アスミア短編集   作:双子烏丸

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少し久々の更新、4回目は二人で海に行く感じの短編に。そして多分…時間で短編集は完結予定になります



短編その4 青い海と、煌めく彼女と

 

 

「海水浴に行きたいだって? 俺と?」

 

 家で読書をしていた俺に、ミーアはニコニコしながら言った。

 

「はいっ! だってあたし達がオーブに来てから、まだ行った事ないでしょう? アスランと二人で……海水浴がしたくて」

 

 純粋に楽しみにしている表情で、見ただけで彼女がどれだけ期待しているのかよく分かる。けれど、困ったな。

 

「海に行きたい、か」

 

 ミーアはワクワクして忘れているかもしれないが、軍の准将である俺と、歌姫であるミーアがこうして同棲し、交際しているのは秘密にしてある。二人で海に行くとなると、多くの人目につく可能性が大きい。そうなれば……俺たちの関係性も気づかれてしまう事だって。

 

「オーブの海ってとーっても綺麗で、ずっと泳いでみたいと思っていたの。だから一緒に行きましょう!」

 

「……うーん」

 

 顔を近づけて、きらきらした瞳を投げかけるミーア。とても断れそうにない……どうしたものか悩むが、俺は表情を緩めてこう答えた。

 

「……分かった。俺の方でも、どうにかしてみるとも」

 

 

 

 ────

 

『へぇ、アスランも大変みたいだね』

 

 電話越しにそう話し、可笑しそうに笑う親友のキラ。

 

「笑い事じゃない。ミーアはずっと楽しみにしている……それをガッカリさせたくはないんだ」

 

 海に行きたいと願っているミーア。けれど、あまり人目につくわけにはいかない。困った俺はキラに電話して助けを求める事にした。

 

「キラは俺よりもオーブに来てから長いだろう? だから、他に人が来なくて良さそうなビーチがあるなら、教えてくれたら有り難い」

 

 人が来なければ安心して一緒に海に行けるはずだ。そう話すとキラは考えるように間を置いてから。

 

『うーん……そうだね』

 

 また少し沈黙、そして──その後で何か思いついたような感じで。

 

『あっ! そうだ、思い出したよ!』

 

「……何か心当たりがあるのか、キラ?」

 

『まあね。人が来る心配もなくて、それでいて良いビーチが良いんだろう?

 なら──僕に丁度、思い当たる節がある』

 

 

 

 ────

 

 キラと色々話をつけてから、数日後。

 

「ありがとう、アスラン。こうして海に連れて行ってくれて」

 

 海辺の道路を走る車、俺の隣に座るミーアは嬉しそうにしながらそう言った。俺はラフなシャツ姿で、彼女は白いワンピースを着て。……日が照って少し暑いからな。だから服は薄着で済ませている。

 

「どういたしましてだ。ただ、礼を言うならキラと……それと今度会った時にでも、カガリに言って欲しい」

 

「ふふっ、そうですね。──キラさん、今日はありがとうございます!」

 

「大丈夫だよ。僕もミーアが喜んでくれて、嬉しく思うから」

 

 車を運転するのはキラ・ヤマト。俺とミーアは後部座席に座り、彼の運転である場所に連れて行って貰っている。

 

「もうすぐ目的地につく頃だね。アスラン、ミーアも……気に入ってくれたらいいな」

 

 海辺を走る、キラが運転する車。俺達が向かう先は──。

 

 

 

 それから間もなく、目的地にたどり着き車はそこで停まる。

 

「ついたよ。ここなら人目を気にせずに、存分にビーチを楽しめるはずさ」

 

 車から降りた先は、小さな入江の中。外界から隔たれたように他に人気や喧騒とは無縁で、ただ静かな波の音とカモメの鳴き声が聞こえるくらいの、落ち着いた場所だった。

 

(それに砂浜もこんなに白く輝いて、海も青く透き通っている。……こんな場所があったとは)

 

「どうかな? アスハ家の所有するプライベートビーチは。カガリに頼んで借りさせて貰ったんだ」

 

 そうだったな。彼女なら、こうしてビーチを一つや二つ、持っていても不思議ではない。

 

