幻想籠球録~低身長バスケ部の記録~   作:Uさんの部屋

10 / 303
前回までのあらすじ
復帰した相田光一を加えての試合形式のゲームが開幕。第1Qは、光一のプレイで、優チームから無失点を達成したが、第2Q序盤で見せた優のダブルクラッチからのダンクで、チームの勢いが上がり………!?


第10話 落ち着いて取りに行くよ!

ゆうか「そろそろ第3Qを始めるわよ!」

 

春香「すみません、選手交代です。鈴香ちゃんに変わって、私が出ます。」

 

ゆうか「OK、認めます。」

 

ここで春香が満を持して登場。それを見た優は………

 

優「皆、気をつけろよ………! これからの春香チームはインサイドとアウトサイド共に隙が無くなるぞ………!」

 

と、チームメイトに声をかける。試合は春香チームボールで再開。

 

春香「のぞみちゃん!」

 

春香はのぞみにボールを渡し、のぞみは敵陣までドリブルで進む。優チームは、春香のスリー、積牙と光一のインサイドをそれぞれ警戒し、ゴール下を中心に編成を組む。春香のマッチアップにはあかりを付けておき、出来るだけスリーを撃たせないように対策を試みる。

 

のぞみ「光一!」

 

美咲「………! (やはり光一くんで攻めてくる………!?)」

 

のぞみ「(美咲にはインサイドと見せかけて、本命は………!)」

 

のぞみは春香にパスを回した。

 

美咲「し、しまった!」

 

あかり「撃たせないわよ、春香ちゃん!」

 

春香「そうですか………しかし、関係ありませんね。」

 

春香はそう呟くと、後ろに飛び上がる。

 

あかり「(フェイダウェイスリーポイントシュート!?)」

 

あかりは慌てて飛び上がるが、春香の素早いスリーを前には手遅れ。彼女の放ったシュートは、リングにかすりもせずに入った。

 

光一「よし! スリーに関してはやっぱり春香が1番上手いぜ!!」

 

優「(早速やられた………! 確かに春香のフェイダウェイからのスリーは、あの距離だけでも隙が少なかった………やはり、彼女のスリーを止めるのはそう簡単にはいかないか………!)」

 

優はそう考えると………

 

優「慌てるな! まだ取り返せる! 1本、落ち着いて取りに行くよ!」

 

優はそう言うと、美咲にボールを渡す。

 

美咲「(優くんの言う通りだね………! 取れないことを悔やむよりも………今、私達がすべき事は点を取ること………!)」

 

美咲はそう考えると、ドリブルで敵陣へと切り込んでいく。

 

のぞみ「ここで止める!」

 

のぞみは美咲の前に立ちはだかるが………

 

美咲「そう簡単には取らせないよ!」

 

美咲はそう言うと、左に動く。のぞみも連動して抜かせまいと彼女の前に立つが、美咲は直ぐに切り返してのぞみを抜いた。

 

のぞみ「(速い………!)」

 

美咲「あかり先輩!!」

 

美咲が渡したボールはあかりに渡る。あかりの前には春香が立ちはだかる。だが、彼女は優に僅かな視線を向け………

 

あかり「行くわよ!」

 

その場で大きく飛び上がり、シュートフォームを形成する。

 

春香「打たせません!」

 

春香もジャンプして、シュートコースの妨害を試みる。

 

あかり「ふふっ………優くん!」

 

だが、はなっからシュートをする気は無かったあかりは、ボールを優に渡すと、優はダンクに向かう。

 

光一「そう何回もダンクなんて打たせるか!!」

 

光一は大きくジャンプして妨害しようとする。その高さはほぼ互角で、優も無理してダンクに行くと、ファールを取られる恐れがあった………しかし、優はダンク寸前に、自分の左下にいたあずさにボールを渡す。

 

光一「何っ!?」

 

あずさ「はああっ!!」

 

そのままあずさがレイアップの体勢に………

 

積牙「打たせるものか!!」

 

積牙は大きく飛び上がり、あずさのレイアップを妨害。しかし、その時に彼女と接触してしまい………

 

ゆうか「チャージング! 白10番! フリースロー!」

 

シュートこそ防いだが、あずさにフリースローの権利を与えてしまった。

 

春香「あ、危なかったわね………積牙くんがいたから、まだ良かったけど………」

 

あずさ「やっぱり身長の壁は高いな………まあ、フリースローを貰えただけラッキーって感じかな………?」

 

優「春香が入ってきてから、相手の士気も変わってきたな………」

 

明日香「チームの最強メンバーと言える数はあっちの方が多いからね………というか、相手に優もいたら絶望だったよ………」

 

美咲「そうだね………」

 

優チームはフリースローの権利こそ得たが、春香チームの強さに、若干追い詰められているような様子を見せるのだった………

 

 

ゆうか「ツーショット!」

 

あずさは、ゆうかからボールを受け取ると、ゴール目掛けてシュートを放つ。まず、1本目は難なく決め、2本目も綺麗に決めた。

 

のぞみ「(バスケ部でシュート成功率が高いあずさが打っている事を考えれば、この2失点はやむを得ないわね………)」

 

のぞみを始め、春香チームはこの失点については深く考えずに、攻撃に気持ちを切り替えた。

 

のぞみ「(この1本も安定して奪うわよ………しかし、相変わらず優の存在感は大きいわね………こっちは190cm超えを2人抱えているはずなのに、優の前ではそれすら意味無いように感じるわ………)」

 

のぞみはそう考えると………

 

のぞみ「(なら、ここはアウトサイドから攻める!)………春香!」

 

