「駆ッ――――!!」
銃声を聞きつけ、柏木がこの場に乱入する。
「ッ――――!!」
そしてすぐさま、状況を理解する。
拳銃を持った男の前に跪く、友人の姿――――。
その拳銃が向けられた先に居る友人の妹の頭から血が吹き出している――――。
「今更登場か、柏木優。
もういいだろう、――――皆、やっていいぞ」
すると池上は耳に手をあて、そう指示をする。
「な――――」
先に気が付いたのは、柏木と"アリス"。
飛んでくる"銃弾"を見切り、身を捻じらせ避ける。
次の瞬間、この場に居た柏木含め、黒い外套を羽織った狩人達に"外部"から発砲が行われた。
狩人達は何がなんなのかも理解できず、ただただ的になっていく。
――――まさに蜂の巣。
多方向全方位から浴びせられる銃弾に流石の柏木とアリスも被弾する。
「クッ――――」
――――ようやく発砲が終わる。
この場で生きているのはわずか、四名。
一人目は池上、どこにいても当たるはずの一斉射撃にかすりもしていない。
二人目と三人目は柏木とアリス、この両名も無傷とはいかず、ところどころ被弾している。
そして四人目は、既に息のない妹に抱き着く狭間駆だけであった。
「池上ッ――――!! どういうつもりですかッ!? 私達には攻撃しないといったはずですッ!!」
「そんな事言いましたっけ? 我々の敵は"志衛団"では――――?」
「――――そういうことですか」
パンッ
サイレンサーを付けられた鈍い狙撃音が鳴る。
――――アリスを狙ったものだ。
「――――フンッ!!」
しかしその狙撃は、柏木によって防がれる。
「――――敵同士のはずでは?」
「まぁ、そうだけどさ。
今はそんなの関係なさそうじゃない、逃げろよ。
ただ、一つ条件がある――――」
「なんです?」
「――――――――――――――――」
「――――全く、どこまでもお人よしですね。
わかりました」
「逃がすとでも――――? やれ」
パンッ
パンッ
二発放たれる。
当然それは、柏木が阻止する。
するとアリスはご武運を、とだけ言葉を残しこの場から素早く立ち去っていく。
「――――チッ、余計な真似を」
アリスを取り逃した池上は、次に未だもう息の無い妹に縋りつく駆に銃を突きつける。
「――――降参する。
だから、そいつも見逃してくれ。」
これは誰の言葉か――――。
無論、柏木の言葉だ。
彼は――――、今白旗を上げたのだ。
自身の信念を貫く男が、その信念を曲げた瞬間である。
「――――失礼、何かの聞き間違いですか? 今降参すると、貴方が?」
「あぁ、するする。 この場で殺されてもかまわないし、一生牢獄でもいい。
だから頼む、そいつは殺さないでやってくれ」
池上は長考する――――。
狭間駆を生かしておくデメリット、戦闘力は皆無、精神はズタボロ。
うん、問題なし。
狭間駆を生かしておくメリット、柏木優の降伏――――のみ。
問題はない。
「――――わかりました。
彼は生かしておこう」
「――――ありがとう」
柏木のその返事を聞き、池上は拳銃を向けると思いきや、懐にしまい込む。
「――――?」
「貴方は、地底監獄に連れていく」
「そっか、ならもう日は拝めないな」
そんな柏木の悠長な発言が済むと、周りに潜んでいたスーツ姿の男達が銃器を片手に現れる。
「これは、これは――――、随分と物騒な世の中だな」
男達は柏木の手錠をかけ、車に乗り込む。
「さよなら、駆。
それと、香澄ちゃん、約束は守ったぜ」
こうして、S区内で起きた"騒動"は幕を閉じた。