」

『ウェンディ、後はよろしく頼むわ』

「!う、うん…」

 

義母上の気配が消えた…

 

「…ごめんね、ジェラール…」

「何故、君が謝るんだ…?」

「私が今日の出来事、

グランディーネに話したりしたから……」

「……いや、大丈夫だ。

遅かれ早かれ、いずれこうなっていた」

「…?」

 

不思議そうな彼女を、ようやく

動くようになった体で抱きしめた。

 

「止める気は、ないのだから……

こういう事はこれからも起きる」

「…え……」

 

固まったウェンディの耳朶を、甘噛みすると

 

「ひゃ…っ!?」

 

可愛らしい反応が返ってきた。

…そして同時に殺気を感じた…

 

「………帰ろうか」

「……うん。またね、グランディーネ!」

 

彼女がそう言うと、優しい風が吹いた…

 

………義母上は怖いが、俺はウェンディを愛している

…そして彼女を『からかう』ことを

止めるつもりは全くない。…義母上からの

厳しい仕打ちは覚悟しておこうと思う…

 

天竜グランディーネのとある一日

 

マグノリア郊外の森にある小さな小屋、

私は定期的をそこを訪ねている。

 

「………天竜」

『こんにちは、ポーリュシカ』

 

エドラスにおけるグランディーネである彼女は、

本名で呼ばれるのを嫌っている…

 

「…エドラスは…」

『ウェンディは元気よ。…元気、だけど……』

「…?」

『ミストガンは……困った子ね…』

 

私はエドラスにおけるジェラールである彼を

アースランドでは『ミストガン』と呼んでいる

 

『ウェンディをからかう事を止めないから、

制裁をしたというのに……

全然効いていなかったわ…』

「あいつ、そんな奴だったのかい…」

『ミスティは可愛らしいけれど、

ミストガンには困ったものね…』

「……困ったところで、何もできないだろう…?」

『………はぁ……また来るわ…』

 

妖精の尻尾に寄って、ウェンディ達の近況を話すと、

二人のエクシードは安心したようだった。

…暫く『思念体』で活動して、夜を迎えて……

 

*~*~*~*~*~*~*

 

いつものようにお風呂に

一緒に入ったウェンディとジェラール。

だが、現在ウェンディはジェラールに後ろから

抱きしめられ、彼曰く『悪戯』をされている……

 

耳朶を甘噛み…

 

「っ……」

「ウェンディ…」

 

熱っぽい声で囁かれ、首筋に舌を這わせられ、

ジェラールの手がウェンディの

下腹部をなぞった瞬間……

 

凄まじい勢いでバスルームの扉が開いた。

そこにいたのは、天竜グランディーネで…

 

「…グランディーネ…」

『………』

「……………」

 

『悪戯』が中止され、普通に上がる事になった二人。

…グランディーネの視線は冷たい…

 

「グランディーネ…」

『…ウェンディ』

 

眠るミスティを少し撫でた後、

 

『また、来るわ』

「……うん、またね」

 

終始ジェラールを冷たい目で見たまま、消え去った。

 

「……ウェンディ」

「…?」

「……義母上は、厳しいな…」

「そうだね…」

 

ウェンディは困ったように笑った…

 

自重する人しない人

 

グランディーネが来なくなった……

というより、私達の前に姿を見せてくれなくなった…

 

夢で『来るのを自重する』とは言ってたけれど、

来た痕跡しか見つけられない…

 

「……グランディーネ…」

「…義母上が来ないのが寂しいのか?」

「……少しだけ…」

「………」

 

ベッドで抱き寄せられている状態で、

ジェラールに唇を塞がれた。

……深い、口付け……

舌を何度も絡められて、

…パジャマのボタンが外されて、

下のキャミソールを一気に捲り上げられた。

舌を少し強く吸われて……唇が離れた…

 

「……ジェラー…ル…?」

「俺では寂しさを埋められないか…?」

「…何か、違わない…?」

 

