幻想籠球録~低身長バスケ部の記録~   作:Uさんの部屋

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前回までのあらすじ
バスケ部の騒動から1週間、スポーツ推薦の為に、嫌でも部に所属することになった江野 積牙。ゆうかが提案した試合型のゲームが行われるが、第2Q残り5分の時点にも関わらず、鈴香への接触によるファール3本、テクニカルファールによる4本目を取られた積牙は大ピンチに陥っていた………


第3話 真の役立たずはどっちだよ

春香「テクニカルの為、フリースローから再開です。」

 

伊吹「(あの野郎………優が入ってきて苦しくなるって時にテクニカルを取られやがって………)」

 

伊吹もやはり不満を零していた。フリースローのシューターはレイがやる事に。

 

春香「ワンショット!」

 

レイは春香からボールを受け取り、何度か地面にボールを打ち付けた後、ボールを構えシュートを放つ。レイのシュートはゴールにしっかりと入り………

 

春香「白ボール!」

 

元々スローインをするはずだった優チームのボールとなって再開。

 

美咲「優くん! 速攻で攻めるよ!!」

 

優「おう!」

 

優は美咲からボールを受け取ると、素早い動きで速攻をしかける。彼のスピードには、部員の誰もが追い付けず、優はスリーポイントラインを超えた後、大きく飛び上がると、ゴールに力強いダンクを叩き込んだ。

 

ほのか「いいぞー!!」

 

のぞみ「(やはり、厳しいわね………それに、こっちは1人が4ファールだし………まあ、まだ11点はリードしているから、慎重にかつ、点差を近づかれないように攻めるとしましょうか。)」

 

のぞみはそう戦略を組み立てると………

 

のぞみ「こっちに回して!」

 

のぞみはゴール下にたっているあかりにそう呼びかける。あかりは言われた通りにボールをパスするが………なんと、その途中でボールを積牙が強奪した。

 

あかり「えっ!?」

 

のぞみ「あっ!?」

 

積牙はそのまま速攻を仕掛ける。

 

のぞみ「バカ!! 戻しなさい!!」

 

積牙「うるせぇ!! お前らみたいな役立たずにはうんざりだ!!」

 

積牙は自分勝手な事を言い放つと、1人で敵陣に切り込んでいく。

 

積牙「(あの影の薄い女にさえ気をつければいいんだろ!?)」

 

積牙はそう考えていた。しかし、これでは最早暴走にしか見えない。

 

優「あーあ、いいのかね。まあいいや。彼にはここで転がり落ちてもらおうか!!」

 

優はそう言うと、積牙との1on1に持ち込んだ。

 

積牙「お前なんかに………俺が負けたりするものか!!」

 

積牙はそう言ってドリブルでかわそうとするが、優もスピードで彼に追い付く。

 

積牙「(抜けない………!!)」

 

積牙は焦りながら、何とか頭をフル回転させて考えていた。

 

積牙「(なら、ここからシュートを撃てば!!)」

 

………本来、この場面を考えると、下手にシュートに行くべきではない。寧ろ、一旦戻すべきである。相手陣はマンツーマンディフェンスだが、PGであるのぞみをマークしている、スピード型のPG美咲を除けば、他3人の実力を考えて、ディフェンスをかわせないものでは無い。特に、鈴香の正面にはPFの伊吹がいる。彼女は身長差で鈴香に有利な為、この時点なら僅かに真上にあげてパスをするのが盤石と言える。しかし、彼にそんな選択肢は無かった。彼の中では、ゴールを決める自分の姿しか映っていなかった。彼は大きく飛び上がるとジャンプシュートを放つ………優はディフェンスの為にジャンプする………だが、ここで………!?

 

優「うわっ!?」

 

優は突如空中で体勢を崩し、尻餅をつく形で地面に倒れた。

 

積牙「何っ!?」

 

ボールはゴールに炸裂したが、春香が笛を鳴らし………?

