ここで無関係だと言い張ればもしかしたら生きたまま明日を迎えられるかもしれない。
死にたくない――――、この思いは間違っていないはずだ。
生きたいなら生きてもいいよな。
「俺は巻き込まれたんだ、だから志衛団とは無――――」
そこまで言って止めた。
それは――――嘘だ。
巻き込まれたんじゃない、自分から首を突っ込んだんだ。
無関係なんかじゃない。
一時でも互いに背中を任せ、目の前に障害に立ち上がった。
「――――――――じゃ、ない」
柏木に言ったはずだ、信念の貫き方を見誤るな――――と。
信念とは、その人の正しさだ。
俺は今、自分の信念を欺こうとした。
許せないよな、柏木。
言っておいて自分ができないんじゃあ、その言葉に重みはのしかからない。
「――――無関係なんかじゃないッ!!」
「そうですか、なら殺します――――」
悔いはない、俺は自分の信念を今貫けたはずだ。
誰も傷つけてないはず。
先に死んだら香澄に迷惑かかるだろうな、ごめん。
"優"も、悪かった。
俺は、お前達を異常者(ヒーロー)と決めつけて、自分を正常と言い張っていたんだ。
自分が憧れていたヒーロー像ではなかったお前というヒーローを見て、心底絶望したよ。
だけど、お前は間違いなくヒーローだ。
ヒーローとは、正義の味方ではない、何故なら正義とは誰にでも当てはまるものだからだ。
――――それは理解した。
ヒーローとは、正しさでもない、何故なら世界に"正しい"は存在しない。
――――それも理解した。
ヒーローとは、異常者ではない、何故なら彼らはヒーローだからだ。
――――それを理解した。
ではヒーローとは何か――――、それは、きっと絶望の裏返しだ。
絶望とは、敵味方関係なく訪れる最悪のイベント。
しかし、その絶望は必ずしもどちらかを劣勢とし、残りは優勢へと変わるものだ。
風に乗った鳥を押すものは居ない。
風が逆行した時こそ――――、ヒーローが誕生する。
そう――――、今の様に。
「駆ッ――――――――!!」
名前を呼ばれた気がした。
柏木ではない、あいつとはさっき会ったばかりだ。
別れはとうに済んでいる。
であれば、誰が、呼んだ?
――――迷ったふりをするな、わかってるだろ。
こんなところに来てほしくなかった――――。
「――――ッ!! こっちに来るなッ、香澄ッ!!」
わかってただろ、クソクソなんでなんでなんでッ!! なんでッ!!
一日帰らなかっただけで街中探し回るアイツが、騒がしい夜に足を踏み込んだ俺を追わないわけがなかったッ!!
香澄は周りに居た狩人に止められると、もがいている。
「うるさいな――――」
池上は拳銃を香澄へと向ける。
「――――アイツは関係ないッ、俺を追って来ただけなんだよ。
だから、どうかそのまま俺が見えないところまで連れていってくれ」
狩人は俺のその言葉を聞くと、香澄を二人がかりで軽々と抱きかかえこの場を去っていく。
あれでも奴らは悪を裁く志衛団だ、無関係の女の子を殺すようなことはしないはずだ。
「――――よし、早くやってくれ。
泣きたくなってくる」
わかりました、と言って池上は俺に拳銃を向ける。
さよなら――――、香澄、優。
「駆ッ――――!! 待っ――――」
バンッ
音がなった。
大きな音だ、間近で鳴った音なのか鼓膜が破れそうだ。
俺は、――――死んだのか。
答えは、今はわからない。
「私はね、どうせなら君たちには死ぬほど苦しんでから死んでもらいたいんだよね」
――――聴覚、良好。
寸分違わず、聞き取ることができる。
目を開ける。
――――視力、良好。
目の前で頭から血を流す香澄を見て、そう理解する。
「――――――――」
「あれ? 思ったより吠えないな。
なんだ大事にしてそうだったからあっちから先に殺したのに――――、つまんないな」