腐った上層部にキレたので、第三勢力を立ち上げました 作:しらたま大福
伏黒甚爾は、フィジカルギフテッドにより身体能力が強化された男である。呪力がない彼の武器は己の肉体。彼は守るべき存在を守るために日々の鍛錬を怠らない。
それは、子供達とばあやが待っている実家に帰っても変わることの無い日課であった。
そんな訳で、彼は子守りのついでと称して重石替わりに息子の恵をその背に乗せ腕立てをしていた。
一回、二回、三回、彼が腕立てをする度キャッキャと楽しそうにその背の上で声を上げる恵。そんな恵の姿を見ていた津美紀は、ふと思い出したかのように声を上げた。
「めぐみ、練習したあれやるよ!」
「うん!」
甚爾は「何の事だ?」と思いながら、そのまま腕立て伏せを続けた。すると子供達は――。
「しあがってるよー!」
「しあがってるよー!」
謎の掛け声をかけ始めた。
「ふっきん、いたちょこー!」
「ばれんたいん!」
甚爾が腕を曲げ、地面スレスレまでその大きな大胸筋を近づけ、そして腕を伸ばし地面から大胸筋が離れていく。
「だいきょうきんが歩いてる!」
「せなかにはねがはえてるよー!」
そして、続く子供達の謎の声援。
「とれたてしんせんかたメロン!」
「しんじんるい!」
もはやこれは声援と言うより、1周回っていじめではないかと甚爾は思いだした。しかし、彼の視界から見える津美紀の表情はどう考えても無邪気な子供のそれ。
「さんかくチョコパイ!」
「ないすぷりけつ!」
恵なんかは、ついに甚爾のケツをペシペシと叩きながら言い始めた。甚爾は、子供にケツを褒められる父親ってどうなのかと自分に問いかけたが……ちゃんと親をやれてる自信はないのでそっと黙った。
そして、子供たちの謎の声援を受けながら甚爾は日課の筋トレを全て終わらせた。恵を下ろし、床に胡座をかいた甚爾は子供達へと問いかけた。
「……おいガキ共、なんだその変な掛け声は」
「ばあやが教えてくれた!」
「むきむきおうえん!」
「いや、なんだよムキムキ応援って……」
ムキムキ応援の意味は甚爾には分からなかった。いや、普通ムキムキ応援と言われて分かる人物は居ないだろう。
「ムキムキ〜!」
「むきむき〜!」
でも、子供達は甚爾のそのムキムキボディーが大好きなのだ。甚爾の立派なムキムキな上腕二頭筋に子供達は触ろうと、その小さなを伸ばしてきた。
「……ほらよ」
そんな賢明な姿に、甚爾はむず痒い気持ちになりながらその手を広げた。
「えい!」
「わぁっ!」
キャッキャしながら甚爾の腕にぶら下がる子供達。そんなほのぼのした姿をこっそりと眺め、いそいそとカメラに収める老婆が一人いた。
「……ほのぼのしい姿ですね。あぁ、たくさん撮っていつの日かお嬢様に見せて差し上げなくては……!!」
このばあや、写真の腕がめちゃくちゃ良いので秘蔵のお嬢様に捧げるアルバムがどんどん分厚くなるのであった。
ちなみに、ばあやが子供達に仕込んだ声援は、ボディービルの大会で使われるやつであったとさ。伏黒甚爾の筋肉は実践向きの筋肉であるのだが……まぁそんな事は些細なことだろう。