腐った上層部にキレたので、第三勢力を立ち上げました 作:しらたま大福
私の死刑が確定し、甚爾が私の家に転がり込んでから五年が経った。甚爾が転がり込んで一年後、私達は結婚した。彼は「禪院は嫌だ」と言い張ったため、婿養子となり伏黒甚爾へと名前を変えた。結婚して二年後、私は甚爾との子供を出産した。名前は恵、こんな名前でも男の子である。ツンツンした髪質だけは私に似たが、それ以外が甚爾そっくりである。親子ってこんなにも似るんだなぁと、甚爾の遺伝子の強さにビックリした。
そして、さらに一年後。呪霊に両親を殺された女の子を保護した。彼女の名前は津美紀ちゃんという、恵よりも一歳年上の子だ。私達は津美紀ちゃんを養子として迎え入れた。現在は私達家族四人と、かつて私の家に仕えてくれていたばあやと共に暮らしている。ばあやは、私の死刑が確定された後、跡取りのいない神無月家は解体された。その後、私の無事を願ってくれていたようで全国で家政婦をしながら私を探してくれていたのだ。あの時の感動は今でも忘れられない、初めての子育てに四苦八苦していた私に救いの手が差し伸べられた瞬間なのだから!
こうして、私は自分が死刑が確定している人間だと言うことを忘れてしまうほど平和な日常を送っていた。だがしかし、そんな平和は長く続くわけがない。
『この子は、"持って生まれた”子供ですね』
津美紀は三歳、恵が二歳になった頃。スヤスヤと昼寝をしている恵を見て、滝夜叉姫はそう言った。彼女が持っていると言ったのは、もちろん術式の事だろう。
普通能力が開花するのは四歳から六歳の間。けれど怨霊である彼女ならば、もっと早くに見えるのだろう。
「……ちなみに、術式は?」
『まだ完全に発現してはいないので確実とは言えませんが――禪院家の相伝でしょう』
「……そっか」
どこか覚悟はしていた。禪院家の生まれであるが天与呪縛によって呪力を一切持たない甚爾、神無月家の術式を持って生まれた私。血筋だけで言えば、そこら辺の呪術師よりはよっぽど強い血筋だ。だから、恵も”持って生まれる”可能性は高かった。
『娘、そろそろ覚悟を決める時が来たようだな』
「分かってる……」
恵が相伝の術式を持って生まれてきたと言うことは、いずれ呪術師界に嫌でも足を踏み入れることとなる。しかも恵の術式は、御三家の一つである禪院家の相伝『十種影法術』だろう。甚爾から聞いている禪院家の情報が正しければ……禪院家は喉から手が出るほど恵を欲しがるに決まっている。
私は恵の母として――やらなければならない。例えそれが世間一般的に見て、正しくない選択だったとしても。
「将門公、滝夜叉姫――改めて、私に力を貸してください」
『ええ、わたくしは澪花の為に』
『――ようやくか』
「私は、この呪術師界を変えます」
この腐った呪術師界を変える。その為だったら――どんなに辛い道のりでも進むしかない。
「ごめんね、皆」
――数日後、一件の交通事故が起こった。被害者の名前は伏黒花。一人買い物に行く途中に、運転をミスしガードレールを突き破って海へと落ちた。見つかった車は運転席の扉が空いており、遺体を発見する事は出来なかった。警察は事故として処理をした。