 

春香「プッシング! 青10番! 5ファールにより、退場!!」

 

積牙「なんだと!? (ま、まさかコイツ………俺や審判に分からないようにわざと後ろに飛んで、尻餅をついたのか………!?)………当たってない! 俺は当たってないぞ!!」

 

春香「既に退場だから、もはや無駄だけど………それ、テクニカル取られるからね?」

 

優「………ありゃりゃ、開始17分にして退場とは………中学注目選手が聞いて呆れるぜ。」

 

積牙「なんだと!? 元はと言えばこの役立たずどもが………!!」

 

優「………いい加減にしろよ。さっきから勝手な事ばかり言いやがって………今のチームで真の役立たずはどっちだよ。」

 

積牙「………!」

 

流石の積牙も、顔を真っ青にする。

 

優「いくら優しい僕でもそろそろ怒るぞ。バスケはチームプレイでやるものだ。確かに、1人で攻めればいい場面もあるし、君は体格そのものはバスケットマンとして、十分適している。でも、勝手な事ばかり言ったって、どうにもならないんだ………罰として、体育館50周してこい。」

 

積牙「ぐっ………!!」

 

積牙は悔しそうな表情を浮かべて体育館を出て行ってしまった。

 

優「(………彼の持っている才能は確かに本物だ………中学の時の僕と同じ………いや、そんな事は忘れろ………! 中学の時の僕はもう死んだんだ………そんな事より、彼には………僕の二の舞は踏ませたくない………どうにか、彼をチームの歯車にはめる方法は無いものかね………)」

 

優は一瞬、嫌な事を思い出していたが、積牙をチームに溶け込ませようと彼なりに思考を巡らせていたのだった………

 

 

 

その後、積牙を失ったあかりチームが、優の高身長から形成されるパワープレイに勝てる訳がなく、いつしか点差は開き………

 

優「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 

優のダンクが炸裂。それと同時に試合終了の笛が鳴った。

 

春香「試合終了!! 100vs55で、優さんチームの勝ち!」

 

10人「ありがとうございました!」

 

伊吹「しっかし、優が出たら途端に試合にならなくなっちまったな………春香でも出てくれれば、100点ゲーム防止は当然、そこからの逆転勝ちもあったかもしれないんだがなー」

 

優「あはは………流石にシューターとしては春香の方が強いからな………確かにそれは言えてるかも………」

 

春香「もう、優さんったら………!」

 

春香は人目も気にせず優の腕に抱きつく。

 

優「うわっ!? ひ、人前で抱きつくなー!?」

 

優は頬を真っ赤にしていた。

 

あかり「でも………あの子はどうするの?」

 

伊吹「ほっとけ。あんな奴いなくてもチームとしてどうにかなるさ。」

 

伊吹はそう言うと………

 

伊吹「明日香、1on1の練習するぞ。」

 

明日香「はいはい、今日は負けないからね?」

 

明日香と共に練習を始めてしまった。

 

鈴香「………伊吹、完全に彼を嫌ってる………」

 

ほのか「無理も無いよ。伊吹からすれば、アイツの自分勝手さが許せないんだよ。」

 

優「………」

 

優は何か考え事をすると………

 

優「監督、突然ですがお願いがあります。」

 

ゆうか「お、どうしたのかな?」

 

優「どこか強豪校相手に練習試合を組んで頂きたいのですが………」

 

ゆうか「これまた突然だね………あっ、そうだ! ちょっと待ってて!」

 

ゆうかは何かを思い付くと、体育館の外へと向かった………

 

 

 

………それから数分後、ゆうかが戻って来た。

 

ゆうか「練習試合を組んできたよ。」

 

優「早っ!? いや、確かに要求したのは僕ですけど………」

 

ゆうか「皆にも共有しておくわね………次の練習相手は、前回の県大会でベスト4を取った強豪、力豪高校よ。」

 

あずさ「力豪!? 確か平均身長が180cm越えしているとても強いチームじゃないですか………! それに………よくもまあ、かなりの強豪校相手に、昨年1回戦負けの弱小チームであるうちが練習試合を組めましたね………」

 

ゆうか「あそこは私の昔のチームメイトが監督をやってるからね。練習試合したいって言ったら、喜んで引き受けてくれたよ。」

 

美咲「これは………ボッコボコにされるかも………」

 

由香「あはは………」

 

