狭間 駆は巻き込まれたい   作:もみじん

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11話:事態悪化

翌日、普段通りに大学へと向かう。

道すがら何やら視線を感じているが、どうか気のせいであってほしい。

「おはよ――――!! 駆君」

「おはよう、一条さん。」

翌日、大学の校門をくぐると一条さんに声を掛けられた。

「これ凄いね、昨日はこのニュースで持ち切りだったよ?」

そう言って彼女はスマホの画面をこちらに見せてくる。

「な――――」

そこに映っていたのは『謎の通り魔を撃退した青年、狭間駆!! 新たな志衛団の登場か!?』といった見出しを掲げたネットニュースだった。

さらには情報提供者のKさんと小さく隅に記載があり、そういうことかと察する。

柏木――――、やってくれたな。

「ほんとカッコいいよね!! なんかヒーローみたい!!」

一条さんのそんな他愛もない言葉に俺はゾクリと背筋を凍らせた。

「そ、そんなことないよ、それじゃあ俺もう行くね」

 

『あいつだよ、通り魔を撃退したっていう狭間駆ってやつは』

 

『通り魔は謝ってたらしいけどそれに構いもしないでボコボコにしたらしいよ、マジで人情欠けてるよね』

 

講義中、そんな声が辺りからちらほら聞こえてくる。

俺は別に通り魔なんてボコボコにしてないし、むしろ俺がボコボコにされたんだよ。

 

『てゆうかあの人って人殺しなんでしょ? 昔イジメで男の子のグループ全員自殺まで追い込んだんだってよ』

 

『志衛団にでも憧れてるつもりかよ、夢見すぎだよってな』

 

大学が終わりカウンセルへ向かう途中、周りからの視線は一向に消えてくれない。

「どうも――――」

「駆君、大丈夫か?」

早苗さんもどこからか情報を取り入れたのだろう、そう俺を気遣ってくれる。

「大丈夫です――――、ちょっと昔を思い出してただけです。

柏木いますか?」

「いや、今日は来ていないな。

夜には戻ってくるだろう」

俺はいつも通り制服に着替えて、カウンターにつく。

そして"彼ら"がやってくる。

 

『あいつって狭間駆じゃね? ここでバイトでもしてるのか?』

 

『異常者が普通に生きようとするなよ」

 

お店の外から顔を覗かせてくる異常者、店内ではコップを片手に友人とコソコソと会話する異常者。

「お前ら、出ていけ」

そんな異常者達に早苗さんが厳しい態度で当たる。

異常者はそれに講義するが、結局は『なんだよ、店主も異常者かよ』と捨て台詞を残し店を出ていく。

「外のお前らもだ、見物だけなら近づくな」

店の外に居た異常者達もそれを聞くと気配を消していく。

「すみません――――、俺のせいで」

そう、"思ってもいないこと"を口にする。

「何を言っている、柏木から経緯も聞いているし私自身君がそんなことをする人間とは評価していない」

そんなことを言ってくれても、こんな状況では信じたいものも信じられない。

「ありがとうございます――――」

「今日はもう帰るといい、何か困ったことがあれば遠慮せずに言いなさい」

「――――わかりました」

俺は制服から私服に着替え、カウンセルを後にした。

早苗さんの呼びかけもあって幸運にも店の前に人だかりはなかった。

急ぎ足でそのまま自宅へと向かう。

 

「駆ッ!! 大丈夫だった!?」

家に着くと香澄が騒々しいくらいに詰め寄ってくる。

香澄の耳にも昨夜の件は、広まってしまったようだ。

「あぁ、大丈夫だよ。そっちこそ何か変わったことは無かったか?」

「うん、特には――――」

「そうか――――、良かった」

妹に何かなくてほっとした。異常者は何をしてもおかしくはない。

仮に俺の家を知っているような輩が居れば――――。

そんな事を考えていると、いやな予感は的中する。

「外が騒がしいな」

家の中だというのに外からガヤガヤといった音が止まない。

恐る恐る外を窓から眺める。

「クソが――――」

張り込んでいるのかスマホを片手にフラッシュをたきながら、自宅を撮影する異常者がウヨウヨと徘徊していた。

自宅はアパートで部屋は302号室で三階だ。

アパートの入り口は暗証番号を搭載した電子ドアで他人が侵入することはできないので押し入れられるなんてことにはならないだろうが――――。

「どうかした?」

妹は心配するように俺の目を見てくる。

香澄に関しては全くの無関係だ、絶対に巻き込ませないし迷惑なんて掛けるわけにはいかない。

「大丈夫だ、明日もいつもと変わらず朝学校に行けよ。

あと悪いけど今日は門限破らせてくれ、今からちょっと外に行ってくるから。」

今の時刻は十九時だ、今からやるべきことをやるとなると恐らく門限の二十時は超えてしまうだろう。

「え、ちょっとッ!! 今から外に行くの!? 行かないでよ!!」

「悪い、それは無理なんだ、何かあったら連絡するから」

香澄の制止も聞かず、俺は恰好を身軽にし外へ出ようとする。

「駆ッ!!」

再び名前を呼ばれた気がしたが、それは聞こえないフリをして玄関のドアを開けた。

 

『出てきたぞ――――!!』

外へ出ると待ち構えていた異常者が迫ってくる。

俺はそれらを振り切って、目的地へと向かう。

向かう先は、柏木の元だ。

だが、あいつの今の居場所は俺もわからない。

だからまず、カウンセルに向かう。

今俺が頼れるのはあそこしかないんだ――――。

あいつもこんなことになるとは予想をしていなかったはずだ、あって直接問いただしてやるよ。

おまえはヒーローと異常者、どっちなんだってな――――。

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