腐った上層部にキレたので、第三勢力を立ち上げました   作:しらたま大福

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誘拐事件

 

 ここは、いかにも拉致監禁場所のために用意しました! と言いたげな倉庫。所々に乱雑に積まれた荷物、埃っぽい空気に思わず眉を潜めながら私は体を捻り攻撃を避けた。

 

「怨霊操術――「ヒガンバナ」」

 

 胸元から取り出した和紙を床に放る。床に張り付いた紙から黒い影が生まれる。闇の中から漠と人間のハーフのような形をした怨霊がぬるりと現れ、目の前に退治していた術師殺しへと向かっていく。

 

『ねんねんころりよ、おころりよ』

「っ!」

 

 怨霊が紡ぐのは子守唄。その優しい声に呪師殺しは一瞬動くのが遅れてしまった。大きな口を開けてぱくり。怨霊が術師殺しを頭から一瞬にして丸呑みする。

 

「――長い悪夢(ゆめ)へと誘いましょう」

 

 術師殺しを丸呑みした怨霊が、そのまま術師殺しの体の中へと滑り込みパッと消えた。ぐらり、術師殺しの男の体がゆっくりと崩れ落ちた。

 

「さて、これで制圧完了と」

 

 私の周りに倒れる男達。その光景は死屍累々という言葉が似合うような地獄絵図ではあるが、もちろん命までは奪っていない。非術師の信者達は昏倒させ、術師殺しは幻覚系と夢を見せる怨霊を掛け合わせたものを使う怨霊によって悪夢を見せられ続けている。

 さて、この犯罪者たちは後で根回しをして警察や高専へと突き出すことにしよう。

 

「黒井さん、お待たせしました」

 

 体の自由を奪われ、床に放り捨てられていた黒井さんの元に駆け寄る。猿轡を外し、手足を縛っていたロープを外せば、彼女はポカンとした表情をしていた。はてさて、何か変なことをしたっけ?

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 彼女の目の前でヒラヒラと何度か手を振ってみると、ようやく彼女はハッとしたように正気に戻った。

 

「す、すみません……わざわざお手数をお掛けしてしまって。まさか非術師達に捕まるとは思わず……」

「大丈夫ですよ、失敗はよくある話です」

 

 うんうんと一人頷いていると、黒井さんは私のことをじっと見てきた。その表情に首を傾げていると、彼女はマジマジと確認するかのように呟いた。

 

「それにしても……澪花さん、凄く強いんですね」

「一応それなりには」

「バッタンバッタン倒す姿、とても素敵でした……。こう、親分感が凄い感じで!」

「お、おやぶん……」

 

 親分って一体なんだ。私、親分って柄じゃないんだけど!? 第一、私はあんまり人の上に立つような柄じゃないんだよなぁ……。今ボスやってるのも、流れでやってるだけだし……。駄目だ、そんな事を口に出した瞬間将門公に叱られる!

 そんなことを思っていると、胸元の携帯から着信を告げるバイブの振動を感じた。確認するために携帯のディスプレイを見れば「相棒」と言う文字。甚爾からの連絡に黒井さんに一言断りを入れてからボタンを押した。

 

「はい、もしもし」

『作戦変更』

「どんな風に?」

『世話係を連れて遠くに行け』

「遠く? 遠くか……じゃあ沖縄にでも連れていけばいい?」

『沖縄か……、いいんじゃねえか』

「りょーかい、じゃあ沖縄で会いましょう」

「おう」

 

 端的に用件だけを伝え電源を切る。外で待機しているおネエ様へと視線を送った後、パッと黒井さんに向き合って私は言った。

 

「じゃあ、沖縄行きましょうか!」

「……え?? 何で沖縄に??」

 

 黒井さんの頭には?という文字が浮かんでいるようだった。まぁ、突然今から沖縄に行きますよって言われたらそうなりますよね。

 

「甚爾が沖縄に行けと言ったから行くんですよ」

「その、理由とか……聞かないんですか?」

「わざわざ聞きませんよ」

「どうしてですか?」

「私は、彼を誰よりも信用しているからです」

 

 甚爾が私達にとって不利益や不利になる行動は決して取らない。これは私達の相棒という関係で成り立っている信頼なのだ。甚爾は私を裏切らないし、私も甚爾を裏切らない。理由なんてそんなものだけでいい。

 

「……なるほど」

「それに、こういった荒事の作戦を考えるのは甚爾の方が向いてるんです。私は私の得意なことを、彼には彼の得意なことを。何事も役割分担が大事なんです」

 

 そう言って私が笑えば、彼女は「お互い分かりあってるからこそ、できる技なんですね」と言った。そんな世間話をしている所に、声が掛る。

 

「ボス、そろそろ準備して」

「……えっと、この方は?」

 

 黒井さんは初めて見るおネエ様の姿と、私の姿を交互に見た。うちの仲間達は少々個性豊かだか、ちょっと驚いたのだろう。

 

「彼女はおネエ様、高専で言ったところの補助監督の人です」

「お、おネエ……様?」

「そう、まぁその『おネエ様』はあだ名みたなものよ。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします……」

 

 おネエ様の差し出した手に、そっと自らの手を重ねる黒井さん。軽く握手を交わしたのち、おネエ様は私に向かってバシッと声をかけた。

 

「沖縄行きのチケット、取れたわよ」

「ありがとうございます」

「いいのよ、アタシが優秀だから」

「流石でございます!」

「じゃあ、裏ルート使ってるから一旦変装してちょうだいね」

「了解です」

 

 さて、沖縄へのチケットは準備万端。時刻は既に夕方になっているため、このまま私たちは今夜は沖縄で一夜を過ごすことになるだろう。彼女を無事に星漿体の合流させるためには色々考えないとな……。

 

「さぁ、黒井さん。行きますよ」

「は、はい!」

 

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