優「皆!! 諦めるのが早いって!! 確かにうちの学校は身長差ではどこよりも不利だが………大会の後に厳しい特訓を乗り越えた僕達なら、例え力豪でも相手になる!!」

 

ほのか「さっすがキャプテン。バカだけど、誰よりも燃えてるな。」

 

優「なんてったってうちのチームには、強い個性を持っている皆がいる!! 足りない所は、自分の得意な事でカバーするよ!! 巫魔、ファイー!!」

 

全員「おおー!!」

 

突然の練習試合も、優の言葉一つで大きく気合が入った。ただ、優には1つ気がかりがあった。

 

優「(………さーてと、問題はこの先だ。後は、あの問題児………積牙くんをどうするかだ………)」

 

優は積牙の事を考えていたのだった………

 

 

 

………一方、外で走り込みを続ける積牙は………

 

積牙「………俺はバカだ………分かっているのに………どうして俺はあんな真似を………!」

 

………意外にも、どこか後悔している様子を見せていたのだった………

 

 

 

現時点で、唯一チームから浮いている江野 積牙。一部メンバーが既に彼を嫌う素振りを見せる中、果たして、彼はチームメンバーとして、どのような立場となるのか………?

To Be Continued………




次回予告
1週間後、開幕した力豪との練習試合。巫魔高校は主力メンバーを控えにスタメンを決めるが、力豪を前に苦戦を強いられる。そして、第1Q終了後、優は勝つ為には積牙の力がいると本人に語り………?
次回「勝つ為に君が必要なんだ」

今回のバスケ用語解説
………貴方と会うのは始めてかしら? 私は時乃 のぞみ。今回はファールとフリースロー、そして退場について解説をしていくわ。まず、バスケットは接触が多く見受けられるスポーツだけど、それらは審判が目撃すればファールとして取られてしまうので、自分のファールとして取られないようにしないといけないわ。ファールとして取られやすいのは、プッシングやチャージングといった相手を突き飛ばしたりする行動ね。特にディフェンス側は要注意。シュート中の相手を妨害してファールを取られてしまうと、バスケットカウント、すなわち、フリースローの権利を与えてしまうので注意する事。フリースローの投げられる回数は以下の通り。
・ファールを貰いながらシュートが決まったら1回
・スリーポイントエリア内でシュートを妨害されたら2回
・スリーポイントシュートを妨害されたら3回
と言った形になるわ。特に1番上が凶悪かしら。例えば、2点を決めながら、もう1点を決める3点プレイの破壊力は恐ろしいわ。そして、ファールは試合中に5回累積すると退場になってしまうので気をつける必要があるわ。また、ファールはチームで5回以上取られると、チームファールとなり、それ以降は攻守関係無しで、相手チームに無条件でフリースロー1回の権利が与えられてしまう点に注意よ。でも、チームファールは各Q終了と同時にカウントがリセットされるので、余程のファールプレイをしなければ、チームファールは珍しいわ。そして、ファールには悪質な物が主に2つ存在するわ。1つはアンスポーツマンライクファール。わざとファールを行った選手に問答無用でフリースロー2本の権利が与えられ、更にフリースローの成功に関わらず、フリースローを投げたチームのボールとして再開する重たいファールよ。しかも、このファールは2個取られると、問答無用で退場になるわ。自分だけでなく、チームにも迷惑がかかるので、絶対に取られないように。もう1つはテクニカルファール。1年生の新人が前話でやらかした行為ね。このファールはスポーツマンとして有るまじき行為をすると取られてしまうわ。主に審判への抗議、暴力、物に当たるとかをすると取られるわ。特に、最初の審判への抗議は絶対にやってはダメよ。バスケットボールは審判の判断が絶対という競技なので、絶対に止めること。なお、このファールは監督やコーチ、ベンチメンバーにも適用されるから、ベンチでもスポーツマンとしては油断しないこと………ああ、そうそう。バスケットボールは仮に退場しても、サッカーとかみたいに次の試合に出れないとかのペナルティーは無い点については安心していいわ………さて、ここまで長々と話してきたわけだけど、今回は貴方に、バスケットボールのファールについての知識が入ってくれると願っているわ。では、今回のバスケ用語解説はここまで………
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