腐った上層部にキレたので、第三勢力を立ち上げました   作:しらたま大福

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第三勢力

◇ ◇ ◇

 

 2005年、神無月澪花が率いる非公式の呪術師新組織はついに本格的に運営を始めた。

 代表の神無月澪花、そのボディーガードの伏黒甚爾。そして彼女が集めた五人の変態(オタク)達を中心にした、五つの部署を中心に組織は回る。組織と言っても、大手の高専のような形態を取ることなど不可能だ。なので、彼女は高専の形態と会社の形態を足して二で割ったような独自のシステムを生み出した。

 呪具師と呪符師を組織で雇用し、フリーの呪術師や、高専に所属していない御三家などの家からは秘密裏に制作依頼を受ける。窓口を一括にすることによってスケジュール管理を行い、双方の間で滞りない契約を結ぶのだ。

 呪術師にとってもこれは結構利点が多かった。呪具師などの職人となる人間は、良い腕を持ってる事に比例して変人度が上がる傾向にある。天才と馬鹿は紙一重という言葉が良く似合うのだ。そして、呪術師は欲しい呪具のイメージがあるのだが、職人達と話が通じず作れないなんてことがざらにあった。しかし、この新組織を通すことによってイメージ通りの物を作ってもらえることが増えたのだ。これに呪術師は大歓喜、リピーターが続出した。

 そして、職人達は今まで依頼のない期間は金銭が発生しない事が多かった。しかし、この組織に雇用されている間は安定して給料を貰うことができた。指名の依頼があれば追加金額も貰え、ついでに各々の制作してみたい物も作れる。組織のトップである澪花に、作ってみたいイメージを話し興味を持ってもらえば助成金も出る。

 おまけに、制作陣から裏で密かにフィジカルゴリラと呼ばれる伏黒甚爾がいる。彼の手にかかれば、どんなに重く使いにくい呪具でも簡単に使いこなしてしまうのもポイントが高く、理想的な職場環境だった。

 こうして、初めは手探り状態でスタートした組織は、少しずつその人数を増やしながら大きくなっていった。

 彼女達の活躍に、高専に所属している呪術師達は自分達の仕事の負担が減っていることに気づいていた。その事に喜ぶ者もいれば、彼らの謎の行動に困惑する者もいた。

 だが、確実に言えることが一つある。それは、今まで全く革命の起こらなかった呪術師界に新たなる風が吹いてきていることを。

 

 

 翌年の2006年。

 澪花が裏で糸を引いているオカルト専門の探偵事務所に、一人の女がやってきた。その女は、明らかに呪術師界(こちら)側の人間だった。探偵事務所の所長は、澪花に会わせるか迷ったが――結局澪花本人に判断を委ねることにした。監視カメラ越しに女を見た澪花は、一目見て直ぐに決断した。

「彼女と面会します」

 澪花が応接室の扉を開け中に入れば、相談者である女はパッと澪花の方を見た。「あっ」と小さく声を上げた女の態度を気にせず、彼女は反対側にあるソファーへと腰を下ろした。

「初めまして、ようこそおいでくださいました」

「は、初めまして……」

 あまりにも普通の態度で話されるもので、女は困惑する。それもその筈、女からすれば澪花は死刑判決を受けている呪詛師である。ここ一年程でその判決に疑問を抱く者が増えてはいるが、いまだにあの判決は覆っていなかった。

 そんな中、澪花のもとに来るのはかなりの勇気が必要だったのだ。

「ここは……高専とは違う呪術師の組織の窓口と聞いて来たのですが……」

「はい、合ってますよ」

「そう、ですか」

 そこまで言ったところで、女は黙り込んでしまった。一向に本題に入らない女の姿に、澪花はかなりの訳ありだなと思いながら話を促した。澪花からしてみれば、彼女が本題に入ってくれなければそちらの情報はわからないのだ。

「所で、一体私達に何の御用ですか?」

「……頼みたいことが、あるんです」

「高専ではダメな事ですか?」

  女性は、覚悟を決めたように顔をあげた。

「はい、……ダメな事なんです」

 見定めるように真っ直ぐな瞳で彼女を見る赤髪の女に、自らのたった一つの願いを口にした。

「お嬢様を――理子お嬢様をっ! 救って欲しいのです」

「……詳しくお話をお伺いしても?」

 物語は、ついに本格的に動き出した。

 

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