腐った上層部にキレたので、第三勢力を立ち上げました   作:しらたま大福

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最強

 

 黒井美里はあの後高専の裏口に待機していたおネエ様が運転する車で、とある場所へと向かっていた。車で目的地へと向かう道すがら、今までの話と今後の話について聞いた。

 

 まずは、組織のボスである神無月澪花についてた。彼女は星漿体の身代わりとなるモノの完成を持ち、高専へと取引に赴く予定なのだそうだ。だから彼女はこの場には現れず、ようやく出来たそれを持って高専へと向かったらしいとおネエは言っていた。

 

 甚爾が天内理子へと撃ったのは、体質改造の弾丸。星漿体という役割からの解放の為、彼らはそのアイテムを開発した。そして今黒井の腕の中でぐったりしている天内理子は、一旦死んだ。そして澪花が渡したペンダントに施された仕掛けによって、彼女は仮死状態で今止まっている。今彼女達が向かっている場所に、理子を蘇生させるために医療課の人々が待っているという。

 

 そして、薨星宮参道でわざと夏油傑の前で理子を撃った理由は保険だった。半殺しにした生徒たちが、目の前で天内理子は死んだと証言すれば、高専からの追手の数は減るだろうという理由だ。ちなみに甚爾が生徒を半殺しにした理由は、半分は戦闘狂の側面が出たこと、もう半分は彼らがなんかよく分からないけど癪に触ったからだと言うことを言っておこう。

 

 彼らからの説明を全て受けた頃、車はとある建物の前で止まった。甚爾と黒井と理子は車から降りる、まだ仕事があるというおネエはそのまま車を発進させ、その場には三人だけが残された。

 黒井は大きな建物を見上げながら、問いかけた。

 

「ここは?」

「盤星教「時の器の会」の本部〝だった"場所だ」

「だった?」

「盤星教は一昨日俺の相棒の怒りを買って社会的に殺された」

「しゃかいてきに」

「非術師が多い団体は、そうやって社会的に殺すのが1番効果的だからな」

 

 何ともないように言っているが、社会的に殺すのも容易くないのではと黒井は思ったがそっと黙った。彼女は裏の事情にツッコむのは良くないよなと思っての行動だった。

 

「さっさと小娘を連れて中に入れ、中でウチの奴らが待機してる」

「ガオガオさんは……」

「…………」

 

 甚爾は、ごく真面目な表情で『ガオガオさん』なんて呼ぶ黒井に一瞬固まった。黒井は黒井で甚爾の名前を知らなかった、車に乗る間際におネエが彼のことをガオガオ君と呼んでいたので、それが彼の名前だと思ったからだ。

 そして、その行動によって今まで全てシリアス風に来ていたのに一気に台無しになった瞬間でもある。しかし、甚爾は空気の読めるいい男なのでスルーすることにした。

 

「俺は多分まだ仕事がある」

「仕事?」

「五条の坊と、呪霊操術を使うガキを半殺しにしたんでな。仕返しに来る確率が高ぇ」

「じゃあ、私もここに残って彼らに説明した方が――」

「要らねえ」

 

 黒井の申し出に、甚爾ははっきりと拒否した。「どうしてですか!」と声を荒げる彼女に、甚爾は面倒臭そうにこういった。

 

「星漿体は、お前の家族なんだろ」

「っ!」

「こいつは頭ぶち抜かれて一回死んでんだ。起きた時に"家族"が傍にいた方がいいだろ」

 

 これは彼なりの気遣いだったのだ。

 

「……分かり、ました」

「ほら、さっさと行け」

 

 甚爾からの言葉に黒井は頭を下げ、理子を抱え直し建物の中へと急いで入っていった。彼女が建物の中へと消えたのを確認してから振り返る。

 

 

 

 ――遠くに、人影が見えた。

 

 

 

「よぉ、久しぶり」

「……やっぱりな」

 

 彼の前にふらりと現れのは――五条悟だった。

 

「だが、復活すんの早くねえか?――あぁ、反転術式か」

「正っ解っ‼︎」

 

 甚爾の予想よりも早い復活に、彼が反転術式を取得した事を悟った。

 

「今まで論理だけは頭で理解してるつもりだった、でも今までできたことねーけどな」

 

 反転術式を取得した彼は、一周回ってとてもハイになっていた。

 

「だけど、今回ボコボコにされて掴んだ――呪力の核心‼︎」

 

 聞いてもいない事を一人でペラペラと喋る五条に甚爾は厄介なことになったなと確信してしまった。

 

「オマエの敗因は俺を首チョンパしなかったことと、しっかり俺にトドメを刺さなかったこと」

「……敗因、か」

 

 元々殺すつもりもなかったけどな、という言葉を彼は飲み込んだ。彼は愛しい妻の考えた作戦の為に憎まれることを選んだ。そのことに後悔も、悔いもないのだから。今更言い訳をするなんてらしくねえと吐き捨てた。

 

「五条の坊、新しい力が手に入ってテンションが上がってんなら――俺が相手してやるよ」

「あ――やってもらおうじゃねえか!」

 

 甚爾は、格納呪霊の中から先ほども使っていた特級呪具「天逆鉾」を取り出した。大きく踏み込み、あっという間に五条悟との距離を詰める。甚爾の流れるような剣裁きを退けながら、五条悟は指で印を組んだ。

 

「術式反転――「赫」」

 

 五条悟の指先から、衝撃波のような力が真っ直ぐ甚爾を射抜く。凄まじい衝撃音と共に、彼は吹き飛ばされ建物に激突する。

 

「ハッ、化け物が」

 

 その瓦礫から立ち上がった甚爾は、多少の怪我はあるものの骨すら折れていなかった。

 

 引き寄せる力である順転術式「蒼」、弾く力である反転術式「赫」。その二つの性質を理解してしまえば、その対処方を編み出すことなど甚爾には簡単だった。その二つの力に対処するために、甚爾は呪具『万里ノ鎖』を取り出し、天逆鉾へと取り付けた。リーチを得た逆鉾さえあれば、自分の負けなどあり得はしないと――確信していた。

 

 うっすらと脳裏によぎり始めた"違和感"と言う言葉。

 

「……いや、これでいい」

 

 ――澪花(あいつ)はきっと、一人で戦っている。だから俺も、こんなガキ相手に逃げるわけにはいかねえ。好きな女の目に映る俺の姿は、いつでもかっこいい姿を見せたいからな。

 

 ジャラリと万里ノ鎖が音を立ててしなる。

 

「捻り潰してやるよ」

 

 逆鉾を振り回す伏黒甚爾。その脳裏に今も色濃くよぎる〝違和感”を見ないふりをした。

 

 五条悟は無下限を使い空へと浮かび上がる。彼にとって自分の新しい力が、この高揚が、この世界がただただ心地よかった。目の前に立ちはだかる確かな強敵。その敵を打ち倒してこそ、自分は最強へとなれると――そう確信していた。

 

「――天上天下、唯我独尊」

 

 ――五条家の中でも、ごく一部の人間にしか伝わっていない無下限術式最終奥義。"順転"と"反転"、それぞれの無限を衝突させることで生成される仮想の質量。それを押し出す術、それが――。

 

「虚式――「茈」」

「――……っ!」

 

 辺り一体に、耳をつん裂くような破壊音が響いた。

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