幻想籠球録~低身長バスケ部の記録~   作:Uさんの部屋

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前回までのあらすじ
全国への出場経験があり、優の過去の友が所属する友力との対決。第1Qは選手のレベルの違いに苦戦を強いられるも、優の加入で、巫魔の流れが来ようとしていた………


第13話 バカヤロー!!

芽衣「まだ点差は11点! 落ち着いていこう!」

 

芽衣はチームに落ち着きを促す。実際、現在の点数は15vs26。友力にとってはまだ慌てるような点差では無い。しかし、この状況で、ただ1人だけ過剰に興奮するかのように落ち着きの無い者がいた。そう、浩太である。浩太は前線に上がるや否や………

 

浩太「芽衣、こっちに回せ!!」

 

芽衣「(浩太くんに回したいのは山々だけど………いま、浩太くんは3ファール………下手に4ファールになってしまうと、うちのCが弱くなってしまう………ここは修也くんに回して安定を………)」

 

 

芽衣はそう考え、修也にボールを回す。マッチアップ相手は当然のように優。

 

結衣「ああやって見ると………優さんが小さく見えますね………」

 

伊吹「アイツ、身長は170cmだしな。なんなら、SFの積牙の方がデカいよ。でもな、アイツはすげぇんだよ。」

 

伊吹が話をする中、修也は大きく飛び上がり………

 

修也「ここで決めさせてもらうぞ!」

 

修也はここでジャンプシュートを放つ。しかし………

 

優「させる………もんか!!」

 

優は修也を超える高さにまで飛び上がり、ボールを打ち落とした。

 

修也「高い………!」

 

浩太「ちっ………ここで俺が!!」

 

なんと、この状況で浩太は、マッチアップしていた光一そっちのけで、こぼれ球を広い、ダンクを狙いに行く。

 

芽衣「ダメ、浩太くん!!」

 

芽衣が静止をするものの、浩太は聞く耳を持たず、そのままリングにボールを押し込んだ………のだが、突然笛が鳴り………

 

明日香「チャージング! 白9番!」

 

と、まさかのファール判定。浩太は驚いた様子を見せた為に

 

浩太「ま、待ってくれ! 誰に当たったんだよ、俺は!?」

 

明日香「下見てなかったの? 優に接触してたのよ。」

 

明日香は優を指差す。すると、優が仰向けに倒れていた。

 

鈴香「ボールを弾いた直後に、ダンクに当たったように見せかけるプレイ………上手い。」

 

結衣「ど、どうしてですか?」

 

伊吹「アイツは審判である明日香の死角を利用して、あたかも接触して倒れたように見せかけたんだよ。それに、あのCはこれで4ファールだ。」

 

結衣「となると、次のファールで退場………はっ!?」

 

伊吹「そうさ………退場を恐れて、まともなプレイが困難になってくるぞ。」

 

優のファインプレーがここで炸裂。すると、ここで両チーム共に予想外の事態が起きた。

 

浩太「ま、待て!! 俺は触ってないぞ!!」

 

アリサ「浩太!?」

 

修也「止めろ、浩太!!」

 

なんと、この場面で接触していないと抗議に出てきた。しかし、これはリレーで無ければ、水泳でも無い………

 

浩太「なんで触れても無いのにファールを貰わなきゃならねぇんだよ!!」

 

明日香「………はあ。」

 

明日香は溜息をつくと………

 

明日香「白9番、テクニカルファール! 5ファール退場!」

 

浩太「………!!」

 

バスケでは審判の判定が絶対。抗議すれば、テクニカルファールを取られる恐れがある。浩太は、この場面で何とも間抜けな退場をする事になってしまった。

 

身軽「何やってんだか………」

 

キャプテンの身軽は呆れ、芽衣は唖然、アリサは………

 

アリサ「バカ! 何くだらない理由で、前半も終わってないのに退場しちゃうのよ!!」

 

怒りを顕にしていた。確かに、まだ第2Qが始まって1分程度しか経っていない。なのに、友力は残る29分を、浩太抜きで戦う羽目になってしまった。

 

奄美「あのバカ………なんて事を………ウチには彼の前にもう1人全国と戦えるCがいたが………彼は去年の大会の敗北後に、海外留学に行ったきりまだ戻ってきていない………それなのに………この状況で強力なCを失う羽目になるとは………!」

 