「本当にありがとう。カガリとも話をつけてくれて、それに俺たちをここまで送り届けてもくれて」

 

「どういたしまして。……僕もアスランがそうしている所、何だか見られて嬉しくもあったから」

 

 キラからそんな風に言われ、俺も、ミーアも少し赤面してしまう。彼は車に乗り込んでから──。

 

「じゃあ僕はこれで。これ以上二人の邪魔をするのも悪いし、帰る時は連絡をくれたら迎えに来るよ」

 

 そう言い残し、車を走らせて彼は去った。

 俺達は二人になってから、また改めて目の前の景色を眺める。ミーアはうっとりとしたようにしながら、呟くのが聞こえた。

 

「とっても素敵。こんなに綺麗なビーチ、初めてです」

 

 彼女はそう言うと、満面の笑顔を投げかけて、サンダルを脱ぎ捨てた。

 

「アスラン! 二人で一緒に歩いてみましょう! 靴も脱いで……裸足で!」

 

 ミーアが向けるワクワクとした表情。俺は頷いて応え、履いていた靴と靴下を脱いで裸足になる。そうして彼女と二人で、真っ白な砂浜を一緒に歩く。 

 足元に直に感じる、細かい砂の感覚。歩いているだけでも心地良い気持ちだ。

 

「この感覚、良いものだな。やはり」

 

「ふふっ! そうですよねっ!」

 

 俺の少し前を歩くミーア。彼女は上機嫌にステップを踏みながら、軽く小躍りする感じで砂浜を歩くのを満喫している。自然にではあるけれど、まるでライブの時のように可憐な感じで。

 

(こんなに良いビーチに来れたんだ、ミーアがあんなに満喫する気持ちも……よく分かる)

 

 そんなミーアに連れられて、俺も一緒に砂浜を歩く。途中他愛のない話を交わしながら、砂浜の感覚を味わい、青く綺麗な海を眺めながら。ただ歩くだけかもしれないが、何だか良い気分になれる

 

 

 

「白い砂浜を大切な人と二人で、アスランと一緒に歩くの。……とても良いですね」

 

 少ししばらくの間、砂浜を歩いて満喫した頃に、すぐ傍で俺にそう声をかけるミーア。

 

「俺も悪くない気分だ。こう言うのもまた良いな、ミーア」

 

 俺に微笑んで、小さく頷く彼女。それからふいに海の方向を見たと思うと、今度はさっきよりもにこっと笑いながら。

 

「はい! けれど、砂浜を歩くのも良いですけれど、海に来たのですもの」

 

 そう言ってミーアは自分の着ているワンピースを、この場で脱いだ。

「──こんなに綺麗な海。やっぱり泳がないと損です!

 ビーチに行くのが楽しみで、ほら! 先に服の下に来ていたのですよ」

 

 ワンピースの中からあらわになった、水着を着たミーア・キャンベルの姿。

 眩しいくらいの黄色いビキニに、はち切れそうなくらいに豊満な身体を包んで。似合っているのはもちろんそうだが、水着を着た彼女の姿、思っていたよりもずっと見た目が、その……ドキドキしてしまうな。

 

「あら、もしかして見惚れてしまいました? ……ふふふっ」

 

「その……少しだけ、な」

 

 やや照れ気味で応える俺に、ミーアは可笑しそうにして身体を寄せて上目遣いで見つめる。

 

「──少しだけ、ですか?」

 

 思わず更にドキドキとさせるような仕草。俺はもう一度、彼女を見つめ直して言った。

 

「いや。本当はもっと、ずっと……君の姿に心奪われていた。水着姿のミーアも、最高だ」

 

 これに満足げな様子のミーア。それから、改めて海辺に視線を向けると、一人先に海の中に入って行った。

 腰まで海水に浸かった彼女は、俺の方に振り返って手を降る。

 

「アスランも! 早く着替えて、一緒に泳ぎましょう!」

 

 手招きして俺を呼ぶ声。それに応えるように、俺は上着とズボンを脱いで水着になる。実は俺も海が楽しみで、ミーアと同じように下に着込んでいたんだ。

 素早く水着になった俺は彼女の後を追って海の中へと。少し冷たくて心地良い水の感覚が足元を伝わる。

 

