腐った上層部にキレたので、第三勢力を立ち上げました   作:しらたま大福

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幕間「マグロ漁師の帰宅」

 甚爾は久方ぶりに子供達とばあやが待つ家へと帰還した。ガラガラと玄関を開け、家の中に入ればちょうどトイレに行ってきた津美紀が甚爾の姿を捉えた。

 

「あ、お父さんだ!」

 

 津美紀のその声に茶の間から恵も顔を出す。久しぶりにみる父親の顔にパッと笑顔になって駆け寄っていった。

 

「おかえりなさーい!」

「おいガキ共、人の体によじ登るんじゃねぇ」

 

 わーい、わーいとテンションの上がった子供達は、まるで遊具のように甚爾の体へとよじ登り始めた。ちょろちょろと体をよじ登る子供達に元気だなぁと、そのまま子供を引っ付けたまま茶の間へと入っていった。

 

「わー!!」

「たのしー!!」

「……ったく、人で遊びやがって。誰に似たんやら」

「確実にお嬢様でしょうね」

 

 茶の間へと入れば、こたつに入りながら編み物をするばあやの変わらない姿があった。

 

「よぉ、ばあさん」

「お帰りなさいませ、甚爾さん」

 

 お茶でもいかがです?というばあやの問いに、じゃあ貰うわと返してから自らもこたつへと座った。人の体を遊具のようにして遊んでいた津美紀は、甚爾の膝へと寝転んだ。津美紀の柔らかい髪を梳いてあげていると、彼女はキョトンとした顔で問いかけた。

 

「ねぇねぇ、お父さん!」

「あ?」

「マグロどこ??」

「…………は?」

 

 甚爾は津美紀からの問いかけに固まった。どうして突然マグロの行方を聞かれなきゃならないんだ? というか、なんでマグロなんだと。甚爾はそう声に出したかった。でも、津美紀のキラキラした瞳の前ではそんなことは言えなかった。

 

「ねえ、お父さんマグロとりにいってたんだよね!」

「おふねでどんぶらこ!」

「…………おい、ばあさん」

 

 子供達の言葉に、なんとなく事態を察知した甚爾。すぐに事態の戦犯であるばあやへと視線を向ければ、ニコニコと私何も知らないですよ〜と言いたげな表情でお茶を持ってきた。

 

「お父さんは、マグロ全部売ってきちゃったから持ってないんですよ」

「え〜! つみきマグロ見たかった!」

「なんでもってきてくれなかったの!」

 

 甚爾は迷った。子供達の夢をぶち壊していいのか、と。――そして彼は決意した。

 

「あー……今度、な?」

 

 不本意ではあるが、マグロ漁師設定に乗ることを。

 

「わーい!マグロ!」

「たのしみ!」

 

 甚爾は、果たしてこの決断が正しかったかなんて分からない。でも、ひとまず子供達の笑顔が見れたことに安堵すればいいのかと思いながら茶を飲んだ。

 

 

 

 この後、子供達がル○ン三世の峰不○子を見ながら、「おかあさん!」といい笑顔で言っているのを聞いて爆笑する甚爾であった。余談ではあるが、澪花の元に帰った甚爾は暫く澪花のことを不○子と呼んで一人爆笑したし、呼ばれた本人はさっぱり意味がわからず首を傾げていたそうだ。

 

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