奄美が頭を抱える程、この状況は友力にとって深刻な問題だった。このチームには一応、控えのCがいるにはいるが、まだ1年生であり、試合出場経験も無い天原太助という選手。身長も184cm、72kgと、浩太と比べれば小柄。友力は、チームを支える強力な柱を1人失った。

 

修也「何考えて審判に抗議したんだよ………あの人がいない今、お前がいなきゃCが弱くなるのに………バカヤロー!!」

 

修也は思わず彼を責め立てた。まあ、審判に抗議して退場という間抜けな理由での戦線離脱をしてしまったので、怒りたくなる気持ちも分かるが。

 

浩太「………」

 

浩太は何も言い返せずにベンチに下がった………

 

 

 

明日香「友力選手交代! 9番に変わって15番が入ります!」

 

友力は止むを得ずに、天原太助を投入。

 

修也「太助、急な出場ですまないが、今、Cをやれるのがお前しかいないんだ。ミスをしてもいい、全力で頑張ってくれ。」

 

太助「は、はい!」

 

本試合がデビュー戦となる太助は、やはり緊張していた。その緊張感は、巫魔のベンチ陣ですらハッキリわかるもので………

 

由香「緊張しているわね、あの子………」

 

鈴香「見た感じ1年生っぽいし………こんな状態で唐突に出ろと言われて緊張しない方が凄い………」

 

レイ「相手にとってはある意味最悪の誤算ね。相手の9番が間抜けな理由で退場をくらったんだから。」

 

伊吹「皆! 絶好のチャンスだ! 攻めて攻めまくれ!!」

 

伊吹の声を聞いた浩太は、はっきりと苛立ちを見せていた。しかし………

 

奄美「挑発に乗るな、林川。お前の退場はうちのチームにとってかなりの大損害だ。頭を冷やせ。お前抜きの今のチームでは、どんなに苦しくなるか………その理由を試合を見るんだな。」

 

奄美は怒りながらも、彼の為に試合を見るよう促すのだった………

 

 

試合が始まってしばらく経った時の事、巫魔ボールでのぞみがボールを持って敵陣の前に立つ。友力の守りはマンツーマンだったが、Cが薄く見えてしまっていた。

 

のぞみ「光一!」

 

のぞみのパスは光一に渡る。太助は何とか止めようとするが………

 

光一「お前なんぞに………俺のシュートが止められるか!!」

 

迫力とパワーで太助のディフェンスをかわし、ツーハンドダンクを炸裂させた。

 

太助「ぐっ………(つ、強い………!!)」

 

浩太「………!! さっき俺が止めれたCが容易く決めた………」

 

奄美「そういう事だ。天原はまだ高校レベルのCとしては未熟だ。恐らくだが、相手のCは並の選手など寄せ付けない強さがある。しかし、お前はCとしては全国クラスとも言える素質がある。だから、奴を止めることが出来た。分かったか? お前が外れた代償の重さが………」

 

浩太「………」

 

友力監督、奄美の指摘は最もだった。光一は部に出ていなかった為、試合経験自体は少ない。しかし、Cとしてはピカイチの強さを持っており、とても参加禁止を言い渡されていた人物の動きではなかった為、恐らく自主的な練習をしていたのだろう。

 

修也「(まずい………浩太の離脱が痛すぎる………相手のCが、実質ゴール下を支配していると言っても過言じゃない………!)」

 

修也がそんな事を考えていると、友力側の反撃が始まる。ボールを持った芽衣は、不用意にゴール下にボールを回すのは危険と判断し………

 

芽衣「アリサちゃん!」

 

ボールをアリサに渡す。マッチアップ相手は春香である。

 

アリサ「貴女とこうやって対決する事になるとは思わなかったよ。でもね、私だってスリーポイントシューターとしては、無敵に近いんだから!!」

 

アリサはそう言うと飛び上がる。飛んでいるのが前寄りなため、間違いなくパワースリーポイント狙いだろう。

 

春香「そうね………普通の相手ならまずどうしようも無い………けど、これを使い続けている私には、当然弱点もわかるのよ!!」

 

春香はそう言うと、わざと後ろに倒れるようにジャンプした。無論、これでは春香が背中から倒れてしまうのだが、それは、パワースリーポイントシュートを失敗したアリサも同じ。これに動揺したアリサはシュートを打つが、ボールはゴールの板に弾かれる。そればかりか、バランスを保てずに春香に接触してしまった。当然笛が鳴り………

 

明日香「チャージング! 白6番! スローイン!」

 