のぞみがそう叫んで、春香にボールを投げた時だった。突如、あかりがインサイドの方に走り、優が春香の前に立った。

 

春香「ゆ、優さん………!?」

 

のぞみ「(マッチアップを変えてきた!? くっ………!)春香、戻して!!」

 

優「逃げるなんて、そんなの僕が許さねぇよ!」

 

優はそう言うと、美咲に目配せをする。それにより、美咲は春香寄りの方に立ち、簡単に戻せないようにする。

 

春香「(こ、こうなったら打つしかない………! 今の優さんとの距離が近いから、パワースリーポイントシュート一択だけど………幾ら優さんでもファールの網にかかるはず………!)」

 

春香はそう信じてスリーを放つ。しかし、優はここで予想外の動きに出た。優はジャンプこそした………しかし、わざと全然勢いをつけずに飛んだ為、春香の上半身くらいまでしか飛んでいない。

 

春香「なっ!?」

 

春香は優に気を取られてしまい、シュートを打ちはしたが、外した。そればかりでは無く、落下時に先に地面に降りた優と接触。春香が優を押し倒す形で、2人とも倒れてしまった。

 

ゆうか「チャージング! 白5番!」

 

春香「す、すみません! 大丈夫ですか!?」

 

優「な、何とか………」

 

のぞみ「(か、かなり無茶な真似に出たわね………! 春香の動揺を誘ってファールの網にかける。………ただでさえスリーポイントシュートのブロックに走りがちな場面においてそれを狙いに行くなんて困難にも程があるって言うのに………! しかし、アンスポーツマンライクファール………故意のファールと取られなかったのは不幸中の幸いって所かしらね………)」

 

のぞみはこの状況を、驚きながらもそう分析するのだった………

 

 

 

第3Q以降、春香達が加わっても、優がその分食らいついてきた。結果、ゲームは68vs68の同点で終わった………

 

 

優「つ、疲れた………」

 

積牙「流石キャプテン………それに、先輩方もキャプテンのプレイから勢いづいてましたね………」

 

美咲「あはは………なんというか頼りになるんだよね、優くん。基礎は全くダメなのに、タンクとかアリウープ。それに、凄いジャンプからのブロックとか………真似出来ないからこそ、そのプレイに勇気づけられるんだよね。」

 

あずさ「確かにね。流石にダブルクラッチからのダンクはびっくりだけど………」

 

優達は試合後に楽しそうに会話をしていた。そして、それを見ていたゆうかは………

 

ゆうか「(両チームの選手の皆がいい勝負を見せるようになってきたわね………これなら、次の大会も期待出来そうね………大会まで残り2ヶ月。練習あるのみね………!)」

 

そんなことを考えていた………

 

 

 

それから優達は、大会に向けて練習をする事になった。そんな中、一つだけ変化があった。

 

 

 

ゆうか「はいはーい、今日からマネージャーが加わるわよ!」

 

光一「マジか! ここにいる女子は皆、運動女子だからなぁ………マネージャー女子ってのも悪くな………」

 

伊吹「ふざけた事を言うなクソ野郎!!」

 

明日香「私達の何が気に食わないのよ、彼女なし男!!」

 

光一は軽はずみな言葉を口にし、伊吹を始めとした数人の女子から袋叩きにされた。

 

結衣「朝顔 結衣です、よろしくお願いします!」

 

光一「あっ、あの時の! 俺に憧れて入ってくれたんだよな!?」

 

結衣「いえ、違いますが………?」

 

光一「嘘だろ!? また優絡みか!?」

 

光一が頭を抱えている中、結衣は顔を真っ赤にしながら優に視線を向ける。それを見た優は首を傾げていたが、春香は優に抱きつくと、関節技を仕掛けてきた。

 

春香「ゆーうーさーんー?」

 

優「痛い痛い痛いー!!」

 

結衣「あ、あの………どうしたんですか?」

 

春香「優さんは私のモノだからね! 」

 

結衣「ふぇっ!? ど、どういう意味ですか、それ!?」

 

優「な、何でもいいから助けてーー!!」

 

ゆうか「うふふ………賑やかになってきたわね。」

 

優「僕の命に関わるんですがー!?」

 

積牙「せ、世紀末………ですね。」

 

マネージャーとして、朝顔 結衣が加わり、優達の練習は賑やかになりながらも、レベルアップの為に必死に特訓を繰り返していた………彼等が大会に挑み、全国への道を歩む為に………

To Be Continued………




次回予告
優達の県大会が近づく中、ゆうかは優と春香を誘って他県の試合を見に行くことに。だが、そのメンバー数人に優と春香は不思議な表情を浮かべ………?
次回「アイツはまさか………!?」

今回のバスケ用語解説
はじめまして、雷 美咲だよ! 今回は前回のあずさちゃんの解説に続く形で、ジャンプシュートを紹介するよ! 巫魔高校の選手の大半の武器が、このジャンプシュートだけど、改めて解説すると、このシュートは言うまでもなく、ジャンプしてシュートを打つこと。シンプルだけど、安定して成功させるには練習を積まないと出来ないんだよね。まあ、基礎も出来ないのに、あれだけダンクを連発出来る優くんは例外だけど………と、とにかく! シンプルだけど、安定して得点を狙うには、レイアップよりも練習が必要だけど、練習を積み続ければ、身長なんか関係無しに出来るようになるはずだよ! じゃあ、私からの解説はここまで! 次回からはまた違う説明がされるみたいだから、楽しみにしててね! じゃあねー!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。