無視して、ブラジャーを外された

 

「……!!」

「愛情が足りないのか…?」

「違うよ、ジェラー………んっ…!!」

 

胸元に吸い付かれて声が出そうになるのを

必死に堪えるけれど、時折舌で舐められて……

 

「…っ……ンっ……!」

「声、出してくれ…」

「…愛情は、十分…足りてる、よ…っ」

「……そうか」

「…っ大好き、だよ……ジェラー……っ!!」

「ありがとう、ウェンディ…」

 

言葉を遮るように唇を重ねられた

 

―いつも、言わせてくれないね…―

 

*~*~*~*~*~*~*

 

早朝、目が覚めた。

………ほぼ全裸で、布団をかけられていて……

抱きしめられている状態…

 

「……ジェラール…」

 

名前を呼んでも、腕に

力を込められただけで起きてくれない…

 

「……はぁ…」

 

その時、ジェラールが寝た振りをしているのに

私が気付く事はなかった…

 

意地悪ジェラールと天狼島

 

黙々と、朝食を食べています。

………食べ終わった!…よし…!

 

「ジェラール」

「どうした?」

「ジェラールは、本当に意地悪だよね」

「…どこが、どういう風に意地悪なんだ?」

「…!そういうところ、だよ…」

「…?」

「わからない振りとか、

起きてるのに寝てる振りとか………

じ、焦らすの…とか……っ」

「…そうした方が可愛いウェンディを見れるからな」

「ジェ……ッ!!」

 

向かい合って座っていた

ジェラールが立ち上がって……

 

「…ウェンディ」

「………」

 

目の前に立ってる……嫌な予感が…

 

「……ジェラー…!!」

 

言葉が途切れた。

理由は、至近距離にジェラールの顔が

移動してきたからで………唇が触れる1秒前…?

 

…何もしてこないから、

自分から唇を押し付け…たら、

後頭部を押さえられて………えぇ~~っ!?

 

………酸欠寸前になるくらい、

長い時間その状態でした…

 

「…可愛いな」

「……黒いね…」

 

*~*~*~*~*~*~*

 

―アースランド・天狼島―

 

大木に凭れ掛かり、海を眺めている黒髪の青年…

 

「……ナツ…」

 

呟いた言葉は風に掻き消された。

 

「また海を……いえ、

その向こうを見ているのですか?」

「!」

 

凭れ掛かっている大木の枝に、

重力を無視したように乗っている

ウェーブのかかった金髪に

天使の羽の髪飾りを着けた少女。

 

「…メイビス」

「また悲しい顔をして……

それでは昔と同じですよ、ゼレフ」

「……君には感謝をしているよ。

世界が僕を拒まなくなって、

それでも居場所のない僕を

此処にいさせてくれているから…」

「妖精の尻尾にいる『彼』にも、

いつでも会えますしね…」

「……うん」

 

ほんの少し、笑みが零れたゼレフ

 

「ようやく笑ってくれましたね」

「……ぁ…」

 

枝から飛び降り、ゼレフの隣に着地したメイビス。

身長差から彼女は彼を見上げる形になる。

 

「どうか絶望ではなく、希望を見出だして下さい。

今の貴方なら、それが可能な筈ですよ?」

 

満面の笑みを浮かべたメイビスにゼレフは…

 

「僕が過去に奪った沢山の命…

…だけど希望なら、既に見出だしてるよ…」

「本当ですか?それはよかったです」

「…君が希望になってくれたから…」

「……私が希望、ですか?

ありがとうございます、ゼレフ。

…さて、この嬉しい出来事を

三代目に伝えに行きましょうか」

「え…?」

 

間抜けな声を出した時には、

既に足元の魔法陣が輝いていて

 

「行きましょう?」

「…うん」

 

差し出された手を躊躇いがちに取った時、

転移魔法が発動し……天狼島から

二人の姿は消えていた…

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  • ミスウェン
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