カウンセルから自宅までは、電車で二駅ほどの距離で時間で言うと十分程の距離だった。
「居ないな」
自宅に戻ると、妹の姿はない。
生憎と今日は休日なので何処かに出かけていてもおかしくはない。
自分と香澄は携帯を持っていない為、直接会えないとなるともう帰ってくるのを待つか、こちらから探しに行くしか方法がない。
行き違いになるのは面倒だ――――。
けど、もしかしたら外で俺を探し回っている可能性が脳裏を巡る。
酔って、家に帰れなかった時でも"アレ"だ。
一日帰れなかったとなると――――、いやいや考えるな考えるな。
捜索願い出してるかもなんてことは考えるな。
「やりかねない――――な。」
どちらにせよ、心配だ――――。
俺は再び家を出て、香澄を探しに行くことにした。
時刻は十三時頃。
近くにある商店街を通り抜け、その先の大通りへと進む。
「ん――――?」
偶々交番の前を通りかかる。
すると交番の前に掲げられた看板には見覚えのある顔が映っている。
【この人探してます。】
と手書きの一文が描かれた用紙に"俺"の顔写真が張られていた。
ここまでやるか――――、妹よ。
もしかしてこれ、捜索願いなんていうレベルじゃないんじゃ?
流石にやり過ぎだろう、お互い携帯電話の所有は視野に入れるべきか。
よくよく周りを見てみればそんな俺の顔写真が所々に張られている。
「ちょっと、君。」
それはそうだろう、看板の前で驚愕していた俺に警官に話しかけてくる。
この場合、なんというのが正しいのだろうか。
「ごめんなさい、全部回収しますんで――――!!」
一応謝り視界に捕らえた自分の顔写真はすべて回収し、この場を後にする。
しかし、こうなったのは俺の責任でもある。
ただ、これは俺以外にも迷惑が掛かる奴だ。
早急に今もそこら中に張っているであろう彼女を探し出さなければならない――――。
「やっと、見つけた。」
交番から離れて一時間程立った頃、公園内でアレを張り付けている彼女を見つけた。
「香澄――――。」
名前を呼ぶとやつれた顔を振り返り、夜通しこれをやっていたであろうことを理解する。
「――――駆ッ!!」
唐突に飛びついてきた妹に公園のど真ん中で抱擁される。
彼女の冷えた体温が直に伝わる。
本当に申し訳ないことをした。
「――――昨日の朝の事も含めて謝らせてくれ、本当にごめん。」
「いいよ、気にしないで。
こっちこそ朝機嫌悪くてごめんなさい。」
思ったより妹も朝の事は反省しているらしい。
まぁ、俺としては無事でほっとした。
これで一条さんにも良い報告ができそうだ。
「それ、あとどの辺に張ってんの?」
ここに来るまでにかなり回収はしたものの、おそらくまだ見つけていないエリアがあるだろう。
「駅前とか、スーパーの壁とか。
とにかく人が行きかう所には全部張ったよ。」
まじか――――、これは夜までかかりそうだな。
まぁいいけどね。
「――――お、おう。
それじゃあ一緒に全部剥がしたらご飯でも食べて帰ろか。」
「うん。」
そうやって結局全部剥がし終わったのは20時頃で、カウンセルに行くことはできなかった。
妹の話によると昨日二十時時点で俺が帰っていないことがわかると例の火災に巻き込まれたのではと、
俺たちが居たビル内に侵入しようとしたが、それは周りの人間に止められたらしい。
それで途方に暮れていた香澄は捜索願いを警官に依頼するも警官は数日行方不明の男性の捜索に動くことはできず、最終的に自分であの紙を作ってそこら中に張り付けていたらしい。
気持ちは嬉しいがほどほどになとは言っておいた。
帰りは約束通り、家の近所にあるファミレスで夕飯を済ませ二人で家に帰った。