K区とそのほかの地区を解離させるように、防衛線を敷き警備する警官が右往左往としている。
「さて、どうやって入ろうか」
早苗さんの言う通り、防衛線の間には隙間なんてものはなく本当にネズミ一匹も入れないのではと思ってしまう。
だけど、その防衛線もあるのは地上だけだ――――。
「いくか」
近場に立っていた5階建てマンションの屋上から縄を張って豪快にK区へと突入する。
防衛線より内側は思ったよりも物静かでこの中で争いが思っているとは到底思え難い。
だが、外部からの侵入者を歓迎するかのように近場から建物が崩れるような轟音が聞こえてくる。
あっちか。
その物音を頼りに足を音の鳴る方へと向かわせる。
「○○っ、気を失うんじゃねーぞ!!」
音の在りかに辿り着くと屈強な男が負傷者を背負いながらも疾走している。
その男を追う者は黒のローブを身にまとう数名の狩人達。
狩人は片手に刀を装備し、軽々と男の逃げ道を塞ぐように周りを囲っていく。
「ここで死ね――――」
一人の狩人が動く。
刀が男の首元を狙う。
その動作に一切の躊躇はない、殺すのためのものだ。
「フッ――――」
男はしゃがみ、その一閃を避ける。
しかしその彼の動作に合わせるかのように、他の狩人は刀身を男の足を狙って加速させる。
態勢は不安定、男に避ける余地はあるか――――。
更に追加でもう一本、反対側からも刀身が迫ってくる。
計二本の斬撃が男を中心に交錯した。
「がああああああ――――!!」
男が断末魔を上げた数秒後、その体は地に落ちた。
背負っていた負傷者も地に放り出すように――――。
「こいつも殺しておくか」
「必要なくない? もう死ぬだろ」
そういって狩人の一人は地面に放り投げられた負傷者の胴体を足で転がす。
するとようやく俺はその負傷者の顔を確認できた。
嘘、だろ――――。
狩人の刀身が"それ"へと向かっていく。
ダメだ、それはだめだ、だめだ、だめだ、だめだッ!!
思考の時間は無い。
反射的に足を一歩踏み出す、驚きはしない。
長い付き合いでもないし友人ともいえないかもしれない。
だけど、見知った顔が無残にも目の前で殺されるというのなら。
――――異常者にもなってみせよう。
「御上さんッ――――!!」
向かう先には武装した敵。
これは自殺行為だ、普通であればだれだって自分の命を大事にする。
そんな危ない橋は渡らない。
だが、異常者はそんな思考を持ちあわせてはいない――――。
「誰だ――――!!」
狩人が吠える。
上等――――!!
無意識化の中で両腕に力が宿り始める。
そして瞬時にその力をどうするのかも理解する。
地面のコンクリートに入っているヒビへと拳を通して力を流し込む。
ここに再び信念が芽生えた――――。
「なんだ――――ッ、コレッ!!」
数メートル先の狩人たちを絡みとる様に地面から木の根が現れる。
根は瞬く間に彼らを拘束し、その場に封じ込めた。
「まじかよ――――」
自分でもこんなことになるとは思わなかった。
これが心意の本質なのか。
「そんなことよりも――――、御上さん!!」
横たわる彼女からの返事はない。
所々から血が出血していて応急処置でどうにかなる問題ではない。
「柏木もどこかに居るはずだ――――」
俺は彼女を背負い、暗闇の戦場を歩き始めた。