狭間 駆は巻き込まれたい   作:もみじん

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16話:信念衝突 - 4

「――――」

「おはようさん、随分寝とったな」

気が付くと俺は、知らない地べたで寝転んでいた。

「ここは――――、って、あ、あの後どうなったんだ、ここはどこなんだよ」

覚えている事を思い出し、そう矢朽に尋ねる。

「あの場で聞いとったやろ、敵の襲撃があったんや。

アジトは壊滅、お仲間みんなちりじりや」

「壊滅って、柏木は無事なのか?」

「そんなん知らんわ、でもボスなら死んでへんやろ、あの人フェニックスやし」

「フェ、フェニックス、そうか――――」

それだけ聞いて一先ず、安心した。

「で、ここどこなんだよ、なんか臭うぞ」

「ここは下水道の中や、上は敵がうようよ歩き回っとるからの。

やつらが退くまでここで身を隠しとるっちゅうわけや」

なるほど、今の状況がようやくわかってきたぞ。

アジトから逃げ出せはしたものの、外は敵が沢山いてやむを得なくここに逃げ着いたわけか。

「で、これからどうするんだ、あっちの都合でずっと待ってても埒があかないぞ。

この下水道からK区外には出られるか――――?」

「そうやな、不可能やないけどそれはしいひんで。

俺達は戦うためにここに来てんねん――――」

あぁ、そういえばそうだった。

コイツも異常者だった。

「それはわかった、けど御上さん、彼女はもう戦えないだろう。

傷もまだ完全に治ってるわけじゃないはずだ、一刻でも早く一般の病院に連れていくべきだ」

「ん――――――――」

矢朽は長考する。

こんなわかりきった事、即答してほしいところなんだが。

「まぁ確かにそうやな、ほなそうしようか」

なんとか説得できた。

矢朽はそう納得すると、御上さんを担いでスタスタと下水道を歩いていく。

 

暗い下水道を歩き始めて一時間、現在時刻は二十二時。

普通ならもうK区外に出ていてもおかしくは無いはずなのだが――――。

俺は道を知らないので、これは矢朽だよりになってしまう。

「なあ、あとどれくらいだ?」

「おかしいな――――、もう出口があってもおかしくないんやけど」

「やまかんで歩き回っても疲れるだけだ、当てがないなら一旦状況を整理――――ㇺ!?」

そこまで言おうとして、矢朽が俺の口を塞いでくる。

静かにしろってことか――――?

「足音や、すぐ近く。

何人もおるな――――」

足音――――!? それは敵なのか。

口を閉じてしまってはそう聞き返すことをできない。

しかし矢朽は再び淡々と足を進める。

一体なんだったんだ――――。

それから少し立って、その正体はすぐに分かった。

「もう目の前におるな――――、あんたら、誰や」

「――――その声、矢朽さんですか!?」

すると、聞き覚えのある声が返ってくる。

「桜井か――――!!」

「狭間さんッ!! 無事だったんですね!!」

こうして俺たちは桜井と一緒にいた10人程のメンバーと合流し、再びS区外へと向かう。

 