アリサのファールと取られてしまった。

 

積牙「(流石本家本元………弱点なんかもきちんと把握している………!)」

 

この光景に、積牙は感心していた………

 

 

巫魔の絶好調は止まらない。のぞみがスローインによってボールを受け取ると、速攻をしかける。

 

芽衣「速い………! 修也くん、太助くん! 止めて!!」

 

芽衣がそう呼び掛ける。それにより、のぞみがゴール下に入り、ジャンプシュートを打とうとした時に、修也と太助がジャンプしてシュートコースを塞ぐ………が、のぞみは積牙にボールを回す。積牙にはマッチアップ相手の身軽がいるが………

 

積牙「俺も………負けてられないぜ!!」

 

積牙はボールを受け取ると同時に、大きく飛び上がり、ジャンプシュートを放つ。これには、身軽の反応が遅れてしまい、積牙の放ったシュートは、綺麗にゴールのリングへと吸い込まれた。

 

光一「いよっしゃあ!! ナイス、セッキー!!」

 

積牙「はい!」

 

積牙と光一はハイタッチをかわす。それを見た修也は………

 

修也「(成程ね………彼、中々上手いじゃないか。シュートコースが完璧だった………)」

 

積牙の腕を素直に感心していた………すると、ここで………

 

明日香「友力、タイムアウト!!」

 

奄美はタイムアウトを取った。第2Q残り3分。現時点のスコアは28vs32。友力は何とか点を取ってはいたが、それ以上に巫魔のオフェンスが爆発し、友力に迫っていたため、奄美は止むを得ずタイムアウトを取った………

 

 

友力ベンチ………

 

奄美「あまり状況は良くないな。巫魔高校には、独自の強さがある事は認めるが………私はこのチームには今年こそ全国1位になって欲しいと思っている。この試合も負ける訳にはいかんのだ。いいな、確かにCが隙だらけかもしれんが………私達が負ける訳にはいかん。身軽、予定より遥かに早いが見せてやれ、お前の本当のプレイスタイルを………」

 

身軽「………分かりました。俺に任せてください………!」

 

身軽は、まるで自信満々な様子だった………

 

 

一方、巫魔ベンチでは………

 

美咲「しかし、Cがここまで隙だらけになるとは思わなかったね………」

 

のぞみ「それについては、相手の9番がバカだった事が幸いだったわね。」

 

あずさ「でも、相手がこのまま点の量産を許すはずが無いよね……… 」

 

優「………それに、今の所友力高校の中で1番分からないのは、4番の身軽太一だ………ねぇ、結衣ちゃん、相手の4番は何点決めたか覚えているかい?」

 

結衣「ふぇっ!? え、えーと………あれ? 決めてないような………いや、そもそもシュートした記憶が………」

 

優「そう、今の所1本もシュートしてないんだよ、あの人。相手の修也とアリサ………7番と6番の得点力が強いのと、本人がそこまで目立ったプレイをしていないから印象が薄いだけで………オフェンス力次第では………また苦戦するかも………」

 

優はそんな事を口にするのだった………

 

 

現時点、試合の流れは巫魔にあった。しかし、巫魔の流れを断とうとする不穏な空気を、微かに感じとる優であった………

To Be Continued………




次回予告
身軽太一は、遂にSFとしての本領を発揮。その強さはマッチアップ相手の積牙を翻弄するものだった。更に、それによる積牙のファールが増え始め………!?
次回「本領発揮と行きますか………!」

今作のバスケ用語解説
………久しぶりね、時乃のぞみよ。今回は、本作のイバラキにおける、イバラキ三大王者の話をしようと思うわ。まずは私達が戦った力豪高校。前の県大会ではベスト4だったらしいけど、全国大会に出た事もある強豪チーム。しかも、オフェンス力だけなら、三大王者の中で一番と言われているわ。
続いて守城高校。前の県大会では優勝している強力なチームで、守りの硬さは、三大王者最強。更に、全国大会出場経験も多い、まさにイバラキ最強のバスケチームね………
最後は爆速高校。県一番のスピードが持ち味のチーム。去年は2位で全国へ行ったけど、全国大会ではあまり猛威を振るえないらしいわ………これは完全に余談だけど、陸上部は20年連続で全国制覇中とのこと………
いかがだったかしら? 次回は全国のチームにちょっとだけ触れるみたいだから、楽しみにしているといいわ。では、今回はこの辺で………
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