「……実に良い気持ちだ。これなら、もっと早くに来れば良かったかもな」

 

 追いついた俺はミーアに、はにかんでそう伝えた。

 

「そうでしょう? アスランとこうして海に来れて、あたしも幸せ一杯なんですよ。それにほらっ!」

 

「うわっと!」

 

 突然彼女は両手で一気に、バシャッと俺に水をかけた。まだ海に潜ったわけでもないのに、あっと言う間に髪がずぶ濡れになってしまう。濡れた前髪が両目にかかって見えなくなる中、まるで少女のような屈託のないミーアの笑い声が聞こえる。

 

「ふふふっ、ずぶ濡れですね!」

 

 俺は濡れた前髪をかきあげて、可笑しそうにして笑うミーアへと目が行く。それに俺は表情を緩めながら、彼女に……。

 

「ふっ……やってくれたな。お返しだ!」

 

「きゃっ!」

 

 今度は俺が同じようにして、手ですくった水をミーアに浴びせた。

 

「ははは、何だかこう言うのも楽しいものだな! ──わわっ!」

 

 続けてまた彼女が水を浴びせ返して来た。

 

「楽しい! そう来ないとですっ!」

 

 まるで子供のようにキャッキャとする水着のミーア。俺も同じ気持ちで、二人で水浴びを楽しむ。

 こんな楽しみ、半分忘れかけてもいたが、やはり良いものだ。

 

 

 

 

 ────

 

 それから二人で海にダイビングもしてみたり。やはりプライベートビーチなだけあって、海中の景色もまた綺麗だ。

 輝く小魚の群れに、それに色鮮やかなサンゴ礁も。やはり地球の海は……こんなに様々な物で溢れているのか。

 

(こうして海に潜って、泳ぐのも良い気持ちだ。本当に──)

 

 俺が泳ぎながら感銘を受けていると、右肩を軽く指でつつかれる感覚を覚える。

 そこには一緒に泳ぐミーアがいて、先に深く潜りついて来て欲しいようにこっちに促す。俺も後をついて、一緒に浅い海底のサンゴを間近にしながら泳ぐ。気持ちよさそうで自由に泳ぐ彼女は、まるで童話に出る人魚姫を思わせた。

 

 二人でサンゴの森に沿って泳いで。この鮮やかな景色に胸躍らせているミーアの横顔も、この景色に負けず劣らずにキラキラしていた。

 途中色鮮やかな小魚を一匹、泳いでいるのも見かけた。彼女はそれに興味津々で近寄って、俺も一緒に傍で眺めたりも。そんな、実に充実した一時を共に過ごした。

 

 

 

 

 ────

 

 こうして、俺たちはオーブに来て初めての海を存分に楽しんだ。

 泳ぎ疲れた俺は浜辺で横になり、軽い日光浴を。そんな俺の前には、ミーアが座り込んで。

 

「どうですか? 海ってやっぱりとても気持ちよくて良い所ですよね、アスラン」

 

 見上げた先には膝を曲げて座り込んで、少し上から俺を見下ろしているミーアの顔が。愛おしそうに見つめて来る彼女に、俺は上体を起こして微笑みを返す。

 

「そうだな。二人で海に来れて、俺も楽しかった」

 

 俺の言葉に、小さく頷く彼女。それから振り返って海を見つめながら、笑って。

 

「……ふふっ!」

 

「?」

 

 いきなり笑い声をこぼしたミーアに反応する。彼女はまた俺に視線を向けて、照れ笑いを見せると。

 

「やっぱり、アスランとこんなに素敵な思い出が出来るのが、何だか嬉しくて。だからつい、笑ってしまったんです」

 

 俺を見ながらまたくすりと笑い、それから一言。

 

「また二人で、お出かけましょう。──ねっ?」

 

 期待のこもったそんな言葉。こうして、彼女が喜んでくれるのなら。

 俺は──。

 

「ああ。これからだって……いくらでも」

 

 それに応えるように、俺は身体をミーアに寄せて、そして海辺で優しく……甘い口づけを交わす。

 

 

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