「――――――――というように先日都内で起こった銀行強盗については、その場に居合わせていた志衛団の活躍により事は収まった。」
警視庁の巡査部長である私、池上彰人(いけがみ あきと)とその上司である宮岸達弘(みやぎし たつひろ)警部は定例で行われる月次報告会に参加していた。
月次報告会といって本来はあまり凝った内容のものではなく、その月の東京23区内で発生した事件をピックアップし、組織の人間であればだれでも知っているような情報を羅列するだけ。
そう、全く意味のない報告会だ。
我々はそんなことよりも今起こっていることに目を向けて対処しなければならないというのに、上のお偉いさん方はそんなことお構いなしに只々時間を浪費する。
「また志衛団の仕業ですか。
一体今月で何件目なんですかね、結局尻拭いをするのは我々だというのに――――。」
上層部は志衛団の行いを全く問題視していないようだが、私は違う。
彼ら志衛団は法や秩序を侮辱し、今までの人類が敷いてきたレールから脱線したのだ。
そして容赦なく自身たちの偽善を好き勝手振るっている。
――――彼らは正義という言葉を履き違えているんだ。
正義とは、悪を裁くものではない。
真の正義とは、秩序を護るものだ。
「ん――――、彰人がそう志衛団に強く当たる気持ちもちっとはわかるけどよ、悪者退治なんてこっちの身分的にはやりずらいもんだ。
だからそろそろ見切りを付けろよ? 俺らは秩序を護る、悪者退治はあいつらに任せる――――。」
私の真横で報告会に出ていた宮岸さんは実に大人らしい意見を述べた。
志衛団を徹底的に否定するわけでもなく、かといって肯定するわけでもない。
大人はこういう器用な所がずるい。
「――――月次報告会は以上で終了とする。
次回の日程は後程各部署へ送られる通達で確認するように、――――では解散。」
そう締めくくられ、今月の報告会は終了した。
いつも通りの中身のない報告会。
一体いつまでこんな退屈な仕事が続くのだろう。
そろそろ自分自身で動かなければならないのか――――。
「あ――――、終わった終わった。
ラーメンでも食いに行こうや。」
隣の宮岸さんは背筋を伸ばしながらゆったりと席を立った。
この人にとっても報告会は退屈なものなんだろうか。
私は試しにこんなことを聞いてみた。
「――――志衛団を裁くことはできませんかね。」
「――――彰人、親父さんの件で、あいつらを恨む気持ちはよくわかる。
だけど諦めろ、今はこういう世界だ。
どうしてもというなら、この世界の根本から更生するしかない――――。」
根本からの更生。
それが実現可能かどうかはわからない。
だけど、そんなことがもし叶ったのなら。
その世界はきっと美しいもののはずだ――――。