「――――おかしいな、やっぱり出口全然ないやん」

「――――ですね、確かに変だ」

矢朽と桜井はそうこの先が不安になることを話しながら歩いている。

他のメンバーにも困惑があるように感じ、この状況が普通ではないことを理解する。

「あれ、出口じゃないかッ――――!?」

するとメンバーの一人がそう声を上げて、出口と思わしき場所へと駆け寄っていく。

「ダメだ、開かない」

「開かないってそんなことあります――――?」

「ほんとに開かないんだって」

桜井はその事実に疑っており、自身でも出口の扉をこじ開けようとするも一向にびくともしない。

「本当だ、錆びてんのかな」

そんな悠長な事を桜井が呟いていると、メンバーの一人が再び声を上げる。

「なんか、水の流れる音がしないか――――?」

「下水道なんだからそれはするでしょ」

「いや、そんな下水道で流れるようななまっちょろい量じゃない、コレって――――」

――――確かに先ほどからゴゴゴと、下水道では絶対に耳にしないような音が聞こえがする。

それがなんだってゆうんだ――――、と言おうとした時だ。

「大量の水が押し寄せてきてる――――!!」

叫び声が聞こえた時、やっとわかった。

後ろの方角、要するに俺たちが来た方角から大量の水が迫ってくる。

あれは水、というよりも津波だ――――。

雨の日なら嵩が増してこうなるのも理解できるが――――。

「今日は雨でもないぞ――――ッ!?」

「早く開けろ――――――――!!!」

「開けてくれ――――――――!!」

この場に居たほとんどが早くこの場から脱出したいと心から叫ぶ。

そう俺を含めた"数名"を除いて。

「俺がやるッ――――!!」

両手に力を込め、先ほど狩人達に仕掛けた要領で扉を殴る。

まだ扉は開かない。

もう一発、もう一発。

津波までの距離、ざっと数十メートル。

津波の速度は浅くなるにつれ、スピードを落とす。

しかしこの場での場合、その方程式は成り立つか――――。

一秒が惜しい。

「クソッ!! 開けよッ――――――――!!!」

何度目かの拳を扉へと放つ。

ガチャ、と遂に扉が開いた。

「皆、急いでッ!! 」

桜井は皆を出口へと押しやっていく。

「矢朽さんも急いでくださいよッ」

扉が開いたも関わらず、今も押し寄せる津波を前に動こうともしない矢朽に声を掛ける。

「矢朽ッ、早くしろ――――」

桜井に便乗するように俺も矢朽に声を掛ける――――と。

「おかしいやろ、なんでこの規模の波が"ここ"で起こんねん」

矢朽はそういうと、迫ってくる津波に屈することもなく片手を向ける。

そして――――。

「ほい――――」

と、次の瞬間、津波の勢いが一気に無くなっていく。

やがて津波は質量を段々と縮めていき、その中から一人の青年が現れる。

「まじかよ、どうなってんだ――――。

幻覚を見てるのか、な、波が引いて人が出てきたぞ」

俺は呆然とその場で立ち尽くし、互いに視線を交錯させる二人を眺めている。

「おーやっぱりバレるか、流石にここでは規格外だったよな」

「お前アホか、規格外レベルなんてもんやない、あれじゃあ超常現象もんやぞ」

「・・・・・」

「・・・・・」

両者一定の間合い保つ。

始まりは青年のワンアクションから――――。

彼の手のひらから生成される水滴は形を変え、長身の刃を生み出す。

そして生成されたその刃は、前方に立つ矢朽を襲う。

「矢朽――――ッ!!」

声を上げる、常人がどうこう出来るレベルではないと判断したが故だ――――。

だが、それは杞憂だった。

「そういえば、お前も"異常者"だったな――――」

水の刃は矢朽を両断する寸前で、その形を崩壊させる。

「いきなり物騒やな、あいさつもないんか」

「まじかッ!! まじかッ!!」

「桜井、そこの出口からはでえへんほうがええきがするわ。

多分やけど、外で待ち伏せされとんで」

「そんな――――、それじゃあ」

「どっか別の出口さがしいや、そこから出たら百死ぬで。

ほらさっさと行かんかい、殿したるわ」

矢朽はそういうと担いでいた御上さんを俺に預け、青年へと向かっていく。

桜井は矢朽のその提案を聞いて、わかりましたと渋々頷き、別の出口を探しに行く。

「狭間さんも行きましょうッ!!」

「あ、あぁ――――」

そして俺もその桜井についていく。

「矢朽ッ!! 後でな――――」

「ほい、仏が居れば"また"今度――――」

「――――行かせねーけど、なッ!!」

青年の水の刃がこの場を走り去ろうとする俺たちの背中を襲う。

「それはあかんよ」

「邪魔をッ――――!!」

しかしその刃は再び矢朽によってその形を崩す。

「カウンセル――――、幹部、矢朽薪士(やくち まきし)や。

俺を倒したら別に行ってもかまわへんで――――」

「アドバンス、幹部、水俣総司(みずまた そうじ)。

生憎と、役職はない――――」

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